ポンコツ × ポンコツ = 手に負えない
私が林の中に分け入って、先に踏み込んでいったナオトとセツを見つけると、彼らはすでにお楽しみのようだった。
「ウヒャヒャヒャ! ここは暴れ放題だぜ!」
「プチプチを潰す感覚でクセになるのう!」
大量にあふれたスライムを、ナオトは剣で、セツは杖で、まるでモグラ叩きのように倒している。
「はっはー! やはり俺は最強だったんだぜー!」
「ワシだって負けとらんわい!」
しかも得点を競い合っているかのように嬉々として。
哀れな姿に生み出されて苦しんでいるとはいえ、スライムとて生きているというのに勇者の品格が疑われそうだ。
「ナオト様! お顔! お顔が邪悪に歪んでるニャ!」
私はそこに割って入る。
「リリアンか! いいところに来たぜ」
「いいところニャ?」
「うむ。この異常に多いスライムを見て何か感じることはないじゃろうか……」
ナオトもセツも私の意見に期待するような目で見てきた。
たしかにスタッフさんが集めたにしては少し多すぎる気もしていたが……。
「もしかして、スライムがどんどん増えてるかもしれないってことニャ?」
ナオトもセツも顔を見合って慎重に頷く。
「俺たちも今それを話してたんだが、どうもこのスライムたち、林の奥から来るみたいなんだぜ」
「おそらく奥に池や水たまりがあるんじゃなかろうか……そこから湧いてきているとしか思えんのじゃ」
「ス、スライムが湧いてるニャ!?」
私もスライムが自然に発生するようなものだとは認識していなかった。
「これ、水を吸って分裂するとかって可能性は……ないよな?」
「いやむしろ、この数が発生していることを考えれば、そうとしか思えんじゃろう」
「た、大変ニャ!」
仮にそうだとしたら、スタッフが動画撮影のために集めた大量のスライムのうち、何体かが林の奥の池だか水たまりだかにたどり着き、その水を利用して増殖していることになる。
完全に私たちのせいである。
「早く元を絶たなきゃ駄目ニャ!」
「ああ、わかってるぜ! 幸いスライムはそれほど脅威にもならない……ここはザコを放置してでも元を叩くぜ!」
「ならば勇者よ! どちらが先に根源までたどり着くか競おうではないか!」
どうしてこんなときにまでゲーム感覚でやってしまうのか。
裏方事情を知らないナオトはともかく、セツならばこの事態の背景も理解できているはずなのに。
やはりこいつらに期待するのが間違っていたのか……?
私たちが林の中に飛び込んでしまったせいで、いまだ裏方三人組とも合流できていない。
すなわちナオトに余計なことをされた時点でプロジェクトが崩壊する危機的状態が継続しているというのに……。
「ちょ、ちょっと待つニャ! 少し冷静に考えてから動いたほうが……」
少なくとも裏方三人組が合流してからが望ましいと思って発言はしたが。
「フハハ! 甘いぜリリアン! 俺は賢者の智慧を学んだ! 殴ったほうが早いんだぜ!」
「そうじゃ勇者よ! 脳筋最速ラップを刻むのじゃ!」
ダメだこいつら……早くなんとかしないと……。
そうだ! 女神ノアの声で制止してもらえば……!
「九条専務! 九条専務、聞いていらっしゃいますか!?」
私は小声で本部に呼びかける。
「ああ。事情は把握している……やはり奴らの暴走は止められなかったか……」
「お願いします! 今すぐ女神ノアの声で彼らを止めてください……!」
「すまないが、それはできんのだ」
「どうして!?」
「彼女は今、お昼休みに出てしまったのだ……デザートのゼリーが美味しい店らしい」
ふっざけんなチクショー! スライムでも食ってろ!
私はネコ耳とウィッグを地面にかなぐり捨ててやりたい気分だった。
「よし! じゃあ行くぜセツ! どちらが先に大元を叩くか勝負だぜ!」
「望むところじゃ!」
そうしている間にもナオトとセツはどんどん林の奥へ駆けていってしまう。
私の忠告など聞いてくれる気配もない。
ああ、まずい……あの二人は私の手には負えない……。
そう思いながらも私は二人のあとを追わずにはいられなかった。
こうして、ますます裏方三人組との合流が果たせる可能性が薄れていく……。










