全力ダッシュリターンズ(2)
「わかったわかった……! でもせめてスライムがどのくらい残ってるか範囲索敵できるスキルとか……」
「「だめニャ!(じゃ!)」」
「まただぜ!?」
私たちが意地でもステータス画面だけは開かせない!
裏方三人組が戻ってきてスタンバイ完了するまでは絶対に余計なことはさせないという確固たる意志が私とセツの絆を不本意ながらも強めていた。
チラリと後方を見れば、先ほど別れて去っていった道のりを全力ダッシュで戻ってくる裏方三人組の姿が見える。
ドタバタとして、なりもへったくれもない姿である。
一度脇道に姿を隠して確実に戻ってくるよりも、可能な限り早く前線に復帰する道を選んだというわけだ。
それは私たちが意地でもナオトにうしろを振り向かせないだろうと信頼してくれている証拠であり、元はと言えば悪ノリによってこの事態を生み出してしまった責任からしても、私たちにはそれに応える義務があった。
「勇者よ! 小細工など考えている間に殴ったほうが早いと悟った賢者の智慧を見よ!」
そう言ってセツは腕まくりをし、杖を握りしめてスライムの大群に向かっていった。
「ワシが賢者ナイトと言われる所以を見せてやるわい!」
どうせナオトの戦う様子を見て、スライム程度なら自分でも戦えると思ったに違いなかった。
だがセツの判断にしては珍しく適切だったと言うべきか、自らの身体を前方に配置することでナオトの注意を引きつける効果を持っていた。
「ニャ~! ナオト様! 村長の戦いを応援してあげてニャ~!」
「お、おう! 頑張れセツ! 絶対に腰を痛めるなよ!」
私とナオトは拳を握りしめてセツの勇姿を応援した。
このまま……! このまま戦況をキープできればいずれ裏方三人組の全力ダッシュリターンズが完了する!
そう思ったときだった。
「ん? おいおい、マジかよ……!」
ナオトが何かに気がついたようだった。
「ナオト様? どうかしたニャ?」
ナオトが裏方三人組のほうへ視線を向けないよう警戒しながら問うと、ナオトはナオトでそれとはまた別の方向を注視していた。
それは街道から林のほうへ入っていった先。
「スライムの大群が林の中にもいるぜ」
「ニャ!? 本当ニャ」
スタッフさん、こんなにたくさんのスライムを集めたの?
そう思いたくもなるほど大量のスライムたちだった。
「これはセツ一人に任せるわけにもいかない……俺は林の中のスライムを退治するぜ!」
そう言うなりナオトは林の中に駆け込んでいった。
それによって戻ってくる裏方三人組の姿がナオトの視界に入る心配はなくなったわけだが、今度は逆にナオトが裏方三人組の視界から消えたことになる。
大丈夫だとは思うが、私とてナオトのポンコツ具合をまだ完全に掌握できているわけではない。
まさか迷子にとか……ならないよな?
「勇者よ! あまりワシらから離れるでないぞ!」
私と同じ不安を抱えてか、セツもまたナオトを追って林の中へと踏み込んでいく。
私は迷った。
裏方三人組を待つべきか? それともナオトやセツを追うべきか……?
私まで林の中に入ってしまったら、私たちの姿を見失ってしまう裏方三人組とはすぐに合流できなくなる可能性があるからだ。
しかしその迷いもすぐに意味のないものだと思い至る。
今はナオトに裏方三人組のサポートを要する行動を取られた時点で発動すべき効果が発動しない不自然が生じ、それによってプロジェクトが崩壊する可能性すらあるのだから、私の最優先事項はナオトの行動を制限すること以外になかったのだ。
今のこの状況は偶然まだ崩壊していないだけで、綱渡りのようなもの。
まずい!
私もナオトを追わなければ!
「ナオト様~! 私を置いていかないでニャ~!」
私は視界の端に裏方三人組の姿を切り、急いでナオトのうしろ姿を追った。










