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ハワイアンソウル  作者: Natary
リアン
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旅だち


セイラを送り届けてリアンのうちに戻るとエプロンをして、

鍋を片手にキッチンに立つを見つけた。


“なにしているんだ?ジル”


テトが声をかけると嬉しそうにジルは振り返った。


“やあ、遅かったねー。色々世話になっちゃったから、ディナーをご馳走しようとおもってさ。”



そういうと、


“こっちきてきて、”


とテトをダイニングに招きいれ


“じゃじゃーん”


とクロスととった。そこには食べ切れんばかりのご馳走が並んでいた。


“我が家特製のフリフリチキンとバターライス。コブサラダ。おいしそうだろ?リアン喜ぶかな。ところでリアンは??”



まったくのんきなやつだ。テトは説明するのが面倒になっていった。



“まあ、いいさ。とりあえず僕らだけで食べようぜ”


“でも、リアンに作ったんだけど。”


“いいんだ。いいんだ。”


腑に落ちていないジルに苦笑いしながらテトはご馳走をほおばった。



まあ、いいかと思ったのか、テトと並んで嬉しそうにご馳走を食べるジルをみながら、


“こいつは本当にピュアソウルなのか?もっと気高い生き物じゃないのか”


とテトは自問自答した。


ジルは自分が料理に専念している間に起こった出来事を一通りテトから聞き終わると、ふぅっとと長く息を吐いた。


“なんて色々起こった日なんだろう。その全てに僕は蚊帳の外だったわけか。”


ジルは少しいじわるな質問をテトにしてみたくなった。


“これは君が待ち望んでいた死だろ?どんな気分だよ。”


テトはジルの質問になんの感情もいれずに普通に答えた。


“そうだな。ピュアソウルの安らかな死はなかなかいいもんだったよ。

リアンの死に祝福を!長い旅を終えて家に帰るんだ。めでたいだろ?”


ジルにはそんな風に人の死を割り切ることはとてもできないと思った。


“僕はそんな風に思えないよ。人の死はなんであれ悲しい。”


テトはそんなジルを少し不思議そうに見つめた。


人間のピュアソウルってこんな思考レベルだったか?テトの頭に疑問が再び浮かぶ。


ジルはそれからふと思ったようにこういった。



“僕って本当にピュアソウルで、役に立つんだろうか?”


こっちが聞きたい台詞だとテトは思った。


“今のところは出番なしだな。きっとこれからだろ”


励ますようにテトは明るくいった。


“そうなのかな。なんというか、今ひとつ全然実感がないというか、

人間が大変なことになっている実感もまったくないし。いろんなことが起きても僕は一つも見てないし、なんなんだろうな僕の役目は”


ぶつぶつつぶやくジル。素直なやつだとテトは思った。


“とにかく、今日はゆっくり休んでさ、これから大冒険だからな。まだたった一つだ。”


テトはそういうと自分もするりとベットに体をいれ、あっというまに眠りについた。

羽をやすめたテトは眠りながらにしても寝息とともにあでやかな光を放つ。煙のように現れては消える光の満ち引きはオーロラのようで、


“まったく妖精は美しい生き物だなぁ”


ジルはうっとりとその様子を見つめ、そして電気を消すと自分も眠りについた。



次の日の早朝、名残惜しげに手を振るセイラをテトはもう一度しっかりと抱きしめた。


一度旅立つとテトは振り返らない。二人は旅立った。次のピュアソウルへ。


“あのさ、テト。そろそろこの服飽きたんだけど替えて。”


ジルがのんきに言う。


“色々うるさいやつだな。今度は何色がいいんだ?”


“そうだな。ちょっと渋めのブルーで草花が入ったアロハにしてよ。ビンテージっぽいやつ”


“はいはい。”


テトはそういって指をぱちっとならした。


“うーん、かっこいいね。すっごい高そうなアロハだ。”

ジルは満足そうにいった。



“さてと、次のピュアソウルはっと。おっと。緊急信号だ。こっちが先だな急げ。”


テトが急に慌てたので、ジルはアクセルを全開にした。

リアンが乗っていた黄色いワゴンは古いのかアクセルをいっぱいにしてもエンジンがうなるだけであまりスピードがでなかった。


“リアンの車勝手に乗って平気かな”


“リアンは死んだんだぜ?”


テトが面倒くさそうに答える。


“でもさ、死んだとしてもその人の財産だから。”


ぶつぶつ言うジルをさえぎるようにテトが言った。


“人類を救う為に妖精と旅しているヤツが常識で考えるな”


ぴしゃっと言われたのでジルは黙った。それもそうだな。


“あのさ、テト、もっとなんか瞬間移動とかできないの?妖精って?この間ペレの所行ったとき使ったみたいなやつ。”


唸り声を上げるばかりのエンジンに嫌気がさしてジルが言った。


ビーチの砂のような色の住宅が立ち並ぶ道を抜けてH1と呼ばれるハイウェイに乗ったものの、

一向にスピードは上がらず周りの車に追い抜かれてばかりだ。


“あんなのいっぱい使ったらお前の寿命もうないぞ。仕方ないのさ。

人間は原始的な物体しょってるだろ?俺だけ先にいったってなぁ。

人間の移動手段に付き合ってやってるんだから、あああー。間に合わなくなったら大変だろ。急げ”


テトが急かすのでハンドルに力が入る。


“ついでにさ、ジル。どうせ死期が迫っているピュアソウルのもとに行くんだからさ、

リアンの時みたいに、色々説明しなくてもいいな。やり方を少し変えよう。もっと自然に近寄って話せばいいな。時期が来るのを待つしかないんだし。”


テトが行った。ジルはそれもそうだと思った。


あなたの死を待って結晶を作りますなんて説明受け入れられるはずがない。


リアンみたいな人が最初でよかったな。神の使いなんてかなり怪しいじゃないか。


ついた先は小児病棟のある病院だった。

丁寧に手入れされた芝の庭を一目散につっきる。周りの普通の人間たちにはテトが見えないらしく、

息を切らして走るジルを不思議そうに眼で追っている。


テトはある病室へと迷いなく一目散へ飛んでいく。ジルは必死で追いかけた。

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