表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/46

第10話 大アルカナの世界

ここは礼治が住んでいるアグラストとは別の世界の狭間にある異空間。

そこには礼治の使い魔である大アルカナ達が住んでいた。

その場所にはローマ数字で0〜21の番号に分けられた計二十二の部屋が存在し、その部屋の前の中央には大アルカナ達が集まる広間があった。

すると突然、広間の更に中央から光が放たれその中から二人の人物が現れた。

フールとトランである。


「お、やっと帰ってきたか。フールの姐御は久しぶりだな。トランのガキもフールの姐御を連れて帰ってきてくれてあんがとな」


フール達が帰ってきたと同時に出迎えた者がいた。

その者はボサボサした赤髪と赤い目をもち、頭からヤギのような曲がった角と背中からはコウモリのような羽そして腰の辺りからは先の尖った尻尾が生えており、悪魔の格好をした十代後半の男性が立っていた。


「ただいま戻りましたサタン」


「ただいまサタン兄。フール姉を連れて帰ってこれたのはレイジ兄のお陰だよ。後、ガキって言うな!」


二人からサタンと呼ばれる彼に対しフールは軽く会釈して、トランは頰を膨らませ抗議した。


「もっと大きくなったらガキって呼ばないでやるよ」


サタンはトランの抗議を嘲笑う。


「ブウゥゥー」


そんなサタンの態度にトランはさらに頰を膨らませ可愛らしく怒ってますアピールをする。


<パシン>


「痛え⁈」


その時、トランをからかっていたサタンを誰かが背後から近づき頭を叩いた。


「痛えじゃねえかテミスの姐御」


サタンは頭を抑えて振り返るとそこには、左手には天秤を持ち、腰には剣を刺した肩まで伸びる茶髪で黒目の二十代前半の女性が立っていた。


「こら、サタン。そうやって人をからかってはいけませんよ。トランもそんな顔をしないでもう遅いので早く寝なさい」


「へいへい、すみませんでしたー」


「エェ〜、ボクもフール姉からレイジ兄のこと聞きたいのにー」


テミスと呼ばれた彼女にサタンは反省した様子を感じさせない軽い謝罪をし、トランはテミスにお願いをしていた。


「サタン。返事をするときは『はい』ですよ。トランも早く寝ないと明日もしレイジ様から呼ばれたとしても百パーセントの力を出せずに終わってしまいますよ」


「えー⁉︎ボクそんなの嫌だ!レイジ兄には全力でサポートしたい‼︎」


「それなら今日はもう寝なさい。明日の朝にでも今日聞けなかった他の者達と一緒にお話しますからね」


「うーん、わかったよテミス姉。約束だよ」


「はい。約束です」


トランはテミスと約束して安心したのか。大きな欠伸をして自分の部屋である『ⅩX』と書かれた部屋にタオルケットを引きずりながら戻っていった。

それを見送ったテミスは今度はフールの方を向いた。


「フール様、一日ぶりですね。大アルカナのまとめ役である貴方がいったい何処で油を売っておられたのですか?」


この時のテミスの表情は笑顔でありながらも目は完全に笑っておらず、恐怖を感じさせるその表情でフールに問い掛けた。


「別にサボっていたわけではありません。私はただ、礼治様のお側で魔法の使い方を教えたり。その世界での常識を教えたり。また、礼治様が倒れたときに看病していたり。後はその…夜の営みをさせて頂いたりと////。私は礼治様の為に一生懸命サポートしていました」


フールは弁明の後半で顔を赤くしながらも、自分がサボっていたわけじゃないことを主張する。


「まあ、百歩譲って貴方がサボっていなかったとしましょう。しかし、報告のために一旦此方に戻って来ることは可能ではなかったのですか?」


「ウグ」


テミスの言葉がフールの図星を貫いた。これで何も言い出せなくなったフールを見たテミスは半ば呆れながらも彼女に別のことを尋ねた。


「では、フール様。これからレイジ様の昨日丸一日の行動を余すこと無く教えて頂けますか?」


「はい、わかりました。しかし、ここに居るのは私を抜いてサタンとテミスのお二人だけですよね?」


テミスが話題を変えた事に内心ホッとしたフールの質問に対し、サタンは何かを思い出したかのように右手の拳と左の掌をポンっと叩いた。


「そう言えば、ロマノフの旦那とフォースの姐御にフールの姐御が戻ってきたら声かけろって言われてたな。すっかり忘れてたぜ」


「では私がフォースさんを呼びに行くのでサタン。貴方はロマノフさんを呼び行ってください」


「へいへい了解しましたーっと」


そんな会話をした後テミスは『Ⅷ』と書かれた部屋へ、サタンは『Ⅳ』と書かれた部屋に向かい、ほぼ同時に扉を叩いた。


「おーい、ロマノフの旦那。フールの姐御が戻ってきたぞ〜。さっさと出てこーい」


「フォースさん起きられていますか?フール様がお戻りになりましたよ」


二人は部屋の中にいるであろう人物に声をかけ続ける。


「そんな大きな声を出さんでよい。もうすぐで出るからちとは待っとかんか」


「煩いなあ。もう聞こえてるから扉をそんなに叩かないでくれ。すぐに出るから」


暫くしているとそんな声が聞こえしばらくしているとほぼ同時に二つの扉が開き、中からある人物が出てきた。

『Ⅳ』の部屋から出てきた人物は、ゴツイ鎧を着て、赤色のマントを羽織った六十代の白髪頭で白い髭を生やした貫禄のある男性が出てきた。

そして、『Ⅷ』の部屋から出たきた人物は、フールより劣るが魅力的な身体を持ち、踊り子が着るような動きやすく魅せるドレスを着ているダークレッドのポニーテールで黒目の二十代の女性が出てきた。

その二人の人物がフールに気づき声を掛けた。


「オォー、これはこれはフール殿ではないか。戻っておったか。で、どうであったか儂等の主であるレイジ殿は?人徳があるお方だったか?」


「おい、ロマノフの旦那。俺はフールの姐御が戻って来たからあんたに声を掛けたんだぞ」


「まあまぁ、細かい事は気にせず。ささぁ、フール殿。早うレイジ殿の話を聞かせてくれぬか?」


「はぁー…、俺はやっぱあんたの言動には着いて行けないわ」


あまりにも自由なロマノフの言動にサタンは頭を抱えていた。その一方でテミス側はと言うと。


「お、フールじゃないか。どうだったレイジは?骨のある奴だったか?」


「ちょっとフォースさん!大アルカナの使い魔である貴方が何故、私達の主であられるレイジ様を呼び捨てにしているのですか⁉︎それに『奴』とは何ですか『奴』とは‼︎⁉︎」


「煩いなあ、別に良いじゃねえか。あんただってトランから聞いたろう?私等の主は自分の事をちゃんと名前で呼ぶ以外、人を傷つける言葉じゃ無かったら喋り方は各自の自由だって?」


「それは確かにそうですが……」


「確かに『奴』って言ったのは悪かったよ。でもさ、主とはお互いが畏まらずに思った事を何でも話せるようになる為にはこうした方が早く打ち解けれるじゃん。だから私は主の事は『レイジ』って呼ぶからな」


「もう好きにして下さい……」


テミスはフォースの筋が通った理由に匙を投げた。

その二組の会話を聞いていたフールは二人の質問に答える。


「ただいま戻りました。ロマノフ、フォース。礼治様は人徳があり。また、骨のあるお方ですよ」


フールは礼治がとても素晴らしい人物だと教えた。それを聞いた二人は。


「ほぉーそれは素晴らしいのう。これは早うレイジ殿に会って儂の力で守ってやりたいのう」


「別にあんたが守る必要はないよ。敵がレイジの所に着く前に私が全部片付けてやるからよ」


「フォフォフォ、それは無理な話じゃぞ小娘。幾ら貴様が怪力女だからと言って敵の量が多かったらカバーできんかろうに」


「怪力女は余計だよこの鉄塊爺(てっこんじじい)。あんたは鉄塊の如く立っていれば良いんだよ」


「なんじゃと怪力女?」


「やるか鉄塊爺?」


その瞬間、二人の間には激しく火花が散り。ほぼ同時に駆け出しお互いに相手の方に向かった。

ロマノフの両手それぞれにはいつの間にか大盾が装備されており。フォースの方も自分の拳より一回り大きい黒鉄製のガントレットを装備していた。

互いに近づき互いの武器がぶつかり合うその直前、それを阻止するかのように二人の身体に何かが巻き付いてきた。

それを見てみると鋼で創られたとても頑丈そうな鎖であった。

そしてその鎖の使いは誰かと言うと。


「おーい、お二人さん。ガチで喧嘩するの止めてくんねーか?あんたらを同時に止めるのマジでキツイんだけど」


面倒臭そうに二人に注意をするサタンであった。


「おいサタンさっさとこの鎖を外しやがれ‼︎」


「そうじゃぞサタン。さっさと外せい‼︎」


抗議してくる二人だが。


「そうやっていつも喧嘩するよな?今回は反省としてフールの姐御の話が終わるまではそのままでいろ。うんじゃ、フールの姐御さっさと報告を頼む」


「それではお話ししますね」


サタンはロマノフ達の抗議を軽く躱してフールに話を聞かせて貰う為に御願いした。

フールもサタンの言葉を聞き、やっと本題である報告を始めた。

フールは昨日のことを全て話した後、主である礼治が前に住んでいた世界で何に苦しめられていたかをも報告していた。

因みにフール以外の大アルカナ達は礼治が異世界人である事は知っているがその過去までを知る者はいなかったのだ。


「なんだよそのレイジの兄貴のクソ親父は‼︎レイジの兄貴が『道具』だと⁉︎フザケンナ‼︎俺はレイジの兄貴とまだ会ったことねえから分からねえけど、フールの姐御から聞いた話しではそんな扱いされる人間じゃねえ‼︎いや!あったらいけねえんだ‼︎‼︎」


「そんなふざけた奴らから私はレイジ様をお守りします。使い魔としてではなく、レイジ様に心から忠誠を誓う者としてレイジ様にお従います‼︎」


「その時は儂も全力を使いレイジ殿の盾になろう!決してそんな輩を通さない盾としてじゃ‼︎」


「レイジが可哀想だよ!私は不器用だけど、でも!レイジの武器としてレイジの敵は一人残さず殲滅してやる‼︎何があってもレイジを私の力で守ってやる‼︎」


そう一人は怒り、もう一人は決意し、また一人は決断し、後一人は泣いていた。しかし、その四人共全員が主である礼治に心から忠誠を誓うのであった。

こうして第一回大アルカナ会議は終わりを告げたのであった。



________________________

ロマノフ:大アルカナNO.4『エンペラー』

正位置の意味

『支配、安定、成就・達成、男性的、権威、行動力、意思、責任感の強さ』

逆位置の意味

『未熟、横暴、傲岸不遜、傲慢、勝手、独断的、意志薄弱、無責任』


フォース:大アルカナNO.8『ストロング』

正位置の意味

『力量の大きさ、強固な意志、不撓不屈、理性、自制、実行力、知恵、勇気、冷静、持久戦』

逆位置の意味

『甘え、引っ込み思案、無気力、人任せ、優柔不断、権勢を振るう』


テミス:大アルカナNO.11『ジャスティス』

正位置の意味

『公正・公平、善行、均衡、誠意、善意、両立』

逆位置の意味

『不正、偏向、不均衡、一方通行、被告の立場に置かれる』


サタン:大アルカナNO.15『デビル』

正位置の意味

『裏切り、拘束、堕落、束縛、執着、未練』

逆位置の意味

『回復、覚醒、新たな出会い、放置、執着を失くす』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ