転職のススメ(2)
ナオトに後方から攻撃魔法なんぞ使わせたら、実際にそれを放つのが裏方のマフォーであったとしてもマイナスに作用する未来しか見えない。
「それはちゃんと考えてあるから大丈夫ニャ!」
だが私は攻撃魔法だけが魔法として扱われるわけではないことを知っていた。
「ほう……? ではリリアンの考えを聞こうかの」
「答えはシンプル。ナオト様にはエンチャンターになってもらうニャ」
「エンチャンター……って、たしか補助系魔法を使って味方の能力を向上させたりする職業ッスよね?」
「そうニャ。……ただ、実際にはなんの効果もないからロイヤには魔法に掛かったふりをしてもらうことになるニャ」
攻撃力や防御力、素早さを上げる魔法なら支援される側の感覚的な問題であって、視覚的に演出が必要なわけでもない。なんならステータス表示の要領で発動の瞬間だけそれっぽい魔方陣でも展開しておけばよいだろう。
あとはそれをロイヤが了承してくれるかだが……。
「そういうことなら余裕ッスよ! 普段は八割くらいの力で動いて、バフが掛かったときだけ全力でいくッス!」
さすがは完璧超人のロイヤである。
「しかもこれなら前衛がオレ一人になるので、思いっきり戦えるッス!」
これぞロイヤの足を引っ張らないことでパーティーの戦闘力を最大化する作戦!
つまり私たちは完全にお荷物であることを認めるわけだが……。
「作戦自体はわかった……じゃが問題は、勇者がそれに納得するかじゃないかの?」
「たしかにそこは難しそうッスね……第一、伝説の剣なんて物を持たせておきながら、それを使わない後衛職なんて、そんな扱いがあるんスか?」
「それは……」
私は言葉に詰まった。たしかにそのとおりである。
アルミームソードはナオトを勇者であると証明してくれる、いわば彼のプライドとも呼べる剣。下手に扱えばナオトの自信を圧し折るような結果に繋がりかねない。
「ふむ……仕方がないのう。それについてはワシのほうで上手い誘導方法でも考えてみるとしよう」
「村長……いいのかニャ?」
「後衛職に転職させることで戦闘における勇者の危険が減るならば、そこはワシも同意するところじゃからのう……」
一番反対すると思っていたセツが賛成してくれたのはありがたいが、ここから先、勇者としてのプライドを傷つけずに転職を促すことについては私も良案を持ち合わせてはいなかった。
「こういうとき、ラノベならば先達の言葉や経験があればすんなりと受け入れやすくなると思うんじゃが……」
「あ!」
そのときロイヤが何かを思い出したように言った。
「だったらそれ、街の広場にある勇者の銅像が使えるんじゃないッスかね?」
「それじゃ!」
セツも合点がいったとばかりに大きく声を上げる。
「良案じゃぞロイヤ。それを利用しない方法はないわい……その銅像に先達の言葉として思わせぶりな文言を刻んでおくのじゃ……!」
「思わせぶりな文言……ニャ?」
「そうじゃのう……ではこうしよう。『アルミームソードの真価は刃に在らず』じゃ」
「なるほどッス! それならば本当の使い方が剣じゃないように誤解させられるッス!」
「それはいい案だニャ~! さっそくスタッフさんに銅像に刻んできてもらうニャ~!」
私たちは満足げにお互いの顔を見合って、円卓の中心で拳を突き合わせた。










