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其之一|第八章|異世界で喰らう肉の味は

2017年06月07日 加筆・修正

 今日は散々だったが気持ちを切り替えよう。

 何と言っても今日は・・・



 肉 で あ る !



 焼 肉 で あ る !



 漬けダレに漬けて地下の倉庫で保存してた、とっておきの肉を宣言通り引っ張り出してくる。


 冷蔵庫とかどうなってるのか仕組みが分からない物を作る事は出来ないし、こっちの世界の似たような物は稼働させるにも維持が大変だ。


 ちょっとした肉なら容器に入れ、凍結魔法で地下の倉庫を冷やして、アンチマジックシールドで魔力の影響を打ち消し、その中に入れておけば一週間やそこらの保存は効く。


 外で焼肉を食う事も出来るが、想像する焼肉とはかなり違う。

 こっち特有のスパイスが何というかキツくて、違う料理にしてしまうのだ。


 何と言ってもタレが違う!

 元の世界でもこっちでもタレの美味さは焼肉の決め手となる。


 なんでもかんでも塩とか言って通ぶるが、基本はタレだ!

 肉を素で焼いて、塩で食べるのも確かに美味い。

 だが、なんでもかんでも塩塩塩塩と言う最近の風潮はどうかと思う!


 サラリーマン時代の「お前!いつも塩分を気にしてるんじゃないんですか!?」的な上司ですら塩塩言いやがる!!塩禁止!!


 美味ければどんな食べ方でも構わないが基本は抑えた上で、塩も楽しんで欲しい!


「良いね!妙子ちゃん!!」


 と、うちの焼肉はタレである事を宣言し、準備にとりかかる。


「おっ…。おう…。」


 と、かろうじて相槌を打ってくれたが少し引かせてしまったみたいだ。


 解凍までに時間がかかるので、その間に用意を済ませよう。


 俺が作った火鉢の様な物を引っ張り出し、炭をセットしておく。

 普段は大量に焼肉を食べる事は無いから網は一つだけなのだが、買い足しておくのも悪くはないな。


 取り敢えず、肉と火鉢の用意は出来た。次は野菜だ。

 レタスの様な物を手でちぎり、水で丁寧に洗う。

 衛生管理をしているとは言え、農薬らしい農薬は無いので野菜なども丁寧に処理しておいて損はない。

 あっちの感覚でまるかじりなんてするとたまに腹を下す。


 続いて、たまねぎ、かぼちゃ、ピーマン、にんじん、ナス

 の、様な物を食べやすい大きさに切りそろえる。


 俺達が知っている野菜の形と随分違うが味は似ている。

 この十年で試せる物はとことん試したので間違いはない。


 準備が一段落したタイミングをみて妙子ちゃんが素朴な疑問を投げかけてきた。


「そう言えば今日のお肉って何のお肉なんですか?牛とか豚とかこっちにも居るんですか?」


 まあ、そうだろう。これから自分が何の肉を食べさせられるのかは気になって当然だ。


「牛!焼肉の基本と言えば牛でしょ!体型は少しカバっぽいけど基本的には向こうの牛と同じだと思う。取れる肉の量はこっちの牛の方が多い感じで家畜として育てられてるよ。」


「ふふぉお。安心しました。ドラゴンとかコカトリスのお肉とかを食べさせられるのかと内心ドキドキでしたよー」


「確かにそれっぽいのは居なくもないけど、さすがに食べはしないね。それに簡単に出会えるものでもないし。」


 そう言うと、少しヌルめのビールを流し込む。ちなみにこっちのビールはエールタイプだ。このヌルさも慣れると美味い。


「牛の他にも豚や鶏も居るよ。元いた世界とあまり変わらないと思う。見た目がちょっと違うが環境によるものだと思うし、捌けばあとは食べるだけだから気にする事の程じゃない。」


 最初は、その見た目に結構驚くとは思うが。

 今度、農場にでも連れて行って反応を見るのも面白そうだ。


「あと、こっち特有の動物も食べる。ポピュラーなのはクリスピーコインかな?見た目はコインで炒めるとカリカリになって実にクリスピー。虫だけど虫っぽくないから抵抗無く食べられる。虫の足が見た目的にダメって人もたまにいるけど。」


 うげーっと言い出しそうなしかめっ面でプルプル首を振り拒絶される。その旨味から乾燥させて調味料としても使われるので嫌でも口に入る事になるのだが、これはその時まで黙ってる方が面白いだろう。


「どちらかと言うと、野菜や果物の方が見た目と味が違うから、そっちを覚える方が大変だよ。このナスに見える野菜は食べるとトマトっぽい味だし、さっき切ってた椎茸っぽいのはナスのような味と食感でたまに混乱する事があるぞ。」


「えー!それじゃあ味が分からないと見た目じゃ欲しい野菜が分からないじゃないですかーーー!」


「だから、食べて覚えるしかない。それに名前も違うからね。トマトが欲しいと言っても、店の人はトマトが何かを知らないから、名前を言ってもトマトは買えない。こっちに召喚された際に言語置換が施されていると言っても、こっちに無い物の名前を一致させる事は出来ないからね」


「言語痴漢?電車の中で言葉責め?」


 そうくるか。言葉の流れを考えればわかるだろうに…。

 仕方ない。乗っておくか。


「お嬢ちゃんのパンツは何色だ…。」


「あー。なるほど。だからシーナさんの言葉もわかったんだ!」


 スルーされた上に自分で理解された。泣かない。グッと堪える…。

 グッと堪えて良い具合に解凍された肉をカットしますか…。

 まな板を用意して、包丁を握る。肉を切り分けながら話を続ける。


「そう言う事だ。理解してくれたようで助かった。うちの召喚陣は、聞くも話すも日常会話に不自由が無い程度に理解できるよう補正が掛かっている。元々、人じゃない者を召喚して使い魔にしたりするんだから、命令が理解出来ないと使い物にならないしさ。それに…」


「あ。パンツはベージュです!」


「・・・・・・。」


「それに、言語補正をかけておく事で召喚した者とのコミュニケーションが可能になる。コミュニケーションが出来ると言う事は、コミュニケーションによって信頼関係を築けるって事だ。相手が友好的だとしても敵対的だとしてもコミュニケーションが取れないと最初から話にならない。最悪、従わせる為に脅すとしても言葉が分からなければ脅せもしないからね。状況やこちらが提示する条件を理解してくれれば反逆される事も少なくなるし、召喚術式で強制的に従わせるのは最後の手段だ。まあ、反逆して後悔しても後の祭りだけどね。」


 ふむ。ベージュのパンツか。きっとおへそまであるヤツだな。色っぽくはないが、それはそれで悪くない。


「うぅー。思い出してしまったじゃないですかー!ペナルティ!」


「まあ、裏切らなければ良いだけの話だ。凶暴な魔獣用の『反逆を考えるだけで苦痛が走るタイプ』のペナルティじゃなくて助かったね?妙子ちゃん?」


「そんなのまであるんですかぁあああ!」


「そりゃ、あるだろ。人間なんて普通は召喚されないんだから。」


「まあ、そうなのかもですけど…。」


 納得しつつも、納得できないと言う感じだが、今はそんな事などどうでも良い!



 さて、始めるか!!!



「おまたせさま。そろそろはじめようか。米は切れてるから、炭水化物が欲しかったらパンで我慢してくれ。」


 炭に火をつけ風を送ってやる。手で温度を確認して網を置く。


「焼肉はテンションが上がるけど、俺は焼肉奉行ってワケでも無いから好きに食べてくれ。どこで焼いても良いけど、そっち半分が一応、妙子ちゃんのテリトリーって事でよろしく。」


 妙子ちゃんは、そう言う点を心配しなくとも、ちゃんとしてくれそうな印象なので、説明せずとも自分の陣地内で肉を焼いてくれるとは思うが、分かっている事でも一応確認を取るのは大人のマナーだ。


「さあ!思う存分喰らうが良い!いただきます!」


「はーい!じゃあじゃあ!いただきます!」


「おう!どんどんどうぞ!」


 取り敢えず、肉を二枚乗せる。いっぱい乗せすぎて肉が焦げるのは嫌だ。消化出来る範囲で焼いてローテーションで焼いていくのが俺のスタイル。

 それに習ってか、妙子ちゃんも肉を二枚乗せる。


「ああ。味は付いているけどタレも用意しているから、食べてみて必要なら使って。」


 醤油、酒、砂糖、りんご、にんにく、しょうがを合わせた付けダレを差し出す。

 そろそろ面倒なので「のような物」と付けなくても妙子ちゃんも理解してくれるだろうか。材料はどれも「のような物」である。


 ちなみに、こっちの醤油は少し甘く、こう言うタレとか濃い味なら大丈夫なのだが、玉子かけご飯や焼き魚などには、ちょっと合わない。無いよりはマシなので食べてると慣れるが。


「はーい!」と言いつつ、一枚目の肉から付けダレを付けて口に運ぶ。


 うん。良いんだ。食べ方は人それぞれだから。

 だが、味をみてからタレを付けて欲しいと思うのは我儘だろうか…。


「おいしい!お肉もタレも美味しいやきにくぅ♪赤身のお肉が丁度いい♪」


 と、言いながらもう一枚の肉を取り皿に移し、素早く新しい肉を妙子は二枚セットした。


「そうだな。美味い。少し漬け込みが足りないかと思っていたけど、丁度いい味に仕上がってるな。」


 味を確かめるべく付けダレには付けずに、そのまま口に入れ味わう。

 続けてもう一枚口に放り込んで、よく噛み溢れる肉汁を味わう。良い。良いぞ。甘辛い漬けダレが肉汁の味とマッチして食が進む。これはご飯を用意しなかったのは失敗だったな。


「これは、ちょっとご飯が欲しくなっちゃいますねー。」


 妙子ちゃんも同じ気持ちだったみたいだ。


「米自体がストックが無かったからね。俺も欲しいとは思うけど、今日は色々有ったから買い物してる心の余裕も無かったから。」


「あぁ…。あんな事があったあとじゃ~仕方ないですよね…」


「すまない。あの事はもう忘れてくれ。キリリ。」


「ぶわはははは!大丈夫です!私も頑張って忘れますから協力して下さいね☆きゃるるん☆」


「クックックックック…。やめてくれ妙子ちゃん。肉が気管に入る…。」


 人が苦しんでいる間に、肉を頬張っては更に追加で焼く妙子。


「おいしぃ~」と時折心の声を口から漏らしながら野菜も焼いてどんどん消化する。


 この一日で色々な事が有りすぎたが、この状況を受け入れてくれているみたいだ。

 自殺しようとしたのは呪いのせいで、ポジティブに物事を受け入れられるのは妙子ちゃんが元々持っている性格なのかも知れない。


「ハルトさん!野菜焼いてあげましたからいっぱい食べて下さいね!お肉は私が食べちゃいますから!」


「あ!こら!肉ばっかり食べるんじゃない!俺にも肉をよこせ!」


「こっちは私のテリトリーですよ!ハルトさんは自分のテリトリーの野菜を片付けてからお肉を自分で焼いて下さい!」


 と、言うと妙子は美味しく育った肉をパクパクと口に運び、更に肉を焼く。

 まあ、良いか。

 今日のこれはいきなりこんな状況に引き込まれた妙子ちゃんを励ます為の焼肉でもある。妙子ちゃんが元気になってくれたなら大成功だ。


 上機嫌の妙子ちゃんを眺めながら、少し焦げた野菜を食べつつビールを飲む。

 空いた網の上に肉を並べて、焼き上がりを待つ。


 こんな食事をしたのは、いつ以来だろうか。


 師匠とも一緒に食事をしたが、どことなくギクシャクしていた。

 会話はあまりなく、師匠も気を使ってくれていた。

 こんなふうに食事をするのは本当に久しぶりだ。


 彼女がここに召喚されたのは偶然に起こった不幸だと思う。

 だが、その偶然は俺にとって幸運なのかも知れない。

 こんなにも人と普通に接する事が出来て、こんなにも普通に食事が出来るなんて少し前の俺には想像も出来なかっただろう。


 こんな幸福をもたらしてくれた彼女が、この世界で辛い思いをしないように出来る事をしてやりたい。


 俺に何が出来るか分からないが、出来ることはしてやろうと心に誓った。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 食事が終わり一息つく。


「お片付けは私がしますね!」と、申し出てくれ、お言葉に甘える事にした。


 食事の余韻と少し残った酔いが心地良い。

 幸せにも色々有るが、こう言う食事は人間にとって幸せである事は間違いないだろう。


 ソファーでゆっくりしていると「にゃーん」とドアの外から鳴き声が聞こえる。

 にゃんこ様がご帰宅されたみたいだ。少し重い身体をソファーから引き剥がしドアを開ける。

 スルリと部屋の中に入ってくるにゃんこ様。足元にまとわりつきお食事を要求してくる。


「わぁ!なんですか!?その猫ちゃん!三毛猫ちゃんを飼ってるんですか!?」


 昨日、今日とにゃんこ様はいらっしゃらなかったから初対面か。

 にゃんこ様も家族みたいなもんだ紹介しておこう。


「飼っていると言うワケじゃないが、うちによくいらっしゃる『にゃんこ様』だ。ちょっとそこに有るお食事をあげてくれるか?一緒に皿もあるだろ?」


「へー。そうなんですね。家猫ってワケじゃないんですかー。」


 と、言うと妙子ちゃんは俺が調合し乾燥させたカリカリを皿に入れてにゃんこ様に差し出す。


「はい。どうぞ。しっかり食べるんだよー?えっと、名前は?」


「ん?にゃんこ様だが?」


「え?にゃんこ様?」


「そう。にゃんこ様だが??」


「へー。」


「???」


「ハルトさんってネーミングセンス壊滅的ですねー。ねー?にゃんこ様?」


 タイミング良くにゃんこ様が「にゃーん」と鳴く。


 なんと言う事でしょう。完璧なネーミングだと言うのに妙子ちゃんには、この素晴らしさが分からないと見える。これまで接してきて少し残念な子だなとは思っていたが、ネーミングセンスでも残念だったとは。うちの師匠も残念美女だが、妙子ちゃんもそうだったか…。どうして俺の周りには残念な子が多いのだろう。だが、今は彼女もまだ不安な状態だろう。ここはそっとしといてやるのが大人の男としての優しだだろう。


「まあ、良いさ。俺が居ない時には中に上げてくれて良いから。のんびりしたければのんびりされるし、お腹が減ってたら要求してくれるし、外に出たかったらドアをカリカリされるから、様子を見て対応してあげておくれ。」


「はーい!わかりましたー。」


 と、返事をしながらにゃんこ様の食事の様子を見守る妙子。魔術を使った照明に照らされる彼女の表情は楽しそうで、その様子は何となく安心感を与えてくれる。


「にゃんにゃーん。」


「いえいえ。どういたしまして。美味しかったですか?」


「にゃおん!」


「あはは!そうですよね。でも、満足できるなら良かったじゃないですか?」


「うにゃお」


「あー。でも、それは仕方ないですよー。私も前は分からなかったし。でも、にゃんこ様はないですよねー。ふふふ。」


 あれ?なんだろう。会話している感じがする。俺もにゃんこ様を相手に話をする事はあるが…。


「うにゃん」


「えー!そうだったんですか?ひとりで…。ハルトさんも色々あったんですね…。ぷぷ…。」


「ちょっと待て。ちょっと待ってくれ。」


「はい?」


 俺の静止に振り向く一人と一匹。


「もしかして、話がわかるとか…?そう言う事じゃないよね?」


 素朴な疑問を投げかけた。


「あー!はい!わかりますよ!片言っぽい感じですけど。」


 マジか…。


 魔法使いは猫や動物を使い魔として使役する場合も有るから無いとは言えないが、人化を施さないと陣地に侵入者が入ってきた時に警告を主人に発する事くらいしか出来ず、動物のまま使い魔とした場合は会話する事なんて出来ないのに。しかも、人化なんて結構難しいからそんな酔狂な事をするのは趣味的な魔法使いしかしないのに。扱いやすい魔の者を呼び出すのだってソッチの方が人語を理解出来る者が多くて楽だからなのに。


 …動物のままで妙子ちゃんは会話できるのか?


「ちなみに、妙子ちゃん。にゃんこ様に魔法とか魔術の痕跡は感じられるかい?」


「にゃーん」


「えっと。普通の猫ちゃんだと思いますよ?にゃんこ様も魔法使いと関わったのはハルトさんだけだって言ってますし。」


「そうか…。」


「そうだそうです。」


 なんと言う事だ!うらやましい!俺だって話したい!できるなら人との繋がりとか断ち続けても良い!今の俺だって難しい技術なのに!この子ってば!この子ってば!きーーーーー!


「そう言えば、にゃんこ様が本業の方でハルトさんが苦労しているみたいだからお手伝いしてあげてねって言ってるんですけど、ハルトさんの本業ってなんですか?私もちょっと気になっていたんですけどー?」


 そう言えば、妙子ちゃんを召喚したのも本業に力を入れる為だったな…。色々有りすぎてすっかり忘れていたが。あっちの手入れもしないと荒らされるだけ荒らされて回らなくなる。良い機会だ。明日連れて行って現場を見てもらうのも悪くない。


「そうだな。説明するよりも見てもらった方が早いと思う。明日、連れて行くから今日はしっかり休もうか。その前に必要な物を揃えたり、この街がどう言う街か説明も必要だとは思うが、取り敢えず見てもらう事にする。」


「うーん。何だか大変そうですね。私にお手伝い出来る事があるか分からないですけど、ハルトさんのお手伝いが出来るよう頑張ってみます!!」


「おう。頑張ってくれ!本業の方がおろそかになると、この街も困るからな!期待してるよ!」


 妙子ちゃんはまだ高校生だ。

 本当なら元の世界に戻してやって、こっちの世界の事は忘れて普通に高校生活を楽しみ、進学をして普通に生活をする方が健全だと思う。

 だが、元の世界に戻る方法は師匠でも分からないのが現状だ。

 だったら、せめてこの世界で困らないように。俺が師匠にしてもらったように。ここでの生き方を教えてあげるのが俺に出来る精一杯だ。


 まずは見てもらおう。それで妙子ちゃんがそれを受け入れてくれるなら全力で俺が教えよう。今、俺が出来るのはそれしかないのだから。


「よし。じゃあ、寝ようか。空いてる部屋は有るけど、ベッドが無いから取り敢えずは俺の部屋を使ってくれ。俺はもう少し仕事をするから。しっかり休んで明日に備えてくれ!」


 妙子ちゃんは何か言おうとしたみたいだが、こっちの意図を察してくれたのか素直に俺の部屋を使う事に同意してくれる。

 俺がどこで寝るのか気にしてくれたのだろうが、意図的にソファーで寝るとか言わなかった理由を理解してくれたのだろう。昨日と同じく案内した部屋に入ってくれた。


「ふぅ。何とかなるさ。」


 仕事をすると言ったものの、こんな時間から出来る事は少ない。何も予定が無いなら何時までも起きてはいるが、明日の事を考えるとそう言うワケにはいかない。


「俺も寝るか。」


 ソファーに横たわり毛布をかぶると、にゃんこ様が入ってきてお腹の上に乗ってくる。

 温かいにゃんこ様の体温が伝わり眠気を誘う。


 明日は俺にとっても妙子ちゃんにとっても大変な一日になるだろう。


 今日はこのまま寝てしまおう。

 ゆっくりとまぶたを閉じると俺はそのまま眠りについた。

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