第9話 大アルカナの決まり
今日からお世話になる『夕暮れの日差し亭』の泊まる部屋のベットに礼治は腰を下ろしフールはピンク色の自分の刺激的な身体を強調させるようなネグリジェを着て床に正座していた。
何故こんな事になっているかというと、礼治が昼頃にトランを呼んで頰の傷を直してもらった後にトランが戻る際にフールに早く戻ってきて欲しいそんな事を言っていたのである。
最初はトランからのお願いかと思っていた礼治だが、他の大アルカナ達もと言っていたので大アルカナ全体でフールに戻ってきて欲しい理由があるであろうと思い、今はその事をフールに聴いているのだが。
「で、トランが言っていた事はどう言う意味?」
「さあ?何の事でしょうねえ?<サー>」
と、フールは如何にも何か隠してますよと言っている態度で目を泳がせていた。
このままでは拉致があかないと礼治は思い、フールではなくトランに尋ねる事にした。
「【タロットマジック】大アルカナNO.20『ジャッチメント』」
呪文を詠唱すると光が放たれ、その光の中から現れたトランは水玉模様のパジャマを着ており、左手にはラッパではなくタオルケットを握っていて空いている右手で隠せない程に口を開き大きな欠伸をして目尻に涙を流していた。
「ふあぁ〜、どうしたのレイジ兄?ボクもう眠いんだけど…」
トランは目をこすりながら尋ねる。
「ゴメンなトラン。もしかして寝てたのか?」
「違うよレイジ兄。今から寝ようとしたところ。良い子はもう寝る時間だからね…」
どうやら礼治達が今いる世界と大アルカナ達がいる世界とは時間の流れ方が同じらしく、ついでに言うとこの世界での一年間は360日で一日24時間だそうだ。
「ゴメンなトラン。ちょっとトランに聞きたい事があってそれまで我慢してくれないか?」
「レイジ兄のお願いならいいけど、フール姉じゃあダメなの?」
トランは首を傾げながら質問してきた。
「実はなあフールが俺の質問に答えてくれなくてな。だからトランに聞くことにしたんだ」
それを聞いたトランは少し驚いた顔をした。そしてそのことで眠気が覚めたトランは
「えええ〜〜⁉︎ フール姉がレイジ兄の質問に答えなかったの⁉︎ 主様からの質問は自分が答えられる範囲のことだったら絶対に答えないといけないって言ってたフール姉が⁉︎」
「ウグ」
トランの言葉でフールは心にダメージを受けたかの様に胸に手をあてそんな感じの声を出した。
「そんな訳でトランに質問するからちゃんと答えてくれるとすごく助かるな」
礼治はトランにお願いしてみると満面の笑みを浮かべてくれた。
「うん!分かったよレイジ兄。ボクは良い子だから何でも聞いてね。ボクが答えられる範囲のことなら何でも答えるから!」
「ありがとうトラン。じゃあ早速だけど、トランが戻る時に言ってた事って一体どうゆう事かな?」
「なんだその事か」
トランは自分の答えられる質問にホットしてすぐに答えてくれた。
「えっとねえ。ボク達大アルカナはレイジ兄が住むこの世界とは別の場所、異空間だったかな?そこでレイジ兄がボク達を必要とする時に呼んでくれるのを待ってるんだ」
トランはそこで一旦話を区切った。
そこでフールやトラン他の大アルカナ達が普段はそこに住んでいる事を礼治は知った。
「でね。その空間とレイジ兄が住む世界はレイジ兄がボク達を呼ぶ時以外は何があったとしても繋がらないの。つまりボク達はレイジ兄の昨日丸一日の動向を把握できずにいるんだ。もちろんレイジ兄とずっと一緒にいたフール姉を抜いてね。だからフール姉には一旦こっちに戻ってきてその日の事を教えて欲しいんだ」
「つまり今はフールが俺の情報を独り占めしてるって事なんだな?」
「簡単に言えばそうゆう事だよレイジ兄」
トランの説明で大アルカナ達の決まりについて理解した礼治はフールに目を向けるとフールは礼治から目を逸らした。
「フール。決まりはちゃんと守らないといけないぞ」
礼治は目を合わせようとしないフールに優しく言った。
「しかし、私が居なくなったら誰が礼治様を守るんですか?夜の営みは誰がするんですか⁉︎」
そんな礼治に対してフールは反論してきた。
「別に今誰かに狙われているわけじゃ無いし、それに今日は絶対しないといけないわけじゃ無いよね」
礼治はそれに対抗する。
「いいえ絶対しないといけません!いえ、寧ろやらせて下さい‼︎」
フールは本音を暴露した。
「それはフールの意見だよね。じゃあ命令、今すぐ他の大アルカナ達のところに戻ろっか?」
礼治は命令を使った。
「礼治様それは卑怯です‼︎」
フールは抗議してきた。
「じゃあフール。今から一緒に寝て明日以降そうゆう事が出来なくなるのと、今から戻ってこれからもそういう関係を続けるかどっちにする?」
礼治は脅しを使った。
「礼治様のイジワル〜〜〜(泣)‼︎」
フールは心が折れた。礼治は戦闘に勝利した。
「わがりまじだ。フールはいまがらもどりまず。そのがわりあじだおぎだらぜっだいずぐによんでぐだざい」
礼治と離れるのが嫌なフールは観念したのか、交換条件を提示して、礼治はそれを承諾した。
「ってことでトラン。フールを一緒に連れて戻ってくれるか?」
「分かったよレイジ兄。でもその前に聞きたい事があるんだけど聞いていい?」
「なんだトラン?」
「"よるのいとなみ"って何?」
「ブフッ‼︎」
礼治はまさかのトランの爆弾発言にダメージを受け吹き出した。
もちろんまだ幼いトランにこれを教えては教育上多大な問題に発展してしまうので礼治は慌てて誤魔化すことにする。
「それはまだトランが知らなくていいことだから忘れてくれるとお兄ちゃんはとても助かるんだけどな?アハハハハハ…」
「そうなの?…じゃあ分かったよレイジ兄。ボク、レイジ兄のために今のこと頑張って忘れるよ」
(俺の目の前に天使がいた〜〜⁉︎いやまじ天使だけどさあ‼︎何なんこの純粋な笑顔は‼︎この笑顔があれば戦争なんか出来なくなるよ‼︎‼︎少なくても俺はできない‼︎‼︎‼︎ヤバい抱っこしたい‼︎‼︎‼︎‼︎)
犯罪者の思考を礼治は気力全てを使い、何とかトランの頭を撫でるだけで済んだ。
「ありがとうなトラン」
「へへへへ。レイジ兄に褒められた」
(ヤベエ今トランの笑顔見たら自分が終わる‼︎何がなんでもそれは防がないと‼︎‼︎)
トランの子供らしい笑顔にやられてしまった礼治はもう犯罪者になる一歩手前にいた。しかし、大切な物を守るために何とか踏みとどまった。
「じゃあフール姉行くよ。レイジ兄もバイバイ。またいつでも呼んでね。っあ、でも夜だけはやめてね。じゃあ今度こそバイバイ」
そう言い残したトランは未だに落ち込んでいるフールを連れて異空間に戻っていった。
二人が光の中に消えてからすぐ礼治はベットに倒れた。
今日は本当に色々あって疲れたのでそのまま礼治は一人では大きいベットで眠りにつくのであった。