新たなる戦局
(ええっと、どこかに……)
半壊した館の倉庫でコルはゴソゴソ探し物をしていた。
隣には同じく探しものをしているミーシャの姿もあった。
「あります?」
「ないですね。 そちらは?」
「こちらも……」
ここの倉庫はあらかた探したが探し物は見つからない。
ミーシャがコルに、
「他に探すとすればどこがあるのでしょう?」
コルも他に場所がないか思案していたが……。
「もしかしたら……」
コルは館の掃除担当であり、各部屋に何があるかなどは把握している。
ただ二か所だけ把握出来ていない部屋があった。
それは……、
「ご主人様の部屋か、メイド長の部屋です。 あそこだけは私も中を見ておりませんので」
「では、そちらを探しましょう。 えと、どこでしょうか?」
「こちらです」
駆けだすコルに続いてミーシャも後を追って行く。
「『ポルターガイスト(騒霊)』」
サダルメリクが唱えると、傭兵達が落としていた武器達がひとりでに宙を舞いキープとマタル、そしてアリアに襲い掛かった!!
「こんな子供だまし!!」
レジーナが手を払うと、武器を操っていた糸が払われ武器がガシャンと地面に落ちる!
しかし、それはキープに襲い掛かった武器だけで、マタルとアリアは宙を舞う武器達に翻弄されていた。
飛んできた片手剣を短剣で受け流すも、別な剣が背後からマタルの太ももを貫く!
「つぅ!」
マタルが刺さった剣に手を伸ばすも、すぐにマタルから離れて宙を舞う。
剣が抜け血が勢いよく噴き出した!
「『ハイヒール(中回復)』」
魔法で傷を癒すが、そこを三本の剣が同時に襲い掛かる!!
前転してぎりぎり回避!
しかしそこはリビングデッドの目の前だった!!
「きゃあ!」
そのままリビングデッドに覆いかぶされる!
「とりゃ!」
ベガの蹴りがリビングデッドを吹っ飛ばす!
「マタル、大丈夫?」
マタルもすぐに起き上がりベガと背中合わせになる……乱戦となっており、みんな分断されてしまっている。
「これは、まずいね」
「ですね……なんとかしないと……」
そんなベガ達をリビングデッドと宙を舞う武器達が囲っていく……。
「アリア!!」
ナシュの剣がアリアに飛んできた剣を弾き飛ばした!!
「ありがと!」
アリアはお礼を言うとすぐに、
「『アイスクロウ(氷烏)』」
氷の烏が飛んでいる武器を追って飛んでいく!
「『コキュートス(氷葬)』」
リビングデッド達が凍り付く!
しかし乱戦状態なので一部の範囲にしか掛けられない……リビングデッド達を全て凍らせるのは難しそうだった。
ギィン!!
再度飛んできた片手剣をナシュが受け止めてその柄を掴むと、地面に突き刺し踏んづける!
深々と地面に刺さった片手剣は……ガタガタ動いていたがやがて動かなくなった。
カペラは一人リビングデッド達の群れに囲まれつつも奮闘していた。
カペラが手にしているのは片刃の片手剣でいつもの斧ではなく不慣れではあった。
しかし緩慢な動きのリビングデッドに対してなので受ける・躱すといった動作は不要で、峰の部分を使い力任せに叩きつけていた。
動きが緩慢だが、耐久力があるリビングデッドは幾重にも重なったり囲まれていくと遂には身動きが取れなくなってやられてしまう。
そこで近づいてくる者に剣を叩きつけて吹っ飛ばし距離を詰めさせない様にしていた。
「『ホーリーチェイン(拘束)』」
光の鎖がカペラの背後にいたリビングデッドを拘束する!
キープがカペラに走り寄ってきた。
「遅れてすみません!」
キープは、サダルメリクをレジーナに任せるとリビングデッド達の鎮圧を優先したのだった。
「蔓はしなやかに伸びて、拘束する檻とならん『ウイップゲージ(蔓檻)』」
マタルの方でも地面から伸びた蔓がリビングデッド達を次々拘束していく……。
そうして……、
「『コキュートス(氷葬)』」
アリアの魔法で最後のリビングデッドが凍り付き、遂にサダルメリクを残すのみとなった。
一方、サダルメリクは『ポルターガイスト(騒霊)』を使用してレジーナに距離を詰めさせない様にしていた。
「フン! こんななまくらな剣が余に傷を負わせられるか!」
宙を飛び交う剣をものともせずサダルメリクに詰め寄るレジーナ。
しかし……。
「む!」
突如レジーナの動きが止まる。
「カッカ、甘く見過ぎじゃの! いくら頑丈とて防御を無視するとはおろかなり」
レジーナの四肢、そして胴や首といった体中に糸が絡みついている!!
「なるほど……飛び交う武器は囮で、本命はこっちか」
「そして、更に……」
サダルメリクがニヤリとする、そして、
「そは彼方へと旅立たん 巡り巡るは永劫の最果て 『アンダーゲート(冥界)』」
レジーナ足元に闇が広がり……ずぶりとレジーナの体が沈み込む!
「これは!!」
「我の世界に案内してやろう。 冥界で戯れるが良い……未来永劫な」
急いで糸を切ろうとしたもののすでに下半身は闇に沈み……そして、
レジーナはそのまま地面に開いた闇へと吸い込まれていったのだった……。




