新たなるクエスト
この回から魔法名の表現を変えております。
カタカナ名は見辛くなりますが、文字数などはスッキリすると思います。
従来 『ホーリーチェイン(拘束)』
変更 『拘束』
どちらが良いか読者様次第になるとは思いますが、一旦この回より変更したいと思います。
「はぁぁ!」
「とぉ!」
ミラの剣が閃き、ベガの蹴りが鋭く決まる!
それぞれの一撃を受けてゴブリンが倒れた!
ここはパウス辺境都市より少し西にある草原である。
草原の遠くにはトランキル山脈の山々が連なって見える。
キープ達は冒険者ギルドからの依頼を受けてクエストをこなしていた。
冒険者は定期的にクエストをこなさくてはならず、それをしないとランクが下がり、最悪冒険者カードを没収される。
どちらにしろ旅費の事もあり、メンバーは二手に分かれてクエストを受注して進めていた。
今回キープと組んでいるのはミラ、ベガ、アリアの四人で、ナシュ、カペラ、マタルはレジーナと別なクエストを行っていた。
ちなみにミーシャはお留守番で、何でも宿代軽減のため宿のお手伝いをするとの事だった。
キープ達は今いるプレアデス草原という場所でゴブリンの討伐をしていた。
開けている場所もあれば、草が背丈ほどまで茂っている場所もあり、見通しはそんなに良くない。
ここの草原には色々な薬草やハーブと言った草が自生しており、街の人達がちょくちょく採りに来るらしい。
しかしゴブリンが出始めた為困っているという事だった。
「しかしこれは、どこかにこいつ等をまとめているヤツがいるかもしれないな」
ミラの言葉にベガも頷きつつ、
「だね、こいつ等の装備とか、戦いとかを見るにそんな気がするよ」
ベガの指す方向には倒したゴブリンが横たわっている。
その装備は革鎧に片手剣と盾。
別なゴブリンは革鎧に片手斧といった装備を身に着けていた。
その武器はどれも手入れをされており錆などもない。
一般的にゴブリンは知性が高くなく、武器等使いはするが手入れ等はほぼしない。
その為血で錆びていたり、刃が掛けていたりすることが多い。
また、攻撃一辺倒なので防御に関する装備を身に着けない。
それ等を踏まえると、このゴブリン達は知性のある何者かが後ろにいると言う事だろう。
「ゴブリン達を率いてって考えると、ゴブリンリーダーかメイジかしら?」
アリアが考え込みながら告げる。
ゴブリンはまとめている人数によって、ゴブリンリーダー、ゴブリンマスター、ゴブリンキングとその上に立つ者の名称が変わる。
50人ぐらいまでのゴブリンをまとめているのがゴブリンリーダー。
500人を超えるとゴブリンマスター、1000人以上ともなるとゴブリンキングとなる。
もちろん多い人数をまとめるとなると、それなりに力を持ってないといけない。
ゴブリンキングともなるとかなりの強さを誇る者となる。
ちなみにゴブリンメイジは名前の通り魔術師タイプのゴブリンで、魔法が使えるのでそれなりに頭が良く、リーダー程では無いがゴブリン達をまとめている時がある。
ただ過去の例からもゴブリンマスターやゴブリンキングは出現することがほぼ無い。
大抵のゴブリンは出現と同時に討伐され、そこまで大規模な集団になることが無いからだ。
そしてゴブリンが出始めたということは、この草原に魔の力で形成された洞窟や地下道などが出現したかも知れなかった。
ゴブリン達はそこから来ているのだろうが……。
と言ってもキープ達に洞窟などの手掛かりはなく、闇雲に探すしか手が無い。
街で買った地図を見ながら、確認して場所を潰していく……いわゆるローラー作戦を行っていた。
「おっと!」
カン!
突然飛来した矢を剣の腹で受け止めるミラ。
草むらからゴブリンが三体あらわれる。
やはり武装をきちんとしているようだ。
全員革鎧に前の二人が剣と盾、後ろのゴブリンは弓に矢をつがえ直す。
「『拘束』」
光の鎖が弓を持つゴブリンを拘束する。
剣を持つゴブリンは、キープを危険と判断したのか襲いかかろうとするも、
「させるか!」
「やらせないよー!」
一方にミラが剣を叩きつけ、もう片方をベガが足払いで転ばせる!
ミラの剣をなんとか盾で受け止めるも、その力に押されて後退するゴブリン。
そのゴブリンに追いすがる様に距離を詰めて続け様に剣を繰り出す!
後退したゴブリンが剣を盾で受け止めるも大きく弾かれ体勢を崩した!
ミラが素早く剣を翻し斬りつける!
ゴブリンは剣で受け止めようとするも、間に合わず肩口から袈裟がけに切り捨てられる!!
ゴブリンはそのまま血を撒き散らしながら地面に沈んだ。
もう一方ではベガが転倒させたゴブリンの武器を蹴り飛ばし、そのまま起き上がらせることも無く蹴りと踏みつけで倒していた。
ミラが拘束されたままのゴブリンに近寄り剣を構える……と、
「待って!」
アリアがミラを止める。
「どうしたアリア」
「このゴブリンの武器を壊して、逃しましょう」
「逃がす……だと?」
怪訝な顔をするミラに、
「ええ、このゴブリンには『追跡』の魔法を掛けたわ……このまま住んでいる所まで案内してもらいましょう」
そう言ってニッコリ笑って、
「闇雲よりこっちのほうが効率良いでしょ?」
そう告げるのだった。




