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あなたを勇者にしてあげる 〜転生したと勘違いしている御曹司と偽世界を冒険中。なお全世界配信されてるから迫られても困ります〜  作者: nandemoE


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銅像にまつわるネタ10選(1)


 重役出勤のナオトが起きてから私たちは四人そろって紫陽花亭を出た。


 ナオトの両隣に私とセツ、少しうしろにロイヤが並ぶ。勇者を中心にして歩いているようだが、その実、勝手な行動を防ぐ目的で取り囲んでいる側面が強い。


「今日はまず冒険者ギルドに寄って、冒険者登録をするんだろ?」


「その前に立ち寄るところがあるニャ!」


「立ち寄るところ?」


「ほっほっほ……先代勇者の銅像じゃよ」


「先代勇者……だぜ?」


 ナオトは首を傾げる。


 今朝のミーティングではナオトを後衛に転職させるきっかけを作るため、勇者像にそれっぽい言葉を残すことになっていた。


 まずはそれをナオトに読ませ、私たちはその解釈を助けるふりをして転職に導く予定だ。


「その先代勇者は、どんな偉業を成し遂げたんだぜ?」


「う~ん、私もよくわかんないニャ!」


「たしかアレじゃ……! なんじゃったかのう、記憶がどうも……」


「オレは伝説が伝わらなかった説を推すッス!」


 どうにも締まらない道のりだった。




 そして私たちは勇者像の前までやってきた。


 屋台が並ぶ人気の多い公園の中心にシンボルとして配置されている勇者像。


 アルミームソードを高く掲げたポーズで、それっぽく偉そうな雰囲気をまとっている。


「これが先代勇者か……」


 ナオトは感慨深そうに呟くが、残念ながら偉業を成したわけでも実在しているわけでもない、ただ人の形しただけのハリボテである。


「これを見るがよい勇者よ」


 セツが指さした先、勇者像の台座には碑文の刻まれた石の銘板がはめ込まれている。


「これは……?」


 セツに促され、ナオトが碑文に顔を寄せる。先ほど私たちが作文したあの碑文である。さすがはスタッフさん、仕事が早いものである。


「アルミームソードの真価は刃に在らず……? なんだこれ?」


 ナオトは首を傾げる。冷静に考えればそりゃそうだろう。


「さぁのう……こればかりはワシにもさっぱりじゃ」


 すべてがさっぱりな男、セツにも首を傾げそうになる私だ。


「実は、ここへはアルミームソードを使えるナオト様にしかわからないこともあるかと思って来てみたのニャ」


「俺にしか、わからないこと……?」


「どうッスか? なんかこう……先代勇者さんの声が聞こえてくるとか……?」


「いや、そういうのは特にないぜ……?」


 ナオトは眉をひそめる。


「ワシらはこの碑文に何か重要な意味が隠されているのではないかと思っておるのじゃが……」


「刃に在らずって、いったい何を意味してるのかニャ?」


「もしかして、剣として使う物ではないという意味じゃないッスか……?」


 チラッ。私たちは誘導の言葉を尽くしてナオトを見る。


「いや、だったら最初から剣の形にしなきゃよかっただろ?」


 たしかに! 私たちは論破されてしまった。


「だけど勇者としての何かがここに隠されてるんじゃないかって考えには賛成だぜ」


 ナオトは勇者像に軽く触れて言った。


「へへっ。記憶を失ったセツや、イースで生まれたリリアンとロイヤにはわからないかもしれないけど、銅像ネタってのは意外とありがちなんだぜ?」


 なぜかナオトは得意げだった。


「まずは……そうだな……」


 何かを考えるように下を向いたまま勇者像のまわりを一周するナオト。


「ナオト様? なにをしてるニャ?」


「いや、隠し通路があるなら地面に台座が擦れた跡があるかもしれないと思ったんだが、さすがにそれはなかったようだ……だが……?」


 続いて身体を地べたに寝かせ、台座の付け根部分に耳を寄せるナオト。


「ふむ……特に地下から隙間風が流れているような感じもしないな……」


 そりゃあそうだ。


 傍から見れば今の私たちは挙動の怪しい存在だった。


「全力で押してみるか……?」


 それはまずい! ある程度の重量があるとはいえハリボテだ。場合によっては勇者像が倒れてしまうのではないだろうか!?


「ナ、ナオトさん! そういう力仕事なら脳筋戦士のオレに任せるッス!」


 状況を見て私の不安を察したのかロイヤが慌てて声を上げる。


「そうだな。じゃあロイヤ頼む。全力で押してみてくれないか? 一応、全方向から頼むぜ」


「了解ッス! うおおおお!」


 それから私たちはロイヤ渾身のパントマイム、全力で押したふりを全方位から眺めた。


「ハァ……ハァ……ナオトさん、こいつぁビクともしないッスよ……」


 ちなみにロイヤはパントマイムもとても上手で、全力で押しているようにしか見えなかった。


「そうか……押す系じゃないとすれば、もしや回転系だったかな?」


「オレに任せるッス! うおおおお! 面舵いっぱぁぁぁい!」


 ロイヤ、言われる前に動くなんてなんて気の利く人なのかしら。


「逆回転も頼むぜ?」


「取舵いっぱぁあぁぁい!」


 ロイヤは言われるがまま全力で回そうとするふりをするが当然動かない。


「ハァ……ハァ……銅像自体はまるで動く気配がないッスよ……いや、むしろこれは絶対に動かないッスね!」


 キリッ! とロイヤは言い切った。


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