第4話 変化と方針
今日は時間に余裕があるので、後もう一話を投稿する予定です。
一夜が明け、礼治が目を覚ますと最初に見たのは会社から逃げた後に住むことになったボロアパートに天井ではなかった。
(そうだったここは元の世界ではなく異世界だったな)
礼治が今いるのは元の世界ではなく異世界なのだ。
そのことを思い出した礼治は昨日のことを寝ぼけている頭で振り返る。
(確か昨日は、神様が神様を辞めて新しく『フール』として生まれ変わって俺についてきてくれて、次に【魔力操作】のスキルを習得して、魔法を使えることに興奮した俺は魔力を全て使ったことで魔力切れで倒れて、昔の夢を見て、目が覚めたらフールに抱きついて子供みたいに泣いて、フールにトラウマを払って貰って、そのまま欲望を抑えきれずフールに抱きついてフールと最後まで……って、ああああああああああああああああ)
そこで礼治は昨日のことを特に夜のことを思い出し頭を抱えた。
(俺の馬鹿野郎‼︎相手の意思を聞かずに自分の欲望を抑えきれずに最後までやったんだった⁉︎ 絶対嫌われてる‼︎会って一日でもう既に嫌われてる‼︎)
礼治は顔を赤くし、心の中で悶絶していた。
〜数分後〜
やっと落ち着いた礼治は外から良い匂いが漂よってきていることに気づき外に出た。
するとそこには、また何処から出したのかシンプルで薄いピンク色の首からかけるタイプのエプロンをつけて料理を作っているフールがそこにいた。
何処にでもあるような家庭での当たり前の光景に礼治は心が暖かくなり、暫くの間その光景を眺めていた。
そう眺めているとフールが礼治に気付いた。
「おはようございます主人様。昨日はよく眠れましたか?」
見た感じフールは怒っておらず、少し安心する礼治。
「おはようフール。昨日はちゃんと眠れたよ。……あのさあフール。その、昨日はゴメンな」
「いえ、大丈夫でございます。誰でも辛かったり不安だったりした時はあんな風な態度をします。なので主様が私に怒鳴りつけた時もその前に過去のトラウマを思い出しており、情緒不安定だったのはよくわかります。ですので主様はご心配なされないでください。私は平気でございますから」
確かに礼治はそのことも謝るつもりだった。しかし、今礼治が一番謝罪したいのはその後のことだ。
「いや、それもあるけど。俺が言いたいのはその後のことで、その…無理矢理押し倒して本当にゴメン」
礼治は頭を下げて謝罪した。
その謝罪にフールは一時脳がフリーズし、少しして礼治が言いたいことを理解したフールは顔を真っ赤に染め頭から湯気を噴き出した。
「あ、主人様!そそそ、そんなに謝らないでください。別に私は気にしてませんし、むむむむ、むしろ初めての体験をさせて頂きありがとうぎょじゃいましゅ‼︎」
フールは最後らへんの言葉を噛みながら頭を下げ、許す許さないではなく、逆に感謝の言葉を申し立てた。
『まあ元神様だったから初めてだったのだろう』
フールは元神であり、そういったことが初めてであり、初めてを奪ってしまった礼治はフールに嫌われていなかったとが分かり、心の底から安心した。
「良かった〜。フールに嫌われてなくて。もし、フールに嫌われていたら一生立ち直れなかっただろうな」
礼治が言っているのは冗談でわなく本気であり、もし仮に礼治がフールに嫌われていたら礼治は父親の一件以上の後悔をしていただろう。
「そんな、私が主人様を嫌うなんて例え洗脳されようが、天変地異が起こったとしてもそんなことは絶対に有りえません‼︎」
フールから言われ、礼治は恥ずかしさもあったがとても嬉しくもあった。
そして礼治は昨日の一件でフールにあるお願いをした。
「なあフール、折り入ってお願いが有るんだけどいいかな」
「なんでしょう主人様?」
フールは頭を上げて尋ね返す。
「俺の呼び方をさあ『主人様』じゃなくて名前で呼んでくれないか?」
「もしかして、嫌でしたか?」
礼治の提案にフールは少し不安な顔をして尋ねる。
「いやいやいや、別に『主人様』って呼ばれ方が嫌いって訳ではなくて。ただ、昨日みたいに俺のの名前で呼ばれる方がなんかちゃんと俺自身を見てくれている。そう思えてさあ」
礼治は昨日のフールから名前で呼ばれた時を思い出していた。
名前で呼ばれていると本当にそう思える自分がいて、自分は一人なんかじゃないと安心することができた。
「だから別に無理しなくていいからそう呼んでくれると嬉しい」
「わかりました、ある...じゃなくて、『礼治様』と呼ばさせてもらいます」
「ああ。じゃあ今更だけどこれから宜しくなフール」
「はい。よろしくお願いします礼治様」
互いにそう言った後、フールは大きい葉っぱに料理を盛り付けし、二人は朝食を食べ始めた。
因みに今朝のメニューは何かの肉をブロック状に切ったものを串に5、6個刺し火で炙ったものとリンゴのような木の実だった。
(朝から豪快だなあ〜)
と、最初は朝からにしてはかなり重そうな料理に大丈夫かと考えていたのだが肉から溢れ出る肉汁とハーブや薬味などの匂いが食欲を促進させ、食欲を抑えきれなくなった礼治は肉を口一杯にほうばりながら一気に朝食を食べ始めた。
その間フールは礼治が食事をする光景を見て笑みを浮かべながら自分のペースで食事をしていた。
朝食を食べ終わった後、礼治はフールに自分が食べたものについて聞くと。
肉はレッドピッグと呼ばれる名前の通り赤い色の豚で食用としても飼われている獣でごく一般的な食料らしく、リンゴみたいな木の実はリップアという名の木の実でこちらもよく食べられるものだそうだ。
食事を終えた二人は今後の方針といまの状況について話し始めた。
「まずはこの場所ですね。<クイ>」
またまた何処ら出したのか?フールはあの眼鏡(周りの縁が赤色の楕円形の伊達眼鏡)をかけており、昨日のようにフール先生になりきっていた。
因みに何処から出したのかを礼治が尋ねてみたところフールは腰に下げていた茶色の皮で作られているウエストポーチを指差し「マジックバックからです」っと言った。
どうやらそのカバンは礼治が使うスキル【アイテムボックス(極)】ほどではないが色々な物をある程度入れられ。また、重さは変わらずに持ち運びができるマジックアイテムらしく、そのカバンの中には生活を支えてくれるアイテムが全て入っているらしい。
つまりフールはステータスだけではなく所持品もチートであった。
「まずこの森は『初心の森』と呼ばれており、名前の通り初心者がレベルを上げるために訪れる森で今の礼治様にとって劣る獣や魔獣は出現しません。そしてこの森を抜けた後は歩いてすぐに着くヒューマン国一の貿易の街『アルバス』で拠点となる宿屋を決め、次にギルドで身分証明書を作り冒険者としてまた、礼治様の夢であった占い師として活躍して貰います。何か質問はありますか?」
「いや大丈夫。それで行こう」
フールの完璧な方針に礼治は肯定するしかなかった。
「それでは行きましょう礼治様」
「ああ」
そうして二人は立ち上がり、目的地を目指し歩き初めた。