転職のススメ(1)
翌朝、私はセツやロイヤと今後の展開を打ち合わせておくことにした。
なにせ初日から思いどおりに計画が進んだことが一度もない!
そんなことではナオトに真実がバレてプロジェクトごと即終了してしまう日も近いだろう。
そうならないためにも、私たちはいま一度計画を練り直しておく必要があった。
「え~、本日は朝早くからお集まりいただき、ありがとうございますニャ」
私は会議を始めるときのように真面目に発言する。だが、紫陽花亭の円卓をともに囲む二人の顔にはまるで緊張感がなかった。
「いいッスね! オレ、こういう秘密会議みたいなノリ、ちょっと憧れてたんスよ!」
「うい~……ワシ、昨日飲みすぎたせいか、ちょっち頭痛が痛いんじゃが……」
私はバン! と両手で机を叩いた。
「真面目にやるニャ! これはプロジェクトの成否に関わる大事なミーティングなのニャ」
「大丈夫じゃ。そんなに心配せんでも、おおよそ計画どおりに進んでおるではないか」
一番計画を狂わせてるのはセツ、お前だろーが!
「むしろ戦闘面では隠れて動かなくてもいいぶん、オレはやりやすくなったッスけど……?」
ロイヤはおずおずと申し出る。
「ぶっちゃけロイヤが一人おればパーティーとしてはレベルMAXも同然。このまま最終目的地の研究施設にも直行できる勢いじゃしのう」
「みなさんが望むなら、オレ、もっと頑張るッス!」
「たしかにロイヤがいれば足りるという点についてはそのとおりですが、一つ大事な問題を忘れてはいませんかニャ?」
「「大事な問題?」」
セツとロイヤの視線が私に集まる。
私は重く言葉を発する。
「ええ……私たちには、暴走する癖があるのニャ……!」
「「なんてこった!」」
二人は目を見開いていた。
「私は昨日、サルキメラの巣に突撃していくナオト様と村長を見て思ったニャ……こいつら、このままにはしておけねぇ……とニャ」
「それ、ワシを前にして言うことかの?」
セツは首を傾げているが無視だ。
「私たちパーティーの最大の問題は、ロイヤ以外、全員がヘッポコ、または、ポンコツだということニャ」
「しょ、衝撃の事実じゃ……」
「そ、そんなことないッスよ? たぶんスけど……」
ヘコんだりフォローに困る二人を見つつ私は続ける。
「現実世界にはレベルなんてないのニャ。だから私たちが今からどれだけ訓練したところで、一朝一夕ではまともにキメラと戦えるようにはならないのニャ」
「ファ、ファンタジー成分が足りておらんのう……」
「で、でも、それじゃあオレたちはいったいどうすればいいッスか……?」
不安げな二人に私は拳を握りしめて答える。
「チームワークを高めるしかないニャ!」
「「チームワーク!」」
「そうニャ……はっきり言ってしまえば、ロイヤの足を引っ張らないこと!」
「「なんということ!?」」
二人はとても驚いていた。
「じゃが、それではナオトの活躍が……」
「今でさえ活躍なんかしてないニャ」
「でもそれじゃあ勇者の存在意義がないッスよ……」
「ニャふふ……だからそれを考えたのニャ」
私は少しもったいぶって再び口を開く。
「ナオト様には、後衛職に転職してもらうのニャ」
セツとロイヤは一度顔を見合わせてから私のほうへ向き直った。
「ふむ……たしかに前衛として無謀にもキメラに突撃されるより安心かもしれんのう」
「でもそれじゃあナオトさんには後衛から魔法でも撃たせるんスか? オレ嫌ッスよ? キメラと戦ってる最中にうしろから岩石とか矢とかで撃たれるの……」
私の脳裏にはナオトが放った魔法がロイヤに直撃する衝撃的なシーンが浮かんでいた。
憐れなロイヤ……後方から仲間に撃たれて散る……。










