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ハワイアンソウル  作者: Natary
命の水
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入り口


太陽が昇る方向へ歩くのよ。


ヒイアカがいうのでそれに従って歩く。


ヒイアカは呼べば姿を現すが色んな場所をいったりきたりしているらしく、

現れたり消えたり、突然前を歩いていたりを繰り返している。


“まったく忙しい人だな。ペレがものすごくたくさんの用事をヒイアカに言いつけるんだ。”


とテトがおかしそうにいった。


カネの水のある洞窟へは歩いてしかいけないらしい。

森に入ってから、ここは本当にハワイなのか?と思うような見覚えのない道が続いている。


“ハワイにこんな道あったっけ?”


ジルが聞くと


“大昔からあったさ。人が歩かないだけだ”

とテトが答えた。


“誰と一緒にいると思っているんだ?女神だぞ”


テトがおかしそうに笑った。


“ヒイアカ、どこへ行くの?”


“ヒイアカ、どうして人間といるの?”


“ヒイアカ、ペレのお使い?”


女神ヒイアカは妖精たちに人気があるらしい。


ひっきりなしにどこからともなく現れてはヒイアカに挨拶をしてく

そのたびにヒイアカは


“カネの水をとりにね。”とか


“お姉さまのお使いよ”とか丁寧に答える。


そして呼ばれて返事をしてはまた消える。本当に忙しそうだ。


色とりどりの妖精たちがそれぞれ美しいのでジルは楽しかった。


女の子の形をした妖精もいた。

どの妖精も端正な顔立ちで美しかったが、アロハを着ているのはテトだけだ。


“テト、アロハシャツきている妖精って君だけだな”


“そうだな。みんな服に興味がないのかいつも同じようはふわふわしたものを着ている。


妖精って感じだろ?俺は人間の服に興味があるんだ“


“へぇ。スーツも似合ってたもんな。”


ジルの褒め言葉にテトが嬉しそうに笑った。


一通り妖精たちが挨拶にきたのか、しばらくするとやっと静かになった。


“一休みしましょう”


ヒイアカがいつのまにか現れて木の根元に腰掛けている。


“どれぐらい歩いたかな?”


“そうねぇ。ざっと二十時間ぐらい”


“二十時間!僕全然疲れてないよ”


ジルが驚いていった。人間が二十時間も休みなく歩いて平気でいるなんて。


“ヒイアカがずっとマナを送り続けていたからね。でも体は疲れているはずだからちゃんと休まないと壊れちゃうよ”


テトが言った。


“そうね、食事もとらないといけないわ。”


女神が木の根元に腰掛けるのを、待っていたかのように、フルーツや水、さまざまな野菜が

目の前に置かれた。メネフネの奉納らしい。


“ありがとう。みんな”


ヒイアカはにっこりして、


“さあ、いただきましょうか。”

とテトとジルに声をかけた。


“コーヒーないかな“

とテトが言った。


“ないな”

ジルは即答した。


“森の中にはコーヒーはないか。”


とテトは諦めたように前にあるフルーツに手を伸ばした。


ジルもそっと口に運んでみる。妖精が持ってきた食事は一口食べるたびにエネルギーが沸くような不思議な食べ物だった。

マナがいっぱい入っているようだった


“女神と食事ができるなんてまったく光栄だな”


テトはヒイアカにうやうやしく声をかけた。


正確にはヒイアカは食事の間も消えたり現れたりを繰り返していて何も口にしてはいなかったけれど、


“そうね。久しぶりにゆったりと食事をしたわ”


と本当にのんびりしたかのように言った。


テトはそれを聞いておかしそうに笑った。


“いつもはもっと忙しいんだね”


“ふふふ。そうなのよ。お姉さまのお気に入りって忙しいのよね”


とヒイアカもおかしそうに言った。


“ペレはすぐに怒るしなぁ。ヒイアカも大変だよな”


“ふふふ。でも本当は優しい人よ。いろいろ人間には誤解されているけれど。”


“そうだな、ヒイアカの恋人を殺したとか、嫉妬に狂って世界を焼き払ったとか散々ないわれようだよな”


“ふふふ。女神は人間に理解されようなんて思わないもの。お姉さまの力を畏怖して自然を敬うハワイの人たちはある意味賢いわ。”


“そうだな。バランスを考えずどんどんビルを建てちゃう都会の人間よりは賢明なのは確かだ”


“命のバランスもね。子供を愛さない動物に未来はないわ。

希望そのものだもの。命の希望はそこにあるだけで世界を清めるのに、子供が減っていることに無関心なのは人間だけだわ。

動物としての本能まで失ってしまったのかしら。アースの決断に人間は気づきもせずに滅びるかもしれないわ。”


ヒイアカが悲しそうに言った。人間の鈍感さに心優しい女神や妖精が心を痛めている。


“とにかく出発しよう”


再び歩きだしたが、ジルは頭の中で思い返した女神の言葉に強烈な危機感を持った。

アースが人間の絶滅を決めたという思い事実。

虐殺するわけでも、災害を起こすわけでもなく、ただ子供がいなくなっていくという現実。

人は気づかないかもしれない。


なんだか最近子供が少ないね、なんて会話に登ったときはすでに手遅れで、

人口の減少は止まらない。子供大きくなって大人になるっていうこんな基本的なことすら人間はわからず、

子供は手もかかるし、お金もかかるし面倒だなんて平気で言ったりするんだ。テトの言い方を借りれば長い時間で考えることができない人間らしい考え方だ。


ただ黙々と山道を歩いているからだろうか、ジルはなんだかしみじみと色々なことを思った。


“さあ、目の前のことに意識を集中しろ”


テトが言った。ジルの頭のなかが読めるようだ。


“あれこれ考えてもお前の能力なんてそれほどない。

目の前のことを精一杯やる分ぐらいしかない。力を分散するな。今はカネの水だ。

物事は一つずつに100%のマナを注げば成功するようにできている。”


色々と思い悩んでいるのを吹き消すようにテトはジルに何度も言った。


“集中しろ。カネの水に。そんなに簡単じゃないんだ。全力で行こう。”


珍しくテトも緊張しているようだった。


妖精といえど、無傷では帰れない。そんなに恐ろしい洞窟なのだろうか。


ジルは少し不安になったが、あわてて思った、集中しろ、起こってもいないことを考えるのはよせ。

いいイメージにエネルギーを流すんだ。きっと成功する。呪文のように自分に言い聞かせた。



“あそこが洞窟の入り口なのよ。”


消えていたヒイアカがふっとまた現れると前方の大きな岩盤を指差していった。


入り口などどこにもない、巨大な岩の壁だった。


“入り口。。。”

ジルがつぶやく。


“どっから入るんでしょうか?”


ヒイアカに訪ねる。


“入り口を強く思い描くと現実になるの。そっから入って。集中するのよ。”


“意念でドアを作るのか。よーしジル、具体的に思い描け、あのあたりから、ここまでぽっかり入り口が空いている洞窟を想像しろ。”


テト自身もそれを強く思っているように目を閉じる。ジルは必死で岩の壁を見ながら入り口を想像した。ここからここまでがぽっかりと。。。

すると、岩壁がぐらんとゆれたように見えて、ぼわーっと黒い入り口が浮かびあがってきた。


“いいぞ、はっきり見えるまでもっと強く想うんだ。”


テトが励ます。


“入り口はある。確実にそこにある。”

ジルがより強く想う。


“よし、入ろう。”

テトが目を開けた。ジルも目を開けると、そこにはしっかりと大きな入り口が口をあけていた。


“私はここでねー。頑張って。魔物に勝つのよー。“

ヒイアカは歌うように言って消えた。


“ありがとう。ヒイアカ。”

その姿に手を振るとテトは元気に言った。

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