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初めてのクロー


「あ〜ん、キープぅ! お姉ちゃん負けちゃったよぉ〜」


ナシュがキープに抱き着いてくる。


「えと、お、お疲れ様?」


「違う! もっとこう『ありがとう僕の為に』とか、『惜しかったね。 次はお姉ちゃんが勝つよ!』とか、そんな感じで!!」


「……」


(どうしよう……どうしてこんな性格に……)


キープは何も言えず、ナシュに抱きつかれたまま立ちすくむ……。



「次は2回戦ですね。 1回戦は攻撃的スタイルのカペラさんが勝ちましたけど、2回戦はどうなると思いますか?」


ライエさんが聞いてくる……僕は今、ナシュに抱きつかれてそれどころじゃないんですけど……。



今度はカペラが審判の様で鍛錬場の真ん中で待っており、その元にベガとマタルが歩いて行く。


いつも素手のベガが珍しく格闘武器のクローを装備している。


手先から二本の爪が伸びているようなデザインで、それぞれ両手にはめていた。



一方マタルはいつもの様に短剣を構えている。


マタルは素早い動きで短剣捌きもなかなかだが、どちらかというと魔法の方が得意だ。




お互いに近接戦闘なので、どちらかと言うとベガのオンステージになりそうだが……。


流石に戦闘が気になるのか、ナシュもキープを解放して二人を見守っている。


キープもほっと一息ついて、ベガ達に視線を向けた。



「始め!!」


カペラの合図が響く……が、先程のナシュ達と違って、両者動かない!


お互いに構えは取っているものの、どちらから仕掛けるか、どう攻めるかタイミングを見ているようだ……。



マタルは短剣を構えたままベガの様子を伺っていた。

ベガは経験豊富な冒険者だ、この向き合った状態から隙を見せるなんてことはないだろう。

ならば、戦闘への対応が一番難しいタイミングを狙う……。



(……)

マタルは今フードを外して、エルフ特有の大きな耳を出していた。


そしてベガの呼吸を探っている……一番深く吸い込んだタイミングで仕掛けるつもりだった。




しかしベガも手練であり、呼吸を悟らせない様にしている。


吐くと吸うを静かに……交互ではなく続いている様に……。



しかし見合っていると言う緊張感もあったのだろう。

少し大きく吸い込んだのが微かに聴こえた!


瞬間! マタルが走り寄り、左下から逆袈裟に斬りつける!


ベガは右に上体を反らして回避すると、そのまま右のクローで切りつける!


が、呼吸が乱れた為かその動きは鈍く、マタルはそれを軽々躱した!



自分の体で短剣をベガの視界から見えないようにすると、再度駆け寄り両膝を薙ぎ払う!


しかしマタルの低い体勢で予測していたのか、ベガはそれをジャンプして回避!



(獲った!)

膝を払った状態から切り返し、下から上に切り上げる!!


ジャンプ中のベガに躱す術は無い!!




キンッ!!



「!!」


それをクローで止められた!



「ジャンプ中を狙ってたね?」

ベガが笑って、


「私もこれを狙ってたんだ!」


ベガが着地するなり蹴りを放つ!!


短剣を止められ無防備となっていた腹と胸に連続して入る!!



「ぐっ!」


一瞬息が止まるも、それを堪えて急遽離れようとしたが……、


(な!? 短剣が!!)


いつの間にか両手のクローにガッチリ挟み込まれて短剣が抑えられている!!



短剣が抜けず、下がる事を失敗したマタルに、再度蹴りが襲いかかった!!



そのまま数発の蹴りを食らってマタルの体が倒れ込む!



それを見てカペラが、


「勝者、ベガ!!」



こうして2回戦の勝者が決まり、決勝はカペラ対ベガの『元・紅の三日月』対決に決定した!





「『ハイヒール(中回復)』」


キープの魔法で痛みがなくなったようで、マタルがスタッ!と起き上がると、


「ししょ〜! くやじいでずぅ〜」

抱き着いてきた!!


あれ? 何かデジャヴ?



「いや〜、2回戦もなかなか迫力ある戦いでしたね。 興奮しちゃいました」


ライエさんの言い方はまったりしていて、興奮している様に聞こえない。


「呼吸を読んで仕掛けたマタルさんも凄かったですが、相手の動きから狙いを読んで逆に罠にはめるなんて、ベガさんは流石という感じです」


え? 何その解説。

呼吸読むとか罠にはめたとか……全然分からなかったんですけど?

何で分かるの??



「お〜い、ナシュかマタルか審判お願い〜」


カペラの声に、


「じゃあ、私が……」

抱きついたままのマタルを見て、ナシュが手を挙げて向う。


ちなみにマタルはまだ僕に抱きついている。

見るとニヤリとした笑みが見えたような気がする……。


抱きついていられるから……と言う事だろうか。


っていうかいつも通りになったのなら離れてほしい。




「さぁ、いよいよ決勝戦ですね、キープさん」


「そ、そうですね」


さらっとマタルを引き離そうとするも、ますますぎゅと抱き締められる。


「リーチが長くパワーもある直線的なカペラさんと、近接戦闘で素早いテクニカル的なベガさん、……どちらが勝つか楽しみですね〜」


ライエさん……何で解説的な言葉!?


「あ、いよいよ始まりますよ」


ライエに袖を引かれて鍛錬場の真ん中に視線を向ける。




カペラとベガがそれぞれ向かい合い構えを取った所だった。



「じゃ行くよ~?  始め!!」



ナシュが開始の合図を宣言した!



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