神に愛されたソウル
オアフ島に戻ってからもジルはふさぎこんでいた。
ダンの死が思ったより応えている。
落ち込んでいるジルにテトは言った。
“そんなに落ち込むな。役割があってダンは一端帰っただけだ。”
“そんな風に簡単に考えられないんだ。”
ジルは苦しそうだった。
“こんなこと普通は人間に説明しないんだけどな。”
テトはそう前置きして話し始めた。
“アースから魂の循環の一部を任されている神がいるんだ。
神々の中で頂点に立つカネ。
アースを支えている偉大な神だよ。カネはタイミングよく必要なソウルを生まれ変わらせる。
ナルオラはカネの指示でダンを迎えに来ている。
つまりさ、ダンはこれから30年後、一番体力がある若々しい体を持ってやるべき役割があったんだ。”
“どういう意味。”
“まれなことだけど。ダンはあと1週間もすれば新しい命で帰ってくる”
テトは楽しそうに言った。
“神々に愛されたピュアソウルは役割が色々あって忙しいんだ。”
ジルは半信半疑でテトの言葉を聞いた。ジルの疑いを見抜いたようにテトが言った。
“妖精がうそをつくとでも思っているのか?”
そうだな。テトは絶対にうそはつかないだろう。
ダンについた下手なウソを思い出していった。
“いや、信じるよテト。”
ジルはそう言った。そうだ、信じよう。きっとダンはまた生まれてくる。
そのころ、ノースショアのダンの実家ではダンの姉のレイナが悲しみに沈んでいた。
弟の死から1週間。誰もがダンの死を悼んで悲しみの中にいた。
レイナの幼い息子マイクもダンが大好きだった。
ダンはよくノースショアにくるとマイクを連れて海にいき、
実家の愛犬チコをロングボードの前にのせ、マイクを肩車して波に乗った。
ダンは絶対に転ばなかったのでマイクはそれが大好きで、
大きくなったら偉大な叔父のようにビーチボーイになろうと憧れていた。
“ダン、あなたがいなくてどれほど悲しいかわかる?”
弟の写真を見ながらレイナが呟く。
“帰ってきて。ダン。私たちがどれほど悲しいか。”
ぽろぽろと涙をこぼす。悲嘆にくれて写真を抱きしめてベッドにひれ伏してレイナは泣いた。
涙に咽ぶレイナを急に吐き気が襲った。
“何かしら。”
慌てて、洗面所に駆け込むレイナ。
“もしかして。”
レイナは自分のお腹に手をやる。
赤ちゃん。
そこへ2歳のマイクが入ってきた。
洗面所の鏡の前で口を手で押さえているマミーを見つけて嬉しそうに近寄ってきた。
そして小さな指でレイナのお腹を指差すと言った。
“マミーのお腹にダンがいる”
“ああ。”
レイナは全てを理解してマイクを抱きしめると泣いた。
涙でぐちゃぐちゃになったレイナの顔をマイクが不思議そうにそっとなでる。
“マミー、悲しいの?”
“いいえ、マイク。マミー嬉しいのよ。ダン、ダンが戻ってきたのね。”