初めての??
キープが冒険者ギルドを訪れて3日後。
キープは再度冒険者ギルドを訪れていた。
キョロキョロ……。
入口で用心深くギルド内を確認する。
(よし……アルファードさんはいない)
確認はしたものの警戒しながら入って行く。
キープと一緒に来ていたナシュが、
「一体何をしているの?」
「用心です。 町中とはいえ何が起こるか分かりませんから!」
「え? 何かって?」
「……僕の知らない世界がまだ沢山ありますから」
遠い目のキープに?を浮かべるナシュ。
その後ろからベガとマタルが声をかける。
「どうしたの?」
「どなたか探してらっしゃるのですか?」
同じく不思議そうな顔で二人がキープに訪ねた……。
キープ達は全員で冒険者ギルドに来ていた。
その理由は二つ。
一つはキープの冒険者カードだ。
逃げてしまったのでカードを貰えていない事。
そしてもう一つがクエストの受領である。
冒険者はクエストを定期的に受けないといけない義務がある。
受けないでいるとランクが下がったり、最悪冒険者カードの没収となってしまう。
また、キープ達のお財布事情も厳しく、その為にもクエストを受ける必要があった。
「じゃあ私クエスト見てくるわね」
「あ、じゃあ私も〜」
ナシュとベガがクエストボードにむかい、
「師匠、私もクエスト見てきま……」
「待って! マタルさんは一緒にいて!」
「えぇ? し、師匠、一体……」
「お願いします。 一緒に居てほしいんです」
「は、はい。 分かりました!」
(し、師匠……それ程までに私の事を必要としてくれるなんて……)
マタルが嬉しそうに返事をする。
キープとしては一人だと色々怖かったからなのだが……。
キープとマタルが揃って受付に行くと、
「あ、キープさん! マタルさんも」
アトリアが目ざとく声を掛けてきた。
そして、
「この前はすみません!! あんな事になってしまって」
非常に申し訳なさそうに、これでもかと頭を下げる!
「う……」
思い出したのかキープの顔が引きつる。
マタルの方は意味が分からず、?となっていた。
「あの変態には厳しく言ってきませましたから!」
「わ、分かりましたから。 もう言わないで……」
アトリアはキープの様子から話を変える事にして、
「分かりました。 それで宜しければ冒険者カードの再発行いたしましょうか?」
「はい、お願いしたいです」
では、と、用紙の記入とステータスチェックが行われる。
また、前のカードが破損してデータが拾えなかったので、過去のクエスト状況についての確認が入る。
「それと、クエストでは無いですが、キープさんは軍団長を退けた事もありますので、今回銀ランクとさせて頂きます」
「ええ? 宜しいのですか?」
「師匠! 流石です」
キープとマタルの声に、
「コールマインでのクエスト完遂状況と、ケイナンでの防衛戦、そして軍団長を2回撃退……エルフの森と、この近くで。 それを考慮致しました」
口に出していないが、もしかしたらこの前のお詫びも少しはあるのかもしれない。
「おめでとうございます師匠!」
「ありがとう」
祝福するマタルに返事をしていると、
「こちらがキープさんの冒険者カードです。どうぞ」
アトリアから銀色のカードを渡される。
カードには、
【名前】キープ・カッツ
【適職】回復師⇒回復師+??
【筋力】E⇒E
【敏捷】D⇒D
【魔術】S⇒S
【幸運】D⇒D
【体力】E⇒E
【魔力】S⇒S
【比較】前回⇒今回
ステータスは何も変わっていないが、それよりも目に付くのが、
「あの……適職に??とかあるのですが?」
アトリアは少し困った顔をすると、
「それがですね、バグでもミスでもなく何度やり直してもそうなるのです」
「と、言う事は?」
「本当にそう言う表示なんだと思うのですが……前例が無いので確認しないと何とも」
どうやら初めての事らしい。
キープが確認を頼んだ所にナシュとベガが寄ってきた。
「どう? 冒険者カード出来た?」
「あ、うん。 出来たよ」
「師匠、銀ランクになりましたよ!」
本人より先にマタルが伝える。
自分の事のように嬉しかったらしい。
勿論キープ自身も嬉しかった。
「おお〜おめでとう! 並ばれちゃったかぁ」
「おめでとう! 先輩としてはうかうかしてらんないね!」
ナシュもベガも銀ランク、マタルはこの前取ったばかりです銅ランクだった。
「そう言えばナシュ達の方は? 良さそうなクエストあった?」
「ええ、これなんてどうかしら?」
ナシュが持ってきたクエスト表をマタルと二人で覗き込む。
【レッサードラゴンの討伐】
スティープ山脈にレッサードラゴン数体が住みつきました。
鉱山の仕事に支障が出ているので退治をお願いします。
詳細はスティープ山脈鉱山組合事務所まで。
銀ランクのクエストで報酬もそこそこ良い。
貯蓄が乏しくなってきた事もあり、なるべく稼いでおきたかった。
「レッサードラゴンってドラゴンですよね? 強くないのですか?」
マタルはレッサードラゴンを知らないようで心配そうだが、
「レッサードラゴンとは言うけど、どちらかと言うと大きなトカゲみたいなものよ。 この前のリザードアーマーみたいな感じかな?」
「でもリザードアーマーって凄く硬かったですよね?」
「レッサードラゴンの鱗はあそこまで固くないから大丈夫。 私も何回か戦った事あるから」
ナシュとベガがそれぞれ説明する。
「だったら平気でしょうか」
ひとまず安心したマタルに、聞いていたのかアトリアも、
「レッサードラゴンは小さな羽はあっても飛べませんし、動きも鈍いほうです。 ブレス等もありませんし、弱くはないけど強くもないと言う感じです」
「なら、今度こそ私の魔法でやっちゃいます!」
ようやく安心したのか笑顔を見せる。
ドラゴンの名前に不安だった様だ。
「では、すみませんがこれ受けます」
「はい、手続きいたしますね」
カウンターの下で書き込みなどをしていたが、
「受領完了しました。 お気を付けて行ってらっしゃいませ」
笑顔で見送るアトリアに、
「はい〜、行ってきます!」
全員でアトリアに返事すると、クエストに向かうのだった。




