豚と愛の話
「それでは、最終面接をはじめます。当TECOファームにて、貴方が何をやりたいのかを教えてください」
「はい、わたくしは御社が力を入れている豚の出荷の仕事に携わりたいと思っております。」
「なるほど。豚ですか。豚、かわいいですよね。白くて小さいの、私好きです」
「ミニブタですね」
「そう!ミニブタ!かわいいですね!」
「すぐに大きくなりますけどね」
「そうなんですか!?びっくりです。それで、貴方はアルバイト経験はありますか?」
「はい、わたくしは豚の世話のアルバイトをしていました。子供たちが自分のように豚がだいすきになれるように、親しみやすいイラストを描いたり積極的に企画を心掛けました」
「貴方は豚がだいすきなんですね。ところで、当社ではノルマがありますが、貴方は大丈夫ですか?例えば豚を1日に10匹殺せと言われたら、貴方は殺せますか?」
「はい。」
「では20匹なら?ノルマがどんどん増えて、400匹になったら?」
「やります。しかし、御社では豚を殺す仕事はしてません。それは機械の仕事です」
「なるほど。ごめんなさい。私社長だから下々が何をしてるかわからなくて。豚は殺さないんですか?」
「はい。人ではなく機械がやります」
「機械が!」
「豚を機械に乗せて」
「そして歯車のようなナイフでぐちゃぐちゃに!!!」
「しません」
「しないのですか。」
「はい。機械にいれて、豚を部屋に押しやります」
「出られない部屋!」
「はい。そして、ガスを」
「毒ガス!!!!」
「毒ガスじゃありません。眠るガスです」
「なるほど。そして、寝てる間に…」
「はい。寝てるに機械に解体されます」
「悲しいです。涙が出てきました。貴方、そんな仕事して平気なんですか?」
「御社で働きたいと思っております」
「豚の気持ちになったことありますか!?貴方が豚だったらどうするんですか?」
「豚だったら、仕方ないなと運命を受け入れます」
「ふむ。貴方は豚がだいすきなんですよね」
「はい。」
「なのに、豚を殺したいと…」
「殺したいわけでは」
「だいすきな豚を殺したいと…」
「社長」
「貴方は、だいすきな相手を殺したいのですか?愛する人を殺したいのですか?」
「違います。豚は愛でる意味と食べる意味で、好きなんです。豚は人間とは違います」
「愛でる相手を食べたい」
「違います。社長。」
「愛してるから、狭い密室に閉じ込めて、2度と目が覚めない睡眠ガスを入れて、ねている間に解体して食べたい」
「社長」
「貴方こわいです」
「社長」
End.