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それから更に数日が経って今日はいよいよ、いよいよ、この森の地図を作ろうと思いまーす!いえーい、ぱひぱちー!
そう決めたら団長ゴーレムの制止なんか潜り抜けて、あらかじめ家のドアの外に待機させていたゴーレム4体(木に擬態していた門番)を連れて韋駄天の如くその場から走り去った。後ろから聞こえてくるのは肉体改造による副作用から発生した幻聴だ。うん、幻聴だ。そうに違いない。
ちゃっちゃっと逃げて荷物を確認。リュックから昨日こっそり準備したものを取り出す。記録媒体(地図)よし、食料(栽培した腹に貯まる薬草と自作の保存食)よし、武器(第1回探索時に拾った短剣)よし。全部問題なし。そんじゃ地図(記録専用のクリスタルに細工をしたもの)を起動っと。
現在地は・・・・・家より2、3キロ離れたとこか。地形が複雑で隠れるところが多いせいか、たったこれだけの距離でももう帰れなくなるわな、一般人には。ん?たったこれだけしか離れてないのにもうすでに色んな奴に品定めされてるな。ここで暮らす訳だしほんの少しだけ挨拶でもしておくか。
ぞわっ
その場におぞましい程の殺意を充満させる。いままで何度も使ったコミュニケーションだ。殺気をあびて直ぐに数匹の気配がその場から消える。しかしまだそこそこの強さの奴がいるな。しばらく睨み合うとそのほかの気配も続々とドロップアウトしていくがみょーに強い奴らがしぶとく残る。・・・・・ふう、ようやく全部消えた。この森思っていたよりも強者そろってんな。
その後も着々と地図を埋めながら歩くこと数10分、面倒事はいた。
ぐるぐると道に迷わないよう気をつけながら地図に新たな情報を付け加えながら歩いているとふと耳にやたら変な音が聞こえてきた。それは主に次のような音だった。
ガギイイイン
キンッ、カン、キンキン
ドドドドドドドドドド、ドッカン
要は戦闘時に発生する剣の擦れる音や、盾で攻撃を受け止める音、果てには恐らく攻撃用の魔法を使っているのが分かる。この森にぶちこまれて初めて出会う人間か。友好的な人達だといいなあ。え?こっちに攻撃したらどうするのかって?もちろん見殺しコースで決定ですよ、はい。
ゴーレム(木に紛れ込ませた)の後ろに隠れて、ひょっこと顔を出す。うん、闘うのに必死でまだ無害な俺には全然気付いていないようだな。しめしめ。そのまま隠れた状態で聞き耳を立てると、命を賭けたやりとりをしているのがさらにくっきり、はっきり分かる。
赤髪の長身の男が身の丈を超える大剣を振り回し、すり抜けた奴を金髪のエルフがレイピアで突き殺し、青いローブを頭から被った魔導師ぽいのが魔法で肉体をを1時的に強化したり魔蟲や食肉植物に向けて攻撃魔法をぶっ放して援護をし、魔導師に近づく輩は付近で待機している暗殺者風の人物に狩られる。なかなかどうしていいチームワークじゃないか!
「ねえ!援護の射撃まだ!?こっちもうそろそろ限界よ!」
「ええい、少し待てって!俺には俺のやり方ってもんがあんだよ!」
「えんご、するなら、はやくしろ。おまえの、たいまんで、みんなしぬ。」
「ハッハー!まだまだ足りんぞ!このくらいで俺らを殺せるとおもうなよ!」
「「「おまえもうだまれ!!!」」」
うん、バカが一匹いる以外は及第点をあげてもいいくらいだ。戦術のせの字も理解できないバカが一匹いる以外は。
「たしか道標作ったはずだよな!それ辿ってとっととヅラかろうぜ!命あってのお宝だ!」
「ええ!そうね!そこの脳筋!あんたが殿つとめなさい!脳筋のあんたにはぴったりよ!」
「おう!まかせろ!こいやクソ虫ども!!まとめて剣の錆にしてくれる!!!」
あ、ついに逃走した。判断はまあ微妙だな。あのままずるずる続けていたら体力切れで誰かドロップアウトした瞬間、皆まとめて蟲共の腹のなかだもんな。
とまあ、マジダッシュして逃げている訳だが、その程度の速度じゃ逃れらんねえよ。ほら、あっという間に追いつかれた。さあどうする?
「くっ、囲まれたか。俺の人生もここまでか。」
悔しさを滲ませながらクサイ台詞を吐く青ローブの男、
「はは、どうせなら最後ぐらい華々しく散ろうじゃねえか!」
諦めを塗りつぶすかのように陽気に笑う赤髪の大男、
「あーあ、どうせなら処女は捨てたかったなー!」
完全に自棄になっている金髪のエルフ。もう少し慎みなさい。
「せめて、おとうさんと、おかあさんに、あいたかった。」
ヘビーな過去をちろっと出す暗殺者風の性別不明者、
どいつもこいつもこの世に未練たらたらじゃねーか。ブッラック企業で過労死した人達も真っ青だぞ。あ、あのパイセンがた元々顔青白かったな。
「いくぞおめーら!1匹でも多く道ずれだ!!!!」
「「「おう!!!!!」」」
頃はよし。さあ、行くか。
「よう、面白そうなコトやってんな。俺も混ぜろよ。」
はは、どいつもこいつもぼけっとした顔で見やがって、まあそれがおもろいんだけどな。久々のまともな殺し合いだ。腕が鈍ってないか、確認だ。