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あなたを勇者にしてあげる 〜転生したと勘違いしている御曹司と偽世界を冒険中。なお全世界配信されてるから迫られても困ります〜  作者: nandemoE


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ポンコツ仲間(2)


 それだけはダメだ。なんとかして村に送り返さないと、こいつの暴走でプロジェクト自体が崩壊しかねない!


「それは駄目ニャ! 村長がいなくなったら村のみんなが心配するニャ!」


「それは心配いらん……こう見えてワシ、実は村八分だったんじゃ」


 村長なのに仲間はずれっ!?


 駄作家ならではのとんでもない返答に私は意表を突かれ、たちまち言葉の勢いを削がれてしまった。


「で、でも……ナオト様の旅は危険と隣合わせなのニャ!」


「それなら心配いらんぞ? これでもワシ、昔は賢者じゃったからの。腰の痛みさえ治れば、まだまだ若いもんには負けんわい」


 くっ! 私が昨日、賢者なんて変な設定さえ盛らなければ……!


「おいおいセツ、昨日リリアンから聞いたぜ? お前、本当は普通の賢者じゃなくて賢者ナイトだったそうじゃないか」


 横から入ったナオトの指摘に私はさらにげんなりする。


 賢者ナイトなんてふざけた職業も、私が昨日、もう二度とセツは現れないと思って適当に付け足した設定だったからだ。


 しかもその事実をセツと打ち合わせしていない以上、ボロが出てしまう可能性すらあるわけで……。


「そうじゃった! ワシ、賢者ナイトじゃった!」


 だが私の杞憂とは裏腹に、セツはそんな適当な話にもノリで乗ってきた。


 この時点で私の思考回路はもうパンク。


 なぜかセツはアドリブで私の設定に合わせてくれているようだが、いつ話に矛盾が生じてプロジェクトが崩壊するかわかったもんじゃない。


 私はヒヤヒヤしながら話の行く末を見守っていた。


「ったく、記憶喪失でも本当にお前らしいぜセツ。賢者ナイトなんて職業、どんなRPGでも聞いたことがないからな~。いったいどんな職業なんだって話だぜ」


「賢者ナイト。それはのう……いかにも魔法が使えそうな杖に偽装した棍棒で物理攻撃を繰り出し、意表を突きつつ敵を屠る脳筋アタッカーのことじゃ」


「では賢者ナイトは賢者ではないと?」


 早口言葉かな?


「さよう……昨日も言うたであろう? ワシは賢くない賢者じゃと」


 もうやだ! こいつらの会話、意味わかんない……!


 しかも放っておくと話が暴走していく未来しか見えない。恐怖でしかない。


 混ぜたら危険な奴らだったんだ……!


「もう賢者でも賢者ナイトでもどっちでもいいニャ! 私はナオト様と二人で旅がしたいのニャ!」


 もうこうなったら色仕掛けでもなんでもしてナオトも味方につけ、セツを引き離すしかない!


 私は強引にナオトに腕を絡めて上目遣いで彼を見上げた。


「ナオト様は私と二人きりの旅じゃ嫌ニャ……?」


「うっ……そ、それは……たしかに昨日の旅路はけっこう楽しかったぜ……?」


 ナオトはドギマギして視線を泳がせていた。もうひと押しか。


「私もナオト様と二人きりだったからとってもドキドキしたニャ。だからこれからもずっと、こんな二人旅が続けられたらいいなって思ってるニャ……?」


 我ながらあざとい! しかし今はそうでもしないとわけのわからない理論と勢いですべてを流されかねない危機感があった。


「それは俺だって、できればそうしたいと思うところもあるんだぜ……?」


「じゃあやっぱり村長は村に戻ってもらったほうが……!」


 私が言いかけたところだった。


「ごめんリリアン……それでも俺、困ってる親友を放っておくなんてできないんだぜ……」


 ナオトは少し申し訳なさそうな顔を私に向けた。


 なんとなくその時点でナオトの気持ちはもう固まっているような気がして、私は言葉を失った。


「たしかにセツは賢くなくて、たまに記憶を失うし、話も半分くらい意味わからないし、またいつ腰痛で倒れるかわからないし、村八分で帰る場所がなくなるような奴だけどさ……」


 それってけっこう最悪なポンコツ具合だよ?


「もしも勇者パーティーの一員として魔王とかを倒したりすればさ。功績を認められ、また村でも受け入れてもらえるんじゃないか?」


 いや、この世界に魔王なんていないから!


 あなたの目的は研究施設の自壊コード装置を起動することだけだから!


 私の心の中のツッコみなどなんの意味も持たずにナオトの話は続く。


「だからさ。セツを心配するリリアンの気持ちはわかるけど、だからこそ、俺たちの仲間として連れていく選択肢もあると思うんだぜ?」


 そんなふうに無邪気な顔を向けられると、会話についていけない混乱も相まって否定もできなかった。


「そんなわけだからさ……リリアン、セツを仲間に加えても、いいかな?」


 私は頷かざるを得なかった。


 その瞬間、嬉しそうに飛び上がるセツ。


「ヒャッハー! この賢者ナイトのワシが仲間となったからには、キメラなどすべて撲殺じゃ~!」


 老人キャラはヒャッハーなんて言わない。腰痛を抱えた奴は飛び上がらない。そもそもお前に戦闘能力なんかない。


 もうどこからツッコんでいいのかもわからないが、こうして賢者ナイトの村長セツが仲間になった。


 ……なってしまった。



お読みいただきありがとうございます。


ナポレオン曰く

「真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である」


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