第1話 フール=???
礼治は神により無事に転生された後、洞窟の中で目を覚ました。
(本当に転生したんだな…てか俺、若返ってないか?)
礼治は今の状況を冷静に判断していた。
もともとは25歳だった彼は今は15歳くらいまで若返っており、今の容姿は頭からいって黒髪で青ブチの眼鏡をかけおり、瞳は髪と同じく黒色で道を歩けば何人かの女性は振り返るであろう整った顔立ちであり、本人は気付いてはいないが元の世界では影で女性からかなりもてていた。
そして今着ている服はこの世界で暮らす一般人が着ているような服装で皮靴を履いていた。
(そういえば神様から異世界に着いたら『フール』を直ぐに呼べって言われていたんだっけな///)
礼治は神から言われたことを思い出すと同時に神とキスをしたことを思い出してしまい顔を赤くしてしまった。
因に『フール』とは、タロットカードで大アルカナと呼ばれる22枚のカードの内の1枚であり、他のカードは1から21の数字を持っているが、『フール』だけは数字を持たない0番目のカードとして他のカードに比べて特別視されている。
『フール』は『愚者』を表し、良い意味では天才やある目的を持った旅人。悪い意味では出来損ないや無計画な放浪者と訳されており、人によって認識は異なっている。
(そういった奴だから神様と旅をする方法を知っているんだろうな。早速呼び出してみるか)
礼治は数ある主張のなかでは良い意味の方で捉えており、そう考えながらも早速その場に立ち上がり右掌を前にかざし、そして呪文を唱えた。
「【タロットマジック】大アルカナNO.0『フール』」
礼治が詠唱を終えた瞬間、突如として目の前に光りを放ちながら旅をしている杖を持ち、奇抜な格好をした男性の描かれたカードが現れて、また現れたと思うとカードは直ぐに消えて新たに礼治の目の前にある人物が現れた。
「なんで‼︎」
その人物が光の中から現れた瞬間、礼治は予想していなかったことに驚き、声を上げてしまった。
何故なら目の前に現れた人物は身長が160前後の女性であったのだが、礼治が驚いたのはそこではなくもっと根本的なことだ。
その根本的なこととは。
「なんでカードから神様が出てきたんですか‼︎」
「先程振りです礼治様。驚いた顔も素敵ですね」
そう、彼の目の前にいたのは誰とも間違えるはずのない。
礼治が転生する前に出会い熱いキスをした『運命』を司る神だったからだ。
「なんで神様がここに⁉︎、っていうかなんでカードの中から‼︎?それと神様がここにいて大丈夫なんですか‼︎⁉︎」
「あの、礼治様。少し落ち着いてくださいませ。私が順番に説明させていただきますので」
「っあ、ス、スミマセン<ゴツン>」
神は今の現状を理解できずに混乱していた礼治を落ち着かせようとし、それに対して興奮していたことに気づいた礼治は神に謝るために頭を下げた、しかし場所が悪かったために洞窟内の出っ張っていた岩に頭をぶつけてしまった。
「礼治様大丈夫ですか‼︎」
そんな慌てて尋ねてきてくれた神に対して礼治は手で岩にぶつけた箇所を抑えながら顔を上げる。
「大丈夫ですのでご心配なさらずに説明をお願いします」
凄く心配している神にそう言い、痛いのを我慢しながら説明をしてもらえる様に促した。
「礼治様がそう仰るんでしたら説明を始めさせて頂きます」
「はい、お願いします」
礼治と神はまたお互いに正面を向き合いその場に座ってから、神は目線からして礼治の腫れたデコをチラチラと気にしながら話しを始めた。
先程とはお互いの立ち位置が反対になっていることは言うまでもない。
「まず、私が何故ここに居るかと申しますと、私は神様を辞め、礼治様の扱うスキル、【タロットマジック】の一つ『フール』に転職したからでございます」
「ちょっと待って下さい!今すでに俺の頭が今のことを整理できずにいるので一旦待って下さい‼︎」
いきなりの神から爆弾発言の数々に礼治の脳は一時爆死した。
〜数分後〜
「もう大丈夫です。続きをお願いします」
脳の爆死から復活した礼治は神の話しを再び聞き始めた。
「それでは初めに私が神様を辞めた事から説明させていただきますね」
神も礼治が落ち着いたことを確認できたので話を再開した。
「まず、神とは私一人だけの存在ではなく、様々な世界の現象や生き物たちの感情など、それらの中の一つの力を司る神が数多く存在します」
日本でいうところの八百万の神様である。
「私はその中の『運命』を司る元神として存在していました。神はその世界に生きる者と関わる事は礼治様などのイレギュラーを除き禁止されておりまして他にもその世界で生きる者と関わる方法はありますが今は省きます」
元神はここで話しを区切った。
礼治はここでいくつもの矛盾について考えているとどうやらそれが顔に出ていたのか元神から。
「疑問に思うところがあると思いますがそこも今から説明させていただきます」
礼治は元神の話に集中する。
「私が神様を辞めれたのは私が私の持つ全魔力を使い、自分の分身。言わば第二の『運命』を司る神を誕生させたからです。しかし、この方法だと元神様つまりは私の魔力が無くなり消滅してしまいます。そこで礼治様の登場です‼︎」
元神の話の中で突然、自分の名前が出てきたので驚いてしまうも礼治はそのまま元神の話しを聞き続ける。
「礼治様と熱いキスをした時に少しながら礼治様から魔力を頂きました。その魔力を糧に礼治様の使い魔の『フール』として誕生したと言うわけです」
(あの時の感覚はそれか)
礼治は元神の話を聞き、転生前に元神とのキスをした時に感じたあの感覚が自分の魔力が元神によって吸い取られたことによるものだと気づいた。
「なのでこれから私は礼治様のことを『主人様』とお呼びします。ですので主人様は私の事はそのまま『フール』とお呼び下さい。これで説明は終わりしますが何か御不明な点や御質問などはありませんか?」
元神改めフールが主人となった礼治に尋ねた。
「一応理解できたけど、確実に理解できたのはフールが結構チートだってことかな」
「元神なので<ニコ>」
「ハハハハハ……」
礼治の応答にフールはさも当たり前かのようにそう応えてきたので笑うしかなかった。
「まあよろしくな、フール」
「はい、よろしくお願いします主人様」
お互いに挨拶を交わすと洞窟の出口に向かうために立ち上がる。
「じゃあ行こうか」
「はい、お伴します主人様」
フールは歩き出した礼治の後を追うために礼治の左後ろから付いてくる。
こうして礼治はフールと共に未だ見ぬ異世界に一歩、足を踏み出したのであった。
〜〜〜
礼治達が洞窟を出たるとそこは森の中であり、森を抜けるため、そして近くの街に向かうために二人は草木が鬱蒼と生い茂る道とは言えない道を歩き始めていくらか時間が経っていた。
「そう言えば、フールのステータスとかってどうなってるんだ?」
歩きながらふと思った礼治は隣を歩くフールに聞いてみた。このとき、礼治がフールに対しする口調が最初に比べてかなり砕けているのは今は主人と使い魔の関係であるから畏らなくて良いというフールからの提案があったからである。
「それでしたら私のステータスをご確認くださいまし。主人様のお役に立つスキルや見て欲しいものもありますので」
フールは何やら嬉しそうに礼治に自分のステータスを見るように迫って来る。
その行動に疑問を持つものの礼治は早速フールのステータスを自分のスキルの一つ【ステータスチェック(自・相)】を使って確認する。
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フール (0) ♀ 聖霊(元神様)
レベル1
職業:使い魔(魔導士)
(主:レイジ)
筋力:1900(100+1800)
体力:1900(100+1800)
耐性:1900(100+1800)
敏速:1900(100+1800)
魔力:2200(400+1800)
魔耐:2100(300+1800)
運 :7300(500+6800)
ー称号ー
元神
運命を司る者
使い魔
異世界人を愛す者
ースキルー
生活魔法(極)
家事(極)
風魔法LV.5
魔力操作
ー特有スキルー
完全偽装
念話
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
フールのステータスを見た礼治は唖然としてしまった。
(絶対チートの域を超えてるだろこれ‼︎なんだよこのステータスの桁の数は⁉︎称号の恩恵なしでも平均が三桁超えてるし。スキルもスキルでなんか凄いのがあるし!)
ースキルー
生活魔法(極)
全ての生活に役立つ魔法を扱うスキル
家事(極)
ありとあらゆる家事をこなすことができるスキル
風魔法LV.5
風を操る魔法を取得した者に贈られるスキル
LV.1 風斬
LV.2 風球
LV.3 風鎧
LV.4 風矢
LV.5 風爆弾
魔力操作
魔力を自由に操作することができ、体外に魔力を放つことができる。魔法を使う者にとっては初歩的なスキル
ー特有スキルー
完全偽装
自身のステータスを偽装することができ、尚且つ絶対にバレないスキル
念話
言葉を喋らずに尚且つ遠くにいる相手といつでも頭の中で会話ができるスキル
(生活魔法と家事スキルが以上に高いなこれは)
礼治はフールのステータスの異常なチートぶりにフール本人に尋ねる。
「なんで【生活魔法】と【家事】のスキルが以上に高いんだ?」
「はい、それはこの世界で主人様を支える為には身の回りのことが完璧でなければなりません。なので、その為にはその二つのスキルが必須だったからでございます」
今までの礼治の生きてきた人生の中でこんなにも尽くしてくれる異性はフールが初めてだったので嬉しい反面恥ずかしさがあり顔を反らしてしまう。
「それよりも他に聴きたいは無いんですか主様?」
「なんで歳が0歳なんだ?」
フールが一番聞いて欲しいことが何かは一応分かってはいる礼治であったが、彼はあえて別のことで話しをそらす。
「〔焦らしますね〜主人様は。〕はい、それはですね。私が神様ではなくフールとして新たに誕生した為に歳が0歳になっているのです」
その理由に納得する礼治。そして次に聞くとしたら『神様の時はなん歳だったの?』であるが礼治はそれを聞かない。何故ならその後が大抵の確率で自分自身に危険なことが起こると相場が決まっているからだ。
「他に聴きたいことは無いですか、あ・る・じ・さ・ま?」
そんなこんなでいつの間にか逃げ場を無くした礼治は次のことを聞くことにした。
ー称号ー
元神
神様を自分から辞め、新たな人生を歩みだした者に贈られる称号
(各ステータスを500アップ)
運命を司る者
運命に大きく関わりを持っていた者に贈られる称号
(運が5000アップ)
使い魔
聖霊として主に忠実に従うと心の底から誓った者に贈られる称号
(各ステータス300アップ)
異世界人を愛す者
異世界から来た者を愛し、何があっても愛した者を支えようと努力する者に贈られる称号
(各ステータスを1000アップ)
「そのさあ…この【異世界人を愛す者】って何かな?」
「はい!これは私が主人様のことをどれだけ愛しているかという証拠でございます♡」
今までと比べものになら無いほどの笑顔で愛の告白をしてきたフールに恥ずかしながらに顔を赤く染めた礼治であった。
「俺もまだ会って間もないけど、そのフールのことは好きだからこれからよろしくなフール////」
しかし、礼治もまた恥ずかしながらもフールに自身の純粋な気持ちを伝えた。
「は、はい主人様。いつまでもついて行きます///」
と「リア充爆破しろ‼︎」コールが鳴り響きそうな雰囲気を醸しながら二人は街に向かって森の中を一歩ずつ進むのであった。