勘違いのヤル気はマイナスに働く(2)
「ニャ!? ナオト様? もし近づいて獰猛なモンスターの巣だったらどうするつもりニャ? 怖いニャア!」
私は嫌でたまらないので引き止める。
「だ~いじょぶだってリリアン。さっきあれほどスライムを倒したんだ。俺だってそれなりにレベルアップしているはずだぜ? 見てろ? ステータスオー……」
「ま、待つニャア!」
私は大声を上げてステータスオープンを阻止する。周囲にはまだ裏方三人組が戻ってきた気配がなかったからだ。
「リリアン、急に大きな声を出してどうしたんだぜ……?」
ナオトは不思議そうに私を見てくる。
まずい。とにかく最優先で行動を制限したので理由がなかった。
ただ、私としてもこういうときは少しお色気を出していけば多少の誤魔化しが効くこともわかってきている。
「さっきスライムの大群にナオト様が飛び込んで行ったときに思ったのニャ……私、ナオト様が危険なことに踏み込んでいくのを見ると、胸が苦しくなっちゃうのニャ……」
私はあざとくもピタッと身体をくっつけ、ナオトを見上げる。
ナオトは頬を真っ赤にして顔をそらしていた。
「リリアン、それってどういう……?」
「ナオト様のバカ……もう知ってるくせにニャ……」
ヒロインとしてのリリアンはナオトのことが好き。これを武器に色仕掛けでナオトを御していくのもこれからは大事なテクニックになっていくだろう。
「お、おう……聞くのは野暮ってもんだったぜ……」
ナオトは照れ臭そうに一歩引いた。
やったか!?
私はそう思っていたが、ナオトは逆に固い決意を持ったように拳を握っていた。
「だがすまないリリアン。キミがそう言ってくれるからこそ、俺は余計に強くならなきゃならないんだぜ……! そう、キミを守れるくらいにな!」
あれえ? 逆に変な方向にスイッチが入っちゃったのかな……?
そしてそこにタイミング悪くも、洞穴の中から先ほどの私の大声に反応してか、サルキメラが一匹、周囲の様子を窺うように姿を現していた。
「見ろよリリアン。どうやらここはサルキメラの巣のようだぜ……?」
ナオトの目は、すでにそれを獲物として見ているような鋭いものだった。
「ま、待つニャ、ナオト様……」
この流れはまずいと思った私は必死にナオトを止めようとする。
なぜならば、彼は複数のサルキメラと同時に戦えるほど強くはないからだ。
先日はたしかに偶然遭遇したサルキメラの一匹と戦った。しかしそのときナオトはサルキメラに斬り掛かってもまともに剣を当てられず、サルキメラを本当に倒したのは裏に控えた黒子衆ロイヤだったのだ。
しかも冷静に考えて、普通ならサルは洞穴には住まない。ならばなぜサルキメラは洞穴に住んでいるのか? その答えは簡単だ。キメラだからだ。
ではいったいなんの動物と合成されたのだろうか?
そう考えると一つの可能性が浮かんでくる。それはつい先ほども考えたばかりだったのだ。もしかしたらこの洞穴はクマだとかの住処として作られたのではないか……と。
あくまで可能性の話だ。しかしもし、サルキメラがサルとクマの合成獣だった場合、その戦闘能力をただのサルとして考えるのは厳しいのではないだろうか?
私の脳内では目まぐるしく思考が加速する。考えれば考えるほど、この場は無理に踏み込むべきではないと思わされる。
なんとかして――抱きついてでも、この場はナオトを止めないと!
そう思って私はナオトに飛びつこうとしたが、そのとき彼は、すでにアルミームソードに手を掛けていた。










