勘違いのヤル気はマイナスに働く(1)
結果的に私たちは林の中に小さな池を発見し、そこから増殖していたスライムを難なく掃討することに成功した。
スライムは分裂能力こそ恐ろしいものの、やはり攻撃性がないことから私でも処理できる点がありがたい。
「ふい~……なんとかなったぞい……」
セツは安心してか腰を落とした。
「お疲れ様だぜ! みんなのおかげでスライム無限増殖の悲劇を早期に回避できたぜ!」
「私も、珍しくお役に立ててよかったですニャ~」
私も地に腰を下ろして休んでいた。
まさかスライムにこんな特性があっただなんて……あとで野生のスライムが池などに入り込まないようスタッフさんにお願いしておこう……。
「しかしスライムも恐ろしいモンスターだな……これで雨でも降ったら手に負えないぜ」
ナオトがサラッと、しかしゾッとするようなことを口にする。
あれ……? もしかしてスライムがイースに一匹でも残っていたら、雨が降るたびに増殖するってことで、これ、冷静に考えて全滅させるのとか不可能じゃね……?
私と同じことを考えていたのか、呆然としたセツとも目があった。
改めて考えてみて、遺伝子研究でやらかしてしまった責任の重さを感じる。
そういう意味でも、なんとか研究施設の自壊コード装置を起動するしか事態を収拾させる手段がなくなってしまった私たちであった。
「こんなモンスターを生み出した奴は、いったい何がしたかったんだぜ?」
ナオトは何気なく口にしたが、私たちのほうは思わずその存在に意識を向けざるを得なかった。
天才科学者、八雲セラ。その正体は謎に包まれている。
研究の進捗管理を担当していた私は何度か電話で彼女とも話したことがあったが、声の感じからすると若い女性だったとも記憶している。
事件が発覚する数日前から音信不通になったこと、猛獣型キメラも研究施設外に漏れ出してしまったことなどを考えると、彼女の安否については最悪のケースを想定しておくのが妥当だろう。
とはいえ、どうしてこんなにも多くの動物を使って遺伝子合成を研究していたのだろうか。
肝心のポイントは謎のままだった。
「ナオト様。それは考えても仕方ないニャ。私たちにできることは研究施設にあるなんとか装置を起動させ、異形の姿となって苦しんでいるキメラたちを眠らせてあげることだけニャ……」
私はそっとナオトに寄り添う。
「そうだな……そのためにも、俺はもっと強くならなきゃいけないんだぜ!」
「勇者よその意気じゃ。研究施設のまわりには今や多くのキメラどもが闊歩しているじゃろう……少しずつでも戦闘経験を積んでいくことを考えようではないか」
セツの発言にもナオトは頷く。
「おう! 俺はやるぜ!」
そんなふうに気合いを入れ直して街道に戻ろうとしたところだった。
偶然、私たちの視界の端に洞穴のようなものが引っかかった。
「お、見ろよセツ! あれってもしかしてダンジョンとかじゃないか?」
ナオトはその洞穴を指差して言う。
彼はすっかり気分を切り替えたのか、また違世界的な楽しみを見つけて嬉しそうな反応だった。
「惜しいのう……あれはただの洞穴じゃ」
この島は元々、遺伝子研究のためだけに作られた島。様々な動物の生態を研究するためにも色々な地形が人工的に用意されているのだ。
そう考えればあの洞穴もクマだとかの住処として作られていたものなのかもしれない。
「そうか……でも日本で育ったからには、ただの洞穴でも珍しく思えるよな。せっかくだし、ちょっと近くで見ていこうぜ?」










