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あなたを勇者にしてあげる 〜転生したと勘違いしている御曹司と偽世界を冒険中。なお全世界配信されてるから迫られても困ります〜  作者: nandemoE


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勇気のない勇者(1)


 どうしてこう、うまくいかないことばかりなんだ……。


 不本意ながらも村長セツを仲間に加えてしまった私たちだが、北の街に向かうという目的だけは一致しているので、とりあえずダラダラと街道を北上し始めた。


「いやぁ、仲間が増えるとRPG感があって嬉しいんだぜ!」


「ワシもじゃよ……なんだか若かりし頃を思い出すような出さないような気分じゃ」


 ナオトとセツが楽しそうにペチャクチャおしゃべりしながら歩いており、そのうしろを私が疲れた顔で足を引きずるように歩いている。


「せっかくだしステータス見てもいいか?」


「もちろんじゃとも」


「なら遠慮なく。ステータスオープン! そして鑑定! 対象はセツだ!」


 そして表示されただろう画面を見てナオトは飛び上がった。


「うわっ! うそだろセツ! レベル高っ!? 全ステータスが三桁超えだぞ!? 俺やリリアンの比じゃないぜ!」


「そりゃそうじゃ……これでも昔は冒険者じゃったと言うておろうに」


「惜しむらくは年齢補正で九割減少が入ってる点だな……さすがに歳には勝てないってことか」


「ワシも歳さえ取っとらんかったら戦闘に参加できたんじゃが……」


 お前、戦う気ねーのに仲間になったのかよ!


 私も人のことは言えないが、それでも足を引っ張る存在になるとしか思えないセツにげんなりしていた。


 時折ナオトが気にして振り返ったときだけは背筋を伸ばして笑顔を浮かべる。


「ニャア! 私もナオト様と旅が続けられて嬉しいニャ~!」


 そんな道中が一時間ほど続いた。


 私たちの対向から歩いてきた冒険者風の男が、私たちとすれ違いざまにクシャミを三回していったのが本日のイベント準備完了の合図だった。


 今日のイベントはスライムの大群と遭遇し、それをナオトが一人で殲滅する戦闘イベントとなっている。


 正直、遺伝子研究でなんでスライムなんかが発生したのかとは思うが、天才科学者の考えることはよくわからない。考えてもわからないから、とりあえず除去しておくに越したことはない。


 スライムはほぼ球体の膜の中に水分を溜め込んだ生命体であり、プルプルと動いたりはするが動きがのろく、攻撃性はまったくない。また表面の膜を斬りつければ簡単に崩れる脆さなので私ですら倒せるようなザコキメラなのだ。


 だからナオトが気持ちよく無双するためにはおあつらえ向きなモンスターであり、それをスタッフがわざわざ捕らえてきて、私たちの進行方向に配置したというわけだ。


 となれば私の仕事はパーティーの進行方向をこのまま維持すればいいことになる。


 といっても、そもそも街道を歩いているのだからラクなものである。


「ぬ!?」


 だがそこでセツが不穏な声を発した。


 またこいつ、なにかやらかす気か!?


 私は身構えずにはいられない。


「どうしたセツ? なにかあったのか?」


 ナオトは心配そうに尋ねるが、セツはセツで右目をワナワナと震える手で覆い隠している。


 まるで、いや、普通に中二病である。


「今、なにかが見えた気がしたのじゃ……どこかの街道の光景じゃったろうか……勇者がなにやら大量のスライムと戦っているような場面じゃった……」


 それ今から前方に偶然を装って現れる予定のスライムだよな? お前なんでそれをバラしてくれちゃってんの?


 私の視線はまるで邪眼のように鋭かっただろう。


 てか、それ今の時点で私たちが知ってたらおかしい情報だよね? などと思っているとセツは続ける。


「こ、これは……ワシの新たなるスキル、未来視なのかっ!?」


 うおぉぉぃ! またとんでもないスキルきちゃったなオイ!


 そりゃ私たちは自分でシナリオ用意してるんだから当然この先に起こることくらいわかってはいるんだけどさ!


 それを未来視とか得意げに言い出しちゃったよこの駄作家!


「すごいぜセツ! 未来視なんてトップクラスに重宝されるレアスキルじゃないか」


 ナオトははしゃぐ。


「どれくらい先まで見通せるんだぜ?」


「わからぬ……ワシとて初めての感覚じゃからの……」


「もしかして俺がちゃんと目的を果たしてる未来とかも見えたりするのか?」


 ほれ見たことか……そんなことを言ったらすぐボロが出ることくらいわからないものなのかねぇ。


「どうじゃろうな……じゃが、これはどうも魔力の消耗が激しいようじゃ……残念ながら多用はできそうもないの……」


 そう言ってセツは片膝をついて苦しげな演技をしていた。


 じゃあ使うなよ。とかのツッコみをナオトの前ではできないのが残念だ。


「そっか~……それじゃあ、あんまり無理させるわけにはいかないんだぜ」


 多用不可というか、シナリオで決まったこと以外わからないのだから普段バンバン使えるような設定にはできないのだろう。


 そういうところを中途半端に考えてるのはわかるが、結局は深く考えないまま適当に実行してしまうところがこの駄作家の駄目なところだとわかってきた。


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