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其之二|第三章|フィーナの奇妙な木箱

 フィーナ=グラスロッドの長い旅は終わろうとしていた。

 ゴトゴトと響く馬車の音。

 街の喧騒。

 料理をする音が聞こえ、美味しそうな食べ物の香りが、ここまで漂ってくる。


『ぐぅぅ~』


「おなかが減ったわ…。」


 ここ数日ロクなものを食べていない。


「もう少し、楽だと思ったのに失敗だったかしら…。」


 良いアイデアだと思ったのだけど、どうやらこの方法で旅をするのは失敗だったらしい。


「こんな事ならいつも通りバビューンと飛んでいった方が良かったわね。」


 久しぶりに会うあの子を驚かせようと奇抜な方法を選択したのが間違いだった。


「これは、しっかり驚いてもらわないと元が取れないわね。」


 バカな事をしたと思いつつ、ぼんやりとそんな事を考えていた。


* * * * *


 ガラガラガラ…


 お尻に伝わる揺れが心地いい。

 ここまでの疲れもあって少し寝てしまっていた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 遠くから聞こえる人の声が心地良い。

 馬車で聞こえていた街の喧騒は既に遠退いたようだ。

 もう少しで到着だろうか。

 まだ、覚醒しない脳がもう少し眠りたいと訴えかけている。


 一眠りしてしまおうか…。


 ・・・・・・。


『ガタン!ゴン!』


 いけない。いけない。本当に眠りそうだった。

 ウトウトと船を漕いで強打した額をさすりながら、倒れた杖を持ち直す。

 道中ずっと暇だった事もあって、すっかりうたた寝が得意技になりそうだ。


「「・・・・・・・・・」」


 おや?これは…。


 外の音に耳を傾けると何やら騒がしい。

 街の喧騒とは違う騒がしさが外から聞こえてくる。

 何やら、慌てているような、驚いているような。


 状況を確認する為に、サーチの魔法で周囲の様子をうかがう。


「ふむ。丁度良い所で目が覚めたようさね。」


 状況は把握した。


 だが、一向に外の騒ぎは収まる気配がなかった。


「なるほど。これはどうやら自ら出ないといけないらしい。」


 フィーナ=グラスロッドは、眠たい目をこすりながら身なりを整えて出かける準備を始めるのだった。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「何なんですか!?これ!!怖いです!捨ててきて下さい!もうやだぁー!おかあさーん!」


 半狂乱状態の妙子ちゃん。

 驚くなと言う方が無理だ。

 俺もさすがにコレはないと思う!


 この世界に来てから色々あったが、こんな嫌がらせは初めてだ!

 どう考えても『なまもの』ではなく、『いきもの』が入ってるのは確実だ!


 ガタン!って!ガタン!って動いたよ?!この箱!?


 しかも、この木箱は只者じゃない…。


 考えて欲しい。

 見えないと言う恐怖を。

 分からないと言う恐怖を。

 確認が出来ないと言う恐ろしさを。


 バラエティ番組などで、箱の左右にあいた穴に手を入れて何かを当てるゲームが有る。

 アレと同じで中に何が入ってるのか分からないと言うのは恐怖だ。

 見えない。分からない。確認できない。

 未知の存在に対して恐怖を感じるのは人間の防衛本能なのである。


 俺もそれなりの魔法使いだ。

 木箱がいきなりガタンと動き出せば確認くらいする。

 こんな意味不明な状況の中でも反射的に行動できるくらいの鍛錬は積んでいる。

 探索魔法を駆使して一瞬で木箱の中身を判別するくらいは朝飯前だ。


 いくら気が動転していてサーチが失敗したとしても、有機物か無機物かの判別くらいは出来るし、生き物なら犬猫などの種類くらい判別できる自信はある。


 さすがに、ひよこのオスメスを判別する事は出来ないだろうが、ひよこである事は判別出来るだろう。


 箱が動いた次の瞬間には反射的に探索魔法を発動させていた。

 中身が何であろうと判別出来るくらいの探索魔法を。


 だが。

 発動させたのだが。

 中身が見えない…。


 もし、これが正常な探索結果だとするなら、木箱の中には何も入ってない事になる。


 木箱からは少し魔力は感じる。

 普通より少し濃いと言うくらいの魔力を。

 この荷物が、もし、魔法使いから送られた荷物だとするなら、この程度の残り香が残っていてもおかしくない。


 万が一、木箱の中に何者かが居て、俺の魔法をシャットアウトしたのだとしよう。

 だが、俺の魔法をこの程度の魔力で防げるワケがない。


 そう言い切れるだけの質と量で俺は探索魔法を発動しているのだ。


 魔法を防ごうと思うと、放たれた魔法の効果や規模と同等程度の魔力が必要となる。

 相手は俺が放った探索魔法と同等程度かそれ以上の魔力を使わないと防げないのだ。

 つまり、俺の探索魔法を防ぐのに、こんな残り香程度の魔力では防ぐ事は出来ない!


 魔術師や魔法使いの質と言うのは、魔法や魔術をどれだけ効率化し、どれだけ魔力を使わずに大きな効果を得られるかと言う部分も有る。


 大きな魔法を制御出来るテクニックや才能。

 それを設計出来る知識に技術。

 大魔法使いと言われるのには、他にも必要な要素は有る。


 だが、その中でも一番大事なのが、いかに効率良く魔法を運用できるかだ。


 魔力を効率良く発動出来れば、それだけ手数が増えると言う事。

 手数が増えれば、実験だとしても実戦だとしても勝てる確率が上がる。

 魔術や魔法を極めたと言われる人間でも研究を続け、探求を続けるのはその為だ。


 効率化!すっごく大事!


 だとは言え、この木箱から感じる程度の魔力で、俺の探索魔法が防げるような魔法は放ってない。

 それが出来る魔法使いが居たとしても、世界で何人いるか上から数えた方が早いだろう。

 もし、そう言う類の魔法道具などが入っていたとしても、こんな普通の木箱に入れて、一般の輸送経路で送られて来るとは考えにくい。


 そんな、世界レベルの魔法使いや国宝級の魔法道具が、普通の木箱の中に入っているワケがない。


 となると、この木箱には何も入ってない事になる…。

 だが、重さから言うと何も入ってないと言うのは、どう考えても変だ。


 予め、木箱の中身にサーチを防ぐ為の魔法が施されていたとしても、俺の魔法を防ぐだけの対魔法が施されている荷物なんて異常を通り越して恐怖だ。


 しかも、差出人の書かれていないこの木箱の中身は勝手に動いたのである。


 それは、悪魔とか魔物と普段から接してる俺でも怖い!

 悪魔とか魔物だとか、正体が分かっていればある程度の対処が出来る。


『中身がわからない』


 俺ですら、木箱の中身が全く分からないと言う恐怖を分かってもらえるだろうか?


 下手すると悪魔や魔獣よりも強烈な何かが入ってる可能性の方が高いだろ!!これ!!


* * * * *


「ハルトさーん…。捨てましょうよー!これ絶対ヤバイですって!どこで恨み買ってきたんですか!?中身確認しなくてもヤバイですって!捨てましょうよー!」


 少し落ち着いたのか逃げ出した妙子ちゃんが壁の影から顔を覗かせて様子を伺っている。

 妙子ちゃんの言う事はもっともだ。

 もっともだが、俺ではこの重そうな木箱は動かせない…。

 それ以上に、こんな意味不明な木箱に触りたくもない…。


「妙子ちゃん。俺じゃあコレを動かせないよ。」


 目に見えて妙子ちゃんが青ざめる。


「なんですか?なんですか?なんですか?もしかして、それを、私が、動かせって事ですか!?イヤですよ!!なんで私が!!!!」


 ごもっともである。俺でも嫌だ。何が入ってるのかも分からない箱を持ち上げて、何かあってはシャレにもならん。ごもっともである。


「でも、さっきは…。」


 片手で木箱を担いできた妙子ちゃんを思い浮かべながら早く外に出すように促す。


「さっきはさっきです!知らななかったから!知らななかったから!知らななかったから!」


 うむ。これまたごもっともである。

 かくなる上は…。


「じゃあ、魔法を使って木箱を移動させるか…。妙子ちゃんの記憶を消して…。」


 最後の言葉を聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟くと俺は両手に魔力を込めた。

 そう。知らなければ良いのだ。


「怪しい木箱だと知ってしまったから動かせない!」と言うなら、知らなければ動かせると言う事だ。


 ならば、記憶操作系の魔法でちょちょいと記憶を操作してチャチャっと外へ運んでもらおう。

 うん。今は、多分、そう言う非人道的な事も許される状況だ。


『南無三!』


 ・・・・・・。

 あ。なんか抵抗されたっぽい…。


「なんかピクンってきた!おい!ごらぁ!何をしようとしてるんですか!?ハルトさん!私に魔法で何をしようとしてるんですか!?鬼ですか!?悪魔ですか!?鬼畜ですか!?乙女に何をしようとしてるんですか!?今、何しようとしたんですか!?」


 やろうと思えば一瞬で済む事なのだが、ことのほか抵抗が激しかった。

 俺の行動を察知したのか、無意識にだと思うがアンチマジックシールドが展開されていた。


 魔法の勉強を始めてからと言うもの、妙子ちゃんの魔法抵抗力もグングン上がっているの。


 もっと強力な記憶操作系の魔法を使えば無理やり記憶を消す事は出来るが、万が一にも失敗した時の事を考えると得策じゃないだろう。

 なによりも、詠唱に時間が掛かるので、その間に逃げられたり殴られたりしたら元も子もない。


「でも、じゃあどうしろと…。」


 沈黙する二人。

 部屋の静けさだけが際立ち、ただ時間だけが過ぎて行く。



『ガタン!ガタン!』



「「ひぃぃぃぃぃぃ!!」」



 二度目の悲鳴を上げる魔法使いと弟子。


 次の瞬間、木箱が宙に浮いて光り輝く。

 次第にその輝きは増しハルト達の視界を奪う。


『ヤバイ…。これはヤバイヤツだ…。』


 妙子ちゃんだけでも逃さないと。

 相手が何者かも分からない状態だ。

 最悪、妙子ちゃんだけでも逃さないと、俺が後悔する事になるかも知れない。


「ハルトさん!ダメ!逃げて!…そして私の為に死んで!」


 光に包まれた部屋の中で妙子ちゃんの声が響き渡る。


 そして、次の瞬間…


『ドン!』


 突き飛ばされた!突き飛ばされた!突き飛ばされた!

 木箱の方向に突き飛ばされた!

 怪力フルパワーっぽい理不尽な力で突き飛ばされた!


 そして、最後に物騒な言葉が聞こえた!


 妙子ちゃんの怪力で突き飛ばされて宙を舞った俺は耐ショック姿勢をとる事も出来ない…。


 木箱の中から煙っぽいものが上がっているのがかすかに見える。

 木箱の中身が何者かであったのは確かの様だ。

 光が和らいで、人の様なシルエットが浮かび上がる。


『クソ…。逆光で何かは分からんが死ぬわけにはいかん。迎撃するか…。』


 俺は宙に舞いながら、取り敢えず何者かからの攻撃を防ぐためにスタンの魔法を発動する。


 だが、手応えがない!


『なに!?抵抗されただと…!?』


 俺の魔法に抵抗できるなど、そんじょそこらの魔物では無理なはずだ…。


 ヤ バ イ !


 ホ ン ト ニ ヤ バ イ !


 ぱふん。


 何か柔らかい物に受け止められた。

 魔法に抵抗された事もあって呆然とする…。


 木箱から現れた何者かは微動だにすらしない。

 

 駄目だ。ヤツは余裕だ…。

 この時点で何もしてこないと言う事は、俺なんていつでも殺せると言う事だ。

 俺は死を覚悟した。



「よっこいしょ。私、参上。お邪魔するわ。」



 何者かが人語を発する。

 それは、何とも懐かしい声の様な気がする…。


「それにしても随分と騒がしいわね。何かあったのかね?」


 素っ頓狂な事を言って辺りを見回しているのだろうか。

 俺を受け止めた柔らかい『それ』が動作と一緒に左右に揺れる。


 少し落ち着きを取り戻した俺はその体勢のまま上を見上げる。


 そこには魔女が立っていた。

 胸元がザックリあいたコスプレ魔女が。

 俺をその巨乳で受け止め、キョトンとした表情で。


 そこに立っていた『おっぱい』は、俺の師匠『フィーナ=グラスロッド』だった。


* * * * *


「あの。コーヒーです。」


 妙子ちゃんがコーヒーとチョコレートケーキを用意してくれた。

 師匠は、それを受け取るとコーヒーを一口飲み、「とても美味しいわ。ありがとう。」と、お礼を言うと、微笑みながらジッと妙子ちゃんを見つめる。


「えっと!じゃあ、私は店番があるのでこれで!ごゆっくり~!あはあはあは~。」


 逃げ出す妙子ちゃんを見送る俺と師匠。

 うん。どうしようか。俺も逃げ出したい。

 何日か前にこっちへ来ると言う手紙は受け取っていたが、こんな方法で現れるとは…。


「随分と賑やかな歓迎だったわね。手紙は読んだのよね?」

「えぇ。まぁ。読みましたけど…。」


 読みましたけど、荷物として運ばれてくると誰が想像出来ようか。

 

「いきなりショボいスタンを飛ばされた時には、どうしてくれようかと思ったわよ。」

「はぁ。ショボいスタンで申し訳ないです。」


 そりゃ、正体不明の荷物がいきなりガタガタと動き出して、その中から敵かも知れない何者かが現れたら『ショボいスタン』の一つも飛ばすってもんだ。


 あんな登場をしておいて、何が不満なのか俺の目の前でふんぞり返る『伝説の魔法使い級』の魔女が不満を漏らす。


 外見は『黒髪ロング』『前髪パッツン』『巨乳』『胸元がザックリ開いたミニスカートの魔女服』『サイハイソックス』『ニーハイブーツ』『魔女っぽい帽子』と、妙子ちゃんを凌ぐ過剰設定の痛い外見だが、こう見えて世界で五本の指に入る魔法使いだ。


 しかも、五人の中でも上位に入る実力の持ち主ときてる。

 俺の『ショボいスタン』が弾かれても仕方がないってもんだ。

 ちなみに、俺は世界の魔法使いの中でも十二番目くらいには入る程度には実力が有ると自負している。


「まぁ、良いさね。で?」


 何やら満足げな笑顔で見つめらている…。

 うーん。そんな笑顔で「で?」と聞かれても返答に困る。

 こんな時にどんな顔をすれば良いのか分からない。

 笑ったら確実に絞められるのは何となく本能で感じている。


「何が『で?』なんですか?」


 派手なアクションで明らかに師匠が落胆する。

 師匠とは長い付き合いだが、さすがにこれは分からない。

 理不尽な問いかけに困惑するなと言う方が無理な話ではないだろうか!

 この人は、前からこう言う所があるが今日のは特上級である。


「はぁ…。だから君はいつまでも童貞なんだ。そこは察する所さね。」


「童貞ちゃ…!う事はないですけど…。何ですか…。人にはちゃんと伝えなければ考えは伝わらないってお母さんに習いませんでしたか?」


 図星だが、性格の悪い真実をニヤニヤしながら放ってくる。

 あぁ…。確実に遊ばれている。

 いつもの事だが実に鬱陶しい。


「あいにく、母とは幼少の頃から会ってないからね。」


 伏せる瞳に涙が…。


 浮かんではいないな。

 美人が相変わらず子供の様な無邪気な笑顔でこちらを見ている。

 もう、待ちきれないと言う感じだ。


「それよりも素晴らしい登場だったろ!?三日三晩も木箱の中で馬車に揺られて来た甲斐があったってもんさ!!驚いた?驚いた?」


 はぁ。何やってんだろうか。この人は。

 うちの師匠は世界でも五本の指に入る魔法使いのはずなんですけど…。

 黙ってれば格好は置いておいても絶世の美人なはずなのに、なんて残念美女だ…。


「はいはい。驚きましたよ。木箱ごと燃やしてしまおうかと思う程にはね。用事が済んだなら帰って頂いて構いませんよ。」


 俺の反応が気に入らなかったのか、頬を膨らませてプイっと明後日の方向を向く。

 少し冷めたコーヒーを口に含むと店の方に視線を移し、一転して楽しそうに妙子ちゃんを眺める。


「まあまあ。慌てなさんな。まだ帰れないさね。彼女が例の三人目かい?」


 スイッチが切り替わったかの様に今度は真剣な眼差しで真っ直ぐに俺を見つめてくる。

 やっと本題っぽいな。

 つまり、師匠は俺が居た元の世界からこの世界に召喚された三人目の妙子ちゃんを見に来たって事らしい。


「そうですよ。伊丹妙子さん。俺が元いた世界から召喚された子です。」


 そう告げると「ふふん。」と鼻を鳴らし、新しい玩具を買ってもらった子供の様に目をキラキラさせる。


 異世界へのアクセスについて研究していた彼女にとって貴重な研究材料が、こんな近くでノンキに店番をしているんだ嬉しくないはずがないだろう。

 どれくらい貴重かと言うと、師匠が知る限りで俺の前に俺達が居た元の世界より人間が召喚されたのは約百年前らしい。

 それを考えれば、十年と言う短期間でサンプルが二体も五体満足で揃うなんてのは奇跡に近い。


 それは「それだけ」で、そこには何かしらの法則が存在し、その法則さえ分かれば向こうにアクセス出来ると言う証明であるとも言える。


 どうして過去の師匠が異世界へアクセスしようと思ったのか理由は分からないが、異世界にアクセスしようと思い立ち研究を行っていた彼女にとって、この状況は朗報とも言えるだろう。


 その証拠に早く色々と聞きたいと言う感じをヒシヒシと感じる。

 話が長くなりそうだ。

 冷めたコーヒーを淹れ直し、じっくりと話をする事にしますか…。


* * * * *


 コーヒーを淹れ直し戻ってくると、さすがに妙子ちゃんを見てるだけの現状に飽きたのか師匠はチョコレートケーキを頬張っていた。


「おっと。ご苦労。ん!」


 と、コーヒーを寄越せと言わんばかりにカップを持って手を伸ばしてくる。

 師匠は美人だが、やってる事は昭和のオヤジである。

 つい、「俺は師匠の嫁か!」とツッコミそうになるが言わない方が懸命だろう。


「はいはい。お待たせしました。で、どうですか?彼女は。」


 大人しくコーヒーを注ぎ、すらっとした白い手にコーヒーカップを戻す。

 師匠の対面に座ると俺も淹れたてのコーヒーに口をつけた。


「うーん。そうね。随分と可愛いらしい子ね。もうヤッたの?」


『ぶふぉぉぉぉぉ!』


 ゲホゲホゲホ。何を言い出すんだ!この年増魔女は!


「あらあら。その様子じゃまだ童貞のままね。アハハハハ。」


 ケタケタと笑いながら足をバタつかせる年増魔女。

 見た目は若いが百歳を超えているだけあって、言う事に恥じらいや品位が全くない。

 慎みも欠如してるのか?パンツ見えてるし!

 まったく。ロクなもんじゃない。


「はいはい。そうですよ。童貞のままですよ。って言うか!いきなりこっちに召喚されて不安な彼女にそんな事できるワケないじゃないですか!?」


「ハルトの場合は、そうじゃなくても手を出せないだろう?今に始まった事じゃないさね。」


 その通り過ぎて反論できないが、納得も出来ない。

 納得を出来ないと言うか、何というか図星すぎて「キー!!!」とか奇声を上げそうになる。


「そ・れ・で!師匠から見て彼女はどうなんですか?その為に来たんでしょ???」


「猫耳と尻尾が可愛いから持って帰りたい。」


「・・・・・・。」

「・・・・・・。」


 ニッコリ


 どうやら本心っぽい。

 気持ちの良いくらいの美人スマイルをこちらに向けてくる。


 実に面倒臭い。

 木箱に詰めて返品したい。

 これでも恩がある師匠なので無下にはしないが、俺が師匠の元を出た理由の一つを久しぶりに噛み締めていた。

 魔法の実力は折り紙付きだが、どうして魔法使いと言うのはこうも色々と拗らせているのだか…。


「まあ、冗談は良いさ。」


 良いなら最初から遠慮してもらいたいものである!


「潜在的な魔力量や処理速度の速さとか、彼女の様子を見てると感じるわ。君を拾った時のソレと比べても大きなモノさね。君の居た世界の人間が大魔法使い級の素質を持っているのか。それとも大魔法使い級の素質を持っているから、この世界に召喚されたのか。興味深いわ。」


 そう言うと愛おしそう妙子ちゃんを見つめながらコーヒーに口をつける。


 確かに、最近の妙子ちゃんは急激に魔法の技術を習得していた。


『じゃあ、魔術を覚えながら魔法を試せば、速攻で魔法が使えちゃうかも知れませんね!』


 妙子ちゃんが言った言葉を思い出す。

 言うのは簡単だが、実際にそれを行うのは難しい。


 事実、それを行う事が出来る人間は少なく、この世界の住人が魔術を習得して魔法使いを目指すとなると何年もの時間がかかる。


 妙子ちゃんと同じ考えに至って実行する者もたくさん居ただろうが、それで魔法使いになったと言う話は聞いたことが無い。


 ラノベにマンガ、アニメにドラマCD、映画化にドラマ化。

 様々な形でイメージが具現化される元いた世界。


 オタク以外でもそれらに触れる事が容易な世界で育った俺達だからと言う可能性も考えた事は有るが、脳内でイメージをハッキリと映像化するのは容易ではない。


 魔法と言うのは、魔術で使用する詠唱や魔法陣を脳内で正確に映像化して発動するもの。

 言うのは簡単だが、普通の人間がそれを行うのがいかに難しいか試して見れば分かるだろう。


 それを実行出来る妙子ちゃんの才能にも驚くが、様子を観察するだけで妙子ちゃんの才能を見抜ける師匠にも驚く。


 たかだか魔法を習得して十年の俺では足元にも及ばない事を実感させられる。


「しっかりと基本を学ばせて下地を作り、そこから応用を覚えれば十年やそこらで世界で一番の魔法使いになれるかも知れないわね。男のハルトには悪いが、君が見られない世界を彼女は見られる様になるだろうさ。」


 コーヒーカップを艶やかな唇を離すと予言めいた事を語りだす。

 そう言えば、前に言われた事があった。


『男よりも女の方が魔法を上手く操れる。それは筋力的に男の方が力が強いのと一緒で、女が元から持っている力だ。その生物的な壁に負けない為にも普段からデータを積み重ねろ。そして考えろ。自分の脳が得意な分野で置き換えれば道は自ずと見えてくるさね。限界なんてのは気持ち一つで更新されていくものなのだからさ。』


 だったか。妙子ちゃんが俺以上の才能を持っているのも師匠の持論の通りなのかも知れない。


 俺には見られない世界か。


 それを悔しいと思う事はないだろうが、そうなった時に妙子ちゃんがどうしたいと思うのかが気にならないと言うと嘘になる。

 結局は、その時にならないと分からない事だが。

 もし、俺に「これからどうすべきか」を聞かれた時に、まともな提案を提示してやれるだろうか。

 そこに、俺の気持ちを入れる事で妙子ちゃんの道を閉ざす事にはならないだろうか。

 ずっと先の話かも知れないが、覚悟はしておくべきなのかも知れない。


「さーて。コーヒーも猫耳メガネっ娘も堪能した事だし現場も確認しておくかね。ぼーっとしてないで移動よ!現場検証さね!」


 勢い良く椅子から立ち上がると羽織ったローブを派手になびかせ奥の部屋に進んでいく。


 ・・・・・・。


 妙子ちゃんの部屋で師匠が立ち止まると踵を返して戻ってきた。


「で!?現場はどこかね!?」


 途中までは何となく雰囲気が出て格好良かったのに、こう言う事で抜けているのがうちの師匠です。


 家の中で迷子になられてもアレなので素直に地下工房へ案内する事にした。


* * * * *


「魔法使いが階段って!!!」


 文句を言いながら俺の後から階段を降りる師匠。


 本来ならこの時間は、俺が妙子ちゃんと店番を変わって買い物に出かけてもらったり、自由時間を与えたい所なのだが今日はさすがに無理そうだ。


 地下に降りる前に、その事を伝えて出かける時は店を閉めても良いからと付け加えては来た。

 パァ!っと輝いた顔を見た感じ、ここぞとばかりに店を閉め自由な時間を満喫していそうだ。

 まあ、たまには良いだろう。これまでの売上を考えれば、今の売上は充分を言える。

 ゆっくりと、自由な時間を楽しんで欲しい。

 今は。


 地下工房までの距離は、深いとは言えそこまでヘタる距離ではない。

 まあ、見た目は二十代だとは言え、実際には百歳超えのご老体には辛いのかも知れないが。


「なあ。今、何か失礼な事を考えなかったかね?」

「いえ。テレポーターをこの機会に直しておこうと考えていただけですが?」

「ほぉー。まあ、良いさね。現場検証の間にテレポーター直しておいてくれ。」


 俺は「了解です。」と素直に返事をし従っておく事にした。

 折角、やる気になってくれた師匠がへそを曲げてしまっては意味がない。

 イヤイヤでも調べるだろうが、気分が乗ってない時の師匠はタチが悪い。

 そうなると、実に理不尽なお願い事を押し付けてくる。


 俺が師匠の元で修行をしていた時には「遠くの有名な天然水が飲みたいから汲んできて」やら、「今日はワイバーンの酒蒸しが食べたい」だとか「エルフの森に自生するキノコが食べたい」だとか、地味に面倒で理不尽な事を要求してきたのも懐かしい思い出だ。


 だが、出来れば理不尽な要求を突きつけられるのを最小限にしたいと思うのは人間としての真っ当な判断で、懐かしさは感じても理不尽な要求を喜んで受けたいとは思わない。


「それで、大体は手紙で読んだけど、あの子が君の居た世界から来たってのは間違いないのかね?」


「そうですね。もしかしたら、平行世界と言う可能性も有るけど、話を聞く限りでは同じ世界の同じ時代から来ているはずです。」


 そう答えると「ふむ。」と、一言発して思考モードに入ったようだ。

 多分、師匠も俺と同じ様な事を考えているのだろう。


 同じ世界と言っても、時間軸の違いも有るし、同じ時代背景と言うだけで微妙に違う時系列の世界と言う可能性だってある。


 俺と妙子ちゃんの元いた世界を、ある程度の一致を見て『同じ世界』とは称してはいるものの、厳密に言うと違う世界の可能性が問題を難しくしているとも言える。


 例えば、同じ宇宙のどこかならA地点とB地点がどんなに離れていようと同じ時間が流れているとも考えられる。

 現代の方法では物理的な行き来が不可能でも『地続き』と言うか『宇宙続き』であるなら、「A地点の何時」「B地点の何時」と言うだけで、移動手段さえ発見されれば、同じ時間の違う地域に移動すると言うだけの話。

 宇宙標準時と言う物が有るなら、それは同じ時間と言って良いだろう。

 つまり、座標が違うだけで同じ時間の同じ世界に存在するA地点とB地点の行き来は方法さえ有れば物理的に可能であるとも言える。


 もし、細かな選択の違いから分岐した世界が有るとしても、A地点とB地点が『同じ世界』に存在するなら、その世界での往来の可能性は全くのゼロではない。


 だが、これが『異世界』となると一気に難しくなる。


 妙子ちゃんの話を聞く限りでは、俺達が居た世界に大きな誤差は無い。

 俺がこちらに来る前の出来事や事件など、覚えている限りで照らし合わせたが大体は一致している。

 細かな差異は有るものの、同じ世界から来たと言って良いレベルだろう。


 多分、俺が居た世界より十年経った時間から妙子ちゃんが召喚されたのは間違いないだろう。


 そこから考えられる仮定として、宇宙標準時(仮)と同じ様に、異世界標準時(仮)と言う物が存在している可能性が考えられる。


 ただ、師匠や俺が、これまで行った実験の失敗から考察すると、それが分かっただけでは問題は解決しない。


 一番の問題としては『この世界のOS』と『元の世界のOS』が違う可能性が大きいと言う事。その違ったOSに無理やりアクセスしようとするなら位置情報だけでなく、時間軸や時系列の座標などより多くの情報が必要ではないかと言うのが俺と師匠の見解だ。


 異世界から干渉をし、その世界に無かった者やその世界から消えた者をぶっ込もうと言う行為を『世界の法則』が簡単に受け入れるだろうか?


 答えはNOだ。それを行うためにはより正確な座標や時系列などの情報、そして何らかのエネルギーが必要だと思われる。


 俺達が意図的に仕組みの違う異世界に干渉しようとするなら使えそうな条件を片っ端から揃える事で、召喚された際の状況を出来る限り再現するのは最低限の条件となるだろう。


 また、元の世界に居た俺達が元の世界に帰ろうとするなら、俺達が『居なくなった世界』に戻れないと意味がない。


 俺達が『居なくならなかった世界』に繋がってしまった時の影響を考えると、どんな破錠をもたらすか分かったもんじゃない。


 故に妙子ちゃんとの話の中での細かな差異と言うのは『元の世界』との行き来にとって大きな障害になるのではないかと俺達は考えている。


 現状、アクセスすらまともに出来ない状態で考えても仕方ない事じゃないかと思われるかも知れないが、妙子ちゃんが居た世界に『俺』が居る可能性も考えられる。


 そうなってくると、妙子ちゃんのデータもサンプルにはなるかも知れないが、俺のデータと同じ方法でアクセスを試行しても全く無意味な可能性も出てくるワケだ。


 つまり、どう言う事かと言うと…。


『まったく意味がわからん…。』


 まあ、色々な可能性を考えてはみるものの、神をも凌駕する更に上の仕組みを人間が解明しようと言うのが無茶な話だ。

 やってみなければ何も解明は出来ないが、それにしてもテーマが大きすぎて自分でも何を考えているのか分からなくなる事が多い。


 取り敢えずは、偶然発生した俺と妙子ちゃんのデータを元に可能性を一個一個総当りで潰していくしかないと言う地味な作業を続けるしかないのだ。


「やっと着いたさね。毎日、この階段を昇り降りしてるとか君はバカなのか?」


 地下工房に着いた師匠が大きな伸びをする。

 バカなのかと言われればバカなのだろうが、そんな言い方をされると少しカチンとくる。


「そうですね。でも、俺も三十代も半ばを過ぎましたからねー。健康を考えると…」


「あー。それはどうでも良い。それよりもデータとかよこして。あと、状況の詳細説明。ほれ!さっさとせんか!」


「はいはい…。」


 うん。ダメだ。怒っては駄目だ。アレは嫌だ。

 本気で殺意を抱いたらどうなるか、過去に嫌と言うほど体験している俺は素直に妙子ちゃん召喚時のデータを用意して師匠に渡す。


 データを受け取り「ほほぉー。」と隅々まで読み、こちらに視線を向ける。


「呪いって言うのは君の時と違う要素だが大体は同じって事ね。現場は保存してる?」

「ええ。出来る限りは。どれだけのデータが取れるかは見てもらわないとどうにも…。」

「まあ、そこは気にしないから大丈夫。少しでも痕跡が拾えれば収穫さね。」

「ハハハ…。コレばかりは師匠におまかせします。じゃあ、こっちです。」


 使った召喚陣へ案内し、一通りの会話と連絡事項を伝えると師匠は「あいよっ」と手を振り調査に入る。

 まあ、後は師匠に任せるしかない。

 こっちはこっちでテレポーターの修理でもしておくか。


* * * * *


「さて、お腹がすいた!帰るぞ~!」


 一通り、調べ終わったのか師匠がご飯を要求してきた。


「お疲れ様です。それで何か分かりましたか?」

「まあ、多少は。後は彼女を少し調べさせてもらえれば、もう少し精度が上がるかも知れないわね。」

「うーん。あまり良い成果は得られなかったって表情ですね。」

「貴重なデータってだけは確かさね。問題はここから足がかりを見つけられるか。まあ、これは戻ってからかね。ただ、あんた達も同じ流れの同じ世界から来たってのは確かっぽいわ。どうして同じ世界から繋がったのかは分からないけど…。意外とこことあっちは近い世界なのかも知れないわね。」


 と、言い残してテレポーターの中に消えていった。


 さらっと重大な事を言っていたな。

 俺と妙子ちゃんが『同じ流れの同じ世界から来た』と言う事実は大きい。

 目標地点が同じだと言う事はターゲットを絞れると言う事。

 今回収集されたデータを元に精度が上がる可能性も上がる可能性が有ると言う事。

 アクセス方法が確立していないから今すぐ役に立つと言うワケじゃないけど、師匠なら今回のデータを元に何らかの進展をもたらしてくれるんじゃないかと思う。

 まあ、長期戦になるってのは仕方ない事だろう。


 うむ。俺も腹が減った。

 上に戻るか…。


 元の世界に戻る方法。

 こればかりは地道にやってくしかない。


* * * * *


 テレポーターの調整も上手く行ったようで、階段の地上側の出入口に無事降り立つ。

 師匠が先に入って行ったので安全は確保されていたのだが、自分で確認しないと気持ちが悪いのは俺の性分かも知れない。


 部屋に入ると妙子ちゃんと師匠が女子トークを繰り広げているのか、キッチンの辺りから黄色い声が聞こえてくる。


「そ…それはさすがに…。」


「だろ?襲って来ないってのは評価が分かれる部分だが、慌てふためいてベッドから転がり落ちるのはどうかと思うのだが。こっちは効率良く毒抜きしてるってだけなのにさ。こんな美女に口唇を奪われて動揺するのは分かるが、さすがにベッドから転げ落ちて部屋の隅でガタガタ震えられた日にゃ『こいつ桃にでも詰めて川に流そうか』とか一瞬でも思ったワケだよ。さすがに、これまでどんなに試行しても結果の得られなかった『異世界』からの来訪者を手放すワケは無いが、死にかけが起きた瞬間にそこまでヘタレられては、興も冷めるってもんさね。」


「確かに!そこは顔を真赤にしてベッドでプルプルと震えて欲しい場面です!」


「だろ?もっと反応の仕方があるだろって思うだろ?年頃にして20代半ば。普段は仕事などでも尖って居そうな年頃だ。「俺は何でも出来る!」的な幻想を抱いて無茶をしたり、ライバルに敵意を剥き出しにしたりと、第二の思春期と言っても良いような年代の男子がだよ?口唇を奪われたくらいで、あの反応は如何なものなのだ? 毒抜きをしていただけとは言え男なら一瞬でも色々な期待するのが普通ではないか! それをあの男ときたら、事もあろうにベッドから転げ落ちて部屋の隅でガタガタ震えるとか! 乙女かってーの! そりゃーもう酷かったってもんじゃないさね。 その後も毒抜きする度に固まってフルフル震えるもんだから、もう何と言うか…。何というか…。」


「はい!それは何と言うかです!察します!師匠さんも色々と苦労されているんですね…。何だかその苦労と思うと涙が…。」


「分かってくれるか!タエコ!ハルトも物事の飲み込みに関しては優秀なんだ!ハルトも良い弟子ではあるんだ!だが…。だが…。」


「皆まで言わなくても大丈夫です!妙子には分かります!あえて言いません!あえて言いませんけど…。もう少し…。もう少し…。」


「そうなのだよ!タエコくん!もう少しなんだかなんだよ!もう少し年相応の反応なら…。」


「あー。そうですよねー。たまにお前は何歳なんだ!!って言いたくなりますよねー。」


「だろ?だろ?まだな?まだ、こっちの世界に来た当初ならギリギリセーフな感じはあったさね。でも、今も変わらないだろ?どんだけ拗らせてるんだと言う話さね!」


「ですよねー。百歩譲ってダンジョンがどうとかは良いですし、トラウマがどうとかも理解はしますけど、もう少し何と言うか…。」


『・・・・・・。』


 どうしよう。泣いて良いだろうか。

 この会話の流れで十中八九、誰の事を話しているのかはよく分かる。

 そこまで言わなくても良いじゃないか。

 こんな話を聞かされて、どんな顔で出ていけばいいのだろうか。

 もう、いっそ家出したい…。


「まあ、これくらい言っておけば少しは改善されるさね。タエコ。」

「そうですね!じゃあ、呼びますか。ハルトさーん!盗み聞きしてないで!早く出てこないともっと色々聞いちゃいますよー?」


『!!!!!!』


 なにそれ!?俺が居るの分かっててアレコレ言われてたって事!?

 まあ、テレポーターが稼働しているんだから、妙子ちゃんはともかく、師匠が魔力を感じないワケがないとは思っていたけど妙子ちゃんまで!?

 俺が居るって知ってて散々あんな事やこんな事まで!?


 さすがにそれはショックだ…。


 単に悪ノリしただけとも言えなくない。


 だが、あまりにもショックだ。

 妙子ちゃんまで、そんな風に思ってたのか!?

 女怖い。女怖い。女怖い。


 ショックのあまり俺は師匠が入ってきた木箱が目に入り、その中に引きこもる事にした。


「はぁ…。よっこいよ。」


 木箱。確かにこの閉鎖空間には人が入りたいと思う魅力が有るのかも知れない。

 外から彼女達が何かを言っているのは何となく聞こえるが、程よく雑音を遮断してくれる。

 ギャーギャーとうるさいが気にならない。


「あんな言い方しなくても良いじゃないか…。」


 そんなに言うならお望みどおり拗らせた引きこもりの真の痛さを見せつけてやるさ…。


 はぁ…。もう嫌だ。

 しばらく、誰とも話したくない…。


 ・・・・・・。


 結果的には師匠だったから良かったものの妙子ちゃんに正体不明の存在に向かって突き飛ばされるわ。

 師匠には俺がまだ童貞だって事を弄られるわ。

 テレポーターを直したら直したで先に帰っていた師匠が妙子ちゃんにいらん事を吹き込んでるわ…。


 思えば、この木箱が到着してからロクな事がない。

 どうして、俺がこんな目に遭っているのだろうか。


 何だか人生に疲れた…。


 もう、いっそこのまま逃げ出そうか…。

 もう、このまま飛行の魔法で木箱ごと外に逃げ出してしまった方が楽になれるかも知れない。


 そうだな。今は二人の顔なんて見たくない。

 このまま、どこかに行こう…。


 探さないで下さい。

 俺はこのまま旅に出ます。


 俺の錯乱したこの行動が、この後に更なる悲劇を巻き起こす事を、この時点での俺は想像だにしていなかった。

あぁ。家に帰ってきてあとがきを書いてない事に気がついた。

どうも。となりの新兵ちゃんです。


と、言う事で師匠の登場回でした。

いきなりフィーナって誰やねんって感じでしたね。


あー。あまり何も書く事が無い気がします。


と、いう事は。昨日予約投稿をセットした時にあとがきを書かなかった私の判断は正しかったのかも。

いや。単に眠かったからあとがき書かなかっただけなんですけどね。


何だか、そこはかとなく、いつも以上に微妙な感じの話ですね。


なぜ、師匠が木箱に入ってやってきたのかも。

なぜ、ハルトが木箱に入ってしまったのかも。


意味が分かりません。

と、言うかあまり意味は有りません。


多分、そこに人が入れそうな木箱があったから入っただけでしょう。


もう、作者共々血迷ったとしか言いようが無いですね。


どちらにしてもグラスロッド一門は妙子を含め残念な一門だと言う事は分かって頂けたかと思います。


・・・。


まあ、うちの話に残念じゃない人間が登場するかと言うと疑問ですが…。


と、言う事で次回以降も残念一門のお話がしばらく続く様な気がします。


その後の展開が上手く考えられていないので何とかせねば…。

次の投稿までまた時間が空くかも知れませんが、気長にお待ち頂ければと思います。


それでは、またいつか。

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