全力ダッシュリターンズ(1)
その後、私たちは裏方三人組がたまたま近くで依頼をこなしていたことなどを軽く話して、手を振って別れたのだった。
「いやぁ。ガチの冒険者パーティーなんて初めて会ったぜ……特にリーダーのネルクなんか熟練の戦士って感じで、まるでオーラが違ったぜ」
彼女たちが街道を歩いて去っていく姿をナオトはしばらく見つめていた。
「俺もいつかはあんなふうに強くなれるんだろうか……」
なれっこないよ、と私は内心でツッコむ。
本当はレベルなんか上がらないし、そもそも裏方三人組だって戦闘能力はまったくない。
すべてが嘘で作られた違世界、それがイースなのだから。
そんなふうに思っていると、かなり先のほうまで進んだネルクたちが振り返って私たちのほうを見た。
早く裏方仕事に戻るためにフェードアウトしたいのだろう。
「ニャ~! バイバイニャ~!」
私は彼女らに手を振って大きく声を上げる。
その本当の意味は、まだナオトがそっち見てるから変な隠れ方はしないで! だ。
裏方三人組もまた了解とばかりに小さく手を振って歩いていくが、しばらくするとまたこちらに振り返る。
シュールな光景だった。
「あれ、またこっち振り返ったぜ? そんなに名残惜しかったかな?」
ナオトはぼんやりと言った。
そうじゃない。なかなかあんたが視線を切ってくれないからフェードアウトできなくて困ってるんだよと心の中で私はつぶやく。
「あ、せっかくだったし、参考までにあいつらにもステータスを見せてもらえばよかったぜ」
「「だめニャ!(じゃ!)」」
私とセツは断固としてそれを阻止する。
「ど、どうしたんだぜ? 二人そろって……?」
ナオトは私たちの気迫に驚いたようだった。だが私たちはそれどころではない。今ステータスオープンなんかされたら、あんなに遠くまで離れてしまったステータス担当スムスが完璧に対応できるとは思えないからだ。
一応、動画撮影のために私たちのまわりでカメラは回っているし、ナオトの声も拾っている。そしてスムスの持つ大盾型PCならばこちらの状況を映し出すこともできるはずだ。
だが、それを自らもまた出演者として振る舞いながら完璧に操作できるものなのか。
「人のステータスを勝手に見るのはマナー違反じゃぞ!」
「そうニャ! そうニャ!」
早くネルクたちをナオトの視界からフェードアウトさせなければ……!
「だ、だけど二人は俺にステータスを見せてくれたよな……?」
「わ、私はあんなことまで知られちゃうとは思わなかったからニャ~!」
「ワシだって歳のせいでステータス九割減少なんて恥ずかしかったわい!」
「わ、わかったって……もう見ないよ……」
ナオトは私たちの気迫に押されて一歩引いた。
もう一押しだ!
「それよりもナオト様! うしろを見るニャ! まだ完全に倒しきれてないさっきのスライムたちが残ってるニャ!」
「そ、そうじゃぞ勇者よ! 早くスライムを倒し、街道に平和を取り戻すのじゃ!」
「おっと、そうだったぜ」
ナオトはようやく踵を返し、裏方三人組から目を切った。
その視線の先にはだいぶ数を減らしたとはいえ、まだかなり残っているスライムたち。
「うわ……まだかなり残ってるんだぜ……なんだか身体を動かすのも疲れてきたし、まわりに気をつけながら魔法で倒しちゃダメかなぁ……」
「「だめニャ!(じゃ!)」」
今魔法なんか使われても、遠くまで離れてしまったマフォーがそんなに早く戻って来れるわけがない!
「つい先ほど魔法を控えると言うたばかりじゃろうが! いくら記憶喪失のワシでもまだ忘れとらんぞ!」
「そうニャ! そうニャ!」
ナオトはまた少し怯んだ。










