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本格的な夏を目前に遂に完成してしまった!
何が?って?
それは、アイテムバッグだよ!
異世界と言えば多くの物が収納できるボックスやアイテムバッグが定番でしょ!
しかし、哀しきかな。
この世界には存在しなかった。
でも、せっかくの魔法の世界だ。
是非とも欲しい!
と、ずっと研究していたのだ。
しかし、科学が発達していないせいか、そもそも亜空間という概念がない。
そのため、該当する魔法式もない。
ないものを造り出すのは容易ではなく、遅々として進まなかった。
そんな中、リンネアと出会い、エルフには亜空間というものが認識されていたのだ。
魔法式もあり、それを魔方陣に組み込んで亜空間を作り出すことはできた。
そこでまた躓いた。
亜空間は作り出せる。
物を入れることもできる。
しかし、取り出せない。
亜空間に干渉できないのだ。
よくある、アイテムバッグのものはリスト化され、思い浮かぶようになる。
なんて、夢のまた夢であった。
でも、諦めない!
絶対欲しい!
ということで、ずーっと研究を続け、ついに干渉できるようになった。
少し面倒ではあるが、魔石を物に取り付け、それと対になる魔石を指輪にし、繋がりを持たせることで亜空間への干渉を実現させたのだ。
魔石と言ったが、これは魔方陣を刻んだ立派な魔道具である。
しかし、それだけでは実用化には至らない。
1つしか対応できないからだ。
1つしか入らないアイテムバッグなんて意味がない。
そのため、番号を刻む魔方陣を追加した。
いちいち番号を変えて魔方陣を刻むのは大変であるため、ワードに反応する魔方陣に改良。
こうして複数を収納できるようにしたのだ。
今度はコスパが気になる。
バッグ自体はそんなに問題ない。
亜空間へとアクセスするためにしか魔力を使わないので、バッグに魔方陣を刻めば起動するのは自分の魔力で十分だ。
なので、バッグへは調合のための空魔石ぐらいしか使わない。
けれど、物を1つ収納するのに魔石が一つ必要だ。
なるべく安い魔石でないとコスパが悪すぎる。
お金を持っているオズワルドだが、感覚は庶民のままだ。
もともとそこそこの品質な魔石でもよかったものだが、魔方陣の簡略化を研究し、マースの魔石でも対応できるようにまでした。
指輪の魔石はさすがにマースでは無理だが、そちらは1つだけなので、まぁいいだろう。
因みに、空魔石とは魔力を使いきった後の魔石のことだ。
空魔石に魔力を補充ということはできない。
しかし、空魔石を加工し、他の材料と組み合わせると、その材料は魔力を吸収しやすいという特色がうまれる。
これにより、魔方陣が刻めるようのなるのだ。
そんなこんなで、何とか納得のいくアイテムバッグが完成したのだ。
今後の課題としては入れれる物のサイズと魔方陣の刻み方だ。
バッグに魔方陣を刻み、バッグの中が亜空間へと繋がっている。
そのため、入り口はバッグのサイズまでなのだ。
それに、収納する物1つ1つの魔石に魔方陣を刻むのは面倒だ。
一括で魔方陣を刻めるようにしたい。
ところで、何故エルフがアイテムバッグを造れなかったかというと、エルフは物作りはそんなに得意ではない。
とくに膨大な魔力のあるエルフは自身の魔力で何とかしてしまうことが多いため、魔道具を作る者はいないらしい。
なので、亜空間は専らゴミ箱としてしか使っていなかったとか。
勿体ない限りである。
今日は陛下へと献上するために登城しついる。
物が物のため、そのまま魔法協会魔道具課に登録に行けなかった。
悪用される可能性もあるからだ。
そして、亜空間という今までない概念の物を説明できる者がいないため、オズワルド自ら赴き説明するのだ。
陛下といっても、お母様の兄であり、カートの父だ。
オズワルドも小さい頃から可愛がってもらっており、特に緊張はしない。
「おぉ!!
オズ!!!
これはすごいな。
歴史が変わるぞ。
正にバッハシュタイン家の天才!
いや、バッハシュタイン家の天才を越えたやもしれん!!」
すごい興奮しており、目は輝き、頬は上気し、早口に捲し立てる。
『至極光栄にございます。』
「そんなに畏まらんでよい。
私たちの間柄ではないか。
うーむ。
しかし、これは一部の者にしか公表できぬな。
申し訳ないが、魔法協会へは私の許可のもとでの公表ということで登録してもらおう。」
『もとよりそのつもりです。
悪しきことに利用されるのは望んでおりません。』
「さすが、聡いな。
話が早くて助かる。」
『しかし、これの作成に協力してくれたエルフのリンネアには現物を渡してよろしいでしょうか?』
「うむ。
それは構わぬ。
勿論、バッハシュタイン家の者もだ。
これだけの物を創ったのだ。
何か褒美が必要だな。
希望はあるか?」
『これは自分が欲しくて創ったのです。
特に褒美などは必要ないです。』
「謙虚であるな。
しかし、これだけの貢献をしたのだ、褒美がなければ沽券に関わる。
何か考えておくとよい。」
『かしこまりました。』
こうして、陛下との謁見は終わり、魔法協会の登録も滞りなく終わらせた。
魔法協会でも驚愕され、興奮した職員の相手をさせられたが、大した問題ではない。
リンネアにもプレゼントできた。
まだ堂々とは使えない。
冒険者仲間にも秘密だ。
少し寂しくもある。
しかし、採集が捗り、楽しくて仕方ない。
こうして、更に冒険者としての日々に精を出すオズワルドなのであった。
今日は後期の交流会というパーティーに出席していた。
交流会とはその名の通り一般部の全学年と交流を深めましょうというパーティーである。
学園は4月1日から始まる。
新入生は入学式があるが、2年生からは式はなく、そのまま授業がスタートする。
4月1日から7月30日までが前期。
8月1日から8月30日までが前期の長期休み。
9月1日から2月30日までが後期。
3月1日から3月30日までが後期の長期休み。
交流会は5月頃と2月頃に行われており、一般部の全学年交流はこの2回。
結婚相手探しや、人脈を広げるための交流会のため、皆、かなり気合いが入っている。
因みに10月頃に開催される発表会というものがある。
名前の通り自分の成果を発表する場なのだが、こちらのメインは高等部である。
魔法科、魔道具科、魔法薬科は研究内容。
その研究内容を資料にまとめるのは文官科。
騎士科ではトーナメント戦。
淑女科と従者科からは自由参加できるお茶会。
そういったものを高等部から発表し、一般部はそれを見て進路の参考にする。
そして、この発表会はスカウトの場でもある。
沢山の貴族たちがこららを見て、優秀だと思う者をスカウトするのだ。
こちらは交流会以上に気合いが入っている。
閑話休題
というわけで、オズワルドと交流を持ちたいと考えている多くの令嬢、子息たちが話せる隙を伺っている。
オズワルドはクラーク、ケリー、ソヌゥティク殿下となるべく一緒に行動していた。
カートとギルは婚約者と一緒だ。
しばらく談笑していると、こちらを睨むように見ている男の子に気付いた。
「なぁ、何かコウヴァーン侯爵の子息が睨み付けてない?」
クラークも気付いたようだ。
「タウロン・コウヴァーンか。
確か魔法士一家であったな。」
『そうですね。
しかし、どうして睨むのでしょうね。』
オズワルドの疑問に答えたのはケリー。
「ほら、あそこは魔法士一家でしょう?
オズワルド様やギルベアド様をライバル視しているみたいですよ。
あの方は3年Bクラスで魔法の知識、技術においては飛び抜けているそうですよ。」
そういえば、たまにチラチラとこちらを伺っていた。
少しずつ視線が鋭くなるなとは思っていたのだが、ついに睨まれるほどにまでなったのか。
少し気にはなるが、今はパーティー中ということもあり、気付いていないフリをしておく。
そのあとは、それぞれ交流のために出掛けたりなどはあったが、誰かがオズワルドの近くに居てくれたため、あまり絡まれずに済んだ。
女の子の間では「オズワルド様は本当に美しい。美しすぎて隣に並び立つのは少し...」という会話があったとかなかったとか。
お昼休みに食堂でコウヴァーン侯爵家子息のタウロン殿を見つけた。
1人で食事をしていたタウロン殿が食べ終わったのを見計らい、思いきって話し掛ける。
『はじめまして。
オズワルド・バッハシュタインです。』
「タ、タウロン・コウヴァーンだ。」
タウロン殿は何故か焦ったように返す。
『タウロン殿はとても優秀なのでゆっくり話してみたいと思っていたのです。
放課後時間はありますか?』
「光栄でございます!」
少し前のめりで、軽く睨みながらこたえてくる。
本当に光栄なのだろうか...?
でも、了承してくれるようだし、このまま話を進めよう。
『では、カフェテリアの2階席で。』
「かしこまりました。
また後程!」
一旦別れ、タウロン殿は次の授業に向かう。
オズワルドは自習だ。
放課後になる時間にカフェテリアの2階に行き、待ち合わせであることを伝えておく。
カフェテリアの2階は個室になっており、主に高位貴族が利用している。
「お待たせしてしまい、申し訳ございません。」
タウロン殿はすぐにやって来た。
『いえ、待たされていませんよ。
急にお呼び立てしたのにありがとうございます。』
「いえ!
オズワルド様にこうやって誘って頂けるとは...!
大変ありがたく思っております。」
やっぱり睨みつけている。
しばらくは当たり障りのない話をし、タウロン殿を観察する。
確かに目は鋭く睨み付けられているのだが、その瞳はどこか熱を持っているように感じる。
少なくとも嫌われているような感じではない。
『実はタウロン殿に少し伺いたいことが、あります。
最近、よく私を見ていらっしゃるでしょう?
何かご不快にさせてしまったのでしょうか?』
「いえ!
まさか!
とんでもない!!」
すごい勢いで弁解しはじめた。
なんと、タウロン殿はオズワルドに憧れていたらしい。
オズワルドがいくつか魔法協会に登録した魔法。
その発想力に惹かれ、憧れる。
今まではお茶会でチラリと見る程度で深く関われなかったが、学園に通うようになってその聡明さに益々憧れたのだとか。
そして、公開授業のときに見せてくれた、魔法構築のあまりの綺麗さに惚れ込んでしまったと熱く語られた。
なるほど。
チラチラと見られていたのは気になったからで、鋭い視線は熱がこもっていたからか。
別に睨み付けているわけではないらしい。
熱く語られているときも照れている雰囲気なのに目は鋭かった。
そして、本人からも
「あの、私は目が恐いらしいのです。
なので、あまり友人などはできず、オズワルド様とお話させていただくことなど難しいと思っておりました。
こうやって誘って頂け、大変嬉しく、夢心地です。」
という言葉をもらった。
何だか可愛く思え、意識せずに笑顔になる。
『ありがとう。
そんなに想ってもらえて嬉しいよ。
よかったらオズって呼んでよ。
それにそんなに畏まらなくていいよ。』
「そんな、畏れ多い!
私のことはタウとでも呼んで頂ければ...!」
照れているのだろう。
少しモジモジとし、鋭い目元を赤くしている。
何か新鮮なタイプだ。
可愛い。
こうして、タウとの交流が始まった。




