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3歳の誕生日を迎えた。

誕生日パーティーはいつものごとく。

そして、女の子のお洋服と姿絵もいつものごとく。

おそらく毎年行われるのだろう。


しかし、今年はビッグなプレゼントが!

なんと魔馬の子どもだ!


乗馬にはしゃぐオズワルドの為にお父様が準備してくれたのだ。

丁度、領地で産まれたので連れてきてくれたらしい。


「オズは頑張り屋さんだね。

乗馬の練習を欠かさず、もうふらつくこともないと聞いているよ。

子魔馬であればオズワルドでも乗れるだろう。

焦らずに練習してごらん。


しかし、きちんと子魔馬のお世話をすることが条件だ。

できるね?」


『できます!

おとうさま ありがとう

だいすき!』


オズワルドの“大好き”発言にお父様は撃沈。

デレデレのだらしない顔をさらすのだった。



翌日からは朝一で子魔馬の世話を始める。

オズワルドの子魔馬は雌で、たてがみの一部がグリーンだ。

自分の瞳と同じグリーンを持つことに更に嬉しさが増す。


子魔馬に優しく話し掛ける。


『きみのなまえは ヒスイだよ。

これから ずっと ぱーとなー だ

よろしくね』


ヒスイは応えるように鼻息をオズワルドに吹き掛けてくれた。


きっと案内人から貰った動物に好かれやすいというのもあるのだろう。

ヒスイはオズワルドに好意的なように感じる。



子魔馬が来たからといって

さぁ!乗りましょう!

とはならない。


先ずはお世話をして信頼関係を築いていく。


魔馬は穏やかな気質らしい。

けれど子どものうちはまだやんちゃだ。

乗っているときにいきなり走り出したら落馬してしまう。


そうならないように信頼関係を築き、好かれる主にならないといけない。

そうすれば“主を落とさないぞ”という強い気持ちがうまれ、落馬の確率はグッと減るのだとか。


オズワルドがヒスイに乗れたのは3ヶ月後の事だった。

馬丁曰く、とても早いらしい。

嬉しい限りだ。



さて、ヒスイの世話の為に朝、昼、夕と忙しくしていたオズワルドだったが、勿論勉強も忘れていない。


そして、驚きの事実を知った。

生き物の寿命というのは魔力の影響を受けるらしい。


魔力が多ければ多いほど寿命も長くなる。

道理でお父様、お母様がやたら若々しいと思った。


魔力をあまり持たない平民の寿命は60歳ほど。

貴族の寿命は120歳ほどと云われているが、貴族の場合は振り幅が大きい。

爵位が上がるほど貴族の割合は少なくなる。

そして、爵位が上がるほど魔力は高くなるので寿命も長くなる。


それ故、爵位が同じ、もしくは近い者との婚姻が殆どだという。


勿論、バッハシュタイン家は魔力が高いので長寿だ。

250歳ほどだという。


長寿であれば子どもが沢山出来そうだが、そうでもないらしい。


産まれてから18歳くらいまでは普通に成長する。

個人差はあるが18歳~20歳くらいで成長が止まり、寿命が近づくと緩やかに老いていく。


成長が止まると段々と子どもが出来難くなる。

なので、子どもが出来る年は平民とほぼかわらない。

子どもは2~3人。

1人だけという家庭も珍しくない。


それなのに何故バッハシュタイン家は5人もいるのかというと、女の子が欲しかったからだ。

年齢的に考えてオズワルドが最後の子どもだろう。

結局出来なかったが、オズワルドがあまりにも可愛いので誰も気にしてない。


長寿のバッハシュタイン家は曾祖父母は勿論、高祖父母も健在だ。

その上もいるだろうがよくわからないらしい。


バッハシュタイン家では当主が王都の邸宅で暮らす。

子どもに爵位を譲ったら領地の邸宅へ引っ越し、領主代行をする。

子どもが領主に引っ越してきたらあとは自由にする。


殆どが社交界から身を引く。

そして、別荘でのんびり暮らす者もいれば、世界を旅したり、はたまた冒険者稼業に乗り出す者も要るらしい。


なので、曾祖父母ぐらいまでしか居場所がわからない。


オズワルドはまだ祖父母と会ったことはなかった。


祖父母は領主代行為、あまり領地を出ることはない。


それに、バッハシュタイン家は国の政には介入しない。

それでもすり寄ってくる物は多いため、余計な問題を引き起こさないようにあまり社交界には顔を出さない。

王家主催のものに当主かその子どもが参加するくらいだ。


なので、祖父母が王都に来ることはない。

そして、まだ幼いオズワルドには負担が大きいため、領地には行かない。


5歳のお披露目会で初の顔合わせを行う予定であり、とても楽しみにしている。


閑話休題


魔力が多ければ寿命が長い。

であれば、魔力を増やしたいと思う者がいるのも当然だろう。


魔力が増えれば寿命が延び、使える魔法も増える。


魔力を増やす方法はある。

しかし、それを実行するのは難しい。


魔力を溜め込む魔臓という器官があり、身体の成長に合わせて魔臓も大きくなると云われている。

しかし、腹を開けても魔臓という器官は見当たらないらしい。

この件については様々な憶測がされている。


ともかく、この魔臓の成長とともに魔力も成長する。

魔力を増やすためには、魔力を操りこの魔臓に魔力を押し込む。

すると、ぎゅうぎゅうに詰まった魔力に魔臓が大きく成長するのだ。


理屈はわかる。

とても簡単そうだが、これが難しい。


先ず魔力を操るというのは精神力が必要だ。

精神力が弱ければ魔力が無駄に流れて行き、魔臓に詰め込み続けることはできない。


次に魔臓に魔力を詰め込む行為は苦痛を伴う。

高熱を出したときのように身体がダルく節々が痛くなる。

魔力を増やすには魔臓に魔力を詰め込んだ状態で生活しなければならない。

一瞬詰め込んだだけでは意味がないのだ。


そんな苦痛を伴うのを自分の意思で何日も過ごすのは難しい。


なので若ければ若いほどできない。

ストレスで精神力が弱まり魔力操作もまともにできなくなる。


しかし、この魔力を増やすというのは魔臓が成長するタイミングでなければ殆ど意味がない。

大人になってからでは遅いのだ。


結果、魔力を増やせる者は少ない。


過去には子どもに強要し、虐待紛いの事までした人もいたそうだ。

しかし、そんなことをすればストレスで途端に魔力操作はできなくなる。

意味がない。


現在は魔力増加強要は法で禁止されているし、無駄だとわかっているので強要するものはいない。


以上の理由で皆は魔力増加ではなく、魔力節約に努める。

魔法構築の際に無駄なく魔力操作できれば必要魔力量が減るのだ。


オズワルドも魔力増加に挑戦してみたが、確かにこれは辛い。

特に必要性を感じないので早々にやめた。


因みに魔力保有量を量るには2通りある。

専用の魔道具を使うか、魔力保有量を量れる人にみてもらうかだ。


専用の魔道具は教会や学園にあり、量るには決まった時以外は申請が必要で個人的に量ることはできない。


また、量れる人というのも数が少ない。


魔力を量る魔法は干渉属性と云われる。

自分以外のものに影響を与えたり、自分以外のものから影響を受けたりする少し地味なのだ。


それよりも自分の魔法で攻撃できたり、自身の身体能力をあげたりする魔法の方が人気なので、成り手が少ない。




さて、更に4ヶ月程が経ち、速歩でヒスイに乗れるようになった。

小さい身体はあまり踏ん張れないので一瞬たりとも気が抜けない。

けれど、とても気持ちよくてやめられない。

早く走れるようになりたいが暫くは難しいだろう。


体力強化や柔軟体操なども欠かさずにやっているので、そのうち乗れるようになるとは思う。

お父様も焦らずに練習するよう言っていたので、地道に頑張ることにする。


今日はそんなオズワルドの勇姿を見ようとウィル兄様以外が集まっている。


柵の外側で何やら興奮して語り合っているようだ。


そんな家族を尻目にいつも通りにヒスイとの訓練を終わらせ、頑張ったヒスイのお世話を済ませる。


全てが終わった後、順に話し掛けられた。


「まあまあ。オズちゃん。

いつもは可愛らしいのに、乗馬の姿はまるで王子様のように素敵でしたよ。

流石お母様の子です。」

お母様から抱擁される。


「いや~。さすがオズ!

俺に似たのだろうな。

見事な手綱捌きだったぞ!」

お父様は頭を撫でてくれる。


「可愛いオズの成長を見れて嬉しいよ。

オズは可愛くて天才だけでなく、努力家だね。」

アル兄様からは頬にキスだ。


「オズは何をしても可愛いなぁ。

オズがもう少し上達したら一緒に遠出しようね。

魔物からは私が守ってあげるから安全だよ。」

イアン兄様のキスは額だった。


「あぁ!

可愛すぎるな!

いつも学園で中々オズの成長を見れないから、見れて嬉しいよ。」

エド兄様からは抱っこされ、エド兄様の顔をスリスリとオズワルドの頭に擦り付けられる。


相変わらずの溺愛っぷりである。

嬉しくなってオズワルドからも皆に沢山のキスを返した。

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