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11歳を迎えた。

プレゼントには冒険者ギルドへの登録をお願いした。


危ないと渋っていた家族だったが、最終的には折れた。


イアン兄様とウィル兄様は10歳で登録していたし、貴族の次男以降は職業を冒険者にする者も割りと多い。

まぁ、殆どが下位貴族だが。

オズは剣も扱えるし、魔法もそこそこ使える。


それに、ヒスイとアンバーもいる。

ヒスイはオズワルドの言うことをよく聞き、思い通りに動いてくれる。

アンバーも甘えていただけの時代は終わり、雷魔法で狩りが出来るようになっている。


以上のことを説明し、絶対に登録すると頑として譲らなければ、家族は折れざるをえなかった。



コルも一緒に登録する。

コルは出会ったときはガリガリで発育が悪かったが、まともな食事を取るようになると、栄養を吸収すればするだけ大きくなった。


オズの1つ下だが身長は同じくらいで、体格はコルの方がいい。

妹のサイも身長は高めでしっかりしているので、そういった特徴の人種なのだろう。


コルもオズを護るため、剣や格闘を学んでいる。

更に平民にしては多めの魔力を持っていた。

下級下位を数回使える程度だが、使い方によっては大きな武器となる。



コルは今は9歳だがすぐに10歳となる。

今登録しても仮登録ではあるが、初心者研修というものは受けれる。

初心者研修とは、本登録後に受けれるようになる採集や討伐の依頼の前に必ず受けなければならないものだ。

この研修は9歳であれば仮登録のときにも受けれる。

なので、コルには事前に研修を受けてもらい、本登録後すぐに依頼を受けれるようにしたいのだ。



オズワルドは別に高ランク冒険者になりたいという思いはない。

しかし、冒険者ギルドは気になるし、調薬の素材集めには冒険者としての知識や技術が必要になってくる。

それに、そういった物の情報は冒険者ギルドに一番に集まる。


新しい素材を見つけれるかもしれないという期待もある。



そんな訳でコルと一緒に冒険者ギルドへとやってきた。

初めての冒険者ギルドは思ったより綺麗だ。

建物自体は頑丈そうなで飾り気のない無骨な感じだが、よく小説に出てきたような昼間から飲んだくれが~といった感じはない。


入って左側は食事処となっている。

正面から右側に向かってカウンターが並んでいる。

右側真ん中あたりに机がいくつか置いてあり、書き物ができるようになっている。


入り口右側の壁は掲示板で板に書かれた依頼が吊り下げられているようだ。



オズワルドたちは正面のカウンターへと向かう。

カウンターの女性が笑顔で挨拶してくれる。


「こんにちは。

どういったご用件でしょうか?」


『2人の冒険者登録と初心者研修の申込みをお願いします。』


「かしこまりました。

では、あちらの机に登録用紙がございますので、記入しお持ち下さい。


代筆は必要でしょうか?」


『わかりました。

代筆はいりません。』



用紙には名前、年齢、戦闘方法、従魔獣、国民カード職業欄への記載希望有無という項目

それに“何が起きても冒険者ギルドでは一切の責任を負いません”という注意書きへの署名ぐらいで簡単に書き終わる。


ここでいう名前は冒険者としの名前ということだ。

平民であれば本名を登録するが、貴族は偽名を使うこともある。

オズワルドは特にバッハシュタインであることを隠したいわけでもないが、公表してまわりたいわけでもないので【オズ】で登録する。


国民カードの職業欄への記載有無は、書かれてある通り国民カードの職業欄に病院冒険者と記載するかどうかの希望だ。

ある程度の年齢になっても空欄であれば無職ということだ。

無職というのは信用度も下がるし、世間の目が厳しい。

なので、例えあまり自慢できるような職業でなくとも記載するのが一般的だ。


オズワルドたちは冒険者を生業にするつもりはないのど【無】にチェックする。


用紙を持ち再度カウンターへと向かう。


「ありがとうございます。

国民カードがあれば国民カードを、なければ魔力照会をしますのでこちらの道具に魔力か血液をお願いします。」


国民カードを道具にかざす。

するとすぐに「問題ありません。ありがとうございます。」と返ってきた。


「続いてこちらのバッジに魔力登録をお願いします。」


コインのようなバッジに魔力を流す。

一度回収され、何やら別の道具で操作する。


「では、登録に問題がないか確認しますので、バッジを持って提示してください。」


渡されたバッジを持つと、オズワルドの方は【F】、コルは【仮】と表示された。


「問題ないですね。

では、冒険者について簡単に説明させていただきます。

先ず、今渡した冒険者バッジは本人でしか表示することはできません。

依頼を受けたり、完了報告する際に必要になりますので、失くさないようにお願いします。

失くした場合は有料での再発行となります。


次にランクですが、上からA、B、C、D、E、F、仮となります。

ランクにより受けれる依頼は異なり、後ろにある依頼札に記載のランクを間違えないようにお願いします。


ランクは依頼を達成することによるポイント制で上がります。

下のランクのもの受けることはできますが、ポイントは取得できません。

Dランク以上からは試験があります。


依頼を受けるときには掲示板の依頼札を取り、このカウンターで札と冒険者バッジの提示が必要です。

依頼が達成できない場合は違約金が発生します。


常時依頼は特に札は必要ありません。

対象を納品すれば自動的に依頼達成扱いになります。


納品は右奥のカウンターにお持ち下さい。


また、素材の買い取りは依頼関係なく受け付けております。

こちらも右奥のカウンターにお願いします。


ただ、むやみな素材採集はオススメしません。

依頼が出ており、その依頼を受けずに採集した場合は依頼達成のお金は支払われません。

もし、他の方が受けていた場合は報酬の3割がその方の物になり達成扱いとなります。


以上になりますが、何かご質問はございますか?」


『とくにありません。』


「では、初心者研修の受付をさせて頂きますね。

初心者研修は全部で5回あります。

今、全て予約されるのであれば5回分の受講料のお支払をお願いすることになりますが、いかがなさいますか?」


『全てお願いします』


「では、冒険者バッジと受講料をお願いします。」


オズワルドはバッジと2人分の受講料を支払う。


「一番早い1回目の研修は5日後ですが、その日でよろしいでしょうか?」


『大丈夫です。』


「研修は朝7時から夕方16時まで。

日によって解散時間は前後します。

2~3時間は座学、残りは実技となります。

お昼に1時間の休憩があります。

森での昼食となりますので準備をお願いします。

遅刻は厳禁です。

再度受講が必要になり、返金は致しません。


また、魔馬を従えているようですが、研修では基本歩きになります。

連れてこないようにお願いします。

以上が初心者研修の説明になります。


また、その他の研修日程は右側奥突き当たりの掲示板に記載されておりますので、よろしければご確認下さい。」



受付嬢にお礼を述べ、掲示板を一通り確認しておく。


掲示板はランクごとに分かれている。

冒険者は朝早くに掲示板を確認し依頼を受ける。

文字を読めない者も多いので掲示板の前に代読者がいるのだとか。


数字はほとんどの者が読める。

依頼札にはそれぞれ番号がふってあり、番号と内容を読み上げていく。


依頼札を取れば基本的に受けなければならない。

複数受けることも可能だ。


今は昼過ぎのためあまり依頼札はない。

あるのはめんどくさそうなのばかりか、常時依頼の簡単で報酬が安いのばかりだ。


常時依頼の札は取れないようになっている。



次に研修日程を確認しておく。

研修は様々なものがあった。


文字の読み書きや薬草、魔物、魔獣の知識、簡単な魔法という座学。

剣、弓矢、槍、斧、投げナイフ、格闘といった戦闘スキル。

魔物や魔獣の解体方法や、護衛の心得なんてものもある。


研修は無理なく受けれるよう安く値段設定してある。

少しでも死亡者を減らすためだ。


その代わり基礎やちょっとした応用ぐらいまでだ。


因みに冒険者ギルドは緊急時に備え24時間職員がいる。

しかし、あくまで緊急用なので夜間の職員は少数。

鍵がかけられており、ノックすると窓が開き用件を確認する。


きちんと稼働しているのは朝5時から夜20時までだ。




5日後。

7時少し前に冒険者ギルドに到着した。


ヒスイだけでなくアンバーもお留守番してもらった。

座学はつまらないだろうし、連れていたら目立つからだ。


カウンターへ行き、初心者研修受講の旨を伝えると冒険者バッジの提示を求められる。

バッジを渡し、道具にかざすと返される。


「右奥の階段から2階にあがり、第3会議室と書かれた部屋に入って下さい。」


『わかりました。』


部屋に入ると既に5人が疎らに座っていた。

オズワルドたちも適当な席に座る。

その後更に2人増え、7人になった。

受講者は合計で9人のようだ。

年齢は上は成人くらい、下はオズワルドと同じくらい。

女の子は2人。



全員が着席してすぐに大柄な女性が入ってきた。

ドサッと一番前に置いてある、受講者と向かい合うようになる席に腰かける。

講師のようだ。


「ベスだ。

今から研修を始めるが一度しか説明しない。」


そう言って座学が始まった。


座学といっても特に書き写したりするわけではなく、ただひたすらにベスさんが説明することを聞いているだけだ。

ベスさんは手元に資料があり、それを元に進めている。


内容はFランクの常時依頼の薬草採集や魔物討伐について。

また、その場所に出現する魔物や魔獣、逃げ方、移動の際の注意点などだ。


一通りは勉強しているので知っていることばかりだが、しっかりと聞いておく。


途中少しの休憩を挟み、約2時間半の座学が終了。

このあとは森の前にある平原へと向かう。

やや早目の足取りで1時間かからない程度だ。


ベスさんが先頭を歩く。

チラリとも振り替えることはない。


道中、同じ年くらいの男の子が話し掛けてきた。


「なぁ、お前も同い年くらいやろ?

オレは10歳やけど、あと3ヶ月で11歳。」


『では同い年だね。

私はこの間11歳になったんだ。』


「俺は1つ下だ。

もうすぐで10歳になる。」


オズワルドがこたえ、その後にコルが言葉を崩してこたえる。


「おっ!

やっぱ、同い年やったか!

仲良くしようや。

オレ、シュタイナー。

シュティって呼んでくれ。」


『私はオズ。』


「俺はコル。」


「なぁ、オズは貴族なんか?

オレは一応子爵家の息子。

貧乏子沢山で四男やから冒険者になることにしたんだ。」


『私も貴族だよ。

五男だけど、冒険者は趣味かな。』


「オズは整った容姿やし、洋服も持ち物も高そうやからそうだと思った!

趣味って物好きやなー」


シュティはグイグイくる。

不思議と嫌な感じはしない。

今までにないタイプで面白い。


因みにオズワルドは変装の魔道具を使っており、茶髪に茶色の瞳だ。

コルも赤い瞳は目立つので紺色に変えている。


「なぁ、講師の人、めっちゃやる気ないよな。

あれ、多分、借金持ちやろな。」


オズワルドは苦笑いを返す。


「まぁ、初心者研修、それも平原なら別に問題ないけどな。

オレは家でそれなりに剣は習ってるしな。

オズもやろ?」


『そうですね。

ただ、魔物や魔獣を相手にしたことはありませんので、油断は出来ません。』


その後も雑談しながら進む。

主に喋っているのはシュティだが...



先ほどシュティが言っていた“借金持ち”というのは借金奴隷ということだ。


イシュミラ王国では個々の人身売買は禁止されており、奴隷は全て国で管理されている。

奴隷は2種類。

犯罪奴隷と借金奴隷だ。


犯罪奴隷は重罪を犯した者。

一生過酷な重労働をすることになる。

ある意味、死刑のようなものだ。

犯罪奴隷には人権はない。


一方、借金奴隷は国からお金を借りている者。

人権があり、不当な扱いを受ければ訴えることもできる。

借金を返せば奴隷ではなくなり、普通のイシュミラ国民になる。


この借金奴隷は主に2通り。

親に売られたか、自分で借金を背負ったかだ。


イシュミラ王国では奴隷、人身売買を禁止している。

そのため過去、他国へ売る者が現れた。

イシュミラ王国は他国に比べると平民であっても魔力が高い。

いくら他国への売買を禁止し、破れば重罪とお触れを出しても貧しさに売ってしまう者が後をたたなかった。


魔力が他国に流れるのは国力の低下に繋がる。

平民でも貴族に匹敵する程の魔力持ちもいるのだ。


なので、イシュミラ王国が買い取ることにした。

おかげで他国への売買は激減。

わざわざリスクを犯してまで他国へ売るよりも、多少安くても国に売った方がいい。


そして、売られた子どもは働ける年の8歳まで教会の孤児院で育てられる。


こういった子たちは給金が安い。

しかし、衣食住は保証しなければならない。

なので、殆どがちょっとお金を持っている家の下働きとして働く。


給金が安くとも扱いは他の人と同じだ。

給金から借金を返済した後は自由になる。

大体が働き始めてから10年程で返済できる。


一方、自分で借金を背負った者は今まで培ってきた技術を持っている者が多い。

稼いできた実績のある者はその技術を活用させ、借金返済をさせる。


特に冒険者ギルドには様々な仕事が舞い込んでくる。

冒険者とはいうが、街の便利屋でもあるのだ。

そういった依頼の中に低賃金で誰もやりたがらない仕事が借金奴隷に回されるのだ。


今回の初心者研修もその中に該当する。

ほぼボランティアのようなものだ。

そして、ベスさんに回されたのだろう。


冒険者にはちょっとした借金持ちは割といる。

冒険者はあまり貯蓄をしないため、依頼が達成できなかったときの違約金、装備が壊れたことによる修理費や新調費などで借金するのだ。


因みに奴隷になると国民カードに記載され、国外へは行けなくなる。



そんなことを考えていると、目的地へと到着した。


「先ほど教えた薬草を10束採集する。

とりあえず1束採集出来たら持ってこい。

今日は討伐はしないが、警戒は怠るな。

目に見える範囲にいろよ。」


ベスさんからの指示に各々散らばり、採集用の小型ナイフを手に薬草を探し始める。


オズワルドもコルとシュティと少し離れ採集する。


ここはFランクが採集する場所だ。

魔物や魔獣は基本出てこないため、比較的安全。

そのため薬草は粗方採取されており見つけるのが大変だ。


バッハシュタイン領の森で経験があるとはいえ中々見つからない。

ようやく10本1束を採集し、ベスさんの元へ見せに行く。


「ほう。

一発合格は珍しい。

お前はそのまま待機だ。」


ベスさんにそう言われ、チェックされた薬草をかえされる。

薬草は質が落ちないよう、濡れた布で根元を包み、採集用の袋に入れておく。


するとそれを見ていたベスさんから声がかかる。


「準備がいいな。

初日から持ってくるやつは中々いない。」


『薬草採集は経験ありますので。』


その後、会話は続かないが特に気まずい空気でもないのでそのまま待機する。



しばらくして採集し終わった人がベスのもとにやってくるのを眺める。


「これは小さい過ぎる。」

「似てるが違う。葉先をよく見ろ。」

「無理矢理引っ張っただろ?

薬草に傷が付くし、残された茎に葉が生えにくくなる。ダメだ。」

「これは根元の方で切り過ぎだ。

これじゃあ新しいのは生えない。」


そう言われやり直しさせられている。


なるほど。

オズワルドの前にも4人見せに行っていたが、やり直しをさせられていたのだろう。


しばらくし、全員が合格をもらうと移動する。

途中お昼休憩を挟み、繰り返し作業する。


後半になるとダメ出しは減ったが、慣れない作業に疲れペースは落ちてくる。



結局冒険者ギルドに帰ってこれたのは16時半ごろだった。

まだ依頼を受けることは出来ないので、納品もポイント取得も出来ないが、買い取りはしてもらえる。


皆で買い取りカウンターに持っていき、バッジと薬草を出す。

バッジを返され、番号札をもらう。


少し待たされ買い取りカウンターとは別の所で番号が呼ばれる。

呼ばれたカウンターに行けばお金を受けとる。


受けとる際に品物の状態を聞かされ、それにより金額が変わる。

品物の状態を教えてくれるのは研修中のみだそうだ。


今回は品質でどれくらい報酬に差が出るのかを理解させるために皆同じカウンターに呼ばれている。

オズワルドとコルはきちんと管理していたので減額はされていない。

ひどい者はオズワルドの半分以下だった。



「この中には採集などと馬鹿にしていた者もいたようだが、簡単ではないことがわかっただろう。

次回は5日後だ。

予約しているものは遅刻しないように。」


最後にベスから言葉をもらい解散となった。


出口に向かうとシュティが話し掛けてくる。


「お疲れー

オレは次回も予約してるけど、オズたちは?」


『私たちも予約しているよ。』


「そっか!

じゃあ、また5日後にな~」


『またね。』



少し編集しました。

冒険者登録の名前についてです。

登録名は【オズ】

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