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魔蟲の迷宮で俺は生きる  作者: 十夢 創也
プロローグ 王の誕生
4/12

父親=ファルス・シュルツ視点です

や、や、や、やっちまったーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!


個室にてシュルツ家現当主ファルス・シュルツは激しい後悔に襲われていた。


なぜなら、先ほど息子を落として気絶させてしまったからである。現在、弟を含む腕のいい治癒魔導師数人がかりで治療を行っている。もちろん私も同行しようとしたが、


「邪魔」


の一言であえなく引き下がり、


「落ち着いて下さい」


の一言でこの部屋に閉じ込められてしまった。


「兄上はバカなのですか?その頭の中に詰まっているのですか?ねぇ、答えて下さいよ。このゴミ虫野郎が。人間様に逆らっていいと思っとんのか?ああ(怒)?」


そして隣には毒を吐き続ける弟がいて・・・・・・?


「何でお前が此処にいる!お前はたしかアルフの治療を」


「それならもう終わりました。思ったよりも軽度の症状だったので。」


「そうか、よかった。」


心の底からほっとした。冷や汗をだらだら流した甲斐があった。そうやって一息つこうとすると、


「よかった、じゃないですよ!打ち所が悪ければ即死だったんですよ!享年10分とか全然笑えねぇんだよこのバカ野郎!!」


その暇すら与えてもらえず弟の毒地獄の餌食になる。もちろん決して反論してはならない。全ての責任は自分にある。文句は有ったが直ぐに飲み込んだ。実際自分の所為で息子を殺しかけたわけだし、なにより息子の命の恩人だ。強く出ることができない。


「まあ、今は静かに眠ってますし、命の心配も無いので、まあ、大丈夫でしょう。」


「すまないな。」


「まったく。本当に手のかかる兄ですね。普通は逆のはずなのに。情けないですねえ。」


「うぐっ」


実際その通りだ。こいつと妻と爺やには滅茶苦茶世話になっている。両手の指どころか3桁はいくだろう。今でもなんでこいつが当主になったり、爺やが家を乗っ取らないのか理解できないくらい有能だ。


「じゃあお前が当主になれば」


「やですよメンドクサイですし~」


「おい!」


長年の疑問に完っ全にばかにした答えを返しやがったぞこのクソガキ!舐めた口利きやがって!


「これでもお前の兄なんだぞ!」


「ええ、生後10分の息子を手を滑らせて床に落としたダメダメなお兄さんですものねぇ。」


こ、この声は・・・ま、まさか・・・・


ぎぎぎ、と私は油を差していない歯車の様な音をたてて後ろを振り返った。願わくは自分の立てた最も可能性が高く、最も当たって欲しくない予想が当たらないように信じて。


果たしてそこに居たのは美しいブロンドの髪の我が最愛の妻、アリアが立っていた。最悪だ。


「アリア?何で此処にいる?休まなくても大丈夫か?」


そうやって声をかけるも返事は、


「ええ、わが子の一大事に駆けつけないなんて母親失格よ。ましてやその原因が身内にある場合なんてね。恥さらしもいいところですわ。」


返ってきたのは辛辣な言葉の剣だった。心に一文字残らずクリティカルヒットする。


「あなたがおっちょこちょいだということは前々から存知あげておりました。しかしいくらなんでも我が子を地面に落とすのは、少し、ねぇ?」


「ほんとですよ。少しは反省してください。」


「すまない。」


今の私はこれ以外の言葉を知らない。だがこれで少しは許してくれるのではな


「床なんて。せめてベランダから落とさないとダメじゃないですか。」


「「は?」」


いきなり何を言い出すんだこの嫁は?それは弟も同じ気持ちだったらしく、げふんげふんと咳払いをしておそるおそる訊いた。


「義姉上、一体何を仰られたのですか?失礼ながらこの愚弟、先ほどのお言葉がよく聞こえ無かったので、もう一度お聞かせくださいませんか?。」


と常識的な質問に対して、妻の回答は恐ろしいモノだった。


「ベランダから落とさないとダメ、と言ったんです。我が家の家訓では男の子が産まれたらまず尻を叩き、その後丈夫さを確かめるために1階のでもいいからベランダから落とすんです。」


「「えらく物騒な確かめ方だな(ですね)!!」」


「まあ、私の家の男共はそこらへんの雑草よりも生命力が強いのはご存知でしょう。それこそ槍や剣を突き刺されながら単騎で敵本陣に突っ込み、大将首をとってくるんですから。ちなみにその方、私のお父様なのですよ。うふふふ。」


見た目は清楚中身は鬼神、それが妻の座右の銘だったことを今の今まで忘れていた。妻の家は90年ほど前に傭兵から成り上がった家だからか、他の歴史ある家と違い戦のことに関してはとてつもなくえぐい。


やれ襲われそうになったら相手の爪を剥がせ、肉を噛み千切れ等、傭兵独自の戦い方をそのまま伝承している。だからこの見た目でもそこらへんの荒くれ者なんて片手で血まみれの肉達磨にできるくらいの実力がある。


「まあ、そうでもしないと資産目当てで嫁いできて、愛人との間に子供を作ってそれを跡取りににしてゆくゆくはなんて事もあったそうですし。でもうちの人達はかなり丈夫でしょ。だから誰かが言い出したのよ。「じゃあベランダから落としてみよう。」って。」


「その思考回路に行き着くのがスゴイ。」


「どんな化学反応起こしたんですか?」


「うーん。といっても何代も前の先祖ひとだったし、基本的に脳金だから。ねぇ?」


等ととやり取りをしていると、ドアが開き爺やが現れて待ち望んだ一言を告げた。


「皆様、アルフ様がおめざめになられました。ご面会の準備をお願い致します。」



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