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その日。

バッハシュタイン公爵家にて天使が誕生した。


バッハシュタイン公爵家はイシュミラ王国の筆頭貴族である。

イシュミラ王国は周辺諸国とは比べ物にならないくらいの長い歴史を持つ豊かな国であり、その長い歴史を守ってこれたのは王家、そしてバッハシュタイン公爵家があったからだと言われている。

イシュミラ王国には4つの公爵家があるが、バッハシュタイン公爵家は建国時から続く唯一であり、王家のスペアと言われるほどだ。


長い歴史の中で幾度となく王妃を排出し、また降嫁されている。

しかし、バッハシュタイン家は政略結婚をすることはほとんどない。

それにも関わらず自然と王家と血が交じるのである。

それ故、嘘か真かわからぬが、王家が物事を違えたときはとってかわって王となると噂されている。


王家に次ぐ強い権力を持ちながら、政権を握ることはなかった。

政に出てこないため、他の貴族が介入することは出来ない。

政権を握らないからといって侮ることなかれ。

バッハシュタイン家はとても優秀な一族である。


長い歴史の中で腐った貴族というのは必ず出てくる。

小物であればバッハシュタイン家も静観するが、増長すればすぐさま牙を向く。

そうやって、バッハシュタインが国内の貴族をまとめあげてきた。


この事を一番深く理解し、そして誇りに思っているのがバッハシュタイン家である。

故にこの長い歴史の中で欠けることなく、続いてきたのだ。



そのバッハシュタイン公爵家の邸宅にて、小さな小さな産声がうまれた。


バッハシュタイン公爵夫人、ソフィア。

その人は一目見れば皆が美しいと認める女性。

その麗しい顔も今は疲れを見せ、汗をかき、髪は乱れている。

しかし、そんなことも気にならないぐらいの柔らかな笑みを浮かべ、小さな赤子を腕に抱いていた。


その赤子は父、ヴィンセント譲りの青みがかったシルバー家の髪をもち、産まれたばかりだというのに整った容姿であることが窺える。

今は目があいておらず見えないが、その瞳は母譲りの淡いグリーン。

ただのグリーンではない。

光の具合によっては、瞳の奥に青や黄色が瞬く王家特有のものであった。

母は国王の妹。

王家から離れるほど瞳の奥の瞬きは減り、濃いグリーンになると言われている。

しかし、この赤子の瞳は王家と比べても遜色がないほどの見事な瞳であった。


母と赤子の周りには父、次男イアン、三男ウィリアム、四男エドワードが集まっていた。

誰が呟いたのか「天使」という言葉が漏れた。

しかし、家族もその周りにいる使用人にも否定はできない。

そう、まさに天使といえる可愛らしい赤子が産まれたのである。


現バッハシュタイン家では男ばかりが産まれ、女の子が欲しいという皆の熱望があった。

産まれてきた子はまた男の子であったが、そんな些細なこと誰もが気にしない。


それほどに可愛らしい年の離れた末子、バッハシュタイン家の五男オズワルドの誕生であった。


この可愛いオズワルドは皆に愛され大切にされる。


この誕生の場に仕事のため駆け付けることが出来なかった長男アルバートは「愛しいオズの誕生に立ち合えなかったなんて一生の不覚!」と皆が聞き飽きたと無視を決め込んでいても言い続けるのだった。

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