第3皿 フルーツバードのソテー
およそ二十あまりの中小国がひしめく大陸南西部域。そこで最も富み栄えている商売と交易の国、ママリア公国。
一年を通して温暖な気候を利用してオリーブやブドウ、オレンジなどの果実の栽培が盛んではあるが、この国を富み育ませる要因はなによりも絶妙なその位置関係にあった。
北は超大国である連合王国の進んだ文化を受け入れる窓口として、西は海に面して漁業と貿易の要衝として、そして東は魔の森とも呼ばれるライデンの森を挟んでファン・レイン王国に接する唯一の国として、この地にあってなくてはならないまさに商業と貿易のための国であるのだ。
そんなママリア公国には、ひとりの著名な洞矮族がいた。
大陸でも屈指の商売人にして、いまや大陸中のどこでも見られる『保温瓶』『保温鍋』の発明家として名高いガストンと、彼の名を冠したガストン商会であった。
それまでは保温・保冷といえば魔術頼みか、或いは高価な魔道具と思われていたところ、一切魔術を使わない廉価な道具としての保温器具を作り上げ、ガストン商会を瞬く間に公国でも屈指の商会にのし上がらせた立志伝中の人物である。
ただし、支店こそ公国の首都にあるものの、どうしたわけか肝心のガストン本人と商会の本店は、首都ではなくファン・レイン王国に隣接するキルクルスの町にあった。
「……ふん。儂はこの町で身を起して、嫁さんもこの町で貰ったからのぉ」
首都に本店を移したほうがより事業が拡大できる。ぜひそうすべきだ。という周囲に勧めに対して、ガストンはそう言って頑なに移転を拒んでいた。
「まあ、親爺も根が頑固で偏屈な洞矮族だからなぁ、こうと決めたら梃子でも動かないだろう」
首都の支店を任せている長男を筆頭にした子供たち、店を任せている番頭もそう言って嘆息するのが、ここ十年あまりのガストン商会おける風物詩であった。
ただひとり、三十年連れ添った細君のみが何も言わず、その話題が出るたびに意味ありげにニコニコと微笑んでいたが……。
そんなガストンにはおかしな趣味があった。いや、いっそ奇行と言ってもいだろう。
月に一、二度、昔から行商に使っていた古ぼけた荷車を引っ張って、どこへともなく出かけるのだ。
ガストン商会の会頭ともあろう者が、まるで一介の行商人のような身なりをして雑貨な荷物を抱え、護衛もなしに出かける。
このことを知っている息子たちや古参の従業員たちは、先の移転の話同様に苦言を呈してはいるのだが、当人は頑なに出かけることを止めず、またこれに関しても細君は黙って見送ることから、このガストンの奇矯な趣味は、先の移転話同様に呆れられながらも黙認されている状態だった。
そうしてこの日、久々に荷車を引っ張って出かけたガストンが向かった先は、首都方面でも連合王国の方面でもない、隣国ファン・レイン王国との国境であるライデンの森であった。
正確には森の外周を縫うように走る、獣道に毛が生えたような田舎道である。
人ひとりがようやくすれ違えるガタゴト道を、慣れた足取りで荷車を押すガストン。
どこからどう見ても公国でも五本の指に入る商会の会頭とは思えない。草臥れた初老の洞矮族の行商人にしか見えない姿であった。
「――ふう、やれやれ。すっかり体が鈍っておるな。この程度の荷物を運ぶだけで、今日だけでも五回も休憩を取らにゃならんとは」
少しだけ道幅が広くなっていた場所を休憩所に定め荷車を置いて、手拭いで汗を拭いながら道の途中に転がっていた倒木に腰かける。
それから腰に下げていた金属の缶――ガストンの名を大陸中に広めた、ガストン商会の象徴ともいえる商品――保温瓶を取り外して、ネジ式の蓋を開け一気に中身をあおる。
「くはあ~~っ! 火照った体にはたまらんわい!」
心底美味そうに保温瓶の中身を口にするその様子を、知らないものが見れば洞矮族が昼間から酒を飲んでいると思うだろう。
だが、ガストンに関してはそれはない。実際、保温瓶の中身は昨夜泊まった村のキンキンに冷えた湧き水で作った果実水であった。
「まったく……。昔は背丈より高い草を掻き分け、保温瓶替わりに生のオレンジを齧りながら、道なき道を野宿しながら通っておったもんじゃがのぉ」
洞矮族でありながら、ママリア公国でも指折りの商人に数えられ、その名は大陸中に轟くガストン。
人は彼を亜人でありながらも信じられないほどの成功を収めた、まさに立身出世の鑑と呼んで賞賛しているが、ガストン本人に言わせればそれはとんでもない誤解。思い違いも甚だしい風評だと思っている。
「そもそも下戸の洞矮族なんぞ、出来損ないもいいところじゃからなぁ……」
甘い匂いを放つ保温瓶の中身の果実水を、今度はじっくり味わいながらガストンはそう自嘲する。
洞矮族と言えば『酒』が代名詞になっているように――ひょろい妖精族連中は『歩く酒樽』と面罵する――実際、酒の嫌いな洞矮族など聞いたことはない。
ましてまったく飲めない下戸の洞矮族となれば、翼のない飛竜も同然である。
この体質のためにガストンは洞矮族の里では、まともな親方に仕事を習うことができなかった。
なにしろ洞矮族の親方ときたら、どいつもこいつも酔っぱらっていないと逆に手元が覚束ないと豪語するような呑兵衛ばかりである。
そうなると酒の付き合いができない洞矮族なんぞ弟子にするわけがない。
さらに付け加えれば、ガストンの一族は先祖代々酒造りを生業とする者ばかりであったため、なおさら立つ瀬がなかった。
そんなわけで成人すると早々に里を飛び出したガストンは、見よう見真似で習い覚えた鍛冶の腕で鍋や釜を作っては二束三文で売ったり、修理工の真似をして手押しポンプや水車を直したりなどして、わずかな賃金でその日暮らしをしていたものである。
「……そんな時じゃったかな。ライデンの森に変わり者の豚鬼がいると聞いたのは」
思い出してニヤニヤ笑うガストン。
魔物も避けて通るライデンの森に隣国が監視のための砦と開拓村を造ったと聞いた公国の商業ギルドは、これを良い機会と捉えて通いの行商人を募集したのだが、ライデンの森を迂回するような場所へ進んで行くような奇特な者はおらず、やむなく商業ギルドではその開拓村とその間の交易に関しては無料で商業権を与えるとのお触れを出した。
これに手を上げたのが、当時、すでに結婚して子供も三人いて、相変わらず貧乏な下請け職人だったガストンである。
限定とはいえタダで商業権が得られるなら商業ギルドに認められた商人。すなわち一国一城の主であり、さらに定期的に行商をすることで、今後も細く長い商売ができるならかも知れない。
そうなりゃ女房子供を食わしていけるかも……と、その程度の目論見であった。
ちなみにガストンの女房は洞矮族ではなく、人間族の女である。
樽のように頑丈な体型と気風の良い性格、髭が生えていないのがやや難点だが、それ以外なら三国一の美女といっても過言ではない、大雑把な造作に惚れ込んで――ま、人間族と洞矮族では多少、女の好みが違うようだが――口説き落とした自慢の女房であった。
そんなわけで手持ちの金をひっくり返して、買えるだけの食料や雑貨、種芋や種籾、あとは作り置きしていた鍋や包丁、簡単な鋳掛けの修理や研ぎができるような道具を買って風呂敷に包み、道とも呼べない獣道をえっちらおっちら歩いて、どうにか目的の開拓村へとたどり着き、それから多い時で二週間に一度。
少ない時でも月に一度は開拓村に通うようになった。
当時はまだ入植が始まったばかりで、十家族二十五人ほどの小さな村であり、労力や危険を考えれば到底割に合わない商売であったが、村の連中はどいつもこいつも気のいい奴らばかりであったし、時間が経つごとに愛着も湧いてきたため、まあいいか片手間にやってみようかと思えたのだった。
で、確か三回目に行った時だっただろうか、『変わり者の豚鬼』の話を聞いたのは。
人を食う豚鬼はよく聞く話だが、人に飯を食わせる豚鬼というのは初めて聞いた。
こいつは面白い。俺と同じ同族の中の除け者、変わり者の臭いがプンプンしやがる。
俄然興味を持ったガストンは、帰り道についでにその豚鬼に会いに行ってみることにした。
ま、用心のためによく磨いた両手斧を背中に括り付けていくことは忘れなかったが。
「思えばあれが契機じゃったな……」
『よおっ、豚鬼の兄ちゃん。何か美味い物を食わせてくれ。ただし酒と酒の匂いのするものはご免こうむるぜ』
当時はいまと違って地面に建てられた掘っ建て小屋みたいな店だったのだが、しっかりと『飯屋』の看板が掛かっているのを見て、ガストンは荷物を背負ったまま景気よくそう言い放った。
『おうっ、任せておけ!』
飯屋に行ってガストンがそう注文をすると、十人中十人が『なんだこの洞矮族は?』という顔をされるのだが、この店の料理人だと名乗ったその豚鬼は、それが至極当然という顔で間髪置かず答えた。
その態度に逆に不安になるガストン。
『おいおい大丈夫かい、兄ちゃん。俺は隠し味に酒精を使われるのも駄目なんだが……』
『ああ、わかっている。つーか、まだまだこの店は始めたばかりで料理器具も材料も足りないんで、そもそも酒なんざ使いたくても使えやしない。いまんところ、レストランどころかビストロ名乗るのもおこがましいからなぁ』
『おいおい、なんだか頼りねえな。なんだったら少し材料と、鍋くらいなら代金代わりにくれてもいいぜ?』
『そりゃ助かるな。何があるんだい、オッサン?』
『ん~……っても手元にあるのは売れ残りの黒豆と、あとは鉄網が一個、それと俺の好物のオレンジが何個かってところだな』
とりあえず手持ちの食料と調理器具を手作りらしいテーブルの上に並べたガストンは、こんなもんじゃあしょうがねえなぁと嘆息したが、豚鬼の方はそれを聞いて目を輝かせる。
『そりゃいいや。ちょうど五日前に獲った果肉喰鳥がいい塩梅に熟成しているんで、これを塩焼きにして……んでもってオレンジを合わせられるな』
テーブルの上の荷物を残らず抱えて、厨房――単に丸太を三つばかり重ねた仕切りで仕切られた隣――へ持っていた豚鬼は、手製らしい不格好な竈に薪をくべ始めた。
ちなみに果肉喰鳥はその名の通り、果実や花の蜜を好んで食べるママリア公国のどこででも見られる、果樹農家泣かせの害鳥である。
大きさはおおよそ二十センチほどで、群れになって果樹へ群がる習性があった。
『おいおい、果肉喰鳥の塩焼きって言ったら酒の肴だろう? それにオレンジを合わせるなんざ聞いたこともねーぞ、しかも五日前に獲った鳥なんざ食えるのか?』
ただでさえ足の速い(腐りやすい)鳥肉である。それも五日も前のものを食うとなれば、いくら胃腸の丈夫な洞矮族でもさすがに怪しくなってくる。
『そこは“美味いのか?”って聞いてもらいたいところだな、オッサン。大丈夫だ。獲ってすぐに羽つきのまま冷暗所で保存しておいたんで問題ない。鳥類ってのは羽をむしると途端に腐敗するが、むしらなきゃある程度フザンダージュ……熟成させたほうが美味いんだ』
『ふーん、そんなもんかい?』
『ああ、そんなもんだ。まあ、熟成は下手くそがやるとパサパサになるので、人によっちゃ獲れたての新鮮な肉をさっぱり食いたいって向きもあって、それはそれで嗜好としてありだとは思うが』
俺は大丈夫だと自信満々で言い切る豚鬼の態度に、ガストンも覚悟を決めた。
『そうか。じゃあ任せるぞ。あと、なんぞ飲み物もくれ』
『――ふむ。オレンジジュースだとくどいだろうな。なら珈琲なんてどうだい?』
『珈琲だとォ!? こんなところで飲めるのか? ありゃ南方でしか穫れない、貴族やお大尽が飲む嗜好品だろうが!』
目を剥くガストンに対して、仕切りの向こうから飄々と肩をすくめて種明かしをする豚鬼。
『ま、黒豆を煎って作った代用品だけどな。けっこうこれもいけるし、なにより本物の珈琲と違って利尿効果……小便が近くならないんで、便利なんだ』
『ほう。そりゃいいな』
そんな話をしている間に火を熾した豚鬼は、小屋の裏手にある石室――中に泉の水を引いて冷暗所としているらしいそこ――から、羽つきの果肉喰鳥を五羽ばかり持ってきた。
慣れた手つきで羽をむしって、こればかりは上物の包丁を取り出すと、これをすべて半割りにする。
それからガストンが作った鉄網を軽く火で炙って馴染ませ、その上に半割りの果肉喰鳥に軽く岩塩をふったものを乗せた。
『ふむ……? 町の屋台で出される果肉喰鳥は丸ごと串に刺して焼いたものが出るんだが、兄ちゃんのそれには意味があるのかい?』
予想とは違う調理法に、思わずガストンはそう尋ねていた。
『ああ、網に載せて皮のあるほうを上にしているだろう? 直接皮目を火にさらすと、せっかくの脂が流れちまうからな。こうして旨味を閉じ込めているんだ』
『ほうほう』
きちんと仕組みを理解して料理をしておるのか、こりゃ、意外としっかりした料理を食えるかも知れんな。と、職人にして商売人であるガストンは感心した。
流れるような手つきで、続いてオレンジを手に取って横に二等分し、最初に軽く炙って焼き目を入れ、
『砂糖がほしいところだが、手元にないので蜂蜜で代用しておく』
表面に蜂蜜をかけたオレンジを窯に入れて、果汁がトロトロに溢れるまで加熱する。
『……ふーん、砂糖か。次に来るときに持ってくらぁ』
『助かるな。調味料が圧倒的に足りないからなァ』
『はんっ、足りないモノだらけだろう?』
『まったくだ。森で獲物を捕まえてもその場で放血して、即座に氷で保存できれば最高なんだけど……』
『そりゃさすがにナイモノ強請りだろう。んなことができるのは魔術師か、屋敷が買えるほど高価な魔道具がなきゃ無理だからな』
『いや、聞いた話では容器を二重にして、隙間を真空……空気を抜いて、断熱性を確保すれば似たような効果のある道具が作れるってことだ』
『おいおい、ホントかよ、それ?』
混ぜっ返しながらも、職人としての直感で内側の容器を鏡張りのように磨いて、隙間の空気をポンプで抜けばできるかも知れないな、と頭の中で設計図を組み上げるガストンがいた。
『……ま、俺も聞いた話だからな』
豚鬼のほうも単なる雑談程度に考えているのか、軽く流して調理に戻る。
『よし、できた。――“果肉喰鳥のソテー、オレンジ添え”だ。あと、黒豆珈琲一丁上がり!』
しばらく置いて、洞矮族にはやや高い椅子とテーブルに座ったガストンの前に素焼きの皿とカップに入った料理と飲み物が置かれた。
ソテーというのは、この熱々のオレンジの上に同じく香ばしく焼かれた果肉喰鳥が乗ったものだろう。
もう片方の焙煎された豆の香りを放つ、以前に匂いだけ嗅いだことがある、珈琲に見た目も香りもそっくりな飲み物が、黒豆で作った珈琲もどきといったところか。
『ほほう!? こりゃ、どうやって食うんだ?』
『フォークとナイフ……と言いたいところだが、オッサンならそのまま手掴みでガブリとやったほうがいいだろう? 果肉喰鳥は骨ごと食べられるし、オレンジも同じだしな』
『ほーお、そりゃ助かるな』
つーても、こんなもん一口で食えそうだな……。
『んじゃ、まあ、いただくとするか』
とはいえさすがに一気食いするわけにもいかんだろう。なら、まずは上に乗っている果肉喰鳥から……と、考えながらガストンは果肉喰鳥を摘まんで、半分ほど噛み千切った。
途端、瑞々しい肉と脂の味と芳醇なオレンジの香りが口中で爆発する。
『なっ……なんだぁ、このコクと香りは!? これは本当に果肉喰鳥なのか!? 前に屋台の焼き鳥を食った時とは、味も香りも別物だぞ!! 兄ちゃん、料理人の腕の違いか!?』
『半分はな。ただ何よりの違いは、おそらくオッサンが前に食った果肉喰鳥は町の傍で、しかも季節外れに獲ったものだろうからな』
『果肉喰鳥に違いなんぞあるのか? 一年中、どこでも見るぞ』
『ああ、大ありだ。果肉喰鳥ってのは、実際のところは雑食でね。果物が実らない時期は虫とか雑草を食っているんだ。野鳥ってのは食い物で肉質と香りがまるっきり違うからなァ。逆に言えばこの時期の果肉喰鳥は果物しか食わないんで、芯まで果実の香りがする。そうなれば素材本来の味を引き出してやれば、こんだけ美味くなるって寸法さ』
『ほお~~~っ! そんな話は初めて聞いたが、この味を知っては納得するしかないな。おおおっ、このオレンジのトロトロのソースとも無性に合うぞ! オレンジも丸ごと食えるし――美味いっ!!』
満面の笑みで舌鼓を打つガストンの様子に、ぶっきら棒な雰囲気だった豚鬼も、にやにやと笑みをこぼした。
『そうだろう? 素材が持つ味を楽しむ。こいつが俺の即興料理だ』
『ほほぅ、なるほどな。確かに美味い。だが、まるっきり量が足りんぞ! もっと追加で焼いてくれ!』
『ああ、わかった。材料があるだけ料理するぜ』
『おう、頼んだぞ。――おっ、この黒豆珈琲もなかなかイケるな。これならうちでもできそうだ』
『そうだな。フライパンと漉し布があれば誰でもできるだろう』
そうして、さんざん飲み食いをして、すっかり意気投合したガストンは、それからも開拓村に行商に行く時には必ず豚鬼の店に顔を出すようにして、ついでに与太話から思いついた保温器具を、数年がかりで形にすることに成功したのだった。
「――瓢箪から駒もいいところなんじゃがなぁ。どれ、行くとするか……よっこらしょ!」
立ち上がったガストンは保温瓶を腰に戻して、荷車のところへ戻った。
ここまでくれば開拓村まではもう一息だろう。もうひと踏ん張りじゃな、と己に喝を入れながら荷車の梶棒を掴んで歩き出す。
最初の頃は道らしい道もなかったこの場所も、長いこと通っているうちにいつの間にか荷車が通れる道になっていた。
そういえば、女房に美味いものを食わせて、ついでに料理バカで色気のない豚鬼に自慢の女房をみせびらかしたくて、荷車に乗せてこの道を歩いたこともある(さすがに子供連れで国境線を越えてライデンの森の脇を通ることは憚れたので、子供たちは近所に住む同じ職人仲間のお内儀に預けた)。
どんなことがあっても捨てることのできない、自らの歩んで作ったこの道。
「さて、今日はどんな美味いものが食えるんじゃろうな……」
そこをゆっくりと踏みしめながら、そう目を細めて呟くガストンだった。
※なお、この作品はあくまで異世界を舞台にしたものであり、現実の世界における鳥獣の捕獲等に関しましては、狩猟免許等の取得が必須です。
《一口メモ》
熟成に関しては、現在は急速冷凍技術が発達しているため、わざわざ日をおかずに、早めに食べるのが一般的になっています。
果肉喰鳥は架空の鳥ですが、モデルはヒヨドリです。日本ではミカン畑の天敵で、群れで来るので場合によってはミカンが全滅ということもあるとか。一旦逃げても、すぐに戻ってくるので狩りはしやすい鳥だそうです。