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初めての1割


「アトリアさんもご無事だったんですね!」


キープの言葉にもアトリアは表情を崩さず、


「ギルド全体での防衛線でしたので、ギルド関係者も全員一丸で作戦に参加しておりました」


「彼女達には戦場での連絡や角笛での合図を担当してもらっていたんだ」


アルファードの言葉に納得する。

受付嬢が戦場に出るのは危ないと思っていたところだった。



「私達も丁度、荒野からこちらに戻ってきたところです。 ここをから二手に分かれてクレーターを一周しましょう。 分け方はこちらから指示しますので」


アトリアはそれだけ告げると他のギルド職員と相談しに歩いて行った。

綺麗な尻尾は汚れて下に垂れ下がっている。




「彼女は街に親とまだ幼い兄弟たちを残していたんだ……」

横にいたアルファードが沈痛な面持ちで話す。


だからずっと淡々としていたのか……。

今すぐにでも探して回りたいのを押さえて行動しているのだろう。




大事な人を街に残してきた人は、他のギルド職員や冒険者達にもいるだろう……。

一人でも多く助けることが出来れば良いのだけれど……。





その後、キープ達と冒険者達に連絡が来て、キープ達はクレーターに沿って時計回りに探すことになった。

ちなみにアルファードやミュー達は反対側から反時計回りで回ってくるらしい。



左側に時計回りだと、荒野からエデン森林前、そしてウィスカー村への洞窟前と続く。


森に逃げ込んだ人も多いかもしれない。



「よし、行こう!」


他のパーティと一緒に探索を開始していった……。






探索を開始してずいぶん経つ……東の空が少し明るくなってきたようだ。


夜通し探したものの捜索は芳しくなかった。


街の外に逃げた人の大半が、ガードの守っていた場所に集まっていたようで、暗黒球にガード達もろとも全員消滅させられたらしい。


というのが、途中で見つけた三人の証言によるものだった。


ちなみに三人とも木こりで、街を出た後自分達の小屋に避難していて助かっていた。



エデン森林の奥は獣や魔獣達が生息しており、街の人が深く入ることはない……。

しかし、街に住んでいたエルフが森に逃げ込んだとの情報もあったので、もう少し生き残りがいるかもしれなかった。


ハマルさんも無事なら良いのだけれど……。



森の入口周辺を探索して更に数十人を保護し、先に進む。





そしてウィスカー村へ通じる洞窟前への道に来た時だった。


!!


マタルが、

「剣戟です! 誰か戦っています!」


言うなり洞窟側へ走り出す!!


「私達も!」

全員でその後を追っていく……すると少し開けた場所で魔物の群れに囲まれている集団を発見した!




集団を守る様に数十名が武器を手に戦っている……それは、


「クルサ!!」


「あ、お前達!!」


刀を手に大暴れしているのはクルサだった! 

戦っていた者はみんなウィスカー村の獣人達だ!!


「みんな! 一緒に戦うよ!!」


キープ以外のパーティも追いつき全員で戦闘が開始される。



ちなみに襲っていたのはブラッドタイガーと呼ばれる魔獣だ。

虎が魔の影響で変異したもので、体中の骨が鋭い刃に変化して皮を飛び出て全身刃物の様になっている。


更におこぼれに預かろうとフォレストウルフとシザーラビット……キープが以前倒したウサギもちらほら見られる。


数は多いがそんなに強くはない……しかし集団を守りつつなのでクルサ達にとってはやりにくそうだ。


そこへ現れたキープ達と複数の冒険者達……そうなれば展開は一方的だった。


そのままあっさりと魔物達を撃退したのだった!!






戦闘が終わるとクルサが近づいて来た。


「ありがとな! おかげで助かったぜ」


「ううん、クルサなら全然余裕そうだったし」


「へへ、まぁな。 あんな奴らにやられる俺じゃねーが……ただあいつらがいたからな」


チラリと後ろに目をやる。



クルサに守られていた人達……結構な人数だ。


「彼らはもしかして……」


「キャラコに住んでたやつらだよ」


「!?」




クルサは間を置くと、


「キャラコの街から救援要請をもらってな……街に着く寸前に変な黒い球が膨らんでいくのが見えて……そうしたらあいつらが丁度逃げてきて……」



キープに視線を戻すと、


「キャラコの街はもう……、だから、あいつらをウィスカー村に連れていくところだったんだ」


「そうなんだ……ありがとう。 クルサには助けられてばかりで……」


「なんでキープがお礼を言うんだよ!」


赤くなって横を向くクルサ……照れているらしい。


「そういえば、キープ達はなぜここに?」



クルサにキャラコの生き残りを探していることを伝える。


「そっか……それなら、この辺りはこいつらだけかもな」


「そうなの?」


「俺達も探したんだよ。 この周辺を……何とかこの人数までは集めたが……」


ざっと見たが300人程ぐらいだろうか?



「そ、そうだったんだ。 ありがとう、色々と」


「バッ! だ、だからキープにお礼いわれることじゃねーって! 助け合いなんて当たり前だろ!」


またまた照れてるようだ……尻尾がピンと立っている。

当たり前と言われても、やはり感謝は嬉しい様だ。



「俺達はこのままこいつらをウィスカー村に連れていくけど、キープ達はどうするんだ?」


「僕達はこのままクレータに沿って北から北東に向かうよ。 反対からも探してくれているんだ」


「なるほどな。 もっと生き残りがいることを祈ってるぜ」


「ありがとう。 クルサも気を付けてね」


「誰に言ってやがる。 キープ達こそ気を付けろよ」




そうして思わぬ再会を果たした後、引き続きキープ達は探索を続けて、そのまま反対組と合流となった。





逃げたエルフの推定数とウィスカー村に逃げた人達、反対組で救った人達の数を合わせると1000人弱。


キャラコの住人が約1万人、そのうち助けられたのは約1割程度であった……。


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