プロローグ
この作品は修正版です。
話の大まかな流れは変わりませんが視点が三人称であったりと所々修正が入っています。
始まりの春。桜の花びらが舞い、入学式や就職、様々な人々が新たな生活の第一歩を踏み出す時期。
ある街の昼下がり、車が多い大通りに面した道の一角には紺色の布で覆いかぶされた大人が二、三人くらいは入れそうな小さな建物があった。
「う〜ん。ついにこの日がやってきたな」
その建物の前で背伸びをする男性がいた。
彼の名前は浦田 礼治 25歳。
ある大企業の社長である父親の一人息子で後にその会社の跡取りとなるはずだったものの、ある理由で会社を辞め、職のない彼は今は亡き占い好きの母親の影響で始めたタロットカードを使って占いをする「タロット占い師」になるために準備をしており、この建物は彼が今日から開く店であった。
「さてと。準備もできたことだし、あとはお客さんが来るまで待ちますか」
そう言って店の中に入ろうとしたその時だった。
「避けろーー‼︎」
「え?」
背後から聞こえてきた大声に反応し、後ろを振り向く。
その時、車道を走っていたであろう大型のトラックが猛スピードで礼治に向かって走ってきていた。
(やばい‼︎)
その状況に自分の身が危ないと理解した礼治であったが、トラックは既に彼の目の前まで迫っており、避けることができなかった。
大型トラックはすごい勢いで礼治に衝突、そのまま礼治の店に突っ込んでいき、礼治は店とトラックの下敷きになってしまった。
(…俺は…死ぬ、のか?…)
トラックに轢かれ、骨折や大きな傷を負っていた礼治は微かに意識が残っていた。しかし、その意識は急速に薄れてゆく。
(…母さん…今…行く…から……ね…)
そのまま礼治は意識を失い、二度と眼を覚ますことはなかった。
〜〜〜
「あれ? ここは…?」
事故に遭い死んだはずの彼は目を覚ました。
「俺は死んだはずじゃあ…」
勢いよく迫って来るトラックに轢かれた彼は生きている自分に訳が分からなくなっていた。
「目を覚まされましたね」
今の状況を整理できずにいる礼治の背後から声をかけられ、慌てて後ろを振り向く。
「……‼︎」
その瞬間、礼治は言葉を失ってしまった。
礼治の目の前には金髪ロングでスタイルがどこぞのグラビアモデル並みで、女神様の様な優しいオーラを放つ顔立ちをしており純白の修道院の服を着た女性がいたのだ。
(………)
あまりの美しさに思考も停止してしまった。
「本当に申し訳ございません。幾ら礼治様の力が世界を崩壊する恐れがあるからといって、力を押さえきれず、強行手段として礼治様を亡き者にしてしまい本当に本当に申し訳ございません」
その美しい女性は礼治の意識があることを確認した瞬間、礼治に土下座で謝罪してきた。
(え? なんで土下座されてんの?)
既に色々とおかしな状況にパニック寸前の礼治はなんとか落ち着こうと、パニックした自分を落ち着かせ、頭を使い今の状況を整理してみた。
(まずはこの場所だな)
礼治とその女性がいる場所は10畳くらいの広さに周りは白い壁に覆われ、上からは眩しくないくらいの明るさにとても暖かく心から癒される光で照らされている。
(扉が見当たらないけど、隠し扉でもあるのか?んん〜分からん)
礼治は理解できそうにないと判断し、そのことは諦めて次のことについて考えた。
(目の前にいる女性は誰だ?っていうか、俺が世界を崩壊する力を持っている?強行手段で俺を亡き者にしただって?ヤバもう無理頭がパンクしそう、取り敢えず聞いてみるか)
考えても何一つ理解できずに頭のキャパが崩壊しそうな礼治は目の前にいる女性に直接問いかける。
「あのースミマセン、いまいち状況が飲み込めないのでお話しを聞かせてもらえますか?」
「<ビック>ス、スミマセン。私がもっとしっかりしないといけないのに、礼治様に心配をかけてもらい本当にスミマセン‼︎<ゴツン>」
いきなり声を掛けられた女性は驚きまた頭が割れそうなくらいの勢いで床に頭をぶつけて再度謝罪する。
「いや、本当に大丈夫なので、頭を上げて下さい」
「礼治様はお優しいお方なのですね。ありがとうございます」
そう言って女性はやっとのこと頭を上げ、深呼吸をし笑顔で向ける。
そのあまりにも美しい笑顔にやられた礼治は顔を赤く染めてしまう。
「それではお話しさせて頂きます」
そう言って女性は話し始めた。
「まずは自己紹介からですね。私は礼治様の世界でいう神の一人で『運命』を司る神として人々に崇められており、ここは礼治様の暮らしていた世界とあの世の間にある私が創り出した異空間です」
「え? 神様なんですか?」
いきなり神と言われれば普通だったら相手の正気を疑う場面だろうが、礼治は既にトラックに轢かれて死んだはずの自分が今の状況で怪我一つなく話せているのだから疑いようがなかった。
「っあ、俺の名前は浦田 礼治と言います。しかし、どうして俺が此処にいるのですか?もちろん俺が死んでるのは覚えていまして、どうして俺が神様に会っているかという意味です」
礼治は慌てて自己紹介と自分が理解していることを伝え。今自分が疑問に思っていることについて尋ねる。
「礼治様のお名前は存じております。他にも礼治様の生い立ちも知っております。なんで私が礼治様の前にいるかと申しますと私が礼治様を呼んだからでございます」
「なるほど、でもどうして俺なんかを…もしかしてさっきの俺の力が世界を崩壊させるとかっていうはなしに関係しているんですか?」
「はい、その通りでございます。礼治様は確かカードを使って占いをする趣味がおありでしたね?」
「はい、恥ずかしながらタロットカードでいろんな人を占うことが好きでまた世界中のタロットカードを探して集めたり挙げ句の果てには自分でカードを作ったりとまるで女の子のようなことをしています」
「全然お恥ずかしいことではないと思いますよ、それにその占いで多くの人を礼治様はお救いになられたではないですか」
神がそう言うのも礼治は今までに多くの人々を自慢のタロット占いで救ってきたからだ。
例えば小学校の頃は遠足先の近くの森で迷子になった友達を占いで見つけたり。中学では、礼治と同じく父親が会社の社長である幼馴染みの女の子が誘拐された時、占いで犯人がその会社の副社長と社員だったこと、幼馴染みが監禁されている場所を割り出し、単独で幼馴染を無事に救出することが出来たことなどと言った様々な実績を持っていたのだ。
「はい、確かに俺の占いはよくあたりました。自分でも驚くくらいに……もしかして俺の力って…?」
「はい。礼治様のお察しのように礼治様の『タロット占い』がその力でございます」
「なるほど、でもどうしてですか?…あっ‼︎もしかして、それが『運命』とかに関わっているとかですか?」
「はい。礼治様は物分かりが良くて助かります。私は『運命』を司る神であって、誠に勝手ながら世界に生きるもの全ての運命を操作して、世界の均衡を保っております」
「で、その均衡を俺の占いが破壊してしまい世界を崩壊させてしまう恐れがあったんですね」
「はい、まったくもってその通りでございます」
ようやく理解ができた礼治に神は更に言葉を続ける。
「なので、そうならないためにこちらの勝手な理由で礼治様を亡き者にし、今現在に至るということです」
「それなら仕方がないですね。その運命に従いましょう」
これで話は終わり、礼治はこれから小説でいう輪廻の流れに入るのだろうとそう思っていると。
「本当に申し訳ございませんでした。もし、礼治様が望むのであれば、異世界で、第二の人生を歩むことができますが、どうなさいますか?」
その神の言葉で礼治はフリーズしてしまった。
「無論、礼治様が望まないのであればこのまま輪廻の流れに入ってもらうのですが、どうなさいますか?」
「異世界転生ってあの異世界転生ですか⁉︎」
今時の異世界転生・転移もの小説を読んだ者なら誰もが憧れる非リアルな提案に礼治は興奮し、その話に食いつくように神の手を握ってから尋ねた。
「落ち着いてください礼治様! 間違えなく礼治様の思われている異世界転生でございます‼︎」
神の言葉に礼治自身が興奮している事に気付き、興奮を抑えてから慌てて神から離れた。
「すいません、興奮してしまってつい…」
「いえ、お気になさらずに大丈夫ですよ///」
この時、礼治は顔を背けていたので神の顔が赤くなっていることに気づかなかった。
「では説明させていただきます」
「お願いします」
礼治と神はお互いに向き合ってから神はこれからの流れについて話し始めた。
「まず、礼治様に行って頂く世界は『アグラスト』という世界で、そこは大きく分けて五つの大陸で構成されております。そして種族は『ヒューマン族』『獣人族』『エルフ族』『ドワーフ族』『魔族』に分かれており、『魔族』以外の種族は、交流が盛んに行われており礼治様が転生し、最初に訪れる街にも『ヒューマン族』とは別の種族がおられます」
「『魔族』は危険だったりするんですか?」
「600年ほど前に『魔族』の起こした大戦争により、各大陸で大きな被害があい、沢山の犠牲者がでてしまい、今では戦争の引き金となった『魔族』とはどの種族も交流しないのです」
「なるほど…あっスミマセン続きをお願いします」
「他にも生物は、動物や魚、後は虫などがいますがその動物たちの凶暴化やダンジョンから創られ外に放り出された『魔獣』がおります」
「いかにも異世界って感じですね。やっぱり剣や魔法が有って、ギルドもあったりするんですか?」
異世界転生、つまりはファンタジーの世界であり、そのことについて尋ねる。
「はい、もちろん全てあります。しかし、今のまま礼治様を転生させてしまうと危険なので私が礼治様の要望に応え、スキルや加護を与えますので安心してください」
「なんでもいいんですか?」
神様は礼治が望むスキルを渡してくれると言う申し出にその提案を受けた本人はサービスが良すぎるのではないかと尋ねる。
「はい、これは礼治様への謝罪とこれからの生活をより充実したものにしてもらうためのいわば私からのプレゼントです」
ここまで言ってもらえるのだ。
礼治は神様のご厚意を感謝して受け取る事にした。
「ありがとうございます。じゃあ、早速スキルを考えるので待ってもらっていいですか?」
「はい、時間は無限にありますので悔いが残らないようお考え下さい」
「はい‼︎」
〜5時間後〜
「では礼治様、間違えがないかご確認をお願いします///」
と、何故か顔が赤くなっている神から言われ礼治が受け取ったものはB5サイズの青色の向こうが透けて見える板であり、礼治はそこに書かれているものを確認する。
________________________
レイジ・ウラタ (15) ♂ ヒューマン族
レベル:1
職業:タロット占い師
筋力:1140 (40+1100)
体力:1150 (50+1100)
耐性:1130 (30+1100)
敏捷:1130 (30+1100)
魔力:1300 (150+1150)
魔耐:1250 (100+1150)
運 :2110 (10+2100)
〜称号〜
転生者
運命神の加護
運命神に愛されし者
〜スキル〜
剣術
魔力強化:5
魔耐強化:5
魔力消費削減(大)
魔力回復(大)
アイテムボックス(極)
鑑定(極)
〜特有スキル〜
タロットマジック
異世界言語(話・読・書)
ステータスチェック(自・相)
隠密
偽装
気配察知
成長促進(大)
スキルレベルアップ(速)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(これ絶対にレベル1のステータスじゃないよな…)
RPG系のゲームで初期キャラのステータスにしては高すぎる値にやりすぎ感があるものの、ちゃんと礼治が望んだものがあり、まずはじめにスキルから順番に確認していく。
ースキルー
剣術
剣術を身につけたものが持つことができるスキル
魔力強化:5 (×10=50up)
魔力を増加させるスキル
(『1』上がるごとに10アップ)
魔耐強化:5 (×10=50up)
魔力耐性を増加させるスキル
魔力消費削減(大)
魔力の消費を大幅に削減するスキル
魔力回復(大)
魔力の自然回復時に一定時間での回復量が大幅に増加するスキル
アイテムボックス(極)
生物以外ならどんなに大きく、重くても収納できる。取り出すときは、取り出したいものを念じれば出てくるスキル
鑑定(極)
万物のものを詳しく事細く調べることができるスキル
ー特有スキルー
タロットマジック
78枚あるタロットカードから力を借りてカード特有の能力を使うスキル
(魔法を使えば使うほど強化され、使えやすくなる)
異世界言語(話・読・書)
異世界でのありとあらゆる言語を自動で翻訳し、会話や読み書きなどの補助を担うスキル
ステータスチェック(自・相)
自身と相手のステータスを見ることができるスキル。しかし、相手のステータスはスキル所持者のことを信頼している者以外は自身より運が上の者のスキルと称号と恩恵を見ることができない。
隠密
自身の気配を隠すことができるスキル。しかし、自分より運が上の者には効果が無い。
偽装
自身のステータス、スキル、称号を隠すことで相手からバレなくするスキル。しかし、自身より運が上の者には効果が無い。
気配察知
範囲が半径1キロのもの全てを察知することができるスキル
(範囲は半径1キロ以内なら自由に調節可能)
成長促進(大)
自身とパーティーのレベルが大幅にアップし易くなるスキル
スキルレベルアップ(速)
スキルの強化されるスピードが速くなるスキル
以上がスキルについてで次にステータスだが、この世界での一般兵士のステータスが平均で200らしいので礼治は今の時点で充分に化け物である。
そして最後に称号をチェックをする。
ー称号ー
転生者
異世界から転生してきた者
(各ステータスを100アップ)
運命神の加護
運命を司る神様から受けた加護
(各ステータスを500アップ)
運命神に愛されし者
運命を司る神様の心を掴んだ者に贈られる称号。
(各ステータスが500増加。さらに、神様のハートを鷲掴みしたラッキーな君にはさらに運が1000アップ)
(最初の二つは理解できるし、ありがたい。だけど最後のやつは意味が分からない。なんなん【運命神に愛されし者】って、俺が何かした?さっぱり分からん)
礼治はなぜその称号がついているのかを神に直接尋ねる事にした。
「希望通りになってるのでありがとうございます。ただ、この【運命神に愛されし者】ってなんですか?」
そう尋ねると。
「そのですね…。私にも分からないのですが…、いつの間にか礼治様のことが気になり始めまして、礼治様がスキルを選んでおられる間に礼治様のことをもっと知ろうと礼治様の過去を調べていくと礼治様のことが好きになってしまい、その…自分のことが押さえきれなくなり、その称号が礼治様に贈られたんだと思います…。ほほほ、本当にモウシュワケゴジャイマシェン‼︎/////」
神は恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にし、最後は噛みながら謝罪をした。
「イヤイヤイヤ、神様が謝ることじゃないからそれに俺も初めてしかもこんな美人な神様から好きになってもらってすっごく嬉しいから!」
告白ととれる神の言葉に、礼治は自身の率直な意見。つまり、本音を言ってしまった。
「ほ、本当ですか‼︎?」
神は礼治の言葉を聞き、その嬉しさのあまり興奮して勢いよく礼治の手を掴む。
「本当です。なんならいっそのこと、神様と一緒に異世界で旅をしたいくらいです」
礼治もまた美人な神の言葉と行動に興奮してしまい、自身の欲望を剥き出しにし言い張った。
「それなら良い方法があります。失礼します」
<チュ>
「んんんーー⁉︎」
突然、神が礼治の唇を奪ったのだ。
今まで異性と付き合ったことのない彼はこの行動に驚いたがすぐさま神の後頭部と背中に手をまわし、抱きしめ互いに十数秒の間キスを楽しんだ。
その時、礼治の身体からあるものが抜き取られるていたが本人はそれに気付いてはいたものの全く気にすることはなかった。
「これで、準備万端です。これから礼治様を異世界に送りますので礼治様は目覚めましたらすぐに【タロットマジック】で、大アルカナの『フール』を呼び出してくだい。そしたらすぐにまた会えます」
「分かりました。あっちに着いたらすぐに『フール』を呼びます」
「では早速送ります。礼治様また後ほど」
「はい、ではまた後で神様」
会話が終わると神は突如光りだした手を礼治に向け、それと同時に光に包まれた礼治は異世界に送られた。
こうして礼治の異世界ライフは始まりを告げたのである。
投稿ペースは週一から月一が基本でリアルが忙しくなると不定期になります。