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初めての解散

パウス辺境都市について報告や事情聴取など、色々な事が慌ただしく過ぎていった……そんな中、


「パーティを……解散する……ですか?」


冒険者ギルドでキープはカペラから告げられていた。



「そうしようかとな……二人も含めて話し合って決めたんだ……ああっ、キープの所為じゃないからな」


自分の所為かと落ち込みかけてたキープを察してカペラが続ける。


「パーティっていうのは、お互い背中を預け合う仲だろ? それが魔法を掛けられていたとはいえ殺し合おうとしちまった」

「でも、それは……」

言いかけたキープを手で遮り、


「確かに魅了の魔法には掛かっていたが、デネブも言っていただろう?『殺し合おうとしたのは想定外』と、つまり殺し合う魔法ではなかったし、今後も何かしらの魔法にかかった場合、お互いに刃を向けることがあるかもしれない」


カペラは一旦言葉をきり、言い辛そうに、


「そんな相手に……お互いの背中は預けにくい」

「カペラさん……」

「だからキープの所為じゃないし、ましてや1人抜けた状態もある。……魔人がメンバーだったってなれば風評被害もあるだろう……それを考えるとな……」


もしかしたらもう何かしら言われたのだろうか?


心配そうなキープに気づくと、手を振り笑顔で、


「大丈夫、何も起こってないし……キープは何も気にするな!」


頭を撫でられた……ちょっとショックだ。これでは女の子の様だし、それを女性にされているのも……。




カペラはアルタイルやベガの事も含め、今後はみんな各自で冒険者を続けたり故郷に戻ったりする……などを告げて去って行った。


アルタイルやベガは最後に会うと決心が鈍るとのことでカペラに伝言を託して既に都市をでたらしい。


キープは3人の無事を祈りつつ、カペラの背中が見えなくなるまで見送った。





魔人が南の端にある都市に出現した。



この情報は都市を納める貴族や冒険者ギルド・ガードに挙がりはしたものの、特に大きな変化はなかった。


何故ならば、


・信憑性が低いこと……魔人と言えば4種族抹殺の筆頭であるにも関わらず、殺していた様子がないこと


・魔人を見たことのある人がほとんどなく確証がないこと


・魔人ともなればステータスが規格外と思われるが、デネブの冒険者登録時に判定した数値から、特出したステータスがないこと。


こういった理由から、「勝手に魔人を語った偽物」としての話に落ち着きつつあった。


ただしキープは、デネブの底知れぬ力やミノタウロスをあそこまで詳細に幻影として出せることから、本物の魔人だろうと感じていた。




と、同時にキープには別の問題も起こっていた。


元々『雷光の刃』パーティが全滅した事で白い眼を向けていた人達がいたが、今度は『紅の三日月』パーティの解散となったことで、キープはパーティを壊滅させるとのうわさが出る様になってしまった。


こうなるとパーティに入るのが難しくなる……かといって、ソロには向かない回復師である。




困ったキープが決めた結論に、イリーナは肩を落とした。


「『他の都市へ行く』……ですか」

「すみません、色々して頂いたのに……」

「いえいえ、こちらこそ力になれずすみません……」


パウス辺境都市でのパーティが困難とすると、他の都市に行くしかない。

キープが出した結論はこうであった。


イリーナとしても、数少ない回復師……それもそれなりに高い素質を持つキープを失うのは痛かったがそれでも、キープのことを思うと反対はし辛かった。

なによりキープの方がここの冒険者ギルドで2回心を痛めていたのだから。



キープとしては元々世界を回って聖女を探す予定であるし、遅かれ早かれ移動するつもりだった。


「次はどちらに行こうと?」

イリーナが尋ねると、


「ここより王都に近い、商業都市リカオンに行こうと思っています」




商業都市リカオン___

王都と地方の物流の要となっており、王都へは品物が、地方へは人や金銭が流れていく。

活発な都市ではあるが、その華やかさの陰にスラム街や人身売買など、悪い面も持ち合わせていた。


話を聞いたイリーナは、リカオンの冒険者ギルドに手紙をしたためた。

キープを思いやっての手紙である。


「キープさん、リカオンの冒険者ギルドにこちらを出して頂ければ、色々助けてくれると思います」

キープに冒険者ギルドの封蝋印で閉じた手紙を渡す。


「ありがとうございます。イリーナさん」

「いえいえ。ちなみにいつ頃立つ予定ですか?」

「準備とかして、2,3日中には出ようと思います」

「そうですか、出る前にまた挨拶に来て下さいね」



その後、2,3言葉を交わすとキープは宿に戻り私物を荷造りしていった。



足りない物を買い足し、宿の狐の子に出ることを伝え、そうして出発の準備を整えていったのだった。


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