第12話 対人戦=魔法の試し打ち
昨日投稿できていなかったので本日二度目の投稿です。
「おいそこのガキ。ちょっと待ちな」
二人の目の前に図体のデカい男が現れ、二人の進路を阻んできたのだった。
礼治は正面に立ちはだかる人物に対して正直に言うと面倒くさいのが来たと思っていた。
「見た感じまだガキのお前らが冒険者になるだ?調子こいてんじゃねえぞ!お前らがどれ位実力を持っているかこの俺様が直々に判断してやるよ」
この男はさっきまで酒を飲んでおり。また、フールに嫌らしい視線を向けていた一人であった。
「ネスト様。レイジ様達は先程冒険者になったばかりでこれからGランクの依頼を受けて貰うんですよ。冒険者様がたの実力はこちらで判断しますのでネスト様が実力を判断する必要はありません」
礼治が面倒臭く思っているとカウンターのほうからマリーがネストという男に注意を促した。
「なんだマリーちゃん。俺様はただ新しく入ってきた後輩に先輩として手解きを教えるだけだぜ。それにタダの受付嬢のあんたが首を突っ込んでいいのか?」
「それは……」
マリーはネストの言葉に反抗できなかった。
どうやらギルドでは冒険者同士の争いごとには一切干渉してはならないという暗黙のルールがあるらしい。
礼治はマリーの方を向き、心配ないよと言葉を発さずに笑顔でそう応えた。
マリーはまたまた顔を赤くしたがそれでもまだ心配した顔で礼治を見ていた。
まあ、今日初めてなった冒険者が他の冒険者に絡まれているので心配するなと言われても無理な話であろう。
「おい!何処余所見してんだよガキが⁉︎」
どうやら礼治が余所見をしたことが気に食わなかったらしくネストというハゲ頭に肥満体型の男が怒鳴ってきた。
今度はネストの方を振り向く。
「何ですか先輩?」
「ふん。テメエのその態度が気に食わねえな。よし、お前だけに特別訓練をしてやろう」
ネストは意味の分からないことを言ってきた。
「俺は受けるつもりはないんですが?それにその訓練を受けたらタダじゃ済まないんですよね」
「そうだぜガキ。受講料としてお前の全財産とそのカワイ子ちゃんを払って貰うぜ」
ネストはフールを指差して来た。
ネストは自分の思っていたことと同じ内容を言ってきたので礼治は溜息を吐くしかなかった。
「はぁ…先輩。それって俺が先輩にボコボコにやられて金とフールを奪われるってことですよね?それは盗賊がする事と同じですよね。盗賊はいけない仕事だと親から教えられませんでしたか?」
「ふざけんじゃねえぞガキの分際で!俺様はギルドカードを発行して貰っただけで冒険者になったと考えているやつが大っ嫌いなんだよ‼︎」
そう真実を述べただけだがネストは顔を真っ赤にしてそう怒鳴る。
「ハイハイ現実はそう甘くないですよね。よく分かりました。なのでどいて下さい」
「ふざけんのもいい加減にしろよガキ!さっさと表に出やがれ‼︎」
ここまでくると他の冒険者達は礼治がタダじゃ済まないと勝手にそんな風に思われていた。
「礼治様。こんな奴ほっといて早く依頼を選びに行きましょう」
今まで黙っていたフールだがどうやら痺れを切らしたらしく空気の読めない言葉をかけてきた。
それを聞いたネストは勿論黙っておらず。
「おい女!奴ってまさか俺様の事を言ってるんじゃないだろうな⁉︎」
「あなたの他に誰がいるんですか?礼治様の進路を塞ぎ、ブヒブヒ言っているオークはあなたしか居ませんよね?」
「誰がオークだ⁉︎少しいい顔してるからっていい気になりやがって!その顔を台無しにしてやる‼︎」
ネストはフールからオークと言われた事でついにキレ、フールに殴りかかろうとした。しかし、それを礼治はフールの前に移動し突っ込んでくるネストの胸倉を掴み止め。
「俺の女に手を出すんじゃねえぞクソオークが‼︎‼︎」
そう言い放ちネストをギルドの出入り口に投げ飛ばした。
ネストは何が起こったかわからずそのまま吹っ飛んでギルドの扉を壊して外に出て行った。
それを見ていた他の冒険者達やマリーを含む受付嬢やギルド職員達もタダ呆然とその光景を見ていた。
ネストを投げ飛ばした礼治は笑顔でフールに向き。
「フールはここで待っててね」
そう言うとフールは顔を赤くして満面の笑みをつくり。
「はい礼治様。礼治様の女であるフールはここで大人しく待っていますね」
礼治の言葉が相当嬉しかったらしく『女』の
部分を強調しながら素直にそう答えた。
「マリーさんも、扉の弁償はアレを片ずけてからしますんで待っててください」
「……は、はい。お、お気を付けて下さい」
マリーは一瞬反応に遅れ慌てて返事をする。
二人の返事を聞いた後、礼治はギルドの出口正面に顔を向け外にでた。
その時、他の冒険者達が遅れて礼治の後追ってギルドの外へと向かった。
外に出るとネストはギルド前の広場の中央付近で今まさに立ち上がるところだった。
礼治はネストの所まで近づいていると立ち上がったネストが礼治に気づき慌てて背中に背負っていた鉄で創られたメイスを構える。
「先輩。気分が変わりましたんでぜひ訓練を受けさせて下さい」
「さっきのはマグレだったことに調子に乗りやがって!言われなくても訓練してやるよこのガキが‼︎」
ネストは礼治に軽々と投げ飛ばされたことを認めたくなく、大声で怒鳴ってくる。
「流石は先輩。わざと吹っ飛んでくれたんですね。そうだ!どうせなら自分達の所持金や金になるものを賭けて勝負しませんか?」
「アァ⁉︎賭けだと⁉︎」
礼治の言葉が気に食わなかったものの『賭け』という言葉にネストは反応した。
「はい、賭けです。ルールは簡単でどちらかが重度の怪我を負うか降参するかして両者がこれを認めればそこで試合終了。勝者は敗者から財産を貰うというものです」
「なるほどなその勝負のった」
この時ネストは礼治を完膚なきまでに叩き潰して、その後にフールを女として使えなくなるまでに犯して奴隷商に売ってやるとそう考えていた。しかし、この時ネストは気づいていなかった。彼の目の前にいるのが人間の皮を被った化け物だということを。
一方で礼治はネストの返答に満足して自分の財布から銅貨一枚を取り出した。
「それじゃあ試合開始の合図は俺が銅貨を上に弾くんでその銅貨が地面に落ちた瞬間に始めでいいですか?」
「ああ、それで良いぜ。さっさと始めな!」
「はい。ではいきますね」
ネストに急かされ銅貨をチャリンっと鳴らして上に弾いた。
弾かれた銅貨は上空で弧を描き、礼治とネストの間にまた音を鳴らして落ちた。
ネストは音が鳴ったと同時に礼治の方に駆け出しメイスを力一杯に振るう。
(ノロすぎじゃねえか?)
ネストの初手の攻撃に対しての礼治の一番の感想はそれだった。礼治から見てネストの攻撃はあまりにも遅く感じられ、礼治はバックステップを踏んで簡単に攻撃を避ける。
「まだまだ行くぞゴラーーー‼︎」
初手を避けられたネストは攻撃の手を休めずに続けてメイスを振るい礼治に攻撃を繰り返す。しかし、礼治はいとも簡単に攻撃を躱し続ける。
(これがコイツの本気なのか?)
明らかに手抜きと思ってしまう攻撃に礼治は疑問を思い、【ステータスチェック(自・相)】を使ってネストのステータスを調べた。
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ネスト (32) ♂ ヒューマン族
レベル:19
職業:重戦士
筋力:366 (196+110)
体力:260 (170+90)
耐性:255 (205+50)
敏捷:109
魔力:56
魔耐:70
運 :25
ー称号ー
なし
ースキルー
鈍器術
筋力強化:11
体力強化:9
耐性強化:5
ー特有スキルー
ステータスチェック(自)
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(ヤバ…。思っていた以上に雑魚じゃん)
敵の余りのステータスの低さに呆れてしまった礼治であるが、よくよく考えてみれば自分は称号やスキルのお陰で強くなりすぎたのであって、これが一般平均なんだと納得する。
「ゼェ…ハァ…ハァ…。いつまでも避けんじゃねえよ。堂々と勝負しやがれ!」
礼治は自分が規格外であると再認識していると息を切らし、額には沢山の汗を流しながらもこちらを睨んでくるネストに気づく。
「どうしたんですか先輩?そんな攻撃じゃ当たりませんよ」
「五月蝿え!だったらお前が攻撃してきやがれ‼︎」
息を整えたネストはメイスを持ち直して再び礼治に向かって走り出す。
「【タロットマジック】小アルカナ、杖」
こちらに向かってくるネストに礼治は異空間から『火の杖』を取り出し左手に持つと石の方を上空へと向ける。
「【火槍】」
礼治は覚えたばかりの呪文を発動すると上空に一本の火の槍が形成された。
『⁉︎』
その光景に二人の戦いを観戦していた野次馬や火の槍の見て立ち止まっていたネストが驚きの表情を見せた。
「それじゃあ行きますよ先輩」
「ま、待って「待ちませんよ!」…」
その言葉に驚愕から恐怖に変わったネストは慌てて礼治に魔法を止めるように懇願しようとするも、礼治はこれを無視して火の槍を放つ。
勢いよく放たれた火の槍は避けようとしたネストの右肩を貫いた。
「ギャァーーーーーー‼︎」
その攻撃にネストはあまりの痛みと火によってできた火傷によってメイスを手から離し、大声を上げてその場にのたうちまわった。そこで漸く彼は気づいたのだろう。
自分はとんでもない化け物に関わってしまったっということを。
「どうしました。せ、ん、ぱ、い」
そんなネストに礼治は笑いながら声をかける。
「こ、ここ、降参だ!俺が悪かった!許してくれ!それにもう俺はこの怪我でもう動けねえ!だからもう終わりにしてくれ‼︎」
ネストは怯えながら礼治に謝罪してきた。しかし、礼治はそれでは終わらせなかった。
「え?何の事ですか先輩?【タロットマジック】小アルカナ、聖杯」
ネストの言葉にわざと疑問符をつけてから呪文を唱え、異空間から青色の宝石が埋め込まれた銀の聖杯を異空間から取り出し右手で握る。
「【水回復】」
礼治は呪文を唱えながらネストに聖杯の飲み口の方を向けた。すると何も入っていなかった聖杯から突然水が溢れ出してきた。
その水はネストにかかると同時に光を放つと跡を残さずネストの右肩の傷を治し、先程まで流していた血と共に水も一緒に消えていった。
「傷なんて何処にもありませんよね先輩?それに最初に言いませんでしたっけ?『両者がこれを認めればそこで試合終了』って。俺はまだ認めてませんし、続きの訓練をしましょうよ。せ、ん、ぱ、い」
治療が終わった後、礼治はネストに向かって笑顔でそう言った。
「ヒィ〜〜〜〜‼︎」
ネストは背筋が凍えつきそうなほどの笑顔に恐怖し逃げ出した。
「何処に行くんですか先輩?解除。まだ終わってませんよねぇ?【タロットマジック】小アルカナ、金貨」
逃亡を始めたネストに問いかけながら『火の杖』と『水の聖杯』を異空間に戻すと礼治は新たに『土の金貨』を両手に五枚づつ取り出す。
その金貨はこの世界の金貨とデザインは違っており、女神様が彫られた絵で首元あたりに米一粒分の大きさの黄色の宝石が埋め込まれていた。
礼治は金貨を全てネストの逃げる方向に投げつけた。しかし、金貨は一枚もネストに当たらず通り過ぎる。
二人の戦いを観戦していた他の冒険者達は礼治が外したかと思っていたがそうではなく。
「【土壁】」
礼治が呪文を唱えた直後。金貨一枚一枚から大量の土が溢れ出てきて大きい土の壁が形成された。
ネストは突如目の前に現れたその土壁に思いっきりぶつかり後ろに倒れる。
ネストが起き上がろうと両膝と両手を地面につき顔を上げた瞬間、後ろの土壁は跡形もなく消え、ネストの目の前には凍えそうな笑顔とは逆で今度は瞬時に燃え尽きそうなほどの怒りのオーラを放ち、異空間から取り出していた『風の剣』の剣先をネストに向けて立っている礼治と目が合う。
「お願いだ殺さないでくれ‼︎‼︎俺が悪かった!だから本当に許してくれ!頼むこのとうりだ‼︎‼︎」
そう土下座をしてくるネストに礼治はあることを質問した。
「おい、正直に答えろ。もし、あんたと俺が逆の立場だったらあんたは俺を殺さないでいたか?」
「それは勿論<スパッ>ヒィッ‼︎」
「俺は正直に答えろって言ったはずだが?次はねえぞ?」
ネストが嘘をついたので礼治は右の頬を少し斬りつけ血を流させた。
そして再度、脅しネストに質問を答えさせた。
「分かりました正直に答えます!俺はあんたを完膚なきまでに叩き潰して、その後あんたの連れの女を女として使えなくなるまでに犯して最後は奴隷商に売ってやるとそう考えていました‼︎本当にスミマセン‼︎もうしませんので許して下さい‼︎‼︎お願いします‼︎‼︎‼︎」
ネストの謝罪を聞いた後、礼治は無言で剣を持ち上げ振り下ろした。しかし、その剣先はネストには当たらずネストが土下座している目の前の地面に突き刺さった。
「ギャァーーーー‼︎‼︎‼︎」
ネストは目の前にある剣に驚き、後ろに仰け反り腰を抜かした。
「あんたは今幾ら持っている?」
「‼︎、銀貨四枚、銅貨が八枚、後は鉄貨と石貨を六枚づつ持ってます‼︎」
礼治の質問にネストは怯えながらも即答した。
「じゃあ銀貨四枚をここに置いて今すぐ俺の前から消えろ!準備を整えたら明日の朝七時の鐘が鳴るまでにこの街から出てけ!そして一生この街に戻って来るな‼︎もしこの街で見つけたら地獄の果てまで追いかけてあんたを殺す‼︎‼︎分かったらさっさと行け‼︎‼︎‼︎」
「は、はい!ありがとうございます!失礼します‼︎」
ネストはそう言って銀貨四枚を置き脱兎のごとく礼治の前から去って行った。
その戦いを瞬きすらせずに観戦していた冒険者達は呆然としてその場に立つしかなく。また、自分が因縁をふっかけなくて良かったと心から思う者も何人かいた。
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水の聖杯 LV.1
水魔法
LV.1 水回復
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土の金貨 LV.1
土魔法
LV.1 土壁
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