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ハワイアンソウル  作者: Natary
カイ
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孤独と愛


 聴力を失ってからカイはいつも一人だった。

能力を授かりカフナとして生きることを選んだが、人と違うということは時にとても孤独なのだ。


けれど、カイは孤独を恐れてはいなかった。


静かに孤独に身をゆだねるとそれは不安ではなく安らぎにさえなるのだ。


人々はカイの特殊な能力を求めて必要なときだけ癒しを求めにきた。カイはどんな要望にも誠心誠意応じた。


カイのヒーリング方法は生まれつきカフナとして備わっている特殊な能力もあったが、

ハワイに昔から伝わるヒーリングメソッド、ホ・オポノポノを用いた独特のものだった。

患者は特に何をされたという実感がないので、誤解を受けることもあった。


“カイのところへ行ってヒーリングしてもらったのに、母の病気は治らなかった。あいつはいんちきだ”


と心無いことを言いまわる人もいた。


ホ・オポノポノというハワイ伝統のヒーリング方法をカイは良く使った。


ホ・オポノポノは現実に起きる全ての事柄は自分の中に原因があると考える。


カイは患者をヒーリングするのではなく、患者の悩みを聞き、

この問題を持ち込まれたということはこの患者の痛みの原因が自分の内部にあると考える。


潜在意識の記憶が引き起こした問題だからと。


そのため、ひたすら自分を清める。


自分をゼロの状態に戻すことで、神格からの愛が充電され、全ての事柄が良くなるのだ。

ハワイアンマジックと呼ばれるこのメソッドは偉大なカフナに伝承されてきたハワイの秘法だ。

カイはできる限りのことをしたが、命を操れる神ではなかった。


けれどどこまでできてどこまでができないのかカイにもはっきりと説明することは難しかった。

眼には見えないだけに余計誤解を産む。


カイはひっそりと生きることを選んだ。目立てばたたかれるのがわかったからだ。

与えることは惜しまないが、奪われることを恐れた。


そして、ひたすら自分を清めることで世界を清めようとしてきた。


孤独な人生ではあったがいつも優しいものに包まれているような感覚があったので不思議とカイはさびしくはなかった。



そんなカイも長い人生でたった一度、恋をした。


褐色の肌に凛とした涼しげな眼を持つサラだ。

彼女はなぜかいつも同じ箇所の足が痛むので一度カフナであるカイに診てもらおうとやってきたのだった。


“私の悪いところわかりますか?”


カイはいつものように何も言わず手をかざす。

右足に悪いものがたまっているのが分かった。


ゆっくりとチャクラをあけてエネルギーを通すと滞っていた血液が再びまわりだす。

そして、痛みの原因であるカイ自身の内部に対してホ・オポノポノをして清めていく。


ホ・オポノポノのキーワードはI love you。ひたすらI love youと自分の潜在意識に呼びかけて自分の状態をゼロにする。


I love you。ありがとう。許してください。ごめんなさい。


この4つの言葉をひたすら唱える。

やがて、カイの心はまっさならゼロの状態になり、神格から愛が充電し始める。


ゼロの状態になると霊感はさえ、どうすればいいのかを伝えてもらえるのだ。


サラの足は3.4回、カイの元を訪ねるとすっかりよくなっていた。


“ありがとうございます。カイ。あなたに言われたとおり、水を飲んだだけで、

本当に痛みがなくなったわ。あなたって本当にすごいのね。”



サラの喜ぶ顔をみてカイも幸せになった。

サラはカイのもとに来る理由がなくなってしまったけれど、なんだかカイが気になってしかたがなかった。


“あんなに優しさに包まれたような人がいるなんて”


カイもサラが気になっていた。カイは毎日、手紙を書いた。



サラ、

僕は今日、おいしいチキンを食べたよ。

君は何を食べた?

今日も星がきれいな夜だね。


           カイ。


サラ、

今日は隣のおばあちゃんがヒーリングのお礼にポキをおいていったよ。

おいしかった。

なんだか僕はいつも食べ物の話を書いているね。

                 カイ


カフナという不思議な職業のわりにいつも食べ物の話が書いてあるのがサラにはおかしくて、

カイとはすぐに仲良くなった。二人の交流はいつも手紙だった。



カイ


カイがいつも食べ物の話をするから、

私、カイの手紙を見るとおなかが減るようになっちゃったわ。今度おいしいものもって行くわね


                  サラ


サラ


君の好きなものってなんだろ?

僕の好物はね。よく熟れたマンゴーとアボカドのサンドウィッチ。

僕が好きなものを書いたからってそれをくれってことじゃないよ。

                           カイ



カイ

オッケー。マンゴーもっていくわ。リクエストには答えなくちゃ。

                           サラ




若い二人が恋に落ちるのにそれほど時間はいらなかった。


二人はツインソウルのように仲のよい夫婦となった。

そしてサラによく似た瞳を持つ娘を授かった。二人はナタリーと名づけた。



ナタリーはすくすくと成長し、

カイはカフナとしてどんどん能力を高めていた。

代々のカフナがそうであるように、歳を重ねるごとにカイの行いは尊敬を集めた。


カイのことをけなす人は次第にいなくなっていった。

ハワイの有力者もカイのもとに助言を求めにきた。


カイは政治的なことには一切関わらず、人々の小さな悩みにも心を砕く本物のカフナとなった。


人を癒し、徳を積むことでまた新たなエナジーを得る。

カイは人を癒すたび自分も元気になるのを感じていた。

充分幸せに、そして充分に生きた。



数年前、サラは先に天に召された。


次は自分の番だな。

カイはふとそれが近いことに気づいた。


いつなんだろう。瞑想していると頭の中にふとビジョンが見えて、今度の満月だとわかった。


そして、満月の前日、メネフネが家にやってきた。明日なんだ。カイは確信した。

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