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ハワイアンソウル  作者: Natary
リアン
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妖精との恋

テトは頻繁にでかけるようになった。


どうやらデートを楽しんでいるらしい。


無理やり結晶を作れないとわかった途端のんきなものだとジルは思った。



数日たった夜、月がきれいだったので、ジルはビーチにでた。

波の音しかしない月に照らされたビーチは幻想的で、神々しかった。


“神が決めたことなら、従うべきなんじゃ。”


ジルはここ数日、自分がどうすべきか悩んでいた。


このまま人類がいなくなって方がいいのではないか。その思いは強くなっていった。


しばらく、ビーチを歩くと人影があった。ビーチに生えたヤシの木に寄りかかり海を見ている


“リアンさん”


声をかけて近寄ったジルは驚いた


“泣いてるんですか?”




“ああ。”



初老の男の涙は静かにほほを伝っていた。


ジルに気づいても涙を拭くこともなく海を見ている。


ジルは隣に腰を下ろして、男が話し出すのをじっと待った。


“前に君たちは僕に、なにか愛しているものがあるかと聞いたよね?”



“はい。ピュアソウルの愛は偉大だと聞きました。”




“その答えはイエスだ。”



リアンが水平線に眼を向けたまま言った。


“僕の人生は彼女が全てだった。”


“彼女??”


“そう、30年も前に一緒に暮らしていたメネフネだ。”




そういって男は話し出した。



“信じるかい?”



“はあ。何しろ、最近は毎日メネフネといますから、そういうこともあるかと思います。”


ジルがおかしそうにいった。

そうだ。僕らはメネフネと生活している。こんなおかしなことがあるだろうか。


しかも、そのメネフネは重要な任務そっちのけで、デート三昧。

そして生意気なことばっかり言っているとてもハンサムな小さいやつだ。


ジルは改めてテトとの出会いとこの不思議な状況を見返すとおかしくて仕方がなかった。


“30年前、そのメネフネは僕の庭の隅にあった蜘蛛の巣にひっかかって動けなくなってしまってね。。

それを助けたのが始まりだった。僕は小さい頃から、人間に見えないものが不思議と見えてね。

友達は気味悪がって近寄らなかった。いつも孤独だったよ。だから友達ができて嬉しかった。


其のメネフネの名前はリリー。とても美しかった。

長い髪を小さな花で結んで。彼女の羽は時々七色に輝くんだ。

リリーは初め僕が妖精を見られることに驚いたけれど、すぐに仲良くなって一緒に暮らすようになった。


リリーは孤独な僕の話相手になってくれた。底抜けに明るい妖精と暮らすのがどんな風だかわかるかい?

そりゃ、楽しいんだ。後ろ向きなことは一切ない。人間の悲しみなんてちっぽけだと思えてくる。

僕は、その小さな美しい妖精と恋に落ちたんだ。



リリーがなぜ僕を愛したのかはわからない。けれど、彼女と僕は本気で恋に落ちてしまった。


僕は妖精のままのリリーでも充分だったけれど、彼女は僕の相手には自分は小さすぎると言い出した。

そして、ある日、



悪魔と取引をしてしまったんだ。


たった、3日だけ、人間の女性にしてあげると。そして、ついにあの夜。

リリーは人間の姿になって僕の前に現れた。



人間を超えた美しさだったよ。


僕らは一瞬を惜しむように愛しあった。そして、3日が過ぎたけれど、リリーは僕のもとから去ろうとしなかった。

僕は悪魔との取引を知らなかったから。このままずっと一緒にいられるのではないかと思ったよ。


けれど4日目。リリーは体の調子がひどく悪そうになった。

僕には何が起きたのかわからなかった。きっと悪魔との取引のせいだ、様子をのぞきにきたほかの妖精が僕の耳元にささやいて逃げた。

僕は初めてリリーが悪魔と取引をしたことを知ったんだ。妖精が人間の姿になって現れたのに少しも疑問を持たなかった自分の浅はかさをのろったよ。


そして、其の夜リリーは姿を消した。リリーは其の後、一度も姿を見せない。

僕は毎日探したよ。でもどこにもいなんだ。30年経った今でも、僕はリリーを愛している。

ヤシの陰や、庭の草木。リリーがもしかしたらいるんじゃないかって、探してしまうんだよ。


ぼくはね、リリーのままでよかったんだ。



僕らは欲をかいたばっかりに全てを失ってしまった。”


男はそう言って、顔を覆って泣き出した。



“あまり絶望しないでくれ”


苦しそうな声でテトが舞い降りた。


“ピュアソウルの絶望は答える。”


テトの羽の光が段々弱くなり、呼吸が本当に苦しそうなので、男もあわてて泣きやんだ。


“大丈夫か。テト。”


心配そうな男を見上げて、テトは次第に元気になってきた。



“よし、それでいい。絶望なんて何も生みはしないんだから。”


テトはリアンに言った。



“すまん。年甲斐もなくセンチメンタルになってしまった。


こんな月の夜は色々考えてよくないな。



どれ、少し話しすぎた。ウクレレでも弾くか。”



“いや、ウクレレの前に。ちょっと聞きたいことがある。


君の愛したリリーはセイラの母親じゃないか?”


テトの声に男は目をまるくした。


“なんだよ。テト。聞いていたのか?そのセイラって誰さ。”



“最近、僕がデートしている妖精さ。どうも、彼女、純粋な妖精じゃないようなんだ。

みかけは完璧な妖精だか、うまく隠しているけど、死を恐れている。人間のようにね。”


“人間のように??”


ジルが驚いて声を上げた


“まさか。リリーの子供じゃないのか?”


リアンに生き生きとした希望と同時に不安が浮かび上がった。

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