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初めてのナイトメア

残酷シーン有です。

お気をつけて下さい。


勇者シリウスは生まれた時に勇者としての印___聖印と呼ばれる印を体に持って生れて来た。


それは胸の真ん中にある輝く星の様な痕である。



その日から、シリウスは勇者としての教育を施された……が、その裏で両親はシリウスのご機嫌を取る為さんざん甘やかした。

何しろ勇者は国中上げてもてはやされる、その為子供を餌に国からおこぼれに預かりたかった。


また国としても、魔王を討てる勇者を特別扱いして何をしても黙認して色々贔屓してきた。


その甲斐あってと言うべきか、勇者シリウスはそこそこ強くそこそこ頭もいい、世の中は自分の思い通りになるという考えの青年へと成長していったのだった。




(だりぃ……)

シリウスは冒険者ギルドで周りの冒険者の相手をしていた。

握手やらサインやら散々ねだられる。

離れた所では聖女のスピカと、剣聖のサルガス、聖騎士のミラ、賢者のリゲルが囲まれているシリウスを尻目に、我関せずを貫いている。


(くそっ! あいつら他人事だと思って!)

周りに笑顔で応えつつも、腹の中ではムカついていた。


冒険者から見れば、勇者で白金ランクであるシリウスはあこがれの的である。


更に容姿も、さらさらな銀髪を適度に整えており、高い身長・適度に鍛えられた筋肉、目つきは鋭いものの顔つきは非常に整っており、女性のファンも多く男性からもあこがれとなっている。


国からの依頼もあって冒険者ギルドに顔を出したが、それからずっと冒険者達に捕まっていた。

勿論振り払っても良いのだが、外面だけは良くした方がいいという悪知恵の元、我慢を続けているのだった。




そんな中、冒険者ギルドの扉を開けて一人の美少女が飛び込んできた。

小さい体ではぁはぁ息を整えると、

「聖女様はいらっしゃいませんか!」

可愛らしい声を張り上げ叫んだ。


その声に、聖女スピカが安心させるような笑顔で答える。

「私が聖女のスピカです。どうしました?かなりお急ぎのようですが」



聖女スピカや剣聖・聖騎士・賢者……特殊な職にある者は、みな勇者と同じように聖印と呼ばれる印を体に持っている。

聖女であればバラの様な、剣聖であれば剣の様な十文字、聖騎士は盾の様な五角形、賢者は六芒星。


本来であれば、国などが勇者やその一行を鍛えて、魔王を討てるように高みに押し上げる。

……そうなるはずが、勇者と同じように聖女もそこそこ鍛えはしたものの、きつい修業は早々に逃げてやりたい放題していた。



スピカはシリウスと一瞬目を交わし、シリウスも頷く。

「何やら大変そうなお話……ここでは何ですから、別な場所で落ち着いてゆっくり聞かせて下さい」

スピカはそう微笑むと美少女を連れて冒険者ギルドを出ていった。




キープはスピカに連れられ、スピカ達が借りている宿の部屋に来ていた。

そう、周りから美少女と思われていたのはキープだった。

高級宿らしく、高そうな調度品が多く並び、豪華なベッドや机が置いてあった。

キープを席に促し、机の上にあるガラス製の水差し……これだけでも値段の想像がつかない……から水を注ぎ、キープに勧める。


「まずは、お水を……走ってきたようですし、喉も乾かれているでしょう」

「ありがとうございます……聖女様」


この部屋には聖女とキープしかない、キープはかなり緊張していてガチガチになっていた。

スピカも聖女と呼ばれるだけはあり、神秘的な雰囲気の美女だった。


ブロンドでウェーブのある髪を腰まで伸ばしており、肌も白く透き通る様であった。

顔つきも誰しも見入るような美女で、姿のどこをみても非の打ちどころがない。

おとぎ話に出てくる綺麗なお姫様の様なすがただった。



緊張をほぐそうと勧められた水を一気に飲む。

こくこく……水を飲む音が響き、人心地ついたキープであったが、深呼吸して話をしようと__


(あれ?……何か?)


世界がぐるっと回った感じがして、話をする前に意識が暗闇に沈んで行った……。






ドガッ!


腹部に強烈な痛みを覚え、息が一瞬止まる。


「げほっげほっ!」

空気を求めて止まった息が動き出し、肺が大きく空気を吸い込んだ。


(こ……ここは……)


鈍い頭を振りつつ目を開けていくと、見知らぬ部屋であった。

キープの両手は頭上で拘束されており、冷たい石の床の上に座った状態だった。


部屋の壁は鉄だろうか?四角い正方形な部屋で窓はなく、1個だけあるドアも鉄製だった。


キープの前には銀髪で美丈夫な青年、その後ろに聖女スピカが立っている。


「おはよう!お嬢ちゃん、お目覚めかな?」


青年はそういうとキープの腕を蹴りつけた。


「うぐっ!」


かなりの痛みがキープを襲う……多分骨にひびが入ったのであろう。


「あ、あなたは?それに一体これは……?」

「うるさい、お前ごときが俺様に質問とかしてんじゃねーよ」


反対側の腕を蹴られる……再びかなりの痛みがキープを襲う。



それを微笑みながら見ていたスピカが、


「まぁまぁシリウス……この子だっていきなり目が覚めたらこれですもの。驚きますわよ」


「フン! では貴様が説明してやれ」

「仕方ないですわね」


スピカはキープの前に来るとしゃがみ込んで目の高さを合わせる。


「大丈夫?」

「せ、聖女さま……これは一体……?」


痛みに耐えるキープにスピカが回復魔法をかける。




「痛みは大丈夫かしら?」

「はい……ところでこの状況は一体……」


「その前に……私達は大きな使命があるのはご存じよね?」

「魔王を倒す……ですよね?」

「そうなの、国やら人から色々言われて大変なの……ストレスだって溜まっちゃうじゃない?」



スピカが困ったような表情をする。


「だからストレスを解消しないといけないのよ」

「あの?……聖女様?」


キープの中で不安が沸き立つ……頭の中を警鐘が鳴り響く。


「だからね……」


スピカがまぶしい程の笑顔をキープにむける。

その手にはいつの間にか鉄で出来たメイスが握られていた……それをキープの固定されている両手に振り下ろす。


ぐしゃ!


骨やら肉やらが潰される。


「あああああああぁぁぁぁ……」

声にならない声を上げる。


「おいおい、気絶とかさせるなよ? まだ俺も全然ストレス発散できてないんだから……」

銀髪の青年が意地悪そうににやける。


「いっ……たい……どうして?」

「あら?まだ会話できるなんて」


「何故……こんな……こと、を? どうし……て、僕……なの?」


イラついた顔で青年がキープの顔面を蹴飛ばす。


「さっき、言っただろうが! 頭わりーのかよ? ストレスだよ、ス・ト・レ・ス」



「あらあら、可愛い顔が台無しだわ……『ハイヒール』(中回復)」

回復魔法で蹴られた顔の怪我が治る。




「どうしてあなたかって?……それはね、ただでさえ色々な人の依頼や要望を聞いているのに」


スピカの顔が憎悪に歪む、


「お前みたいな田舎の小娘までが、わ・た・し・を……」 グシャ!

「名・指・し・で……」 ブチュ!

「しかもそれなりに可愛いとか……調子にのってるのかしら!」 ボギッ!


言いながらメイスで腕や足を殴る……腕が折れ骨が飛び出る、足が変な方向に曲がる。



「おいおい、死ぬ前に回復しとけよ」

青年が声を掛ける。


「分かってますわ」

回復する……青年が蹴る……殴る……回復する……メイスで骨を砕く……腹にめり込む……回復す……


気絶しては、水を掛けられ……また気絶する……

普通なら気が狂ってしまうだろう。



(ミーシャ……)

気が狂えばミーシャが助けられない。命が消えてしまう。

その一心でひたすらに耐えた。



……どれくらい続いただろうか……


幾度となく繰り返されたストレス発散だったが、ようやく青年の「飽きた」で終わりを告げた。



「あら?勇者シリウスはもう十分ですの?」

スピカが声を掛ける。


「ああ……もうだりぃ……腹も減ったしな……あとはそいつ店に落としとけ」

「しかたないですわね……『ハイヒール』(中回復)」


スピカはキープを回復させると、拘束を解いた……気絶していたキープは力なく倒れこむ


いくら回復しても床に飛び散った体液などはそのままだった……錆びた鉄の混じったその悪臭が今になって鼻につく。

殴っている時は夢中で気づかなかった。


スピカは悪臭に顔を歪めると、部屋を出て外にいた男たちに声を掛けた。



入れ違いに入ってきた男たちはキープに水をぶっかけるとそのまま部屋の外へ連れていくのだった……。



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