妖精のデート
“セイラ、今夜はどこへ行こうか?”
セイラとのデートが楽しくて仕方がないテトは今夜もセイラを迎えに来た。
“そうね、ダイアモンドヘッドの天辺で星座を作るっていうのはどう?”
“いいねー。”
そういうと二人はくるくる周りながらダイアモンドヘッドへと向かう。
一直線に飛んだり、くるくると蛇行したり、夜空を楽しむようなテトとセイラ。
キラキラと二人の光の粉がまざりあって、夜空を彩った。ワイキキでは金曜日恒例の花火が打ちあがった。
“見てー。花火”
セイラが嬉しそうに振り返って言った。
“ほんとだ。”
テトも振り返ってしばし見とれる。そして二人顔を見合わせて、ふふふと笑うとまた飛び出した。
ダイアモンドヘッドの上につくと、眼下にはネオンが広がっている。ごつごつした岩の平らな部分を探して二人腰掛ける。
“きれいねー”
セイラが感嘆の声を上げた。“
“ははは。きれいだねー。”
テトも答える。セイラの淡い緑色の髪が風にそよいでいる。長いまつげが美しい。そのまつ毛がふと下を向いて瞳が翳ったことをテトは見逃さなかった。
“セイラ、君は時々不安を感じるの?”
セイラはテトを見て言った。
“ええ、妖精なのに、時々恐怖で震えるときがあるわ。おかしいわよね?”
セイラは恥ずかしそうに言った。
“周りは妖精ばっかりで君の気持ちわからないだろ?”
“そうね、ママでさえ気づいてはくれないわ。”
セイラは人間と妖精の狭間で心が揺れ動いているようだった。
陽気な妖精の中、悩みを分かち合えないのはセイラにとってはつらいことのようだった。
テトは優しく語りかける。
“大丈夫。何にも心配要らないよ。僕が全部守ってあげるから。”
テトははかなげなセイラが愛しくてたまらない。どうして彼女はこんなに切なげに美しいのだろう。
惹かれあう二人の妖精の恋の色で羽からピンクの光が飛び散った。
セイラの不安を打ち消すようにテトは元気に言った。
“よし、どんな星座を作ろうか?”
すぐに明るさを取り戻してセイラもキラキラと光の粉をまく。
“そうねー。まずは妖精の形”
セイラはそう言って、星を指差すようにゆびをぴゅーっと動かした。夜空の星はビーズのようにすーっと動いて形を作り始めた
“これが、羽。”
“じゃあ、これがセイラの髪”
“なかなかいいわね”
“その隣は?”
“家族を作りましょ。”
“家族?”
“そう、テトと、私。ママと、リアンも小さくして入れて。”
小さな妖精が4人並んだ。
“こんな風に家族で一緒に居られたらどんなにいいかしら。”
セイラがまたふと寂しそうになる。
“ママはもう永遠に愛する人に会えないんだわ。悪魔と取引をしたばっかりに”
“そうだな。生きている限りは会えないね。”
“残酷よね。”
“僕だったら、命を失っても君に会うことを選ぶな。”
“本気で言っているの?”
“もちろん、本気さ。愛ってそういうものだろ?”
セイラが考え深そうに言った。
“ママもそうね。わかっているの。でも私はママを失いたくないだけ。私が、我侭なのかしら??”
テトは愛くるしいセイラをそっと抱き寄せる。
“起こることは自然に起こる。起こらないことは自然に起こらない。今はそんな不安忘れよう。僕といる時間をただ楽しめばいい”
テトにそっと言われると、セイラの不安はひと時消えてなくなるのだった。