表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/71

其之三|第九章|私が召喚をするために。

「私も使い魔を召喚してみたいんですけど!?」


 私は叫んだ!

 魂を込めて叫んだ!


 だって、そうでしょ?

 私が魔術師として登録してからと言うもの私の仕事の割合が増えているんだから!


 ブラック企業がどんな感じかは知らないけど、私の想像するブラック企業がブラック企業だとするなら、このお店はきっとブラック企業だ!!


 私が魔術師として歩み出してからと言うもの何かにつけてハルトさんは自分の仕事を私に押し付けてくる。


 始まりは「よし!じゃあ、ポーションの作り方から覚えてみようか?」と言う言葉だった。


 私としては確かにハルトさんのやっていた仕事を覚えると言うのは本望だった。

 元々、私が魔術師として冒険者登録したのは、ハルトさんの手助けが出来ればと思ったからだ。ポーションの作り方も知りたかったし、その製造を覚えておけば何があってもお店は開けられるから覚えたいとは思ってたよ?


 しかし!しかしだ!


「じゃあ、基本が大事だから手作りでやってみようか?」


 分かる!その理屈は分かる!

 基本を知らなければいけないのは分かる!


 ハルトさんが普段使ってるポーション自動製造機だって、不具合が無いか作ったポーションをランダムに抽出して検査しているんだから、問題が無いか調べる為にも初心者の私が手作りでポーションを作って基礎を学ぶのは当然なのは分かる!


 でも!でもね?!


「じゃあ、この手作りの分は「タエコちゃん特性ポーション」として売り出そう!」


 とか?


「凄い!凄い売れ行きだね!倍の値段なのに完売だよ!じゃあ、明日からはもっと作れるよう効率を意識して作ってみよう!」


 とか!!


「妙子ちゃん…。今日のノルマがクリア出来てないけど…。調子悪いの?それともヤル気が無いの?」


 とか!!!!


 味をしめたハルトさんが、感じの悪い上司化してるんですけど!!!


 そりゃ、最初はハルトさんの手助けが出来ると言う嬉しさもあった。

 最初は、自分の作るポーションが売れると言う充実感もあった。

 一歩ずつ魔術師として魔法使いとして成長している感じもあった。


 でも、私は…

 店番をしながら!

 ご飯も作ったりして!!

 魔法の勉強なんかもして!!!

 その上、ポーションの製造も手作りしてるんですけど!?


 ホント「調子悪いの?それともヤル気が無いの?」じゃないって話だ!!!

 確かに、充実した日々だったとは言えるけど、物理的に無理だって話だよ!!

 これが噂に聞くやりがい搾取ってのだろうか!?


 その上、変な所で妙に優しくされたりするからタチが悪い!!

 妙に優しくされるから強く言えない部分があった…。


「あ。妙子ちゃん。お皿洗っておいたからね!」


 とか?


「今日も一日ご苦労様!そうだ!肩をもんであげよう!」


 とか!


「お風呂洗っといたから先に入っちゃって!」


 とか!!!


 そうじゃない…。

 そうじゃないよね!?


 何だろう…。

 何かが違う。

 私が考えていたのじゃないって感じが凄い…。


 なんだろう。

 アレなんだろうか。

 これが噂に聞くヒモってヤツなのかな…。

 いやいや。私が雑誌とかで読んだヒモに比べたらマシな気がする。


 気がするけど…。


「いつかダンジョンが手を加えなくて自動で運営出来る様になったら旅行にでも出かけよう。妙子ちゃんにはこの世界を色々と見せてあげたいんだ…。」


 とか!?

 何故か癒やし顔で言われる事が度々有るんですけど…。


 違うよね?

 何だかちがうよね?

 そうじゃないよね?

 何だかダメな方向に進んでる感が半端ない…。


 これって元の世界で言うと…


「俺がメジャーになったらお前を楽させてやりたい。いつかお前を楽させて色々な所に連れていってやりたいんだ…。」


 とか、言い出す勘違いミュージシャン(自称)みたいな感じだよね!?


 ヤバイのかな!?

 私、ヤバイのかな!?


 そう思い始めた私は一つの打開策として行動する事にしたのだった。


* * * * *


「え?どうしたの急に?」


 ダメだ。使い魔を召喚したいと言った理由すら分かってない!

 私の知ってるハルトさんは駄目な時でもある程度の細やかな心配りは忘れない人だと思ってた。


 だけど、今のハルトさんは違う。違う気がする。

 このハルトさんは駄目ハルトさんモードのハルトさんだ。

 最近の忙しさからの反動なのか、出会ってから最大級のダメっぷりを発揮していた。


 いつものハルトさんなら、さっきの一言で察してくれていただろう。

 だけど、今のハルトさんは低コストで儲けられる目先の利益しか見えていない駄目なハルトさんだ…。


 ハッキリと言わないと分からないと言うなら言おうじゃないか!!

 大きく息を吸い込んで大声で言葉にした。


「だーかーらー!!私の使い魔を召喚してみたいんですけど!?ハルトさんの仕事を押し付けられて魔法の勉強どころじゃないんですけど!?ノルマとか言い出されても困るんですけど!!最近じゃ魔法の勉強どころじゃないんですけど!?このまま続けるって言うなら時間を作るためにハルトさんが私を召喚したように、私も使い魔を召喚して店番とかくらい任せたいって思ってるんですけど!?すっごく大変なんですけどー!?」


 私が一気にまくし立てるとハルトさんはニコっと笑顔を作って話しだした。


「妙子ちゃん。やっと気がついてくれたね。魔法とは基本的に手段であり、目的ではないんだ!妙子ちゃんなら自分で気がついて自ら動いてくれると信じていたよ!いや~。いつ気がついてくれるかと心配していたけど。いやー。良かった良かった!」


 ・・・・・・。


 目が泳いでる。

 何かそれっぽい事を言ってるけど中身は無さそうだ。


 あぁ。やっぱりか。

 これはきっと何も考えずに目先の欲に目がくらんでいたに違いない。

 私を働かせすぎていたのに「今」言われて気がついて何とか誤魔化そうとしている目だ。


 少なからずハルトさんにはそう言う所がある。

 私と言う店番が居るからと昼に起き出して夜中にゴソゴソ動き出すとか。

 一つの事に集中しすぎると周りが見えなくなったりだとか。

 話すべき事を話さずに問題を抱え込んだりとか。


 そして、これだ。


 単純に私の作ったポーションが売れるものだから嬉しくなって、何も考えずに私に色々と押し付けて、言われて初めてやりすぎたのに気が付き、それを誤魔化そうとしている…。


「いや?ごめんね?もっと早くに気がついてくれるかなぁっとか思っていたんだけど、思ってた以上に頑張ってくれたからさ…。」


 と、言い訳しているけど、ハルトさんが正気で、何かを考えて行動していたなら、私が言い出す前に何らかの助言をしていただろう。


 私は沈黙のままハルトさんを見つめた。

 自分の罪と認めずに誤魔化すと言うなら沈黙を貫こう。

 こうなったら、ある種の根比べだ。


 自ら反省しないと言うならこちらにも用意が有る!!

 そちらがその気なら、こちらはいつまでも口なんて聞いてあげないんだから!!


 今後もハルトさんと共同生活を続けるなら、ハルトさんには自分が仕出かした事を自ら認めて改善してくれないと意味がない。


 これで良いのだと思われたら、同じ事を繰り返されて改善には繋がらないのだから。

 自分で反省してくれると言うなら、このくらいの制裁は当然だ。


 沈黙が何分続いただろうか。


 そんなに長い時間ではなかったと思う。

 長くても五分くらいだろう。


 だけど、その沈黙は確実にハルトさんを追い詰めていた。

 沈黙に耐えられなくなったハルトさんが頭を下げたのだ。


「申し訳ない…。何も考えずに頑張ってくれる妙子ちゃんに甘えてました…。」


 勝った…。


 でも、この手の勝利はいつも虚しい。


 ちょっとした相談で済むと言うのに。

 ちょっとした思いやりさえ有れば言い争いなどしなくても良かったのに。


 完全勝利と言う事実とはウラハラに、私の心には一抹の虚しさだけが残ったのだった。


* * * * *


「まあ、それはハルトさんがシッカリと反省してくれれば良いんですけど!そんな事よりも!問題は今の忙しさで続けて行くって言うならお手伝いしてくれる存在が欲しいって事ですよ!私が一人でやるには忙しすぎます!使い魔とか召喚してみたいです!!」


 私としても自分が作った物が売れると言うのは嬉しい事だった。

 だから、忙しいと言う事に不満はない。

 いわゆる、これが嬉しい悲鳴なんだと思う。


 ただ、問題として私だけでは手が足りないと言うのは大きい。

 そして、それにハルトさんが気がつこうとしなかった事が苛立たしかった。


 忙しくも無いのに他に人を雇う必要は無いと思う。

 でも、手が足りないと分かった時には人員を補充し、業務が滞りなく行える様に対策をするのが、ハルトさんの役割じゃないだろうか。


 ハルトさんの裏のお仕事「ダンジョンマスター」と言う、秘匿性の高い事情を考えると街の人に募集をかけられないのは理解している。


 だから、使い魔を召喚して店番くらいは任せたいと言ってみたのだけど…。


「うーん。俺が召喚する方が手っ取り早いんだが…。妙子ちゃんが召喚に挑戦したいと言うなら、それも良いだろう。ただ…。」


 そこまで言うとハルトさんが言い淀んだ。


 他に何か問題が有るのかな?

 私が召喚された経緯を考えると問題は無いと思って提案したみたんだけど。

 ハルトさんには他に気になる事が有るみたいだった。


「問題としては使い魔を召喚したいと言うまでの経緯を考えると、召喚したモノには裏方ではなく店番をさせる事になる。妙子ちゃんの店番と言う負担を取り除いて魔法の勉強やポーションの製造など「魔術師」としての割合を増やし、休息の時間もちゃんと確保したいと言うのが主な目的だよね?」


 その通りだ。

 さっきも言ったけど、この世界で生きると決めた私が「魔術師」として、そして「魔法使い」として経験を積み重ねるとしても、お店を繁盛させるとしても人手が足りない。


 ハルトさんがもっとお店の運営に協力してくれれば良いだけの話の様に思えるけど、そのハルトさんも人手が足りないからと言うか自分で店番をしたくないから召喚をして店番を任せたいと思って私を召喚したのだから、ハルトさんがこれ以上 店に立つと言うのは本末転倒だと思う。


 だから、ハルトさんの秘密を守れて人手を増やせる手段として召喚は最適だと私は思ったんだけど何が問題なんだろうか?


 私は「うん」と頷いてハルトさんが話し出すのを待った。


「この街は、この世界の一般的な街と比べても大きい。大都市として発展途中だと言える。でも、死が身近なこの世界ではどんなに街が大きくなろうとも村社会的な人の繋がりは強いんだ。それは良い面も有れば悪い面も有る。」


 そこまで聞いて何となく理解できたかも知れない。

 ハルトさんが言う様に良くも悪くも村社会。


 私がハルトさんについて街の人に聞かれるように、シーナさんやローズさんもリックやグリードさんについて聞かれているのを目にした事がある。


 ある種の有名人だからと言う事じゃない。

 それは、街を行き交う冒険者や住人の人達にも言える事だった。


 人々は情報を共有し自分の半径何メートルかの人間関係を把握する。

 その連鎖が繋がって、この街全体を把握する事に繋がる。

 良い話も悪い話も徐々に、また急速に広まっていく。


 それはある種の防衛手段。

 異変を見逃さず意識せずとも自分たちの街を守るための仕組みって言う事。


「察してくれたと思うけど、人が一人増えると言うのはこの街にとっても一大事なんだ。それが流れ者ではなく定住者となれば尚更だ。」


 つまり。人間関係が密である分、良くも悪くも噂は広まると言う事なんだと思う。


「妙子ちゃん一人なら何とでも理由はつけられたけど、つい最近まで人を寄せ付けなかった俺が二人も人間(・・)を抱えるとなると話が違ってくる。街の人には受け入れられるだろうけど、何らかの噂が付いて回るのは目に見えている。だから準備が必要なんだ。俺が妙子ちゃんを召喚した時の様なワケにはいかないと言うのが問題かな。」


 私もそこまでは考えていなかった。

 腐ってもハルトさんと言う感じだろうか。


 この世界を生きてきた先輩としての的確な指摘で、さっきまで目先の欲に目がくらんで、私をこき使っていた人と同じ人物だとは思えない冷静な判断だった。


「まあ、案ずるよりも生むが易しじゃないけど、やってみてから考えても良い。でも、ある程度の布石は打っておくべきだとは思うね。」


 付け加えられた言葉にハルトさんが反対していないと言う事は分かる。

 どの様に新しい仲間を迎え入れるか。

 問題はその一点だと言いたげだった。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 結局、私達が至った対策は簡単なものだった。


「そうなんですよ!私の親戚がこっちに出てくるって知らせがあって! え?どんな人かですか?うーん。親戚だから随分会ってなくて。正直、分からないんですよねー。」


 出来るだけボカして、うちの店に従業員が増えると言う話を自ら流布すると言う方法。


 兄弟と言うと関係が近すぎて色々と聞かれるのは目に見えているから、親戚と言う事にして、私もどんな人かボンヤリとしか分からないと言う真実を放り込む。


 私が召喚する場合、全てを決め打ちして召喚するより、ランダムで召喚した方が技術的にも簡単で良いモノが召喚出来る可能性も有るから条件を広げて召喚のが無難なんだそうだ。


 だから、どんな容姿かも分からないと言う召喚時のデメリットがあって、詳細まで深く聞かれるのは都合が悪いから全体をボカして噂だけを広めて行く。


「うーん。どうでしょうか。私達が住んでた北方辺境は色々と未開の地ですからねー。出て来ると言っても大変だから時間はかかると思うんですよねー。近々って言う事は書いて有るんですけど。いつになるかまでは。無事に着いてくれれば良いですけど…。」


 時期も曖昧にする。

 これは私の問題からだ。

 召喚術についての本は読んではいたけど実践した事は無かった。


 現象として現れる魔法とか魔術とは違い、物質として現れる召喚術はどうしても試す事は出来なかった。


 使い魔と言っても生き物である可能性が高いんだもの。

 例えば霊的なモノだったとしても、私に付き従い、私に責任が伴うのだから、無責任に召喚するなんてできなかった。


 現在、召喚術式について勉強中だから時期についてもハッキリとは言えないのである。


 そこで、北方辺境出身と言う私の設定がここで役に立った。


 交流は有るものの、伝え聞くしかない北方辺境と言う土地柄から到着時期が分からないと言う曖昧な設定でも疑問に思われる事は少ない。


 この事によって噂を広めつつ、召喚術式の習得に時間を割けるようになったのだ。


* * * * *


「お嬢!安定して呼び出せるようになりましたな!」


 召喚術の練習をしているとムッキムキの筋肉が黒光りする悪魔のルルデビルズさんが気さくに声を掛けてきた。


 私にとってはある意味で先輩なのでお嬢呼ばわりされるのには違和感を感じるのだけど、ハルトさんの召喚した悪魔界隈で私は「お嬢」的な扱いらしい。


 主人であるハルトさんが私を序列の第二位に設定したかららしいけど、この呼ばれ方は少し抵抗感を感じる。


 うん。なんかヤの付く職業の人を思い浮かべてしまうから。


「何回も言ってますけどお嬢は止めて下さいよー!召喚術に関してはルルデビルズさんは私の師匠的な感じなんですから、もっと気軽にタエコちゃんとかで良いですよ?」


 召喚で従業員を増やすと決めてからと言うモノ、私はダンジョン施工の責任を担う悪魔のルルデビルズさん指導の下で召喚術を学んでいる。


 これは練習と実益を兼ねた実践練習。

 ダンジョン建設の作業員となる低級悪魔の召喚をしながら召喚術式の練習をしていた。


 ある程度の知能を持った使い魔を召喚するには私は経験不足だ。

 指示によって作業をこなすだけの低級悪魔から慣れて行くのが手っ取り早いらしい。


 召喚陣の設置から始め、低級悪魔を召喚して、ルルデビルズさんに権利を移譲するまでがワンセットで、これを毎晩二十セット行っていた。


「まあまあ、そう仰らずに。悪魔と人間は契約あっての関係。だんなが何かあった時にはお嬢に全ての権利を移譲すると設定された限りは、何かあったら次のマスター候補はお嬢ですぜ? だが、お嬢との直接契約は無いワケですから言わば我々にとっては大事なお客様って話ですわ。その辺りをなぁなぁにせずに立場を明確にするのも悪魔との付き合い方だと思って諦めて下さいな。」


 と、言うなら何かにつけてニカっと白い歯を見せてポージングするのは止めて欲しいとか、上半身が裸なのは良いのかと言いたい所だけど、言ったら言ったで面倒臭い事を延々と聞かされそうなので、ハルトさんに何かあった時にでも改めさせよう…。


 現状ではどうにもなりそうもないみたいだ。

 色々と諦めた私はヤレヤレと首を振り、水筒に入った水を飲んで一息つく事にした。


「お嬢の言う事も分かるんですがね。悪魔ってーのは多かれ少なかれ、そう言うモノなんでさー。契約と言うカタチが有ってこそ悪魔と人間の関係は成り立ち、我々はそう言う世界の住人である。ゆえにカタチだけだとしても「お嬢」として上下を明確にしておかなければ魔が差すって事もあるんで許してくだせー。」


 そう言うと煙草を取り出しプハーと煙を吐き出した。


 うん!悪魔って面倒くさい!!


 ある種、私は「もう良いよ。分かったよ。」と言う意思表示として、何も言わずに休憩していたと言うのに、この悪魔には伝わらなかったみたいだ。


 自分の世界に入り込んで語り始めた!


 まあ、それは良い。それは良いとしておこう。

 でも、上下関係を明確にとは言うけど、この悪魔にとって自分ルールの上での話と言う感じっぽい感じがした。


 その証拠に何も断らず煙草を吸い始めた。

 その行動に全てが表されているんじゃないだろうか?


 私としては煙草を吸う事に対してはどうこう言うつもりはない。


 副流煙がどうこうと言う話も有るけど、どうこう言う前に「どう言う環境でどれだけの期間でどうなったのか?」と言う数字などのデータが伴わない以上は、一定の影響は有っても、騒ぎ立てる程の影響は無いと思っている。


 お茶なんかと同じで、煙草やお酒って言うのは昔からのコミュニケーションツールの一種。私としては「節度を持って嗜むなら良いんじゃない?」と言うスタンスだ。


 問題が有るとするなら嗜む人間と嗜まない人間がお互いが折り合いを付けて妥協点を探すのが正しい正解であり、喫煙者が煙草を吸う自由を振りかざして何処でも自由に吸って迷惑をかけて良いとも思わないけど、喫煙レイシストが煙を見て喫煙者を人間じゃないと言う様な扱いをするのも正しい方法では無いと思う。


 ようはお互いの気遣いの話なのだから、どちらもがお互いの事を考えて行動をしないと意味がない。


 そう。上下関係をどうこう言うなら「煙草吸っていいですか?」くらい聞けや!ボケー!!と言いたいのを私は飲み込んだ。


 そう。気遣いだ。大事なのはお互いの気遣いなのだ。

 好きな人の口臭や体臭が気にならないのと同じで好意によって受け取り方は変わる。

 まあ、限度は有ると思うけど、今はそれは良いとしよう。


 人によっては何もかもが嫌いになるように、ちょっとした意識の持ち方一つで受ける印象も変わるのだから、ちょっとした気遣いと言うのは重要なんだ。


「ルルさん。煙草が煙いんで。吸うならせめて吸って良いかくらい聞いて下さい。」


 そこまで言うならと、私は呼び方を変えて自分が上位である事を示して注意をした。

 上下関係が大事だと言うなら、私がお客様だと言うなら、この一言で理解してくれるだろう。


「おっと。すいません。普段は野郎ばかりなんで失念してましたぜ。」


 吸い始めたばかりの煙草を消して深々と頭を下げるルルさんに多少の申し訳無さを感じたけど、言わないと始まらない。意思を伝えて初めて人間関係が始まるんだから。


 ただ、こう言う問題はお互いが冷静に話せれば解決出来る問題なんだと思うんだけど、そこに感情とかが上乗せされるから問題がややこしくなる。


 私は出来るだけ冷静にルルさんに言って聞かせた。


「うん。分かってくれれば良いのよ。煙草を吸うのだって駄目なんて言わない。ただ、誰が相手でも礼儀として煙草を吸って良いかくらいは聞いて欲しいかったかな。特に上下関係がどうとか言うなら余計にね?」


「お嬢…。すまねぇ…。おらぁ…。おらぁ…。人間として大事なモンを忘れてた…。」


「ルルさん…。あなたは悪魔だよ…。」


 こうやって誰もが許しあえれば良いのに…。

 私たちは固い握手を交わしてお互いを許しあった。


 あぁ…。私は何やってんだろう。と、思いながら。


* * * * *


 そこからは早かった。


 何だかよく分からないテンションって言うのは人間関係を劇的に改善する事がある。

 それをキッカケに能力も劇的に引き上げられる事だってある。


 例えばクラブ活動とかでもそうだ。


 自分が上手く出来ない事が悔しくて涙を流しながら先輩に相談とかしたら、一緒に先輩も泣きながら励ましてくれて、次の日から可愛がられたりとか人間関係が一転して全てが上手く回り出すなんて経験はないだろうか?


 私とルルさんとは人間と悪魔なワケだけど、関係性と言う点に関しては悪魔も人間も関係無いみたいだ。


 あの恥ずかしいノリを乗り越えた私たちに怖いものはなかった。


「タエコちゃんも成長したもんでさぁ。何も知らなかった子鹿(バンビ)ちゃんが一週間そこらで低級悪魔なら召喚陣無しでも召喚できるようになるたぁ…。大したもんだ。」


「いやいや!ルルさんの指導が良かったんだよ!つい、この前までは低級悪魔を召喚するののも苦労していた私がこの通り!!」


 ポンと言う効果音と共に可愛い顔をした低級悪魔が何も無い空間から現れる。


「HAHAHA!すげーぜ!この分なら本番でも大成功間違い無しだな!!」


「えぇ!ルルちゃん!!完璧に召喚して見せるわ!!」


 チラ…。


 そう。私達の三文芝居(プレゼン)を見せられて、何を見せられているのだろうかと困惑するハルトさんだって、今の私達には怖くなかった。


「うん…。何と言うか二人が仲良くなったのは分かった…。少し考えさせえてくれ。」


 何も怖くはなかったのだけど…。

 明らかに引いているハルトさんを前にしてやってしまった感が半端ない!!


『ちょっと!ルルさんが任せろって言ったのにどうなってんの!?』


『大丈夫だ!タエコちゃん!だんなは意外とこう言うノリが好きなはずだ!』


 定期的に進捗状況を見て本番の召喚を行う時期を決めようと言うハルトさんの試験的なモノに一発合格しようと三文芝居までして見せたと言うのにハルトさんの反応は悪そうだ。


 ちょっと離れた所に有るテーブルに座って頭を抱えているハルトさんを見ていると今回のコレは失敗だった事がうかがえる。


『タエコちゃん。お嬢の技術が確実に上がっているのは、このルルデビルズが保証致します。ただ、だんなが思った以上にマジでした。今回がダメでも次は実力で勝ち取りましょうぜ!』


 ルルさんに至っても、あきらめムードだった…。

 あぁ。だから止めようって最初は言ってたのに…。

 どうして私はあの時イケるかもとか思ってしまったんだろう。


 ルルさんに「取り敢えず練習してみましょうぜ!」と言われて練習してみたら段々と楽しくなっちゃった自分が恨めしい…。


 だが、その時…。

 奇跡は起こった。


「よし。良いだろう。あの三文芝居に何の意味があったのかは分からないけど、そこまで出来たなら試してみても良いだろう。知能の有るモノを召喚するんだ。流石にこればかりは実践してみるしかないからな。一週間後だ!この一週間で本番で失敗しないように色々と覚えてもらうぞ!」


 スクっと立ち上がったハルトさんがこちらを振り返りニッコリと笑う。

 奇跡と言うには凄くささやかな出来事かも知れない。

 他の人から見れば単に師匠であるハルトさんに許しを得ただけの事。


 でも、それが今の私にはとても嬉しかった。


 だって、魔術師として歩み出して初めて認めてもらえた気がしたんだもん。

 だって、私の初めての召喚が師匠としてのハルトさんに許されたのだから。


 一週間後。


 私は初めての召喚を行うのだ。


どうも。となりの新兵ちゃんです。


現時点で日が変わって月曜の深夜なのに、こんな時間にアップしてどうしたいんだよと自分でも思いますが、取り敢えずアップしておこうと思います。


そこそこ忙しい時期なので自動投稿だと投稿後の確認も出来ないでしょうから。


前回に引き続き急ピッチで妙子ちゃんには色々な事をしてもらっていますが、其之一以降から本編は十章で収めようと言う都合上からですね。


来週末くらいに其之三を終えて、進行具合によっては本年中にEXでもう一本アップ出来ればと思っていますが、その辺りは期待せずに待って頂ければと思います。


年明けは様子を見ないと分かりませんが、早い時期に其之四を開始したいのですが…。

うーん。中旬までに再開出来れば…。


先の予定はどうなるか分かりませんが、アップした際には時間のある時にでも読んで頂ければ幸いです。


と、言う事で今回もお付き合い頂きありがとうございました。

それでは、またいつか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ