伝説のサーファー
ダンが海へ行ってしまったのですることがなくて部屋に戻ると
テトが木の箱の中をあけて熱心に何かを見ている。
“なに勝手に見てるんだよ。”
ジルが声をかけた。
“見ろよ、ダンが命を救った人からの手紙だ。
ダンは人助けのためだけに生きてきたピュアソウルだ。
最後くらい、好きな海で、好きなことして死んでも誰も責めないだろ。”
ジルがテトから手紙を受け取る。
ディアー、僕のヒーロー
ハーイ。ダン
君に命を助けてもらったマイクです。覚えていますか?
僕が沖に流されて浮き輪に必死につかまって泣いていると後ろからすーっと
サーフボードにのったダンが現れて、ひょいって僕をサーフボードに乗せると
当たり前のようにすいーって動き出したんだ。
水をいっぱい飲んで気持ち悪かったし寒かったけど、ダンが大丈夫だよって言ってくれて、僕は不思議と安心したよ。
浜に着くとゆっくり休んでから帰るんだよってマミーと僕にハングルーズして笑顔で
サーフーボードを抱えて去って言っちゃって、マミーがかろうじて名前を聞いていたからなんとか探して手紙を書いています。
一言お礼が言いたかったんだ。
ダンは僕のヒーローさ。
僕も将来ファイヤーマンになりたいよ。
サーフボードを積んだ黄色いトラックに乗って困っている人を助けるんだ。
本当に有難う。
ダンへ
あなたに危ないところを助けられたクリスです。
足を切って、海水が見る見る血だらけになって、私は失神寸前でした。
気づいたら、あなたに引き上げられて、浜に寝かされ、足には包帯を巻かれていました。
娘と二人、やっとお金を貯めて行ったハワイ旅行であんなことになって、
あそこで命を失っていたら、娘はどうなっていたかと思うと恐ろしくてなりません。
私はシングルマザーです。あの子には私しかいないのです。
今、娘と暖かい暖炉の前で笑っていられるのも全てあなたのおかげです。
お礼をしたいのですが、と言ったら、あなたは当たり前のことをしただけだからといってにっこり笑いました。
あのハワイアンがする手のサイン。ハングルーズといったかしら。
それをしてにっこり笑ったあなたの顔が忘れられません。本当にありがとう。
またきっとハワイへ行ってあなたを探し出し、命の恩人にディナーをおごらせてくださいね。
もちろん、あなたの家族も一緒に。ありがとう。
“これ全部助けた人からの手紙か?”
ジルが手紙の束を見ながら関心したようにいった。
“本当にヒーローだな。医者より命を救っているんじゃないか?”
テトが笑った。
“ジョーズか。そんなに乗りたいのかな。”
遠い目をしてジルが言った。彼を死なせたくなかった。
“テト、ダンはサーフィンをするために生まれてきたっていったよな?どうして分かるんだ?”
テッドの死に納得がいかないジルがテトに訪ねる。
“ふーん。大昔からサーファーなんだ。
エディ・アイカウていうサーファーを知っているか?
結構有名だったみたいだけど。”
“エディー!”
尊敬をこめた声でジルが答えた。
“エディーなら誰もが知っているさ、ハワイの英雄だ。”
“それが彼だ。
何回もある前世の一つだ。
彼が生まれ変わってダンになってる。”
テトが言ったのでジルはびっくりした。
“あの伝説のサーファーがダンだっていうのか?”
“ああ、だからジョーズに乗りたいんだろ。
エディーはジョーズにまた乗りたかったのかな。”