運命
エディー・アイカウ。
マウイのカフルイに産まれた彼はホノルルで人望のあついライフガードだった。
ワイメアベイで40フィートの波に挑んだビックウェーバーとしても有名だった。
彼はカメハメハ王朝の神官の家系に生まれ、
小さい頃から母の教えに習い、サーフィンに熱中し、
オアフ島のノースショアでビッグウェーヴ・サーフィンが流行る頃、ビッグウェーヴ・サーファーの頂点に立った。
彼はその後ノースショアのライフガードにスカウトされ、
数多くの人々の命も救った。ダンの人生とリンクする。
サーフィン競技にも積極的に取り組み、デューク・カハナモクに次ぐ先住ハワイ人系プロサーファーの先駆けとなった。
1978年、航海カヌー「ホクレア」に乗り込みタヒチまでの航海に参加する。
ホクレア号は運悪く嵐に見舞われてしまう。
4メートルの高波がホクレア号の横腹を叩きつけホクレア号は転覆遭難する。
船はモロカイ海峡で遭難し、ラナイ島までゆうに20キロはある地点だった。
全員死に直面したその状況で、彼は救助を求め、1人、そうすることが当たり前のようにサーフボードに乗り、
パドリングで荒れ狂う海に漕ぎ出した。
その後、消息を絶つ。
彼以外の遭難者は翌日偶然通りかかった大型船に救助され、
皆一命を取り留めたが、その1週間後、彼のロングボードだけが見つかり、
そこには深く深くサメの歯型が残っていた。彼の英雄的な行動と悲劇的な最後はハワイの伝説となり、死後、ハワイの英雄になった。
その生まれ変わりがダンだというのか?
“また海で死ぬのか。”
ジルが苦しげにいった。
“そうだな。波の神が彼を迎えに来る。それが決まりのようなソウルだな。”
“ハワイはまた一人英雄を失うのか。”
“大丈夫。また会える。役割があるんだ。だから生まれ変わりの周期が激しい。”
テトが言ったが、ジルは全てを理解できなかった。愛くるしいダンの笑顔が頭をよぎる。
“若すぎないか?”
“そうだな。魂のエリートは意外に若く死ぬ。”
テトはこともなげに言った。
ジルは無性に悲しかった。たいした説明もなく初対面のジルを歓待し家に泊めてくれた。
くるくると表情を変えて笑うダンの少年のような笑顔が浮かぶ。
たくさんの人が彼を愛しているだろう。
容易に想像が付くナイスガイだ。誰もが彼と友達になりたいと思うだろう。
そんな男だった。