いやーん助けて勇者さま(2)
ま、まぁいい。ナオトが決意を固めるまでに時間を要する可能性も考えてある。
ここは少し高橋さんと追いかけっこを演じて時間を稼ごう!
「だ、誰か! 誰かいませんかニャー!」
チラッ。とナオトを横目で見るが、彼はまだステータス画面を見ている。
「だめだ、俺の初期装備に武器はないみたいだ……」
当たり前だ。スタッフである高橋さんに武器でバコーンとやるわけにはいかんだろうよ。
立ち向うだけでいい。立ち向うだけでいいんだ!
「ギギィッ!」
高橋さんも必死にサルキメラ役を演じてくれている。私も必死に声を上げて助けを求めなければ。
「つ、捕まっちゃうニャー!」
チラッ。
「な、何かほかに有効なスキルとかはないのか……!」
「グギャー!」
「も、もう駄目ニャ~!」
チラッ!
「くっ……! 落ち着け俺。慌てて操作をミスってる場合じゃないぞ……!」
あ、ヤバい。ナオトが考えなしにステータス画面のボタンをポチポチ乱打し始めたようだ。
「う、うわー! メチャクチャな画面操作は想定してないでござるぅー!」
ネコ耳型インカムからステータス担当の変わった口調で悲鳴が聞こえる。
現場も裏方もたちまちカオスに陥った。
「ギャギャギャアー!」
「ニャニャニャアー!」
チラッ! チラァッ!
高橋さんも奇怪に飛び掛かってきたり、爪を振りかざしたり、上手くモンスター的な動きを演じてくれているが、さすがに攻撃のバリエーションも尽きかけているように見えた。
「が、ガオォッ!」
いや、もうそれサルの叫び声じゃねーし!
私はそれに気を取られてしまい、なんと木の根に足を引っ掛けて転倒してしまった。
「や、やば! なにやってるんですかリリアンさん!」
「す、すみま……で、でも今、演技をやめるわけには……」
これには私たちも困ってしまった。転んでしまってはもう逃げられない。
しかしこのタイミングでサルキメラが獲物に飛び掛からなければ不自然極まりないはずだ。
「い、いや……来ないで、来ないでニャ……」
私は演技も兼ねて必死に這いずりながら距離を取ろうとするが、高橋さんもさすがにそれを黙って待っていられる状況ではなかった。
「ギャヤオォッ!」
ついに私は高橋さんに飛び掛かられてしまった。
もうこうなったら取っ組み合いとなって膠着状態を作り出すしかない!
しかし、か弱いはずのリリアンがいつまでも凶悪なモンスターと膠着状態を続けるには無理がある。
それはもうタイムリミットも同然だ。普通の女の子が持ちこたえられそうな時間を超過してしまえば、それも不自然となり、ナオトに演技を怪しまれてしまうからだ。
「ギギャア!」
「いやぁ……やめて、やめてニャー!」
私は早くナオトに決意を促すためにも必死に悲痛な声を発していた。
まずい……! このプロジェクトは「はいドッキリ撮影でした」では済まされない。
まさか早くも第一幕でプロジェクト失敗か……?
そんなときだった。
「も、もうこれ以上は不自然です……リリアンさん、ごめんなさい!」
高橋さんはそんなふうに私に耳打ちしたかと思うと、なんと私の服に手を掛けたのだった。
「!?」
な、なんで私の服を!?
混乱する私に高橋さんはまた小声で告げる。
「か、噛み付くわけにはいかないから、サルキメラが欲情している演技に切り替えます! なるべく服を脱がすのに手こずる感じで時間を稼ぎますから……!」
マ、マジですかぁ!?
ちょ! 変なところは触らないで!
「ニャ、にゃああ~! いやニャ、いやニャア~!」
もはやこれは演技ですらない。
高橋さんも鼻息が荒い。
「し、仕方ないじゃないですか! 引き裂いて血がブシャーなんて演技じゃ済まないでしょ!」
「くッ! 殺せ! 殺せニャ~!」
まさかこんなセリフを私が言うことになろうとは!
「す、すみませんリリアンさん、ボタン外します……し、下着姿までは我慢してください」
い、嫌だぁ! こ、これ世界中に動画配信されてんのよぉ!?
「ニャニャニャア~! は、早く助けに来てニャ、勇者様ぁー!」
私は大空を仰ぎ、ガチで必死に叫んでいた。
ニャニャア! 高評価とブクマするニャ~!
(チラッ! チラァッ!!)










