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第16話 それぞれの思惑

〜side:フードを被った者〜


フードを被った人物がギルドに入ろうとした時、扉が壊れていることに気づき、その人物は急いでギルドの中に入る。

ギルドに入り、最初に目に飛び込んできた光景は冒険者達やギルド職員達がほぼ全員ギルドの入り口の方を見ながらポカンとしている光景だった。

『ほぼ』というのは、床に腰を落とし身体全体を小刻みに震わせて何かに怯えているような冒険者の男が二人とギルドの壁の直ぐそばで気を失ってうつ伏せになって倒れている冒険者が一人いたからである。

フードを被った人物は直ぐに受付カウンターに向かい、一人の受付嬢に声を掛ける。


「おい!一体どうした‼︎ 私がギルドにいない間に何があった⁉︎」


「っあ、すいません。えっとですねえ………? すみませんがどちら様でしょうか?」


受付嬢はフードを被った人物の質問に応えようとしたが、その人物が誰かわからずに質問を返した。


「あっ、すまんな。そういえば『隠密のローブ』のフードを被ったままだったな」


そう言ってフードを降ろした。

フードが覆っていた人物は女性であり、顔はとても整っており、吊り目で瞳の色はエメラルドのように透き通っており、鼻はやや高く肌は白く髪は銀髪ロングの耳が尖っている女性であり、つまりこの女性はエルフだったのだ。

そのエルフの女性の顔を見た受付嬢は顔を一変させた。


「お、お帰りなさいませギルドマスターエネドラ様!大変失礼しました‼︎」


そう、この女性こそエルフでありこの街の冒険者ギルドのギルドマスターであるエネドラだったのだ。

受付嬢の声で我に返った他の受付嬢やギルド職員、冒険者達が今度はエネドラの方に顔を向けた。


「あんたがそんな謝らなくてもいいよ。私が『隠密のローブ』のフードを被ったままだったからな。それよりも、一体全体何があった?ギルドの扉も壊されていたぞ?」


どうやらエネドラが着ていたローブは『隠密のローブ』という物は、着ている者の姿を隠したり他人に自分のことを識別できなくさせる魔法が付与されているマジックアイテムらしい。


「ありがとうございます。実は先程Eランクの冒険者パーティー『狼の牙』がある冒険者に因縁を吹っかけたのですが、一人は相手の魔法で吹き飛ばされ、後の二人はご覧の通りの有り様です」


受付嬢の目線が入口近くで未だ腰を抜かして震えている二人に向いた。

エネドラも入口近くの冒険者に目線を向けた後直ぐに受付嬢に目線を合わせた。


「『狼の牙』は確かDランクの昇格ができると言われていた今勢いに乗っている冒険者パーティーだったはずだが?」


「はい、その通りでございます。まあ、そのせいで本人達が調子に乗って新人冒険者に因縁を吹っかけた挙句にあんな事になってしまったんですがね」


エネドラは受付嬢の言葉に自身の耳を疑った。


「ちょっと待て!彼奴らを倒したのは新人の冒険者なのか⁈」


エネドラが受付嬢の言葉に疑問符を打ちつけた。


「はい、その通りです。実はその新人の冒険者二人は今日の朝方に冒険者登録をされたばかりで、早速Dランクの冒険者に絡まれたんですが二人の内、男の方がDランクの冒険者を瞬時に無力化してしまい、また先程Gランクの依頼を三つ達成されましたのでFランクに昇格した後、帰ろうとなされた時に今朝の事を知らなかった『狼の牙』に絡まれたのですが、その時に男の方を愚弄した言い方をしており、それに激怒した女の方が撃退したのです。その後このままではギルドが大変な事になると判断した男の方が女の方を取り押さえてギルドを去って行きました」


受付嬢の話で礼治達の一日の行動の一部を知ったエネドラは。


(なるほど、さっき【隠密】を使って走り去った冒険者の彼奴がそうか。ってことは鎖で縛られたのがその女の方だとしてもう一人の男は一体誰だ?)


エネドラはすれ違いで会った礼治達を思い出していた。しかし、そこには男がもう一人おり、その人物が誰か分からなかった。


「そうか。実は私もその冒険者にさっきギルドの外ですれ違いで会ったんだが、その時に男がもう一人いたんだが何か知っているか?」


「それでしたら多分、男の方の使い魔だと思います」


「何?その男は召喚魔法を使うのか?」


「私も詳しく聞いていないのですが、偶々隣で他の受付嬢がその冒険者の対応していた時に聞いていただけなのですが【タロットマジック】という魔法の一種に召喚魔法が含まれているそうです」


「【タロットマジック】だと?私は今までに多くの魔法を研究していたがそんな魔法聞いたことがないぞ?」


(突然ギルドに現れEランクパーティーをたった一人吹っ飛ばしただけでパーティーの戦意を喪失させる女に。その女を押さえる力を持つ使い魔を従わせて、尚且つDランクの冒険者を瞬時に倒すことができる未知の魔法を扱う男。一体何者なんだあの二人は?)


エネドラは生まれて初めて聴く魔法やその魔法を扱う男とその男に匹敵する力を持つ女に疑問を膨らませる一方だった。


「あのーギルドマスター?大丈夫ですか?」


突然黙ったギルドマスターに心配になって声をかける受付嬢。


「すまないね。今から私は部屋に戻るから今日その新人冒険者の対応をした受付嬢にその二人の冒険者についての資料を持たせて私の部屋に来させてくれるか?」


「はい、分かりました。直ぐに行かせます」


そう受付嬢は言ったとほぼ同時に新人冒険者の対応をした別の受付嬢のところに向かっていった。

エネドラは受付嬢を見送った後、ギルドの奥にある階段へと向かう。


「数十年振りにとても面白そうな冒険者が現れたもんだな」


その時彼女はそう呟き、まるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のように笑顔になって階段を上っていくのだった。


〜side:礼治〜


礼治達はギルドから出て、無事に『夕暮れの日差し亭』まで戻ってこれており、今は部屋の中で礼治はベットに腰を下ろし、フールは鎖で縛られたままの状態でベットに寝かせられており、フールと同じ大アルカナの一人であるサタンは部屋に備え付けられている椅子に胡座をかいて座っていた。


「もう落ち着いたかフール?」


部屋に着いてしばらくして落ち着いた礼治はベットの上で横にさせているフールに声を掛ける。


「はい、すいませんでした礼治様。一度でならず二度も礼治様の手を煩わせてしまい本当に申し訳ございませんでした」


「もう大丈夫そうだな。サタン、フールの鎖を解いてくれるか?」


フールが落ち着いたと判断した礼治はこちらを見ていたサタンにフールの身体に巻き付いている鎖を解いてもらうように頼む。


「了解だぜレイジの兄貴。解除(キャンセル)


サタンは返事をした後直ぐに呪文を唱え、フールに巻き付いていた鎖は解き、鎖を元の長さに戻してから自分の腕に巻きつけた。


「フゥ〜。やっと落ち着いてレイジの兄貴と話すことが出来るぜ」


サタンはそう言って礼治の方に身体を向ける。


「改めて初めましてだなレイジの兄貴。俺は大アルカナの一人で『デビル』のサタンだ。よろしくな。俺は敬語とか無理だからレイジの兄貴の方針には感謝するぜ」


サタンは再度自己紹介をしてから『人を傷つける言葉じゃなかったら喋り方は本人の自由』という礼治の方針に感謝した。


「俺はフールの姐御で実践したようにこの鎖で対象を捕縛する能力に長けている。だから捕獲依頼や情報を聞き出すために敵を捕らえる時には俺の能力は重宝するぜ」


サタンは腕に巻き付いている鎖を見せながら自身の能力を説明する。


「さっきは本当に助かったよサタン。これからよろしくな。しっかし『デビル』って言う割には角とか羽は生えてないんだな?」


礼治も挨拶を返した後、サタンを改めて見た時に自分が想像していた悪魔の姿とは違っていることに対して述べた。


「ヘェ〜俺の主はそっちの姿をご所望か。ちょっと待ってな」


サタンは突然そう言いだし椅子から立ち上がり指を鳴らした。

すると今度は白い煙が突然湧き出してきてサタンを覆い隠した。

そしてその煙が消えると同時にヤギの角に蝙蝠の羽そして先が尖った尻尾を生やした正に礼治が想像していた悪魔の姿をしたサタンが現れた。

その姿を見て驚く礼治であり。また、礼治の驚いた顔を見てとても満足したサタンは声を掛ける。


「どうだレイジの兄貴?ビックリしたか?これが俺の本当の姿だぜ」


「ああ、ビックリしたけどどうやって角とかを隠してたんだ」


驚きながらもサタンに尋ねる。


「実はな俺の所有するスキルの一つで【擬態】を使っててな。この世界だと魔族は忌み嫌われた恐怖の対象だろう?だからこのスキルを使うことでレイジの兄貴が魔族と関わっているって言われて変な偏見をされないようにできるってわけだ。どうだ?便利なスキルだろう?」


サタンはここぞとばかりに自分を自慢する。


「いや、本当にすごいな。サタンって結構頭が回って助かるよ」


礼治はサタンの配慮の仕方にとても満足した。


「ハハハ。そんなに褒められると照れるな。」


サタンは頭を掻きながら嬉しそうにしていた。


「おっといけねえ。飯の時間だから俺はもう戻るぜ。また俺の力が必要な時は何時でも呼べよ。それとフールの姐御はもうレイジの兄貴に世話をかけさせるんじゃねえぞ」


「待ってくださいサタン」


サタンはそう言って戻ろうとした時、ベットの上で鎖で縛られていた身体を解していたフールがサタンを突然呼び止めた。


「なんだよフールの姐御?俺は早く戻って飯にしたいんだが?」


「あの、もしかして。今までのことを全て他の大アルカナ達に話すんですか?」


サタンはそのフールの質問の意図に直ぐに気づく。


「ハッハァーン。さてはフールの姐御。今回の自分の行いを他の大アルカナ達に特にテミスの姐御には秘密にして欲しいとか言うつもりじゃないだろうな?」


<ビクン>


サタンの言葉に衝撃を受けたフール。どうやら図星だったらしい。


「残念だげどそれは無理な相談だぜフールの姐御。大アルカナは主の情報を共有するのが絶対条件。だから主と行動を共にした俺ら大アルカナは他の大アルカナ達に何をしたかを包み隠さずに話さなければいけない。あんただって理解しているはずだぜフールの姐御?」


「それは確かにそうですが…。しかし、そんなことを話されたらテミスになんと言われるか考えただけでも恐ろしいです!」


二人の会話を聞いていた礼治は午前中に呼び出した時に初めて会ったテミスを思い出すも特にフールが恐れているほどのものかと疑問を浮かべる。

そしてフール達の会話を聞いていてずっと気になっていたことをサタンに尋ねる。


「なぁ、サタン。話を聞いてる限りだと大アルカナのまとめ役はフールじゃなくてテミスの方が当てはまるんだけど俺の考えは間違ってるか?」


「いや、レイジの兄貴が思っている通りだぜ。フールの姐御はほぼレイジの兄貴と一緒に行動を共にしているからな。実際はフールの姐御はレイジの兄貴の情報伝達係でテミスの姐御が大アルカナのまとめ役だな」


「あー、やっぱりそうなんだ」


礼治が思った通りの回答がサタンから返ってきたのでそう言うしかなかった。


「お願いしますサタン。今回のことは秘密にしていてください!お願いします‼︎」


「だから無理だって言ってるだろ。諦めろフールの姐御」


サタンの言葉に凄く落ち込むフール。

そんな様子に礼治は仕方なくフールに助け舟を出すことにした。


「なぁサタン。ちょっといいか?」


「どうしたレイジの兄貴?」


サタンは呼ばれると、礼治に目を向けて尋ねる。


「報告は別にしてもいいからさ。テミスにはフールをあまり怒らないでくれって伝えといてくれないか?」


「礼治様‼︎」


礼治の提案を聞いたフールは先程までの落ち込んだ様子から一変、今度は満面の笑みで目を輝かせながら礼治を見つめた。

その様子を見たサタンはフールの変わりように少し呆れながらも礼治の方に再び向き。


「ったく、わかったよ。レイジの兄貴のお願いだ。テミスの姐御にはフールの姐御はちゃんと反省してっからそんなに怒らないでとレイジの兄貴から頼まれたって言っとく」


「ありがとうございますサタン!」


フールは全力でサタンにベットの上から土下座して感謝を述べる。


「フールの姐御。礼を言うならレイジの兄貴にだろうが。じゃあ今度こそ俺は戻るからな。レイジの兄貴はまた何時でも呼べよ。後もう念のために言っとくがフールの姐御は明日の朝絶対コッチに戻ってくること。じゃあな」


「ありがとな。サタンまた用があった時はよろしく」


サタンは礼治とフールに見送られながら光の中へと消えていった。

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