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第8話 夕暮れの日差し亭

ゴロツキ達をやっつけた後、門で仮身分証の発行を無料でしてもらいヒューマン族の国が誇る貿易の街『アルバス』に礼治達二人は一歩脚を踏み入れた。

そこは至るところに商人の経営する店や冒険者達が泊まる宿やがあったりととても賑わっていた。

二人がその光景を見ていると先ほどの商人が声をかけてきた。


「これはレイジ様。先ほどは本当にありがとうございました」


「あ、先ほど商人さん。怪我とかはありませんでしたか?」


外見からは怪我をしたようには見えないが、礼治は念のためにそう尋ねる。


「これはお気遣いありがとうございます。レイジ様に助けて頂いたおかげで私共々無事で済みました」


それに対して商人は深々と頭を下げて御礼の言葉を述べた。


「そういえば私としたことが、レイジ様に自己紹介をしておりませんでしたな。私はこの街一番と言って過言ではない正規の奴隷商『ボグレス』を取り仕切らせて貰っております。本店取締役ボグレスと申します」


礼治の目の前にいる優しそうな50代の男性はまさかの奴隷商のしかも取締役の人だと礼治は思っておらず少し驚いてしまった。

その様子にボグレスは話を続ける。


「もしや、レイジ様は奴隷商人とは初めてお会いに為さったのですか?」


「ええ、まあそんな感じです。俺は凄い田舎から冒険者に憧れて村から出てきたのでそう言ったものには全然知識がありません」


礼治は嘘を混ぜながら返答する。


「そうですか。それは素晴らしいことですねえ。別に無知を恥ずかしがることはありません。まだレイジ様はお若いのでこれから知識を蓄えれば良いのですよ」


礼治の返答にボグレスはそう応えた。


「それに私共は正規の奴隷商人は別に人攫いをしているのではなく。ただ、借金を払えずに奴隷になった者や、犯罪を犯して奴隷になった者、また戦争で負けた国の者が奴隷になったりと様々な人生を歩んだ者達が一番実力を発揮し、将来の御主人様のために生き、新しい人生を送ってもらう為に私共はおりまして、決して奴隷を道具としては扱わずに人として接していくのが私共の仕事なのです」


ボグレスは途中から熱弁を始めたのだが、その言葉一つ一つに強い想いが込められており。礼治はもし奴隷を買うことになったとしたらボグレスのところでお世話になろうとそう思ったのだ。


「ボグレスさんありがとうございます。ボグレスさんの熱意がとても伝わりました。もし、俺が冒険者になってお金が貯り、奴隷が必要になった時はボグレスさんのところでお世話になろうと思います」


礼治の言葉にボグレスはとてつもなく嬉しかったのか、勢いよく礼治の手を掴んできて更に握手をしだした。


「ありがとうございますレイジ様。私の、いえ正規の奴隷商人の思いを理解して頂き本当にありがとうございます。もし、レイジ様が私の店で奴隷をお求めになられる時は私自らがご案内させて頂きます」


「ありがとうございますボグレスさん。その時はよろしくお願いします。そうだ、この街で評判がよくて安い宿屋を知りませんか?」


ボグレスに宿屋のことを聞いた。するとボグレスは良い宿屋を知っていたのか大通りを指差した。


「それでしたら、この大通りを真っ直ぐ進み中央広場に出ましたら左に進み、大きな道に入って右沿いにある三軒目の『夕暮れの日差し亭』がオススメですよ」


「ありがとうございますボグレスさん」


「いえいえ、お安い御用ですよレイジ様。では私はこれで失礼します」


そう言い残したボグレスは馬車と馬車を引く馬を連れてその場を離れていった。


「じゃあフール。さっそく宿屋に……」


礼治はフールの方に振り向き喋っていたがフールを見た瞬間言葉を止めた。

何故ならフールが昼間と同様に頰を膨らまし、今度はジト目で睨んでいたのである。


「礼治様は私だけでは満足できず奴隷に手を出そうとしてたんですね」


フールの言葉にフールは嫉妬深い性格だった事を礼治は思い出す。


「いや別にそう言う訳じゃなくて。ただ普通にチームを組む時に奴隷の方が分け前で争わなくて済むし、仲間がいる分戦闘が有利に進むから買った方がいいかなと思っただけだから」


「ふんだ」


また機嫌が悪くしたフールの頭を礼治は撫でてなんとか機嫌を直してくれたフールと一緒にボグレスのオススメする宿屋に向かった。


〜〜〜


ボグレスに教えられた宿屋に向かう途中、雑貨屋で礼治は自分のスキルである【アイテムボックス(極)】を隠す為にフールと同じ見た目のウエストポーチを銅貨六枚で買った。

因みにウエストポーチはフールが選んだ物であり、それを買った時にフールは「これで礼治様とお揃いですね」っと、嬉しそうに言っていた。


次に礼治達は新品の服を扱っている服屋で礼治は自分用の服を上下三着とパジャマを一セット、下着三枚を選ぶ。

その時も礼治の服はフールが選んでくれたものであり、礼治は着せ替え人形になっていた。

フールはこの時、礼治の下着までをも選ぼうとしたので礼治は慌ててフールに自分が着る服を選ばせなんとかそれを回避した。しかし、それにより時間が思っていた以上に掛かってしまい全ての買い物が終わるまでに三時間も掛かってしまった。

その時なんで女性は買い物にこんなに時間を掛けるのかを礼治は理解することはできなかったが、その後のフールの笑顔でとても満足していたので良しとした礼治であった。

買った物をポーチに入れる振りをして【アイテムボックス(極)】に収納して店を出た。


こうして時間を掛けたがようやく目的地である『夕暮れの日差し亭』に到着した。

見た感じでは三階建てで一階が受付と食堂で、二階からが宿泊する部屋になるらしい。

宿屋を少し眺めた二人は宿屋の扉を開けた。


「いらっしゃいませ。ようこそ『夕暮れの日差し亭』へ。お食事ですか?それともお泊まりですか?」


中に入ると受付のところから元気よく挨拶をしてきたのは見た感じ十代後半で礼治よりも少し年上の女性がいた。


「両方でお願いします」


「それでしたら説明をさせて頂きますね。宿泊は借りる部屋一つにつき銅貨一枚、朝と夕方の食事をつけるとお一人につきプラスで鉄貨七枚、身体を綺麗にするために桶に入れたお湯とタオルを部屋まで運ぶのが一部屋につき鉄貨三枚になりますがどうされますか?」


受付の女性は笑顔で宿屋の利用料述べた。


「それじゃあ、ふた「一部屋で二人分の食事付きで桶を一つとタオル二枚を部屋まで運ぶのをお願いします」…じゃあ後は取り敢えず三泊でお願いします」


部屋を二部屋を用意してもらおうとしたがフールが礼治の言葉より大きな声で強引に一つ部屋にしてきた。

礼治は仕方ないと思いながらもフールの言葉に補足をつける。


「それでは、一部屋に三泊で二名様の食事付きで桶を運ぶのありで計810ナグルお支払いください。後、この名簿にお客様のお名前をお願いします」


紙とペンを使い計算をした後名簿とペンを渡された。

礼治は財布から銀貨一枚を取り出し料金を支払ってからお釣りの190ナグルを受け取る。その間にフールが代わりに名前を書いたので名簿も一緒に返す。


「レイジさんとフールさんですね。それでは自己紹介をさせていただきます。私はこの宿屋『夕暮れの日差し亭』で受付と雑用をしているラルファと申します。料理の方は私の父がその日の一番新鮮な食材を仕入れてそれを母が料理して提供させていただきます。母の料理はとても美味しいので楽しみにしていてください。お食事の時間は朝が6時の鐘の音から9時の鐘の音まで。夕方は夜の6時の鐘の音から10時の鐘の音までとなっております。後は桶を運んできて欲しい時間帯を教えてください」


「わかりました。それじゃあ食事は今からで桶を運んで貰うのは食事を食べ終わった後で部屋に行くときにでいいですか?」


「はい、わかりました。それでは食事が終わったさいにもう一度私に声をお掛けください。その時にお部屋の鍵をお渡しいたしますね」


「ありがとうございますラルファさん。これからよろしくお願いします」


礼治は御礼を言い頭を下げ、フールも後に続き頭を下げた。


「レイジさん達は他の冒険者の方と比べると礼儀が正しいですね」


ラルファからそう言われたが、二人はまだ冒険者ではないことを伝えるとそのことにラルファは驚くもすぐに営業スマイルに戻り、これからの二人の発展を願うためにラルファは母親に料理を少し豪華にしてもらうよう頼みに食堂がある方へ向かって行った。二人はその後について行く。

食堂に着くとラルファとすれ違い、再び御礼を言ってラルファの母親である女将の方に歩いて行った。


ラルファの母親の名前はミネットというらしく三十代の女性で何処と無くラルファと雰囲気が似ている。

それからは二人は席に着きしばらく待っているとミネットが料理を運んできた。

出された料理は狼肉と野菜の味噌炒めを黒パンと鶏ガラスープみたいな物とが一緒に出された。

礼治は狼の肉が使われている事に驚いたが、この世界では狼肉はごく一般らしく、最初は戸惑っていた礼治であるが一口食べてみると、ミネットの料理の腕も有るんだろうが狼の肉も以外に美味しいといった感想が自然とでた。

食後はミネットに御礼を言って食堂を出た二人は受付にいたラルファに声をかけて二人が泊まる部屋の鍵『305号』と書かれた板に紐と鍵が付いたものを受け取り部屋へと向かった。

三階まで上がり、『305号』と書いてある部屋に入ると部屋は以外に広く、立派な部屋なのだが礼治はただ一つだけ不満があった。

それはダブルサイズのベットが一つしかなかったことだ。

別にフールと同じベットで寝るのが嫌なわけじゃないんだが、礼治はしばらく慣れるまで、ゆっくり眠れそうになかった。しかし、当の本人であるフールはと言うと満面の笑みで礼治の方を見ていた。

それから暫く部屋でくつろいでいるとラルファがお湯の入った桶を運んできたので御礼を言った後ラルファは「使い終わった桶は廊下に出していてください。後で取りに来ますので」っと言い残し去って行った。

それからはお互いの背中を向けて自分の身体を拭いていたが、礼治は時折後ろにいるフールからの視線を痛いほど感じていた。

身体を拭いた後、昼頃に買ったパジャマに着替え終わり、礼治は今にでもベットに潜り込もうとしているフールに声をかける。


「なあ、フール。一旦他の大アルカナ達の所に戻らなくていいのか?」


礼治の質問に動きを停止させたフールであった。

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