チョコレート!
ちょっと書いた事のないジャンルを書いてみました!「磨師」とも「こどグル」とも「アコ」とも違う世界です!是非、御一読を!
俺のスペック
高校二年生…。
男子。
身長172センチ、体重は…。
ガリヤセ過ぎて言えない。
顔面偏差値…俺的には45点位かと思っていたが、どうやら…。
20点位らしい。
特にキモいわけじゃないし、ブサでもないらしいが…。
女子伝いで、親友から聞いた意見で顔、薄くて覚えられない。キャラ薄い。
居たっけ?ってのが…。
うぅ…。
なんだか泣けてきたわ。
気を取り直して、うん。
学力は中の下。
スポーツは可もなく不可もなく…。
趣味は…。
俺の趣味って何だっけ?
彼女居ない歴=年齢。
特技は…。いや、特異体質だ…。
※スペック
仕様(書)。
「カタログ―」
工業製品の性能の意味で使うことが多い。 spec ( specification の略語)
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あれは中1のバレンタインだった。
俺は机の中に教科書をしまおうと、押し込んだ時、何だか教科書が収納出来ない…。
何かが、中に入っているからだ…。
感の鈍い俺でも、そう。これはバレンタインの!
そう思った。
いや、あり得ない!
俺は教室内をキョロキョロと見回す。
すると!
クラスの女子の一番人気の白鳥さんが手を振っている!
他の女子に話しかけられて向こうをむいてしまったが、そう、手を振られたのは俺!
なぜ?
なぜなら、俺の周りに誰も居ないし、俺は一番後ろの席なんだ!
舞い上がった!
この時の俺の顔はどんなんだったか…。
はずかしくて死にたい!
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こりゃ、やっちゃいけない冗談だし、悪戯にしちゃ…。
傷ついたわ…。
箱の中、石が入ってた。
この日から、俺はチョコが嫌いになった。
見ただけで吐き気する位に。
後々。聞いた話しだと、騙すのは誰でも良かったらしい。
あみだで決めて、俺になったらしいが…。
彼女立ち女子達から謝罪の言葉は一言もなかった。
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・
地元から離れた高校に進学した。
中1の事件は傷となり、残りの2年は灰色だった。
だから、自分を変えたくてリセットしたつもりでいた。
だが、高1のバレンタインも0という成績を維持した。
そして、明日。
また忌まわしきXdayが。
そうそう、中1のあの事件の後、悩んだんだ。
普通に平然を装おい、学校にいくべきか?
暫く休んでしまうか。
あれは冗談だし、これで休んでいたらイジメられっ子みたいだから俺は学校に行った。
「泪!ルーイ!」「あ、麻利央!」
あ、今さらだけど俺は泪。
宮門 泪
名前だけは特長あるんだわ。
でも、泪ってのは女みたいで嫌いなんだ。
まあ、家が茶道の名家宮門家の家元なんだけど、誰も知らない。
まあ、どうでもいいし。
泪はその、茶人
千利休が、豊臣秀吉から切腹を命じられたとき、
最期に臨んで弟子の古田織部に渡した茶杓(ちゃしゃく。茶さじの一種)が今に伝わっていますが、この茶杓の名前が「泪」
というところから来てるらしい。
あ、で、今、俺を呼んでるのが麻利央。
今井 麻利央だ。
「何、ボケッとしてんだよ?」
「あ、いや。」
麻利央は(以下マリオ)は俺の幼稚園の頃からの幼なじみで、もう兄弟みたいなものだが、マリオは俺とは違い、明るくて面白い奴で、うーん、女好きでお調子者だけどいい奴だ。
勉強はまるでダメだけどスポーツは得意でサッカー部に所属していた。
いつも、マリオは俺を気にしてくれてる。
「なんだよ。明日のバレンタインの事か?」
「違うよ。」
「まあ、気にすんな、今に始まった事じゃないし、泪はチョコ嫌いだし。」
はぁ…。
慰めてるんだか、バカにしてるんだか。
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俺が気にする事もなく、Xdayは終わった。
帰宅する前にマリオに一言いっていこうと思った。
毎回の事だが、先に帰るって言っていかないとアイツはうるさくて。
サッカー部の部室には居ないと…。
校庭も居ない…。
あーめんどくさい!
うーん、おかしいな…。
も、もしかして!
体育館裏とかに呼び出されて!
誰かに!
本命とかもらってたり!
う、うわーっ!
か、帰ろう。
いや、気になる。
それよか、勝手に帰るとうるさいんだよな。
うん。そうだ。
だから、俺は体育館裏に行かないといけない!
何故か足早に体育館裏に向かう俺。
近づくにつれ、何やら声が…。
!!
体育館の裏には確かにマリオがいる。
しきし、状況はあまり心ときめく内用ではなかった!
三人の恐らくは先輩にマリオは胸ぐらを掴まれていた!
「何、てめぇ!愛奈の周りをウロチョロしてんだ?アイツに手ぇ出したら許さねえぞ!」
胸ぐらを掴まれながらニヤケた顔をしてマリオはおどけてこたえる。
「別に愛奈に手なんて出してないっスよw」「ああん?何笑ってんだ!」
「じゃあ、これを見せてみろや!」
マリオの手からバレンタインのチョコらしき物を取り上げる先輩。
「あ、それは!」
マリオは一瞬、抵抗する素振りをみせあが、二人の先輩に両腕をおさえつけられた。
ヤバイ…。
マリオが…。
助けないと…。
ど、どうしよう…。
あの先輩は北澤と言って、ウチの学校じゃ喧嘩はトップ!
その仲間も東山、西村はそれぞれ別の中学でトップだった荒くれ者。
北澤がチョコの包みをバリバリと乱暴に破いた。
そして箱を開けて中味を見た瞬間、ワナワナと肩を震わせた!
「ふざけるな!」
北澤はハート形のチョコに「好き」と書かれた二文字に激怒した!
そして、それを地面に叩きつけた!
泪は叩きつける瞬間に無意識にマリオの元へ飛び出していた!
チョコは粉々に砕け四方八方に飛び散る!
破片の1つが泪の開いた口の中に落ちた!
マリオ、北澤、東山、西村が全員、突然現れた泪に注目していた。
泪はチョコを飲み込んだ!
そして、すぐに異常が起こり始めた!
泪の身体が痙攣し、悲鳴をあげながらその場に仰向けに倒れた!
「な、なんだコイツ!」
「泪!泪!」
「おめえの知り合いか?なんかヤベえんじゃねえのか!」
「ぐぉぉぉっ~!」
喉をかきむしりながら、のたうち回る!
「先輩、はなして下さい!早く先生を
!いや、救急車を!」
「な、なんだよ。東山!西村!おめえら早く!」
しかし、すぐに泪は立ち上がった。
ユラユラと身体を揺らすようにして。
その顔は白目を剥いていた!
「ギャー!」ヽ(;゜;Д;゜;; )ギャァァァ
四人とも叫ぶ!
泪はニヤリとすると割れたチョコの破片を拾い、口に入れた。
乱暴に噛み砕き、そして北澤達に向かって来た!
東山がマリオから離れ身構える!
しかし、実際は構える暇などなかった!
泪の鞭のようにしなる腕で、顔面を叩かれる!
東山は吹き飛ばされ、地面にキスをした!
西村は腰の辺りからナイフを取り出す!
しかし、やはり構える間もなく顔面を叩かれて倒れる!
二人共起き上がる気配すらない。
ただ、唖然とするマリオ。
「テメエ!上等だコラっ!」
北澤がボクシングの構えをした!
泪の強烈な一撃が繰り出される!
北澤は上体をそらして、それをやり過ごした!
北澤が泪のボディに強打を二発打ち込んだ!
しかし、泪は微動にも動かない。
ニヤリと笑い、鞭のような腕の一撃!
二撃!
北澤がそれをかわした!
しかし、すぐに予測不能な攻撃が繰り出された!
蹴りである。
長いリーチの痛烈な一撃!
さすがの北澤もまともに受けてしまった!
「決まった!」
マリオが叫ぶ!
・
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「宮門さん!こんちわっス!」
北澤、東山、西村が泪に挨拶する。
正直、あの日の出来事はまったく覚えてはいない…。
しかし、学校で不動の地位を手に入れたのは確かだった。
北澤達に勝った噂は瞬く間に広まる。
最初はこんなヒョロガリが勝ったなんて誰も信じなかったが、案外、男らしく潔く、北澤が認めるため、真実と確信が持てたらしい。
しかも、噂は尾ひれがつくもので…。
「愛奈のチョコが壊されたの見て、キレたんだって…。」「愛奈の事好きだったみたいで…。」
「そんなにィ~愛奈の事、思ってくれるなんて~。ウチはマリオ君が好きだったけど、今は泪君が気になるぅ~!」
なんて騒いでいるらしい。
「良かったな。泪!桜井(愛奈)、泪の事好きみたいだぜ?」
「あ、いや、俺は…。」
「どうした?桜井は顔もかわいいし…。」
泪は困った顔をして言う。
「だって、もともとはマリオに…。マリオだって桜井さんな事…。」
「なんだよ?細かい事は気にするなよ!せっかくの彼女GETのチャンスだぜ!校内でも一目置かれる存在になれたし!人生変えるなら今でしょ!」
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そんなマリオが背中を押してくれた事もあり、桜井愛奈と付き合い始めた。
最初は戸惑いもあったが、色々と楽しかった。
ただ1つ気になるのは、彼女といるようになってからマリオと少し離れた事。
マリオは気にするなよ!と笑って言うがどことなく寂しそうだった。
校内一の美少女と校内一喧嘩の強い俺。
なにか、すべて勘違いのまま進んでいく毎日。
ある日、愛奈と街を歩いていた。
すると不意に声をかけてくる人物。
周りに纏うオーラが他と違うほどの美人!
白鳥さんだ!
「宮門君!久し振り!」
あの事件以来、一言すら話していない。
なのに何故、話しかけてくる。
随分と知ったような感じじゃないか!
正直、馴れ馴れしい。
あの事をバラすか?
ただ、話したいだけ?
警戒の鐘が鳴り響く。
「宮門君の噂聞いてるよ!凄いね!あら?そちらは彼女?ふーん。」
何だか、友好的なのか悪意があるのか。
「だれ?泪?」
「ああ、昔、クラス一緒だった人。」
愛奈に感情のない言い方で答える。
焼きもち焼きな愛奈が怪訝そうな顔をしている。
「ねぇ、これからドルアーガに行くんだけど一緒にどう?英雄の武勇伝聞きたいし!」
※ドルアーガとはクラブみたいな場所である。
「悪いけど、俺達、行く所あるから。それに、こないだの喧嘩の話しならしたくない。人に話していい話しじゃないし。」
泪の言葉に白鳥は明らかに気分を慨した。
「そ、そう。じゃあまたね!あ、これ私の名刺。良かったら連絡して!」
足早に去る泪に何かを感じた愛奈が泪の腕を掴んで立ち止まる。
「ねぇ?あの人なんなの?なんか泪変だよ?」
「あ、愛奈、気にしなくていいよ。あまり好きじゃない人なんだ。中学の同級生でね。」
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暫く何事もなく過ぎていったある日。
マリオが学校を休んだ。
愛奈の束縛もあって連絡がすぐに取れなかったが、それを後悔した。
マリオが大怪我をしたという。
それは他校の奴にやられたという北澤の話しだった。
北澤自体も複雑な気持ちだった。
自校がやられたのは変わりないが、やられた相手がマリオ。
正直、北澤には関係のない話しだ。
白鳥の顔が頭に浮かんだ。
そしてこの日、愛奈の束縛に嫌気がさしていて、用があるからと先に帰宅させた。散々ごねたが、キツめに言い聞かせた。
しかし、すぐに後悔と焦りを感じた。
(確信はないが、愛奈があぶない!)
泪は何度か愛奈の電話を鳴らしたが出なかった。
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「北澤君!あ、愛奈を見なかった?」
「珍しい!宮門さん。一緒じゃないんで?」
泪の慌て方に北澤が言う。
「宮門さん!安士校の事っスよね?マリオ君の…。」
泪は義理も借りもない北澤に今、思っている事を話した。
「東山と西村呼びます!一人じゃ危険です。俺らも同行します!いつか安士校とはやらなきゃって思ってましたから!」
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この前、貰った白鳥の名刺に連絡先があった。
泪は躊躇わず、かけてみると…。
「きゃはは!だあれぇ?」
その声は白鳥だったが、明らかに普段のしゃべり方じゃなかった。
「宮門だけど、愛奈しらないか?」
「あいなぁ?ちゃん?ああ、ああ、彼女ぉ~?」
少し酒に酔っているかのような話し方だった。
「そうだ!マリオに手ぇ出したのアンタの学校の奴等だろう?まさか白鳥さんが関わってはないよね?」
白鳥は暫く黙った後、すぐに開き直った様に話し始めた。
「いきなり疑ったら失礼よぉ~!麗香傷つくなあ~。せっかく電話くれたのに!」
「あ、ごめん。白鳥さんが関係ないなら、いいんだ。」
「きゃはっ!アンタバカぁ?私よ!私に決まってるじゃない!マリオやったのも私よ!」
「あんたの、あいなちゃん!今ごろ私の男達と裸祭よ!」
泪の頭がまっ白くなった。
そして気が遠くなりそうになる…。
「白鳥!愛奈に手を出したら!殺す!」
自分でも信じられない言葉が口からとびだした。
「きゃー!こわーい!あいなちゃんを助けてあげてー!」
「場所もわかんねえのに調子のるなや!宮門!」
そして、電話は切られた。
取り合えず、白鳥達の集まるドルアーガに向かった。
店の前まで行くと入り口付近にガラの悪い連中がたむろしていた。
少し、躊躇していると不意に声をかけられた。
ビクンと身体が震えた。
「あ、すまんです。」
そこには西村が立っていた。
「あ、西村君!」
「あ、宮門さん、東山と北澤さんが来るまで少し待って下さい。」
「でも、こうしてる間にも愛奈は…。」
意外にも大人らしい雰囲気のある西村に、なんだか少しだけ安心感があった。
「気持ちはわかるんですが、安士校のたままり場っスから。つっこんだら、いくら宮門さんでも。」
「うん。わかったよ。」
焦る気持ちを抑えるので精一杯だった。
この前の一件、そう。
北澤と闘って勝ったのはまぐれだし、正直、覚えていない。
そんな状態で自信があるわけがない。
足の震えだって止まらなかった。
その震えを見て西村が言う。
「宮門さん、怖いんですか?いや、いいんです。すみません。俺も無茶苦茶怖いです。」
「西村君が?」
「はは、そりゃみんな同じですよ。北澤さんもきっとそうです。」
西村は上着のポケットからチョコレートを取り出した。
「こんな時は1度冷静になるのが一番です。」
泪はチョコ恐怖症だが、西村が差し出しているのに無下に出来ないと、それを受け取った。
「すみません、こんな事くらいしか…。きっと愛奈さん救いましょう!マリオ君の落とし前もね!」
「あ、うん。」
そうこうしているうちに、北澤と東山が現れた。
北澤は手にメリケンサックと呼ばれる真鍮製のナックルをつけていた。
「よし!じゃあ行くぞ!」
北澤が先陣を切る!
入り口の男達が何事かと制止してきた。
西村と東山が言葉を発する間もなく、撃沈する。
本当に敵かもわからない相手に大胆だ。
入り口から地下に長い細い階段があり、両サイドに男女が屯して、物好きそうに様子を伺っている。
女は誘い。
男はからかい半分。
しかしながら、北澤達の気迫に身を引く!
階段を下り、店の扉を蹴り開けると凄まじい音楽とタバコやアルコール、香水などの臭いが、空気と共に通りすぎる。
北澤を先頭に中に入ると一番後にいた泪の背で扉が閉まった。
そして、音楽や汚れた空気と混じり合うように人混みの中に入っていく。
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「泪?俺達、ずっと友達でいような?」
「うん!でもマリオ、どうして俺なんかと…。」
「何だろうな。ただ、お前が好きなんかな?うん。ははっ!キモいな!」
「あ、ああ、でも嬉しいよ!」
マリオとはいつも一緒だった。
俺よりも要領よく世の中を渡ってる。
人付き合いもコイツにはかなわない。
そんなマリオは俺の目標であり、憧れだった。
幼稚園からずっと変わらず一緒だった。
中学まではわかるが、まさか高校まで一緒となると、さすがに自分でも驚きだ。
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ドルアーガは白鳥の家が経営する場所で
白鳥や若者達の無法地帯と化していた。
ドルアーガに突入した時、正直マリオの事など微塵にも思い出していなかった。
店内は乱闘騒ぎになった。
その騒ぎの間を掻き分けるように、二人の男が現れた。
一人は肩まで髪を伸ばした男と、もう一人は金髪でピアスだらけの男だった。
「お前ら!随分とイカれたことしてくれてるじゃないの?」
顔にかかる長い髪をかきあげながら言う。
「安士校の羽間だ!」
西村が言う。
「もう一人は土田だ!」
東山が言う。
北澤が二人をぬって前に出た。
「お前ら、聞きたい事がある。桜井愛奈をしらないか?」
「順序が滅茶苦茶だな?さすが北澤君。」
金髪の土田が言う。
「知っているのか?いないのか?それとも、関わっているのか!」
北澤が声を荒げた!
「知っていても…。教えるかよ!」
羽間が先に仕掛けた!
低い姿勢で北澤の懐に飛び込むが、北澤はヒラリと身をかわした。
西村と東山も身構える!
土田は両手を前方に差しだし、、ゆるく肘をまげるような不思議な構えをした。
東山が土田に殴りかかると、その姿勢で土田は足を真上に高々と振り上げた!
「東!」
ゴンッ!
鈍い音と共に東山の頭に土田の踵のハンマーが降り下ろされた!
その場に東山は崩れた。
「ほら、ほら!人の心配している暇はないぜ!」
土田は西村に標的を変えた!
気付くと泪達を囲むように、人の輪が出来て、ギャラリーはその闘いをショーを見るかの様に楽しんでいる様子だった。
「宮門さん!コイツらは任せて奥の部屋を!」
北澤が叫んだ!
泪はうなづき、走った!
恐らく、愛奈が居るだろうと思われる部屋に飛び込んだ!
勢いよりも扉が軽く、泪は部屋に倒れ込んだ。
「あら?宮門君?」
目の前に居たのは白鳥だった。
起き上がると同時に部屋を見回すと、
ソファーに深々と腰掛けたマリオがいた。
マリオは下半身に何も履いていなかった。
白鳥もいそいそと捲れ上がったスカートを下ろした。
「そういう事だったのかよ!」
泪は怒りに震えた!
敵対しているはずの白鳥と最初の被害者だったマリオが、今の今まで交わっていたのだから…。
「ノックくらいしなさいよ。フフッ…。」
白鳥はバカにしたように笑った。
「マリオ!愛奈はどこだ!」
「ああ、あのバカ女か。アイツは南原さんと隣の部屋でお楽しみ中だろ。」
泪はマリオの顔面を力まかせに殴りつけた!
マリオがバランスを崩して倒れた。
「くだらねえな!泪!おまえじゃ桜井は救えない!」
泪は白鳥を無視して通り過ぎた。
白鳥が何故か悲しげに泪を呼んだが、泪の耳、いや心にはとどかなかった。
隣の部屋に意を決して飛び込んだ!
泪の目に衣服が乱れ泣いている愛奈と、
その横で全裸でタバコを吸う南原という男がソファーに座っていた。
「あ、愛奈!テッ!テメェッ!ぶっ殺す!」
「誰だ?お前?」
勢いよく飛びかかる泪に南原の蹴りがカウンター気味に決まる!
「ぐぇっ!」
座ったままの南原に蹴り一発でKOされて倒れた!
南原は真っ黒に日焼けし、身体を鍛えあげた筋肉の鎧をまとっている。
白く染められた坊主頭に幾つかのラインが剃りこまれていた。
南原が立ち上がると、その身長は190は軽く超えていた。
こんな化物に勝てるわけがない…。
「どうした?殺すんじゃなかったのか?お前の女、初めてだったみたいだぜ?
遊んでそうだと思ったが、気の毒にな!」
「この野郎!」
泪は立ち上がると、拳を何発も南原の腹に打ち込んだ!
しかし、南原は何も感じてすらいない。
「期待はずれだ。THE END!」
南原の拳が泪の顔面を捕らえた!
一瞬で意識が飛ぶ…。
「やめて!」愛奈の声が聞こえる。
胸ぐらを掴まれ、むりやり起き上がらせられると泪の胸のポケットから西村に貰ったチョコが落ちた…。
完全に戦意を失っている泪を乱暴に放した。
床に倒れた泪の顔の近くにチョコが落ちている…。
鼻が嫌でもチョコの匂いを感じている。
南原が服を着はじめ、部屋を出ようとした時、愛奈が泪に走りよる。
「いい、彼じゃねぇか!お前助けるために…。見ろ!」
「出てって。でも南原さん、ありがとう。」
「もうひと仕事残ってる。じゃあな!」
「ねぇ、泪。帰ろう。私、何にもされてないよ。南原さんが助けてくれたの…。」
ことの流れはこうだ。
愛奈が拐われてきて、白鳥が羽間と土田に好きにするように命じた。
羽間が乱暴をしようと愛奈に襲いかかった時、奥のシャワールームにいた南原が助けに入った。
羽間達は南原には逆らえないので、渋々立ち去る。
服を着る間もなく、泪が現れたという事だ。
「う…。う…。」
愛奈の呼びかけに唸っている泪…。
「泪?」
泪はあの時の様に突然立ち上がる!
口はチョコレートで汚れていた!
泪はチョコを食べると強い拒絶する心と免役のない刺激で覚醒してしまう!
全てはあの日の出来事が引き金だ。
「ウォーッ!」
「泪!」
南原が異変に気付き、振り向こうとした瞬間!
顔面に泪の膝が深く入る!
ゴキッ!
鈍い音と共に白目を剥いてその場に倒れる南原。
泪は愛奈を置いて隣の部屋に移動する。
「ダメッ!泪!」
愛奈の声は泪の耳には届かなかった。
隣にいたマリオと白鳥は南原によって泪は倒されたと思っていたが、覚醒した泪を見て震えあがった!
「泪…。」マリオが一言、言い終えるか否かの瞬間に泪の鞭のような手が食い込むように顔面を捕らえた!
その後は酷いものだった…。
北澤達が止めに入るまで店で暴れ続けた。
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・
・
ここまでの騒ぎを起こしたにもかかわらず、警察が動く事はなかった。
それは、白鳥が根回ししたからだという。
今回の一連はマリオが仕組んだ事だった。
簡単に言うと、愛奈を泪にとられたと思う腹いせだった。
昔からマリオは泪を自分の引き立て役にしてきた。
中学生のバレンタインの事件もマリオが仕組んだ。
泪に対する女子の評価もマリオのデタラメだった…。
マリオは劣等感の塊だった。
いつも泪の方が秀でている気がしてならなかった。
成績も泪の方が良かったし、クラスで人気もあった。
幼稚園、小学校まで泪の後をくっついて離れなかった少年マリオはいつしか泪を疎ましく思い、そして…。
立場が逆転し、その後の人生すら変える!あの事件がまさか、マリオの仕業だったとは…。
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・
・
学校はいつもの下校の時間。
泪の目に愛奈が歩いてくるのが見えた。
目の前にきた時、喉の奥で声が詰まる。
「!」
泪の横を素通りする愛奈。
「清君、えーっダメだよぉ~ 」
新しい彼と電話で話しながら歩いていく。
南原清…。
愛奈の相手は南原か…。
意外だな。
まあ、あんな姿を見たら…。
「宮門さん!」
北澤、西村、東山が泪の姿をみつけ、手を振る。
泪も笑顔で手を振り返した。
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マリオはあれから学校に来ていない。
そう簡単に許せる話しじゃないけど、またマリオと…。
アイツは俺の事を落とし入れる様な事しか考えてなく、偽りの友情でも…。
その後、時間は過ぎて行き…。
出席日数の足りないマリオは留年したという。
白鳥と一緒にいるのを西村が見かけたと
言うのも聞いた。
その姿は以前のマリオではなく、随分と派手だったという。
・
・
・
「み、宮門先輩!これ!」
大人しそうな後輩の女子がチョコレートを差し出す。
「あ、アハハ…。ありがとう…。」
チョコの匂いが嫌でも鼻に…。
…END
書き終えて、当初考えていた物からかけ離れてしまいびっくりです。
なんとなく暇潰し程度になれば本望です。
時々、こうして読みきり物も予定してます!
よろしくお願いいたします!