ポンコツ仲間(1)
翌朝、ナオトが起きて来る前に、私は裏方三人組とロイヤの五人で本日のミーティングを済ませた。
とはいっても基本的な役割は変わらず、裏方三人組はそれぞれの役割を遵守。ロイヤは周辺の警護をしつつ危険なキメラを排除する。
本日のミーティングで新たに決まったことといえば、ナオトに相手をさせるのはスライムだけ、ということだ。
昨日戦ったサルキメラが全キメラ種のなかでも最弱であることを考えると、今のナオトが安全に戦えるのはスライムだけだろうし、ナオトにおいてもスライム相手ならば無双気分を味わえるだろう。
さらにいえばアルミームソードの強度も問題にならないということから、満場一致でこの結論に至ったのだ。
たしかにスライム以外のキメラをすべて処理するロイヤが気の毒になってしまうような作戦ではあるが、当のロイヤが「余裕ッスよ!」と軽く笑っていたので私たちもその言葉を信じ、自分たちの役割に集中することとなった。
本日の私の役割はナオトとともに街道をひたすら北に進み、拠点となる街にたどり着くことだけ。
戦闘があるとすればスタッフが捕らえておいたスライムを私たちが近づいたタイミングで放流し、ナオトに倒させる。それくらいのものだ。
昨日のようなトラブルもそう起こるまい。
「よ~し! 今日こそはトラブルなしでいくニャ!」
私は気合いを入れつつ、なかなか起きてこないナオトの部屋をノックした。
「お~いナオト様ぁ! 朝ニャ~! そろそろ出てくるニャ~!」
私は大きな声で呼びかける。
「おう、リリアンか。今ドアを開けるぞい~!」
ぞい?
ナオトではないがどこかで聞いたことのある声と変な口調に首を傾げながら、ドアの上に付けられた部屋番号を見上げる。
見間違いなくナオトの部屋のはずだ。
いったいどういうわけだ? と私が眉をひそめながら待っていると、やがてゆっくりとドアが開く。
「昨日ぶりじゃのぅリリアンや。元気じゃったか?」
目の前に村長の格好をしたセツが現れたので、私はなかったことにして一度ドアを閉めた。
いくら天真爛漫、明るく健気なネコ耳ヒロインにだって我慢の限界というものがある。
どうしてナオトの部屋から昨日旅立った村の村長役が出てくる事態になったのか。
私はそれを問いただすため、気づいたときには勇者ナオトと村長セツを室内で正座させていた。
「「ご、ごめんなさい……」」
私がよほど鬼の形相をしていたからか、ナオトとセツは素直に頭を下げた。
それでも満足に溜飲を下げられない私は大きくため息をついて見せる。
「……で? どうしてこんなことになってるニャ村長」
持ち上げ対象のナオトをあんまりキツく咎めるわけにもいかない私は自然とセツのほうを睨みつけた。
「じ、実はの……昨日お主らを見送ったあと、どうやらワシは腰の痛みによって一瞬だけ記憶喪失になってしまったようでの……気づいたときにはこの宿場町を歩いておったんじゃ」
この駄作家が……! 私たちが一日かけて歩いてきた村から宿場町までの距離を、そんな酷い腰の痛みを抱えつつ記憶喪失で歩いてきただぁ!?
ボケて徘徊ってレベルじゃねーぞ!
もっとマシな言い訳ができねーのか!
「ヒィッ!」
私の顔を見たセツは恐怖からかさらに表情を引きつらせた。
「ま、まぁまぁリリアン。ここは俺に免じて大目に見てあげてほしいんだぜ。これでも記憶は戻ったわけだし……」
「そうじゃ! 偶然にも宿場町を歩いていた勇者が見つけてくれての……それがきっかけとなって記憶を取り戻したんじゃ!」
そんな都合のいい記憶喪失があるかっ!
「あーそーですかニャ。記憶が戻ったのなら早く村に戻ればいいニャ」
私はセツに冷ややかな視線を送りながら棒読み口調で言う。
どうせまた友人同士で飲みたかったとか、そういうノリだったんだろう。
そんで盛り上がっちゃったんだろう。
「最初はワシもそう思ったんじゃがのう……どうやらワシ、昨日ここまで歩いてきたせいか、腰の痛みがすっかりと治っておったのじゃ!」
んなわけあるかっ! 普通は逆だろ! 安静にしてろ!
「そこでワシは悟った……年老いて身体を労り続けた結果、かえって身体を怠けさせていたのではないかと……! 適度な運動が身体を若返らせたのではないかと……!」
このポンコツが……! あんた本当は老人メイクしただけの若者だろうが……!
私は何からツッコんでやるべきかと怒りを燃やし、ワナワナ震えていた。
「つまりじゃ! ワシもお主らに同行し、ともに戦うことによって今よりも健康な余生が送れるのではないかと思ったのじゃ……!」
ぐっ!? この駄作家まさか私たちについて来る気か……!?
そう思った瞬間、すぐさまインカムから九条専務の指令が飛んでくる。
「まずいぞリリアン君。その駄作家は正真正銘のポンコツだ! 戦闘能力もまるでゼロの、ただのトラブルメイカーだ! 仲間に引き入れなどしたらプロジェクト存続の危機に関わる! ここで絶対に阻止するのだ!」
そんなの言われなくてもわかってる!










