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今日は12歳の誕生日パーティー。

領地から祖父母が駆け付けてくれた。


「ふふ。

びっくりしたかしら?

私たち、10歳の時には来れなかったでしょう?

もうすぐ学園に入ってしまうし、そうなるとしばらくは会えなくなるかもしれないと思ってね。」


そう言ってお祖母様が抱擁とキスをくれる。


「少し見ないうちにまた大きくなったな。

もうすぐで抱っこも出来なくなるよ。

さぁ、お祖父様の所においで。

抱っこさせておくれ。」


お祖父様の元に行くと、身長150センチ、体重は45キロもあるオズワルドを軽々と抱っこする。

洋服越しにお祖父様の鍛えられた体がわかる。


そんな光景を見て兄様たちが詰め寄る!


「お祖父様!

オズはもう12歳なのです。

抱っこをするような年ではありません。」


「そうですよ。

俺たちだって禁止されているんですから!」


そう言う兄様たちをチラリと見てお祖父様が言う。


「孫というものは特別なものだ。

オズもお祖父様に抱っこされるのは嫌じゃないよな?」


確かに孫は可愛いものだと言う。

たまにしか会えないし、両親や兄様たちとは立ち位置が違う。

そう思い、コクリと頷く。


『そうですね。

お祖父様とはあまり会えませんし、外でなければ嫌ではありません。』


オズワルドの言葉にお父様と兄様たちが悔しそうに顔を歪める。


それを見たお祖父様は勝ち誇った笑顔をしていたのだが、オズワルドからは見えなかった。



そのあと祖父母から誕生日プレゼントをもらう。


「冒険者を始めたって聞いたから、役に立つものがいいと思って選んだのよ。」


そう言ってお祖母様がラッピングされた箱をわたしてくれる。


「開けてちょうだい。」


『ありがとうございます。』


オズワルドは丁寧にリボンをほどいて箱を開ける。

中からはゴーグルが出てきた。


すると、お祖父様が説明してくれた。


「これは光量を調整してくれる魔道具だよ。

太陽を見ても眩しくないし、暗いところでも周りが見えるようになるんだ。」


『すごいです!

これで光を嫌う薬草も採集できそうです。

ありがとうございます。』


少々興奮気味にお礼を述べるオズワルドに、祖父母は満足そうに笑う。


そのあとも和やかな時間を過ごし、翌朝に祖父母は帰っていった。


因みに家族からは新しい剣を貰っている。




さて、オズワルドが学園に入学するまでには後10ヶ月程ある。

4月1日が入学式だ。


その4ヶ月前には試験がある。

試験といっても入学試験ではなく、クラス決めのための試験だ。


一般部には貴族、または貴族を後見人につけた極一部の平民の全てが入学できる。


特に貴族はこの学園の一般部を卒業して貴族と認められるため、入学は必須だ。


卒業していない者は貴族の血を引いていても、社交界では貴族と認められない。


しかし、この学園はそれなりにお金がかかる。

貧乏貴族は跡継ぎだけしか通わせれないこともある。

金銭的理由で通いたくとも通えない、跡継ぎ以外の者たち。

その中には優秀なものもいる。

そういった者を救済するために、奨学金制度もある。

成績優秀な者は国から援助を受け、卒業後は国のために働くのだ。


オズワルドは既に一般部で学ぶ内容は習得済みだ。

むしろ、高等部の内容に食い込んでいる。


なので今さら焦る必要もなく、日々をいつも通り過ごす。




ある日のこと。

今日はギルが遊びに来て魔法談議をしていた。


「あぁ、なるほどね。

やっぱり、魔法のことはオズと話すのが一番だ。

同年代で私の話について来れる者はいないし、オズの発想は面白い。

いつも新たな発見があってとても刺激になるよ。」


ギルは嬉しそうに語る。


『そう言って貰えると嬉しいよ。

私もギルと話すと考えがまとまって勉強になるから楽しみにしているんだ。』


話が一段落したため、オズワルドはずっと気になっていたことを切り出す。


『ねぇ、余計なお世話かもしれないのだけど、ギルとギルの婚約者との関係が気になっていて、少し話してもいいかな?』


「ん?

キンバリー嬢のこと?

なんだい?」


『うん。

政略なのはわかっているんだけど、ギルがあまりにも興味ないから心配になって。

政略といえど、お互いに歩み寄り、信頼関係を築くのは大事だろ?』


「オズの言ってることはわかるけど、キンバリー嬢も私に興味ないよ。

そんな状態では歩み寄るも何もないと思うのだが...」


ギルは少し難しい顔をしている。


『そんなことないと思うよ。

確かにキンバリー嬢は控えめで自分を主張しない方だから分かりにくいかもしれないけど、ギルのことを支えようと頑張っているように感じるよ。』


「そうか?

いつも手紙でも当たり障りないものばかりだよ。

それに、魔法の勉強を頑張って下さいと言うぐらいで、別に会いたいとか、そういった事を感じたこたないよ。」


疑わしいといった顔で返してきた。


『それはギルが魔法に夢中だと知っているからだよ。

キンバリー嬢は慎ましい方だと思う。

ギルの邪魔をしたくないんじゃないかな?


お茶会なんかではギルのことを立てているし、好意を持っているのかなって感じるよ。』


ギルは少し表情を和らげる。


「私はお茶会にはあまり出ていないから知らなかった。

キンバリー嬢が好意を持ってくれていることは嬉しく思うが、やっぱり魔法の時間を削られるのはちょっとなぁ...」


また難しい顔になる。


『魔法の話をしてみたらどうかな?』


「女性が好きなのは宝石とかアクセサリーとかドレスとかだろう?

魔法の話をしても詰まらないと思うのだが...」


『そうかな?

皆が皆、そうとは限らないと思うよ。


それに、切っ掛けにこんな魔法はどうだろう?』


そう言って、オズワルドは既存の氷魔法の魔方陣を見せる。

その魔方陣は中級下位に分類されるもので、鋭い形にした複数の氷で攻撃するものだ。

氷魔法はギルが得意で、この魔方陣は今勉強中なのだ。


『ここの複数作る部分を書き加えて、鋭い部分を中心にして丸く配置するようにするだろ。

そして、攻撃部分を停滞するように書きかえる。

そうすると氷の花ができると思うんだ。


これなら女性に喜ばれるんじゃない?』


「オズ!

やっぱり君はすごいよ!


魔法を観賞用にするなんて発想はなかった。

それに面白いアプローチだ!


確かに花ならキンバリー嬢も興味を示すかもしれないな。」


ギルはそのあとも興奮したように魔法談議をして帰って行った。



後日、ギルからの手紙が届いた。


婚約者殿のご機嫌伺いのときに、話題として氷の花の魔法について話したそうだ。

すると、意外と魔法の話が盛り上がる。


今までは魔法に興味ないだろうと、当たり障りのない、一般的な話しかしたことがなく、こんなに盛り上がるとは思っていなかった。


「意外に魔法に詳しいんだね。

女性は装飾品なんかにしか興味がないと思っていた。」

と、ギルが伝えると、

「ギルベアド様が好きなので勉強しました。」

と、恥ずかしそうに答えるキンバリー嬢。


その姿が何とも可愛らしいと感じ、会う回数を増やした。

会うときは勿論魔法の話だ。

自分の知識よりは劣るものの、教えることによって自分の知識に深みが出る。


可愛いキンバリー嬢も見れるし、魔法のことを楽しく語らえる人が出来て嬉しい。


切っ掛けを作ってくれてありがとうといった内容の手紙だった。



上手くいっているようで何よりだ。





冷え込む季節になった。

今日は学園での試験の日だ。


多くの入学予定者たちが学園へと集まっている。

試験は筆記と実技があり、2日間行われる。



1日目。


筆記は特に問題なく、解答欄に空欄はない。

ケアレスミスをしないよう、繰り返し確認を行っておく。



実技では動きやすいラフな格好になる。

わざわざいつもの洋服できて、学園で着替えるのだ。

貴族とはめんどくさい生き物である。


そして、幾つかのグループにわかれる。

どうしても家庭教師の差で高位貴族の方が優秀な者が多いため、同じグループの者は高位貴族ばかりだ。


今日は乗馬に剣術が行われる。


乗馬は決まったコースを指示通りに馬を進める。

途中に障害物もあり、余り乗馬が得意でない者は避けて通る。

そして、乗馬に自信のあるものは2周目をタイムアタックで走る。

馬は学園の馬を使うことになっている。


オズワルドは普段、ヒスイに乗っているが、訓練で通常の馬にも乗れるようになっているため特に問題ない。


複数並ぶ馬を見つめ、自分にあった馬を選ぶ。

転生特典によりどの馬も好意的だ。

艶やかな茶毛のがっしりした馬を選んだ。


1周目、オズワルドの指示通りに動いてくれる。

2周目、かなりの早さでゴールできた。


周りからも感嘆の声があがる。



次は剣術だ。

出来ない者は体力測定を行う。


「剣ができる者は集まったな。

では、同じグループでペアを組み、10分間の打ち合いを行う。

勝ち負けをつけるのではないのでその点気を付けるように。」


と、先生からの説明のあとペアを組む。

オズワルドはクラークだ。

お互い実力を知っているため、やり易い。


10分打ち合った後、先生の指示で別の人とペアを組み、また10分打ち合う。


今度はカートだった。

カートとの打ち合いも滞りなく終わり、1日目は終了となる。



2日目。


筆記は1日目と同様。

特に難しいと感じる問題もなく、丁寧に解答する。



実技は魔力測定、及び魔法。

最後に正装に着替えてダンス、お茶会がある。


魔力測定では個室で一人一人行われる。

魔力量を量る魔道具に手をつける。

魔力量によって水晶のような物の光る強さがかわるのだ。

光が強ければ強い程、魔力量も多い。


カートの次にオズワルドが案内される。

魔道具に手をつける。


「うわっ!」


立ち会いの先生があまりの眩しさに声をあげる。

オズワルドも目があけられない。


手を離すとすぐに光も収まる。


「すごい光だったな!

今まで見たこともないよ!

さすがバッハシュタイン公爵家だな!」


先生が興奮して話す。

オズワルドは苦笑いを浮かべお礼を述べておく。


辛い魔力量増加の効果は出ているようでなによりだ。



魔法では初級魔法を3つ披露する。

理解度や構築の精度を確認するのだ。


オズワルドは既に複数の初級上位の魔法が使える。

適当に選んだ3つの属性で魔法を披露する。


カート達を除く周りの人たちは驚いているが、上位貴族ばかりのため表だって騒ぐことはない。


上位貴族であれば入学までに初級上位を使えるようになっていることも普通にある。

しかし、複数、しかも詠唱破棄を使えるのは珍しい。


先生が少し困った顔で言う


「うむ。

構築もキレイで無駄がない。


しかし、複数の魔法を学ぶのは効率が悪いぞ。

まぁ、知っているとは思うが...」


オズワルドは特に嫌な顔もせずこたえる。


『ありがとうございます。

勿論、存じ上げております。

しかし、私は魔法薬について学び、いずれは開発したいのです。

そのために複数勉強しております。』


先生と周囲の人々は神妙な顔をしている。

その心は【さすがバッハシュタイン家の天才】と考えているのだった。





最後のダンス、お茶会のために正装に着替え、会場に入る。


婚約者がいる者は婚約者同士で踊る。

オズワルドは婚約者がいないため、同じグループの女の子とペアになった。


『よろしくね。』


フワリと笑って挨拶をすると、相手の子は頬を赤く染める。


「よ、ろしくお願いしますわ。」


少し動揺している姿が可愛らしく、クスリと笑って踊り出す。


相手の子は動揺しているものの、高位貴族のためステップは踏めている。

それに、オズワルドのリードが上手いのだ。

前世の記憶で女性はどのようにリードされると踊りやすいかわかっている。

女性に合わせた丁寧なリードで踊るオズワルドに、相手の子が心を奪われるのは仕方のないことだった。


2回目のダンスは婚約者同士もパートナーをかえて踊る。

こちらも特に問題なく踊り終わった。


最後にお茶会。

お茶会ではグループごとに座り、各テーブルに先生が主催者として座る。


初めは一般的なお茶会だが、途中で先生がアドリブを挟み、難易度をあげる。

しかし、高位貴族ばかりなので滞りなく終わった。



全ての試験が終わり邸宅へと帰り着くと、さすがのオズワルドも疲れが出て早々に就寝した。



1ヶ月もたたずに結果が送られてくる。

オズワルドは一番上のSクラスだ。

一緒に奨学金制度の案内も来ていたが、オズワルドは申込みは必要ないので破棄する。


学園は寮生活となるため、少しずつ準備しながら残りの日々を過ごす。


入学式の1ヶ月前に荷物整理のための立ち入りが許可され、学園についてきてくれるシリルが整えてくれる。


はじめの頃はリサについて学んでいたシリルだったが、その優秀さを発揮し、すぐにシリルがメインにオズワルドの側につくようになった。


シリルは優秀だが融通はきく。

今では気安い仲で、居心地が良い。


そんなシリルに任せておけば安心だ。

身長が150センチに対して、体重50キロは重たいというご指摘いただきましたので、修正いたしました。

体重50キロ→45キロ。

一応、鍛えられて筋肉がついているという設定で重めにしています。

ご指摘ありがとうございました!

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