第23話 VSゴブリン軍団 "開戦"
冒険者達と警備兵達、そして礼治の家族(使い魔)である大アルカナ達がそれぞれに割り振られた位置につき、ゴブリン軍団到達のタイムリミットを三分切った頃、『風の剣』を手に握っていた礼治はスキルである【気配察知】に大量の魔獣の気配を感じ始めていた。
礼治はすぐ隣で待機していたエネドラにこのことを伝える。
「ギルドマスター。もう少ししたらゴブリン軍団の前衛が出てきます」
「分かるのか?」
「はい。そういったスキル持ちなので大体は」
「それでも大したものだぞそれは?君はやはりギルドカードを発行する際に色々とスキルを隠していたな?」
エネドラはやはり礼治達のギルドカード発行の際にギルドマスターに送られる情報をチェックしていたようだ。
「あまり目立ちたくなかったので。ついでに言うと正体もバレたくなかったので」
「それだったら、何故【タロットマジック】を隠さなかった?それ際隠していれば幾らか時間は稼げたはずだぞ?」
エネドラは礼治に当たり前の質問をしてきた。
「そんなことしたら属性魔法や召喚魔法が説明できなくなります。それに俺は冒険者になる前にタロット占い師になりたかったんでそのスキルだけは隠さないでいたんです」
礼治がそう答えたがエネドラはまだ納得してないようで首を横に傾けた。
「占いといっても君が占っているところは誰も見ておらんぞ?」
「コッチではまだ一人の依頼人の猫の居場所しか占ってませんし、沢山の人を占うには場所の確保や店の準備で時間がかかります。この街にきて三日も経たない俺にそんな時間があったと思いますか?」
「うーん。確かに無いな、野暮なことを聞いてすまんかったな」
「いえ、大丈夫です。それよりきますよ」
エネドラとの会話を終わらせた礼治は森の方を向いた時、森から何かが出てきた。
そいつの顔は醜く、緑の体をしている子供のようでボロボロの布を着ていた。
そいつは間違えなくゴブリンであり、森の中から次々と耳障りな声を上げながら出てきた。
その中には、木の棒を持ったゴブリンの他に剣を持ったゴブリンや杖を持ったゴブリン、それから弓に矢をつがえるゴブリンがいた。順番に見たとしてゴブリン、ゴブリンナイト、ゴブリンマジシャン、ゴブリンアーチャーなのだろう。
そうこうしているとゴブリンが森から100体ぐらい出てきたので礼治は後ろで待機しているテミスに指示を出す。
「テミス頼む」
「はい了解しましたレイジ様。【重力変換”重”】」
礼治の指示でテミスが呪文を唱えると同時に前衛や後衛のほとんどのゴブリン達が一瞬にして緑色の血を噴き出しながら地面にクレーターをつくり潰されていった。
それを見ていたエネドラや礼治を含めた冒険者達、それからジグトが率いる警備兵達は目の前の地獄絵図のような光景に呆気にとられていた。
「………っは。後方支援部隊、遠距離攻撃始め‼︎」
「…っは、はい!」
「【火槍】」
「【風球】」
「【水雨】」
「【風爆弾】」
「【火矢】」……
「後方支援第一弓矢部隊、矢を放て‼︎」
いち早く我に返ったエネドラが指示を出し、冒険者の魔法使いは遠距離魔法を放ち、それに遅れてからジグトの号令とともに矢をつがえて待機していた警備兵達が大量の矢を放った。
テミスの重力魔法に耐えてはいるが身動きの取れないゴブリンナイトやゴブリンマジシャンなどの中位種達はタダの的同然となり次々と倒されていく。
「なあテミス。魔法を維持したままで話はできるか?」
「はい、レイジ様可能でございます。どうかなされましたか?」
礼治は魔法を使い続けているテミスに声をかけるとテミスは普通に話を返した。
「テミスの重力魔法は敵の一体一体に発動するのか?」
礼治がなぜテミスにこんな質問をしたのかというと答えは重力で押し潰されてできたクレーターにあった。
潰れたゴブリンの死体を中心に直径一メートルのクレーターがいくつもできており、もし個別ではなく広範囲で発動する魔法だったのなら広範囲に一つの大きなクレーターができる筈なのだがそれがなかったのである。
「流石はレイジ様ですね。レイジ様の仰る通り、私の使用しております重力魔法は敵の一体一体の周りの空間の重力を変換させるものでございます」
どうやら礼治の読みは当たっていたようで、これから先も頼りになるなと思う礼治であった。
「後一つ聞きたかったんだけどテミスは剣も扱えるのか?」
礼治はテミスの腰にある剣を目を向けながらさらに質問を続けた。
「はい。剣術はそれほどのものでは有りませんが、重力魔法を使い、剣を重力で押し付けることである程度の敵は断ち切る又は切断することが可能でございます」
「それは凄いな……」
テミスの返答に礼治はタダそう応えるしかなかった。
「じゃあテミスは俺達が群れに突っ込むまではできる限り魔法を維持していてくれ。後、俺達が群れに突っ込んだ後はフォース達と一緒に前衛を任せられるか?」
「はい。レイジ様の指示に従い頑張らさせていただきます」
テミスもフールと同様に礼治に頼られるのが嬉しかったのか?テミスの顔には笑みが自然と浮かび、魔法の威力は先程よりも上がったことで森から出てくるゴブリンを次から次へと潰していった。
ゴブリン達が森から出てきて暫くし、ゴブリンの緑色の血の海が辺り一面に広がり始めた頃、ゴブリン上位種であるゴブリンジェネラルとゴブリンヒーラーが森から現れた。
ゴブリンジェネラルは他の生き物の血で汚れた鉄の鎧を着ており、手には全く手入れのされていない斧やハンマーそして大剣などの自分の背丈より少し大きい大型武器を扱う小学生中学年ぐらいの大きさだった。
それに対してゴブリンヒーラーはゴブリンと大きさはさほど変わらないが、何とか原型を留めたボロボロのローブを着ており手にはゴブリンマジシャンと同じく木の杖を持っていた。
「前衛の冒険者達!ここからがお前らの仕事だ。突撃隊を除く冒険者は警備兵達と一丸となって敵を倒せ‼︎絶対に気を抜くんじゃないよ、わかったか‼︎」
「警備兵前衛部隊も前に進むぞ!そして生きて帰るぞ!わかったか‼︎」
『オオーーーーーー‼︎‼︎』
「後方支援はこのままの遠距離攻撃しつつ、前衛のサポートに専念しろ!いいね‼︎」
『オオーーーーーー‼︎‼︎』
エネドラとジグトの指示により冒険者と警備兵の前衛組は進みだし、そしてエネドラ率いる突撃部隊はその後を追う形で進み始めた。




