表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔蟲の迷宮で俺は生きる  作者: 十夢 創也
支配者は君臨す
10/12

閑話 元騎士団長ゴーレムの回想

更新します

私は元オーガスト帝国騎士団長で今はしがないゴーレムだ。


あの日帝国が新興国であるアルディス王国に破れ、それにより帝国地下に眠る‘ナニか’が目を覚まし、その日でオーガスト帝国は滅んだ。もう2千年前のことなのに今でも鮮明に思い出せる。護符と鎖が弾け飛び、そこから姿を現した‘ナニか’が敵味方の区別をつけずやたらめったら食い散らかし、王と私そして数名の宮廷魔導師の命を対価に使用した、最高に位置する魔法を用いてようやく仕留められた。


が、しかし、国土は荒れ果て、宮殿も崩壊し、その‘ナニか’の眷属がうようよいる所なんて旨味どころか灰汁しかない。そう考えた王国は即座に撤退、その様子を見ながら私の意識は途絶えた。













目を覚ませば、私は宙に浮いていた。さらに言えば、白骨化した自分の体が眼下にあった。皇帝より下賜された魔剣なんて私しか持っていない。故に私はこの鎧を着けた白骨死体は自らのモノだったとわかったのだ。


辺りを見回せばそこらかしこにここで息絶えた者達がいた。扉の前でここを文字通り死守した部下達、魔法の代償に命を落とした宮廷魔導師達、そして、玉座に座して木乃伊ミイラとなっている我が主。時を告げる魔道具を解析してここが2千年後の世界であることを知った。通りで遺体は全て損壊が激しかったのか。そんな取り留めの無いことを考えながらふよふよ浮いていたら、出会ったのだ、彼に。








いつも通りの静けさに僻僻しながらも、どうしようもないので城内をめぐる。もう何億も繰り返した行為で、めぼしい物も何もない。


死者しかいないのに武器を使うか?

自分は体が無いのに飲み食いができるか?

商人がいないのに金が使えるか?


ここはかつて最も栄えた国だった。しかし、今ではただただ空虚な残骸しか残されていない。そしていつも通り城内の端まで来たとき、


ドカー――ン


城全体を覆っていた木の根が見える土壁が壊れた音がした。それだけでも異常なのに、大型のドラゴンですらやすやすと入れるくらい馬鹿でかかった穴が空いていたら誰でも驚く。それに、距離がはなれすぎているから豆粒程度の大きさの何かがぴょ~んと玉座の間に飛び込んだのを目撃した。それを見て私は素早く駆け出した。戻ると、やはり、金目の物や貴重なポーション、それと金貨を漁っていた。


それを見たら普通激昂して襲い掛かるところだが、生憎それができなかった。なぜか?それは目の前の齢10やそこらの子供がありえないほどの魔力量をもっていたからだ。斃すには恐らく国の総力をぶつけなければ勝てないほどに。


そんなバケモノを独り、それも援軍なしでやるのはあまりにも酷だ。だから私は金貨の中にこっそりと隠れ、ここから脱出をはかった。少なくともこのまま無為に過ごすよりは遥かにましだ。目論見は見事に成功し、私が隠れた金貨は袋に入れられそのままどこかへ運ばれた。


やがて目的地へ無事たどり着き、私が入った袋は床に置かれ、ひょっこり顔を出し少年が居ないことを確認すると、金貨から出てそのまま隠れた。あの恐るべき少年に見つかったらただでは済まないことは火を見るより明らかだ。


だから私は天井近くに潜んでいたが、その間に少年は城から盗んだ物や恐らく独自に調達した薬草や樹木そしてなぜか土を並べて、魔法らしき物を使った。その瞬間床に置かれてあったはずの土の山からゴーレムが作り出された。帝国の技術でも再現できないゴーレムをいとも容易く、しかもそれを瞬時に10体も創り出した。


あまりにもかけ離れた実力、悪魔的な才能、そしてもし見た目通りの年齢なら伸び代もまだ残っている。こんな怪物とても手に負えない。


私はそう考え、精霊と相性がいい鉱石の中に隠れた。このまま加工されても問題無くここから脱出できる。しかしその考えは、すぐ裏切られる。それは私が入っていた鉱石がゴーレムに加工されたからだ。しかもそこから外にでることができない。


という訳で私は鉱石のゴーレム(少年からは団長ゴーレムと呼ばれるが)としてこの世に再び生を受けることになったのだ。


そして件の少年曰く家の拡張をやらされたり、留守番をしたり様々な経験をした。しかし、その日は違った。変な器具の設計図を書いて曰く、ホムンクルスを創るための道具と言った。


それは悪魔的な才能を持つ少年でさえ恐れるものだとわかった。なぜならば小刻みに体が震えていたのだ。そんなモノを創るのかと聞いたら、お前等の器にする、と答えた。


肉の体に戻れるのは嬉しいが、そんな禁忌を犯したくない。だが彼はそれを見す越したようにこう言った。


「いや、体しか創らないから。魂は絶対に創れない。今はそれだけの魔力も設備も無い。」


彼と一緒にいるととても疲れる。しかし、その生活は2千年もの間退屈だった私の心を潤してくれた。皇帝陛下には悪いが、暫くはこの者と共に過ごさせてもらおう。

























































この魂燃え尽きるまで。

近々ヒロイン出します。どうかお楽しみに☆

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ